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恐怖のアンデットライン農園へ!首無し騎士と拗らせ女神のアイスクリームパーラー
不思議な竜巻
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ーー翌日、一段と冷え込んだ冬の朝。
静かな寝室に、ひたすら何かをガツガツと食べ続けているような咀嚼音だけが響いていた。
シャルロットはその物音に気付いて目を覚ました。
「……ん……?」
ベッドから少し離れたテーブルの上で、何かがごそごそうごめいている。
あそこには、昨夜デュラハンからもらった魔法のナッツがたくさん入った瓶が置いてあった。
「え?」
その瓶は、テーブルの上で横倒しにされて、蓋は絨毯の上に転がっていた。
魔法のナッツがテーブルの上に散らばっていて、その中で白いモフモフな子狼の背中がもぞもぞ動いている。
シャルロットは驚いて飛び起きた。
「す……スノウ!?」
子幻狼スノウが、シャルロットの魔法のナッツをつまみ食いしていた。
シャルロットと添い寝していた幻狼グレイも起きて、我が子の首を咥えて押さえつけ、ナッツを食べ続けるのを止めた。
「スノウ、それはシャルロットのナッツだ。勝手に食べたらいけない」
「おはよー、お母ちゃん、シャルロット……ゲフッ」
スノウの白い毛がブワッと立ち上がった。
大きく身を震わせると、苦しそうな顔で白い光の玉を吐き出した。
「あら?スノウ、目が真っ赤よ?」
「……」
黄金の瞳が、赤く光っていた。
「魔法のナッツを食べ過ぎたせいかしら?」
心配になったシャルロットは、スノウをひざ掛けに包んでベンジャミンの部屋へ連れて行くことにした。
グレイも不安げな顔をしながらシャルロットの後ろを歩いた。
「ママ~!おはよう~」
寝室を出てすぐの廊下で、幻狼エステルとユーシンに出会った。
エステルはシャルロットの姿を見つけると、尻尾を振って駆けてくる。
「おはよう、エステル、ユーシン。ねえ、ベンジーは起きてる?」
「ベンジーは下にいるよ~」
みんな早起きなのね、そう思いながら1階へ降りると女性の言い争うような声が聞こえた。
気になって客間を覗くと、そこにはソファーに座る左王の姿と、それぞれティーカップやポットを手に、鬼のような顔をして睨み合うアトランテとエルジェーベト夫人の姿があった。
「シーズ様♡にモーニングティーを淹れてあげるのはこの私よ!!小娘は下がってなっ!」
「ウルセェ!くたばれ!このくそババァ!シーズ様にご奉仕♡するのは未来の奥様である、この私の仕事なの♡」
「だ……っ、誰がババァですって!?お黙りなさい!この下品なメスブタが!」
アトランテとエルジェーベト夫人はギャーギャーと叫びながら激しい喧嘩をしていた。
それを必死になだめているベンジャミンとデュラハン。
左王は涼しい顔をして、新聞を読んでいた。
シャルロットは苦笑していた。
「おはようございます」
「おや。お早うございます、妃殿下」
ベンジャミンはシャルロットに気が付き、笑顔を見せた。
「お取り込み中ですか?」
「気にしないで。ずっとあんな感じだから」
「ベンジー、あのね……」
「……ふえ……っ、クチュンッ……!」
スノウの事をベンジャミンに話そうとした瞬間、シャルロットの胸の中でひざ掛けに包まっていたスノウがクシャミをした。
すると、突然、窓も開いていない部屋の中に、竜巻のようなものが発生して部屋を縦横無尽に移動したーー激しい突風は家具やその場にいた人達をなぎ倒し、あっという間に部屋の中は大荒れとなった。
「きゃああ!」
「わ!?なんだ?」
悲鳴が上がる。
壁に掛けられていた大きな絵画は強風に煽られ、近くに立っていたシャルロット目掛けて飛んで来た。
ユーシンはシャルロットを押し倒し、彼女が絵画の下敷きになるのを防いだ。
「……え?」
「大丈夫?母さん」
「うん……」
幻狼グレイは咄嗟に結界の魔法を発動し、部屋の中にいた全員を保護する。
アトランテとデュラハンは剣を抜くと、2人阿吽の呼吸で同時に竜巻を切り裂いた。
間も無く、竜巻は消失した。
「……な、なんだったの?……一体……」
静かな寝室に、ひたすら何かをガツガツと食べ続けているような咀嚼音だけが響いていた。
シャルロットはその物音に気付いて目を覚ました。
「……ん……?」
ベッドから少し離れたテーブルの上で、何かがごそごそうごめいている。
あそこには、昨夜デュラハンからもらった魔法のナッツがたくさん入った瓶が置いてあった。
「え?」
その瓶は、テーブルの上で横倒しにされて、蓋は絨毯の上に転がっていた。
魔法のナッツがテーブルの上に散らばっていて、その中で白いモフモフな子狼の背中がもぞもぞ動いている。
シャルロットは驚いて飛び起きた。
「す……スノウ!?」
子幻狼スノウが、シャルロットの魔法のナッツをつまみ食いしていた。
シャルロットと添い寝していた幻狼グレイも起きて、我が子の首を咥えて押さえつけ、ナッツを食べ続けるのを止めた。
「スノウ、それはシャルロットのナッツだ。勝手に食べたらいけない」
「おはよー、お母ちゃん、シャルロット……ゲフッ」
スノウの白い毛がブワッと立ち上がった。
大きく身を震わせると、苦しそうな顔で白い光の玉を吐き出した。
「あら?スノウ、目が真っ赤よ?」
「……」
黄金の瞳が、赤く光っていた。
「魔法のナッツを食べ過ぎたせいかしら?」
心配になったシャルロットは、スノウをひざ掛けに包んでベンジャミンの部屋へ連れて行くことにした。
グレイも不安げな顔をしながらシャルロットの後ろを歩いた。
「ママ~!おはよう~」
寝室を出てすぐの廊下で、幻狼エステルとユーシンに出会った。
エステルはシャルロットの姿を見つけると、尻尾を振って駆けてくる。
「おはよう、エステル、ユーシン。ねえ、ベンジーは起きてる?」
「ベンジーは下にいるよ~」
みんな早起きなのね、そう思いながら1階へ降りると女性の言い争うような声が聞こえた。
気になって客間を覗くと、そこにはソファーに座る左王の姿と、それぞれティーカップやポットを手に、鬼のような顔をして睨み合うアトランテとエルジェーベト夫人の姿があった。
「シーズ様♡にモーニングティーを淹れてあげるのはこの私よ!!小娘は下がってなっ!」
「ウルセェ!くたばれ!このくそババァ!シーズ様にご奉仕♡するのは未来の奥様である、この私の仕事なの♡」
「だ……っ、誰がババァですって!?お黙りなさい!この下品なメスブタが!」
アトランテとエルジェーベト夫人はギャーギャーと叫びながら激しい喧嘩をしていた。
それを必死になだめているベンジャミンとデュラハン。
左王は涼しい顔をして、新聞を読んでいた。
シャルロットは苦笑していた。
「おはようございます」
「おや。お早うございます、妃殿下」
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「気にしないで。ずっとあんな感じだから」
「ベンジー、あのね……」
「……ふえ……っ、クチュンッ……!」
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「きゃああ!」
「わ!?なんだ?」
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アトランテとデュラハンは剣を抜くと、2人阿吽の呼吸で同時に竜巻を切り裂いた。
間も無く、竜巻は消失した。
「……な、なんだったの?……一体……」
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