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新婚旅行はミレンハン国へ!猫になったシャルロットとポチたま大論争勃発!?
グレース皇子と独りぼっちの子犬
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マース夫人は神殿の隣に動物シェルターを造り、悪質なブリーダーから保護した犬、身寄りのない犬を引き取り保護している。
広大な庭には犬達が元気に走り回っていた。
柵の手前には視察に訪れたグレース皇子とユーシン、アーサー。それから施設の案内をしていたマース夫人が立っていた。
「うちの子は専属の調教師にしっかりと躾けられておりますから、良い子ちゃんばかりよ」
ーークライシア大国のお城の中で番犬を飼うことになった。
直近で、城内に魔法が仕掛けられて乗っ取られる騒動があったこともあり、警備の強化が課題となった。
春先に議会が開かれ、そこでグレース皇子は番犬を飼うことを提案したのだ。
犬は魔法の気配を感知できるし、賢く忠心もあり、人の心を癒してくれる効果もあるだろう。
犬好きの多いクライシア大国の貴族たちーー普段は王族がやることに関して小言や文句が多い官僚たちも、満場一致で賛成してくれた。
「議事堂内でも犬を飼ったらどうっすかね?官僚たちの殺伐した空気が和らぐかも?」
「ああ、それも良いかもな」
グレース皇子らが庭に入ると、人懐こい犬達がわらわらと尻尾を振って群がってきた。
優しい顔で笑って犬達を撫でるグレース皇子は、庭の隅っこで小さく縮こまる黒い毛並みのコリーの子犬に気付いた。
「最近、保護した子よ。母犬と狭いケージの中に閉じ込められているところを助けたんだけどね、母犬の方は衰弱が酷くて……引き取ってすぐに死んじゃったの」
「じゃあ、あの子犬はひとりなのか?」
乳離れもまだしていないだろう、弱々しい子犬を気に留めたグレース皇子。
彼は静かに近寄ると子犬を抱き上げた。
不安げな顔で木陰に隠れて震えている姿がーーまるで幼い頃に母親を亡くしたばかりの自分のようで、放っては置けなかった。
「まあ、人見知りが激しい子なのに……」
子犬はグレース皇子の腕に抱かれると、大人しく身を預けた。
飼育係や他の犬が近寄ると怯える子犬がグレース皇子には心を許している様子なので、マース夫人は驚いていた。
「マース夫人、この子犬を引き取りたい。うちの城を守ってくれる、立派な番犬に育てよう」
「ふふ、お願いします。その子の名前はポアロよ」
「お前、ポアロって言うのか。よろしくな」
子犬のポアロの他に、10匹の犬を引き取る手続きを済ませた。
その間もずっと、子犬のポアロはグレース皇子の膝の上に座っていた。
「はは、グレース皇子にベッタリだ。これじゃクロウがヤキモチ焼くなあ~」
アヴィは笑っていた。
「まあ、それは大変ね」
「ふふ、城に行けば、ポアロも寂しがっている暇なんかなくなるだろう」
子犬の背中を撫でながら『だから、安心しろ』と、グレース皇子は優しい声色で囁いた。
広大な庭には犬達が元気に走り回っていた。
柵の手前には視察に訪れたグレース皇子とユーシン、アーサー。それから施設の案内をしていたマース夫人が立っていた。
「うちの子は専属の調教師にしっかりと躾けられておりますから、良い子ちゃんばかりよ」
ーークライシア大国のお城の中で番犬を飼うことになった。
直近で、城内に魔法が仕掛けられて乗っ取られる騒動があったこともあり、警備の強化が課題となった。
春先に議会が開かれ、そこでグレース皇子は番犬を飼うことを提案したのだ。
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「議事堂内でも犬を飼ったらどうっすかね?官僚たちの殺伐した空気が和らぐかも?」
「ああ、それも良いかもな」
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「じゃあ、あの子犬はひとりなのか?」
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彼は静かに近寄ると子犬を抱き上げた。
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「まあ、人見知りが激しい子なのに……」
子犬はグレース皇子の腕に抱かれると、大人しく身を預けた。
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「マース夫人、この子犬を引き取りたい。うちの城を守ってくれる、立派な番犬に育てよう」
「ふふ、お願いします。その子の名前はポアロよ」
「お前、ポアロって言うのか。よろしくな」
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その間もずっと、子犬のポアロはグレース皇子の膝の上に座っていた。
「はは、グレース皇子にベッタリだ。これじゃクロウがヤキモチ焼くなあ~」
アヴィは笑っていた。
「まあ、それは大変ね」
「ふふ、城に行けば、ポアロも寂しがっている暇なんかなくなるだろう」
子犬の背中を撫でながら『だから、安心しろ』と、グレース皇子は優しい声色で囁いた。
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