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恐怖のアンデットライン農園へ!首無し騎士と拗らせ女神のアイスクリームパーラー
農園でのお仕事
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朝食の後、早速ヘーゼルナッツの保管庫の中に案内された。
「秋に収穫したヘーゼルナッツを数ヶ月ほど倉庫で眠らせて、これを殻ごとローストして実をを取り出すんだ。そうしたものを箱詰めして出荷したり、オイルに加工しているよ」
デュラハンが丁寧に説明してくれた。
シャルロットとエリザ夫妻、人の姿に変化したエステルとスノウ、グレイもお手伝いにやってきた。
「それから、ヘーゼルナッツの木でカゴを編んだりしているんだ。ほら、これはアトランタが作ったものだよ」
デュラハンが見せてくれたのは朝食の席で、アトランタがパンを入れていたバスケットだ。
精霊の加護を受けている農園の木々で編んだバスケットは魔除けにもなるし、幸福を呼ぶのだという。
「私、不器用なのよね……」
そう言って苦笑するシャルロットに、エリザは言った。
「私が編むわ」
「じゃあ妃殿下と旦那様はーー」
エリザの夫は気まずそうな顔で黙々と殻付きのヘーゼルナッツを鉄板の上に広げローストし、シャルロットはその側で殻剥きマシンを回して、中身を紙袋にまとめ、出荷用に箱詰めしていく。
幻狼達もそれを手伝っていた。
「シャルロット姫、貴女のような方がこのような労働をなさるなんて……」
エリザの夫はシャルロットをずっと怪訝そうな顔で見ていた。
「あら?王族が働いちゃマズイのかしら?」
「いえ……」
「お金を稼いで、エステルにお洋服を仕立ててあげようと思っているの。春に、明帝国でパーティーがあるんですって」
エリザ夫妻の母国ソレイユ国には、血税で豪遊するような王族や貴族しかいなかった。
シャルロットもソレイユ国王家の分家筋の人間だ、ーーどうせ王族なんていう生き物は強欲で傲慢な輩ばかりだと、エリザの夫は思っていた。
だから貴族である生家と絶縁してまで革命家となり、蜂起にも参加していた。
目の前にいるシャルロットは、かつての敵側の人間だ。シャルロットにとっても、親戚を革命家に殺された立場なのだ。
それなのに、国を追い出された素性知れぬ夫婦に職を与え、一緒に食卓を囲むなんてーーー、驚くことばかりだった。
「貴方もね。政治活動よりまず働く事が優先よ?子供がいると、何かとお金がかかるんだから。それに、育児だってすごく大変なのよ?」
シャルロットはエリザの夫に説教をした。
「しかし…」
「ーーそんなに、危ない政治活動に専念したいなら貴方1人でお好きにどうぞ。そうしたいなら、ケジメとして潔く離縁し、エリザさんと赤ちゃんはソレイユ国のご実家に帰してあげて。入国に関しては、オリヴィア小国から口利きできるわ」
「それは……!嫌です。妻の事は愛しているし、家族の事は心から大事に思っています。離れることは出来ない」
シャルロットの厳しい言葉に、エリザの夫は迷わず即答した。
その言葉を聞いてシャルロットは微笑んだ。
「エリザさんも同じ気持ちでしょうね」
「……え?」
「蛮勇は、ただの暴走と同じです。でも、国を良い方向へ変えたいっていう貴方の気概は素晴らしいことだわ。でもね、蜂起や戦争だけが手段じゃないわ。方法はいくらでもあるのよ。賢い貴方なら、きっと最善手が見つけられるはずでしょう」
「……姫様」
シャルロットは明るくにっこり笑う。
「ほら、手が止まってるわ。働きましょう。後でベンジーが、おやつを持って来てくれるそうよ」
「わーい、おやつ~」
スノウは沢山の木の実の山に潜ってはしゃいでいる。
こうして農園での就業1日目はつつがなく進んだ。
「秋に収穫したヘーゼルナッツを数ヶ月ほど倉庫で眠らせて、これを殻ごとローストして実をを取り出すんだ。そうしたものを箱詰めして出荷したり、オイルに加工しているよ」
デュラハンが丁寧に説明してくれた。
シャルロットとエリザ夫妻、人の姿に変化したエステルとスノウ、グレイもお手伝いにやってきた。
「それから、ヘーゼルナッツの木でカゴを編んだりしているんだ。ほら、これはアトランタが作ったものだよ」
デュラハンが見せてくれたのは朝食の席で、アトランタがパンを入れていたバスケットだ。
精霊の加護を受けている農園の木々で編んだバスケットは魔除けにもなるし、幸福を呼ぶのだという。
「私、不器用なのよね……」
そう言って苦笑するシャルロットに、エリザは言った。
「私が編むわ」
「じゃあ妃殿下と旦那様はーー」
エリザの夫は気まずそうな顔で黙々と殻付きのヘーゼルナッツを鉄板の上に広げローストし、シャルロットはその側で殻剥きマシンを回して、中身を紙袋にまとめ、出荷用に箱詰めしていく。
幻狼達もそれを手伝っていた。
「シャルロット姫、貴女のような方がこのような労働をなさるなんて……」
エリザの夫はシャルロットをずっと怪訝そうな顔で見ていた。
「あら?王族が働いちゃマズイのかしら?」
「いえ……」
「お金を稼いで、エステルにお洋服を仕立ててあげようと思っているの。春に、明帝国でパーティーがあるんですって」
エリザ夫妻の母国ソレイユ国には、血税で豪遊するような王族や貴族しかいなかった。
シャルロットもソレイユ国王家の分家筋の人間だ、ーーどうせ王族なんていう生き物は強欲で傲慢な輩ばかりだと、エリザの夫は思っていた。
だから貴族である生家と絶縁してまで革命家となり、蜂起にも参加していた。
目の前にいるシャルロットは、かつての敵側の人間だ。シャルロットにとっても、親戚を革命家に殺された立場なのだ。
それなのに、国を追い出された素性知れぬ夫婦に職を与え、一緒に食卓を囲むなんてーーー、驚くことばかりだった。
「貴方もね。政治活動よりまず働く事が優先よ?子供がいると、何かとお金がかかるんだから。それに、育児だってすごく大変なのよ?」
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「ーーそんなに、危ない政治活動に専念したいなら貴方1人でお好きにどうぞ。そうしたいなら、ケジメとして潔く離縁し、エリザさんと赤ちゃんはソレイユ国のご実家に帰してあげて。入国に関しては、オリヴィア小国から口利きできるわ」
「それは……!嫌です。妻の事は愛しているし、家族の事は心から大事に思っています。離れることは出来ない」
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その言葉を聞いてシャルロットは微笑んだ。
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「……え?」
「蛮勇は、ただの暴走と同じです。でも、国を良い方向へ変えたいっていう貴方の気概は素晴らしいことだわ。でもね、蜂起や戦争だけが手段じゃないわ。方法はいくらでもあるのよ。賢い貴方なら、きっと最善手が見つけられるはずでしょう」
「……姫様」
シャルロットは明るくにっこり笑う。
「ほら、手が止まってるわ。働きましょう。後でベンジーが、おやつを持って来てくれるそうよ」
「わーい、おやつ~」
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