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恐怖のアンデットライン農園へ!首無し騎士と拗らせ女神のアイスクリームパーラー
シャルロットとコーヒーカンタータ
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新大陸エスター国にある大学都市ーー
シャルロットとグレース、3匹の幻狼たちは西大陸にあるクライシア大国から移住して来た。
シャルロット達が生活しているのは大学都市内でも一等地ーーA番街にある邸宅。
ここはエスター国の大統領が直々に貸してくれた邸宅で、とても広くて華やかな豪邸だ。
12月も半ばを過ぎて、立派な庭にもすっかり雪が積もって、窓の外は一面真っ白に。
こんなに寒いのに、早朝から幻狼のオオカミ達は元気に庭を走り回っている。
シャルロットは火の魔法を使って、玄関前から門まで続く道の除雪作業をしていた。
スッと手のひらを雪にかざすと火の玉が放たれ、ボフンっと音を立てて雪が弾けて消えた。
「魔法って便利ね」
シャルロットは笑顔で言った。
魔力が自分の身体で造れないので燃費は悪いのだが、日々のトレーニングのおかげで少し難しい魔法も使えるようになって来た。
「姫様、外は冷えますよ。早く中へ入ってください」
騎士キャロルに見つかってしまった。
彼はシャルロットを屋敷の中へ押し込むとリビングへ、そして暖炉の側の椅子に座らせて膝に毛布を掛けてあげた。
その後ですぐに、家政婦さんがやって来て、ホットレモネードを淹れてくれた。
「ありがとう」
「使用人に雪掻きは任せてください。本来、妃殿下は家事や料理なんてしなくて良いんですよ?」
「気にしないで頂戴。趣味なの。家の中に居ても殆どすることもないし……体が動かせて気分転換になるのよ」
クライシア大国の城に居た頃の半分も働いていないから、すっかり身体が鈍ってしまっている。
実家のオリヴィア小国では早朝からずっと畑仕事や雑用までしていたのに……。
グレース皇子は日中アカデミーへ通って勉強している。
親衛隊のユーシン、アヴィ、ゲーテも構内へ同行し、護衛していた。
「それでしたら妃殿下、クラブへ通ってみてはいかがでしょうか?大学都市内部にも色々とあるんですよ。テニスクラブや小説好きが集まるクラブ、料理クラブもあるわ」
「まあ。楽しそうね!うんと…どんなクラブがあるのか知りたいんだけど、どこで募集しているのかしら」
「そういう集会は殆どが中産階級以下の人間ばかり在籍しています。姫様は王族なんです、入会は難しいかと思います」
「どうして?エスター国には王様も居ないし、王族や貴族なんていう格差や制度は存在しないんでしょう?」
「それでも貧富の差や人種差別が激しくて治安も決してよくないです。お金持ちや貴族だからって言う理由だけで、八つ当たり的に刺殺される事件もよくあるんですよ?」
エスター国には王様や貴族なんてものはないが、資産や能力によって街や学校もランク付けし分別している。
「変装して偽名で、活動できないかしら?」
「え?」
「私も色々と自分の目で見て、人と関わって学びたいの。グレース様もアカデミーで勉強なさっているのだから、家に中でダラダラできないわ。せっかく新大陸までついて来たのよ。外の世界を知りたいの。ねえ、良いでしょう?それに、新しいお友達も作りたいわ」
騎士キャロルと家政婦は困った顔をしていた。
すると、ソファーに腰を掛け新聞を読んでいたシャルロットの兄で、オリヴィア小国の左王シーズが言った。
「シャルロット、俺がエスター国を案内してやろう。昔、ここに住んでいたから土地勘はある」
「ほんと?お兄様」
苦笑いする左王の側近イルカル。
騎士キャロルは戸惑っていた。
「左王様……、しかし……」
「俺やお前ら騎士が居るんだから大丈夫だろう」
