シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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新婚旅行はミレンハン国へ!猫になったシャルロットとポチたま大論争勃発!?

炎の池から猫達を救出せよ?

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飛び石の上に孤立してしまった猫達は、自分達に迫り来る火を見て怯え硬直していた。
シャルロットは混乱していた。

「シャルロット~ッ!」

観客席にいたグレース皇子やクロウ、騎士らが慌てて駆け付ける。
クロウは水の魔法をこちらに向かって放とうとするが、シャルロットはそれを止めた。

「ま!待って!水なんか突然浴びせたら猫ちゃん達が驚いちゃわ!」

「でも!」

「少しだけ待ってっ!」

シャルロットは落ち着いて風向きを確認すると、燃えている場所とは反対の方へ火の魔法を放つ。
シャルロットの放った迎え火は炎に引き込まれるように燃え広がった。

「え!?何故、火を……」

「なんてことを……!」

シャルロットの突然の放火に、皆驚いていた。

「火で、火を消すのよ」

「え?」

火は飛び石と対岸の間へ燃え広がることなく、逆方向へと退路した。

「貴方達!ほら!今の内に、早く向こう岸に飛び移って!」

猫達は呆然としていたが、猫神様が怒鳴って指示すると対岸に向かって思い切ってジャンプした。
猫達が向こう側で救助された姿を確認すると、シャルロットはクロウに魔法を放つように指示した。

バケツをひっくり返したような雨が降り、火は消し止められた。

「ううん……コレ……無理よ~」

「うわーん、シャルロット~、私が今すぐ飛んで助けに……」

「でも……」

大きな被害も出ず、火事もなんとなかった。
せっかく盛り上がっている国民的ビッグイベントを中止にしたくなかった。

観客も、火の魔法を使う不思議な金色の子猫に驚き、注目している。

びしょ濡れになった身体から水気を飛ばし、シャルロットは立ち上がった。
しかし身体の小さな子猫のシャルロットにとっては、対岸へ飛び移ることは難しかった。

「ワン!」

背後から犬の鳴き声がして、大型犬が颯爽と飛び石の上に現れた。

「あ、貴方……マース夫人のとこの……」

マース夫人が飼っている犬だった。
大型犬は子猫の首を咥えて、軽々しく対岸へジャンプした。

「ひゃああっ」

「シャルロット!」

グレース皇子が前に乗り出し、子猫を保護した。
ジャケットを脱ぐと、ずぶ濡れのシャルロットを包んだ。

火災の被害は小さくて、鎮火できた。
ハラハラしたけれどーー炎の中に取り残された猫達は無事救助され、イレギュラーなアクシデント効果でイベントは大いに盛り上がった。

そして閉会式でのグランプリ発表。

グランプリに選ばれたのはーーなんと、シャルロットだった。
ビジュアル審査では珍しい金色の毛が観客の目を引いて1位に、バトルロイヤル審査では火事から猫達を助けた活躍が、最終審査で特別に加点されてグランプリに至ったのだーー。

これにはシャルロット自身もびっくりだ。

「チクショ~!こんなチンチクリンのどこがいいのだ!わしの尻尾が禿げてなければ~アアア~!」

猫神様は地団駄を踏んで悔しがった。

『ふん』

べべも拗ねていた。

なんと猫コンテストでは特別賞に、シャルロットを助けてくれたマース夫人の飼い犬が選ばれた。

「わああん!私がシャルロットを助けたかったのに~!」

黒チワワは地面の上に転がって、悔しがる。
シャルロットはふうっと安堵のため息を吐き、表彰台に上がった。

王妃様より、木彫りのマグロのトロフィーを貰った。

「ま!マグロ~!」

夢のクロマグロを手に入れたシャルロットは目をキラキラ輝かせて、ゲーテの腕の中でぴょんぴょんと飛び跳ねて大喜び。

「ふふ、よかったわね、シャルロットさん」

「王妃様、あの……!」

そしてシャルロットはある提案をしたーー。

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