シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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恐怖のアンデットライン農園へ!首無し騎士と拗らせ女神のアイスクリームパーラー

魅惑のランジェリー

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 アーケード街の奥にあるウィンターマーケットは大賑わいだった。

 日用品や食品が山のように積まれて、片隅では音楽家が楽しい曲を演奏しているし、露店ではお菓子や軽食などが販売されていた。

 特に婦人たちが密集していたエリアは、婦人服や化粧品、アクセサリー売り場だ。
 庶民や小金持ち向けの年末年始の大安売りセールのようなものだと、アトランテが教えてくれた。

「うふふ。キャロルさんとゲーテはすごく浮いているわね」

 周囲は女性客しかいない。
 そわそわ落ち着かない様子の彼らを横目に、シャルロットはクスクスと笑っていた。

「……そうでもないわよ、ほら、あそこ」

「え?」

 女性客しかいないフロアの物陰に、コートを着た厳つい顔の二人組の中年男が身を隠しており、シャルロットやアトランテの方を凝視していた。
 やっぱり男性客は浮いてしまう。

 アトランテは一瞬だけ難しい顔をして、それからすぐに笑顔に切り替えてシャルロットに飛びついた。

「シーズ様の好みってどういうのかしら~」

「えっと…」

「ねえ~。見て、このネグリジェ!まじ、やばくね?ぎゃんかわ!シャルロットちゃんに似合うと思うわ~」

「え!?」

 アトランテが見立ててくれたのは、かなり透け透けな総レースのセクシーネグリジェにショーツ、刺激的すぎるランジェリーガーターベルトだった。

「ちょ、ちょっと……!」

 側に立っていたキャロルは顔を真っ赤にさせて、露骨に動揺していた。

「なによ?だから女の子だけで買い物したいって言ったんじゃない。護衛は要らないから、帰れば~。目立ってるわよ。あんたたち」

 周りの女性客の視線が痛かった。

「私は姫様の親衛隊なんです。側を離れるわけにはいけません」

「あのね~。アタシも元騎士よ~、しかも隊長だって経験あるわ。シャルロットちゃんの護衛くらいできるわよ」

「ダメですったら!」

 キャロルは大声で怒鳴った。
 ゲーテは我関せずで、商品を手に取るとシャルロットの前にかざした。

「お~、シャルル。お前にはこれが似合うぞ。可愛いぞ」

 子供っぽいピンク色のベビードールだった。
 猫耳カチューシャに、長い尻尾がついたショーツ付きだ。

「ゲーテは羞恥心ゼロなのね」

「ゲーテ!勤務中です!遊ばないでください!」

「チッ、うるせーウサギだな」

 すぐにキャロルに叱られてしまったゲーテ。

「シャルロットちゃん、肌着を買ったら~今度はボディオイルでも見に行きましょう?アタシ、欲しかったものがあるの~。新しいアクセサリーも欲しいわね。その後は、露店で美味しいスイーツでも食べましょう!うっふふ~」

 アトランテは楽しそうにはしゃいでいた。

「アトランテさんって女子力が高いのね。センスも良いし……。私はさっぱりよ。身の回りのものは、お母様や侍女さんに任せっぱなしですもの」

「え~?シャルロットちゃん、可愛いのにもったいないわ。じゃあ、私が選んであげるし~」

「ふふ、ありがとう」

 女同士でのショッピングはやっぱり楽しいものだった。
 最近では庶民の間でも小金持ちが増えて、オシャレなプレタポルテ(既製服)を売るお店も増えたようだ。
 普段はオートクチュールばかりなので、こうして店頭に並んだ洋服を見て選ぶのは、それだけでもたのしい。

「あ、これ、デュラハンが好きそうな感じぃ~!」

 アトランテが立ち止まり、手に取ったのは木目調のカトラリーだった。

「まあ、本当ね。かわいいわ。プレゼントはそれにするの?」

「うん!実用的でいいじゃない」

「このランチマットもかわいいですわ。カトラリーにも合ってる」

 そんな会話をしていると、後ろに居たゲーテが鼻で笑った。

「女って、何でもかんでも可愛い可愛いばっかだよな?理解不能だぜ。ナイフとフォークが可愛いとか意味不明だ」

「うるさいな~、護衛の騎士なら黙って付いて来なさいよ~」

 アトランテは怒った。
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