244 / 262
恐怖のアンデットライン農園へ!首無し騎士と拗らせ女神のアイスクリームパーラー
日曜日のおでかけ
しおりを挟む
ーー日曜日の朝。
「ママ~!ママたち、どこにいくの?」
朝食後、デュラハンやベンジャミン、護衛の騎士ゲーテとユーシンを連れて外出しようとしたところに、背中に子狼スノウを乗っけた幻狼エステルがピョンピョン跳ねながら追いかけてきた。
「街へ行くの。エステルも行く?」
「行く~!スノウも連れてっていい~?」
「いいわよ。じゃあ、グレイも呼んでいらっしゃい。オオカミの姿だと街の人がびっくりしちゃうから、ちゃんと犬に化けてね?」
「はーい!」
元気の良い返事をして、屋敷の中にUターンして走って行く。
*
村を通り過ぎてしばらく馬車を走らせると、活気のある石畳の街が見えてきた。
ポメラニアンのグレイ、ダックスフンドに化けたエステルは馬車を勢いよく飛び出すと尻尾を振って街中を駆け回った。
魔法がまだ不自由な子幻狼スノウは犬の変身する魔法が使えず、オオカミの赤ちゃんの姿のままだが、遠目に見れば子犬なので問題はないだろう。
目の前を駆け回る可愛い犬たちを見てデュラハンは自然な笑顔を浮かべて、明るくはしゃいでいた。
「犬効果?で、首無し騎士の怖さが軽減されているな」
ゲーテはボソッと呟いた。
シャルロットは隣で苦笑していた。
「こんにちは」
街中にある理髪店に入ると、口髭を生やしたダルマ体型の理髪師が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、おや、可愛いお嬢さん」
「あの、この人の髪をカッコよく切ってもらいたいの」
「え……?…ギャア!アンタは……!」
デュラハンを見るなり、理髪店の主人は悲鳴をあげて腰を抜かした。
床の上に尻をついてビクビク怯えている。
「この人はゴーストなんかじゃありません!お客様よ、カットをお願いしますわ」
シャルロットは語気を強めて大きな声で言った。
「びっくりさせてごめんなさい、ご主人。お詫びに、これをどうぞ」
「え……?ナッツ……?光ってる……?」
「利き手の手首を痛めて、ハサミを持つのが辛いだろう?僕が魔法をかけたこのナッツを食べれば、怪我もすぐに治るよ。お食べ」
「どうして…私の怪我のことを……?しかし……」
半信半疑そうな理髪店の主人だったが、シャルロットが食べるように促したため、恐る恐るナッツを口の中に入れた。
訝しげな顔でナッツを咀嚼し、飲み込むと、たちまち主人の右腕が白く発光した。
「……ええっ?これは……」
信じられないという顔をして、主人は手のひらを握ったり開いたり、腕や肩を回した。
「すごい……!腕が軽い……!手の震えや痛みも消えている!ついでに肩も上がるぞ!」
理髪店の主人の患っていた職業病の腱鞘炎や、加齢による四十肩が治っているようだ。
彼は嬉しそうに笑顔になると、デュラハンの手を握り感謝を述べた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
デュラハンは照れ笑いしながらも、嬉しそうだった。
「どうですか?デュラハンさんはゴーストや死神なんかじゃないでしょう?」
「ええ!まるで神様でございます」
「か、神は、大袈裟です……うう……」
すっかり打ち解けた理髪店の主人は、御礼にと腕を振るってカットをしてくれた。
長ったらしいボサボサの黒髪を短く切り整えて、ワックスでまとめて、前髪はオールバックに後頭部に流した。
「まあ、素敵。すごくカッコいいわ、デュラハンさん」
「本当、本当、顔やスタイルもいいから劇場の舞台俳優さんみたいだねえ!」
「ほんと?変じゃない?は、恥ずかしい……」
顔を真っ赤にさせ、不安げな目で鏡を見るデュラハン。
理髪店の主人にはチップを多めに上乗せして駄賃を払い、店を出た。
「わ~!デュラハン、ナイスガイだねー」
「似合ってるっす」
「フン、バケモノっぽさが無くなって、マシになったな」
店外で待っていたベンジャミン、ユーシン、ゲーテから反応をもらうと、ますますデュラハンは顔を赤くさせた。
「せっかくだから洋服も新調させましょう?私が見立ててあげるわ」
全身真っ黒で時代遅れの衣服に、ボロボロのマント。
この装いが怖さを引き立てているのかもしれない。
「あ、お姫様……?」
シャルロットに腕を引っ張られ、デュラハンは戸惑っていた。
「ママ~!ママたち、どこにいくの?」
