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新婚旅行はミレンハン国へ!猫になったシャルロットとポチたま大論争勃発!?
シャルロットと夢の猫またぎ
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クロマグロが、港のすぐそばにある競技場まで荷台に乗せられ運ばれてきた。
マグロは釣り上げてから数日間は熟成させる必要があり、サイズも大きな魚だから運ぶのに手間が掛かって食べ切れない。
海の側に宮殿があるミレンハン国王家ではマグロの赤身をよく食べるそうだが、一般にはあまり出回っていない。
まだまだ普及はしていないが、氷の魔法を用いた魔道具のお陰で、以前より美味しく食べられるようになっていた。
すぐに、その場で宮廷料理人による巨大なマグロの解体ショーが始まって、観客を楽しませた。
シャルロットは祭事用の巨大な鍋を借りて、マグロの冷製スープを作り観客に振る舞った。
それから、猫達にはマグロのユッケを作ってあげた。
「シャルル、いいのか?せっかくのマグロをみんなで分け合って食べるなんて」
「みんなで食べた方が美味しいわよ。ふふ、それに……私が食べたかったのはコレよ」
シャルロットが食べていたのは、炙った大トロと色鮮やかな夏野菜のカルパッチョ。
漁師さんが特別に作ってくれたマグロの目玉に兜焼きに心臓のお刺身を、シャルロットは嬉しそうに食べていた。
シャルロットの膝の上に座ってるポメラニアンのグレイはマグロの目玉をペロリと丸呑みした。
見たこともない珍味を美味しそうに頬張るシャルロットに、グレース皇子やキャロルやアヴィはドン引きしていた。
「嫌です!」
突然 グリムの叫ぶような声が聞こえた。
ゲーテとトーマ王子の間に立ち、口論になっている様子だ。
「お前、そう言う賭けだったろ?俺様が勝ったら、一緒にエスター国へ行くと……反故にするつもりか?」
「宰相の仕事があるんです、行けるわけないでしょう?宰相やめてゲーテ王子の小姓とか、とんだ左遷じゃないですか!窓際族になるとか嫌ですね」
「ハァ?王族の側近になれるんだ、名誉なことだろ」
「パワハラな王子とは一緒に入れません~」
グリムはゲーテを睨みつけた。
「エスター国へトーマ王子を留学させようと考えています。ねえ、王妃様」
グリムはにっこり笑って、ナージャ王妃に投げかけた。
ゲーテもトーマ王子も寝耳に水だったらしく驚いていた。
「そうよ。陛下とも話していたの。トーマ。あんた、殆どこの国から出たことってなかったでしょう?良い機会じゃない。クライシア大国の皇子様と同じアカデミーに通って、視野を広げてくると良いわ」
ナージャ王妃は言った。
「でも、外国へ行くなんて、官僚達が許さないでしょう……」
愛国心が高いミレンハン国のお年寄りたちは意固地な老害が多くて、どうも排他的な空気がある。
王位を継承する予定のトーマ王子が留学なんてーー他国の変な思想に染まったらどうするんだ、これはとんでもないことだと文句を言うに決まっていた。
「……フン、クソジジイどものカビ臭い意見なんか聞かんで良い。お前も小さい頃から留学したがっていただろう?うるせえ、ジジイはグリムが黙らせるし、留学費用は俺様の資産から出してやろう。自費なら文句言わんだろ」
トーマ王子はチラッと兄であるゲーテを見た。
「俺……、で、でも……、兄上……」
「ウダウダ考えるのはお前の悪いところだな。いっつも、いつも、周りの大人の意見に同調するばかりーー。おい、トーマ、『お前は』、エスター国へ行きたいのか?行きたくないのか?はっきりしろよ」
「行きたい……、行く!」
「ヨシ、わかった」
トーマ王子は語気を強めて言った。
ナージャ王妃は息子たちに笑いかけた。
それは、トーマ王子の初めての自己主張だった。
なんだかよくわからないけれど、ほろ酔いで気分のいいシャルロットはニコニコ笑いながら、ミレンハン国の王子兄弟を見つめていた。
マグロは釣り上げてから数日間は熟成させる必要があり、サイズも大きな魚だから運ぶのに手間が掛かって食べ切れない。
海の側に宮殿があるミレンハン国王家ではマグロの赤身をよく食べるそうだが、一般にはあまり出回っていない。
まだまだ普及はしていないが、氷の魔法を用いた魔道具のお陰で、以前より美味しく食べられるようになっていた。
すぐに、その場で宮廷料理人による巨大なマグロの解体ショーが始まって、観客を楽しませた。
シャルロットは祭事用の巨大な鍋を借りて、マグロの冷製スープを作り観客に振る舞った。
それから、猫達にはマグロのユッケを作ってあげた。
「シャルル、いいのか?せっかくのマグロをみんなで分け合って食べるなんて」
「みんなで食べた方が美味しいわよ。ふふ、それに……私が食べたかったのはコレよ」
シャルロットが食べていたのは、炙った大トロと色鮮やかな夏野菜のカルパッチョ。
漁師さんが特別に作ってくれたマグロの目玉に兜焼きに心臓のお刺身を、シャルロットは嬉しそうに食べていた。
シャルロットの膝の上に座ってるポメラニアンのグレイはマグロの目玉をペロリと丸呑みした。
見たこともない珍味を美味しそうに頬張るシャルロットに、グレース皇子やキャロルやアヴィはドン引きしていた。
「嫌です!」
突然 グリムの叫ぶような声が聞こえた。
ゲーテとトーマ王子の間に立ち、口論になっている様子だ。
「お前、そう言う賭けだったろ?俺様が勝ったら、一緒にエスター国へ行くと……反故にするつもりか?」
「宰相の仕事があるんです、行けるわけないでしょう?宰相やめてゲーテ王子の小姓とか、とんだ左遷じゃないですか!窓際族になるとか嫌ですね」
「ハァ?王族の側近になれるんだ、名誉なことだろ」
「パワハラな王子とは一緒に入れません~」
グリムはゲーテを睨みつけた。
「エスター国へトーマ王子を留学させようと考えています。ねえ、王妃様」
グリムはにっこり笑って、ナージャ王妃に投げかけた。
ゲーテもトーマ王子も寝耳に水だったらしく驚いていた。
「そうよ。陛下とも話していたの。トーマ。あんた、殆どこの国から出たことってなかったでしょう?良い機会じゃない。クライシア大国の皇子様と同じアカデミーに通って、視野を広げてくると良いわ」
ナージャ王妃は言った。
「でも、外国へ行くなんて、官僚達が許さないでしょう……」
愛国心が高いミレンハン国のお年寄りたちは意固地な老害が多くて、どうも排他的な空気がある。
王位を継承する予定のトーマ王子が留学なんてーー他国の変な思想に染まったらどうするんだ、これはとんでもないことだと文句を言うに決まっていた。
「……フン、クソジジイどものカビ臭い意見なんか聞かんで良い。お前も小さい頃から留学したがっていただろう?うるせえ、ジジイはグリムが黙らせるし、留学費用は俺様の資産から出してやろう。自費なら文句言わんだろ」
トーマ王子はチラッと兄であるゲーテを見た。
「俺……、で、でも……、兄上……」
「ウダウダ考えるのはお前の悪いところだな。いっつも、いつも、周りの大人の意見に同調するばかりーー。おい、トーマ、『お前は』、エスター国へ行きたいのか?行きたくないのか?はっきりしろよ」
「行きたい……、行く!」
「ヨシ、わかった」
トーマ王子は語気を強めて言った。
ナージャ王妃は息子たちに笑いかけた。
それは、トーマ王子の初めての自己主張だった。
なんだかよくわからないけれど、ほろ酔いで気分のいいシャルロットはニコニコ笑いながら、ミレンハン国の王子兄弟を見つめていた。
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