「お願いよ、キャロルさん」
「ううん……」
渋っていた騎士キャロルをなんとか説得して、シャルロットと左王は外出することになった。
シャルロットとグレース、3匹の幻狼たちは西大陸にあるクライシア大国から移住して来た。
シャルロット達が生活しているのは大学都市内でも一等地ーーA番街にある邸宅。
ここはエスター国の大統領が直々に貸してくれた邸宅で、とても広くて華やかな豪邸だ。
12月も半ばを過ぎて、立派な庭にもすっかり雪が積もって、窓の外は一面真っ白に。
こんなに寒いのに、早朝から幻狼のオオカミ達は元気に庭を走り回っている。
シャルロットは火の魔法を使って、玄関前から門まで続く道の除雪作業をしていた。
スッと手のひらを雪にかざすと火の玉が放たれ、ボフンっと音を立てて雪が弾けて消えた。
「魔法って便利ね」
シャルロットは笑顔で言った。
魔力が自分の身体で造れないので燃費は悪いのだが、日々のトレーニングのおかげで少し難しい魔法も使えるようになって来た。
「姫様、外は冷えますよ。早く中へ入ってください」
騎士キャロルに見つかってしまった。
彼はシャルロットを屋敷の中へ押し込むとリビングへ、そして暖炉の側の椅子に座らせて膝に毛布を掛けてあげた。
その後ですぐに、家政婦さんがやって来て、ホットレモネードを淹れてくれた。
「ありがとう」
「使用人に雪掻きは任せてください。本来、妃殿下は家事や料理なんてしなくて良いんですよ?」
「気にしないで頂戴。趣味なの。家の中に居ても殆どすることもないし……体が動かせて気分転換になるのよ」
クライシア大国の城に居た頃の半分も働いていないから、すっかり身体が鈍ってしまっている。
実家のオリヴィア小国では早朝からずっと畑仕事や雑用までしていたのに……。
グレース皇子は日中アカデミーへ通って勉強している。
親衛隊のユーシン、アヴィ、ゲーテも構内へ同行し、護衛していた。
「それでしたら妃殿下、クラブへ通ってみてはいかがでしょうか?大学都市内部にも色々とあるんですよ。テニスクラブや小説好きが集まるクラブ、料理クラブもあるわ」
「まあ。楽しそうね!うんと…どんなクラブがあるのか知りたいんだけど、どこで募集しているのかしら」
「そういう集会は殆どが中産階級以下の人間ばかり在籍しています。姫様は王族なんです、入会は難しいかと思います」
「どうして?エスター国には王様も居ないし、王族や貴族なんていう格差や制度は存在しないんでしょう?」
「それでも貧富の差や人種差別が激しくて治安も決してよくないです。お金持ちや貴族だからって言う理由だけで、八つ当たり的に刺殺される事件もよくあるんですよ?」
エスター国には王様や貴族なんてものはないが、資産や能力によって街や学校もランク付けし分別している。
「変装して偽名で、活動できないかしら?」
「え?」
「私も色々と自分の目で見て、人と関わって学びたいの。グレース様もアカデミーで勉強なさっているのだから、家に中でダラダラできないわ。せっかく新大陸までついて来たのよ。外の世界を知りたいの。ねえ、良いでしょう?それに、新しいお友達も作りたいわ」
騎士キャロルと家政婦は困った顔をしていた。
すると、ソファーに腰を掛け新聞を読んでいたシャルロットの兄で、オリヴィア小国の左王シーズが言った。
「シャルロット、俺がエスター国を案内してやろう。昔、ここに住んでいたから土地勘はある」
「ほんと?お兄様」
苦笑いする左王の側近イルカル。
騎士キャロルは戸惑っていた。
「左王様……、しかし……」
「俺やお前ら騎士が居るんだから大丈夫だろう」
「お願いよ、キャロルさん」
「ううん……」
渋っていた騎士キャロルをなんとか説得して、シャルロットと左王は外出することになった。
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