206 / 262
新婚旅行はミレンハン国へ!猫になったシャルロットとポチたま大論争勃発!?
王様の晩餐会
しおりを挟むーー帰国する日も、あと数日後に近付いて来た。
今晩の晩餐会は、特別にミレンハン国の王様の私室に招かれた。
宮殿の中央にある離宮が丸ごと王様のプライベートな空間であり、国賓どころか、王妃や王子達も許可なく立ち入ることはできない。
「わあ~!グレース様、クロウ。見て、魚拓だわ」
真っ赤な絨毯が敷かれた長い廊下の壁には、沢山の魚拓が飾られていた。
ミレンハン王は自慢げにひとつひとつ見せびらかし、豪快に笑う。
「釣りが趣味なんだ。全部俺が釣ったんだぞ。すごいだろう」
「ええ、とっても!うわあ~!うわぁ~!どれも大振りだわ。美味しそう~!」
魚好きのシャルロットは目を輝かせ、魚拓に食いついていた。
ミレンハン王は満足そうに、シャルロットの横顔を見て微笑む。
魚拓の長廊下を過ぎると、広い応接間に通された。
部屋の中央には巨大な水槽があり、その中を色鮮やかな魚やクラゲが気持ち良さそうに泳いでいた。
その前には金色の豪華なソファーセット、その周りには15匹のダルメシアンが座っていて、犬達はミレンハン王の姿を見るなり嬉しそうに尻尾を振りながら群がってきた。
「王妃様は猫を、王様は犬を飼ってるんだね」
クロウは呟いた。
ミレンハン国の王は、大昔から伝統的にダルメシアンの犬を飼っているそうだ。
「猫好きのナージャ王妃の手前、大きな声では言えんが……俺は俄然犬派なんだ。うちの子達はみんな可愛いだろう」
「ああ、可愛い」
犬好きなグレース皇子は自分に興味津々に寄ってくるダルメシアンの頭や背中を撫でた。
黒チワワのクロウは、他の犬を撫でて楽しげに笑うグレース皇子が気に入らず、気を悪くしてキャンキャン吠えた。
『ヤキモチは見苦しいぞ。バカチワワ』
『やーい、短足ドチビ』
『ふん。王子様の飼ってる犬がこんなピーマン頭のちんちくりんだなんて』
人間のミレンハン王やグレース皇子には犬の言葉は届かないがーーダルメシアン達は鼻で笑いながら黒チワワを取り囲んで小馬鹿にした。
「わーん!ピーマンじゃないもん!短足じゃないもんっ、バカ~!」
シャルロットに泣きつくクロウ。
「どうしたの?クロウ」
「シャルロット~!あいつらがいじめる~!」
「もう、仲良くしなきゃダメよ」
ーー晩餐会として招待されたが、使用人達も部屋から払って、完全にプライベートの宅飲みだった。
ミレンハン王が手ずから酒を注いでくれた。
さっきまで憤慨していたチワワも、ミレンハン王の膝の上でお腹を撫でられご機嫌そうだ。
「新婚旅行は楽しめたか?」
ミレンハン王に尋ねられたシャルロットとグレース皇子は顔を見合わせると、笑って頷く。
「また遊びに来たいわ!」
「いつでも来るといい、盛大に持て成そう」
「ふふ、ありがとうございます」
和やかに笑い合うと、ミレンハン王は入り口付近に姿勢良く立ち、シャルロットの護衛をしていた息子のゲーテに話し掛けた。
「ゲーテ、お前みたいな不良どら息子が、シャルロットちゃんの騎士になると聞いた時は不安しかなかったが、しっかり騎士としての務めは果たしているようだな…、安心したぞ」
「フン、当たり前だ」
「ガハハ、クビにならないように、せいぜい頑張れよ。もしクビになって戻ってきたら、容赦なくマグロ漁船に送り込んでやるぞ」
「ハァ?俺様がクビになるわけないだろう?」
言い合いながらも仲が良さそうな親子を見て、シャルロットは思わず笑ってしまった。
盛えた首都に豪華な宮殿のあるミレンハン国ーー夫婦仲も良好、大家族のアットホームな雰囲気で、シャルロットが憧れる家族像そのもの。
(グレース様やクロウとも、こんな家庭を築いていきたいわ…)
改めてそう願う、シャルロットだった。
0
お気に入りに追加
394
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる