シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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恐怖のアンデットライン農園へ!首無し騎士と拗らせ女神のアイスクリームパーラー

食べ過ぎ注意?魔法のナッツ

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 もぐもぐ、もぐもぐ…、寝室で狂ったように魔法のナッツを食べ続けているシャルロットの姿を、グレース皇子とクロウは目を丸くして見ていた。

 ニコニコ笑いながら、まるで冬眠前のリスやハムスターのように木の実をドカ食いするシャルロットは奇妙だった。

「うふふ、美味しいわ」

 服を見立てたお礼に、デュラハンがたくさんくれたのだ。

「ちょっと食べ過ぎじゃない?」

「あまり食べ過ぎるのは良くないぞ」

 クロウとグレース皇子から注意を受けた。

「平気よ。魔力がどんどん身体の中にチャージされていくみたいだわ。身体がポカポカするの」

 身体はポカポカ温まり、なんだか逆上せてきたかもしれない。
 鏡台に向かうと、顔はゆでダコのように真っ赤だった。

 クロウはオオカミの姿から人の形に変化すると、シャルロットを背中から思い切りハグした。

「シャルロット~、そんなに魔力が欲しいなら~私とグレースが分けてあげるよ~?久しぶりにイチャイチャしようよ~」

「あっ……、もう。クロウってば……」

 クロウは楽しそうに笑いながら、シャルロットをぎゅうっと抱きしめた。
 そしてシャルロットの赤い耳たぶをペロッと舐めたり、キスをされた。

「クロウ……」

「ふふ」

 精霊や魔人との、こうしたスキンシップでも魔力は得られるのだ。

「ふふ、今日のシャルロットは顔が真っ赤で、リンゴみたい~。ね、見て。グレース」

 クロウはシャルロットを抱き上げて、ベッドに座っていたグレース皇子の元に運んだ。

「グレース様……」

 グレース皇子もシャルロットにキスをした。
 彼の唇は冷たいのに、熱くて火傷してしまいそうなくらいの熱の塊が彼の口内からシャルロットの口内へと流れ込むような感覚がした。

「熱……」

 身体の奥がジリジリと焼けるように痛くなった。
 ーーこれはグレース皇子から送られてきた魔力だ。

「シャルロット……?」

 シャルロットの顔を間近で見たグレース皇子はギョッとしていた。

「シャルロット大丈夫か?熱でもあるのか?」

「え?」

 なんだか少し頭がボーッとするかもしれないと、シャルロットはのぼせる頭で考えた。

「う……っ!」

 身体中の血管が一気に沸騰して、爆発してしまったみたいだった。

「シャルロット!!?」

 シャルロットは顔を真っ赤にさせ、大量の鼻血を流し目を回していた。
 ベッドの下で眠っていたグレイも異変に気付いて、むくりと身体を起こす。

「ヒクッ…」

 シャルロットが吃逆をした瞬間ーー、寝室にボゥッと火の玉が現れ、宙に浮いた。

「ヒクッ……へ?」

 もう一度、吃逆を繰り返すと、また別の火の玉が宙に現れる。
 グレース皇子はシャルロットの身体を抱き寄せながら、魔法で火を消した。

「魔力の過剰摂取のせいだな…。魔法が暴走したんだろう」

「え……?」

「魔法のナッツの食べ過ぎと、俺とクロウからの魔力でキャパオーバーだったようだ」

「へえ……。無限に魔力を貯めて置くことはできないのかしら?」

「魔力を蓄える器っていうものは人それぞれだからな。シャルロットは魔人ではないから、それが小さいんだろう」

「そうなのね……」

 精霊や魔人の子供を作るためには、ある程度の魔力が必要らしい。
 だから、頑張って魔法のナッツの大食いをしていたのだが、無駄だったようだ。
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