朝食後、デュラハンやベンジャミン、護衛の騎士ゲーテとユーシンを連れて外出しようとしたところに、背中に子狼スノウを乗っけた幻狼エステルがピョンピョン跳ねながら追いかけてきた。
「街へ行くの。エステルも行く?」
「行く~!スノウも連れてっていい~?」
「いいわよ。じゃあ、グレイも呼んでいらっしゃい。オオカミの姿だと街の人がびっくりしちゃうから、ちゃんと犬に化けてね?」
「はーい!」
元気の良い返事をして、屋敷の中にUターンして走って行く。
*
村を通り過ぎてしばらく馬車を走らせると、活気のある石畳の街が見えてきた。
ポメラニアンのグレイ、ダックスフンドに化けたエステルは馬車を勢いよく飛び出すと尻尾を振って街中を駆け回った。
魔法がまだ不自由な子幻狼スノウは犬の変身する魔法が使えず、オオカミの赤ちゃんの姿のままだが、遠目に見れば子犬なので問題はないだろう。
目の前を駆け回る可愛い犬たちを見てデュラハンは自然な笑顔を浮かべて、明るくはしゃいでいた。
「犬効果?で、首無し騎士の怖さが軽減されているな」
ゲーテはボソッと呟いた。
シャルロットは隣で苦笑していた。
「こんにちは」
街中にある理髪店に入ると、口髭を生やしたダルマ体型の理髪師が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、おや、可愛いお嬢さん」
「あの、この人の髪をカッコよく切ってもらいたいの」
「え……?…ギャア!アンタは……!」
デュラハンを見るなり、理髪店の主人は悲鳴をあげて腰を抜かした。
床の上に尻をついてビクビク怯えている。
「この人はゴーストなんかじゃありません!お客様よ、カットをお願いしますわ」
シャルロットは語気を強めて大きな声で言った。
「びっくりさせてごめんなさい、ご主人。お詫びに、これをどうぞ」
「え……?ナッツ……?光ってる……?」
「利き手の手首を痛めて、ハサミを持つのが辛いだろう?僕が魔法をかけたこのナッツを食べれば、怪我もすぐに治るよ。お食べ」
「どうして…私の怪我のことを……?しかし……」
半信半疑そうな理髪店の主人だったが、シャルロットが食べるように促したため、恐る恐るナッツを口の中に入れた。
訝しげな顔でナッツを咀嚼し、飲み込むと、たちまち主人の右腕が白く発光した。
「……ええっ?これは……」
信じられないという顔をして、主人は手のひらを握ったり開いたり、腕や肩を回した。
「すごい……!腕が軽い……!手の震えや痛みも消えている!ついでに肩も上がるぞ!」
理髪店の主人の患っていた職業病の腱鞘炎や、加齢による四十肩が治っているようだ。
彼は嬉しそうに笑顔になると、デュラハンの手を握り感謝を述べた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
デュラハンは照れ笑いしながらも、嬉しそうだった。
「どうですか?デュラハンさんはゴーストや死神なんかじゃないでしょう?」
「ええ!まるで神様でございます」
「か、神は、大袈裟です……うう……」
すっかり打ち解けた理髪店の主人は、御礼にと腕を振るってカットをしてくれた。
長ったらしいボサボサの黒髪を短く切り整えて、ワックスでまとめて、前髪はオールバックに後頭部に流した。
「まあ、素敵。すごくカッコいいわ、デュラハンさん」
「本当、本当、顔やスタイルもいいから劇場の舞台俳優さんみたいだねえ!」
「ほんと?変じゃない?は、恥ずかしい……」
顔を真っ赤にさせ、不安げな目で鏡を見るデュラハン。
理髪店の主人にはチップを多めに上乗せして駄賃を払い、店を出た。
「わ~!デュラハン、ナイスガイだねー」
「似合ってるっす」
「フン、バケモノっぽさが無くなって、マシになったな」
店外で待っていたベンジャミン、ユーシン、ゲーテから反応をもらうと、ますますデュラハンは顔を赤くさせた。
「せっかくだから洋服も新調させましょう?私が見立ててあげるわ」
全身真っ黒で時代遅れの衣服に、ボロボロのマント。
この装いが怖さを引き立てているのかもしれない。
「あ、お姫様……?」
シャルロットに腕を引っ張られ、デュラハンは戸惑っていた。
0
お気に入りに追加
396
あなたにおすすめの小説

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。


断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる