シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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新婚旅行はミレンハン国へ!猫になったシャルロットとポチたま大論争勃発!?

プリンスたちの酒宴

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ーー兄のゲーテ王子は昔から周りの目を引く人物だった。

そうトーマ王子が語ると、必ず宰相のグリムは全否定する。

「それって悪目立ちしてるだけです。ヤンチャ過ぎて手が掛かるってだけですよ。勉強や対人関係だってトーマ王子の方が優秀だし、優等生だし、良い子だし、超真面目じゃないですか~!ゲーテ王子なんて物凄いクソ王子ですよクソです、クソ!不良王子です。んもう、兄弟だからって欲目で見過ぎです。まったく…買い被りすぎですよ!」

グリムはゲーテ王子の愚痴や悪口ばかり話すが、そんなグリムこそ口ではバカ王子だのクソだのと罵りながらも、ゲーテ王子を懇意にしている。
きっと将来はゲーテ王子を王に即位させて、側で仕えたかったに違いない。

兄のゲーテ王子は自信家で物怖じせず、誰にも囚われず、型破りな性格だった。
俺様だし、我が強くて自分本意で無遠慮なところもあるが、サボり癖があるだけやる気をだせば大抵のことはそつなくこなせる天才肌で器用な人。
捻くれたところはなくて、裏表もない。
性根が明るく、面倒見が良い一面があるから 何だかんだで周りに人が集まる。

それに比べて、トーマ王子は小さい頃は内気で引っ込み思案な性格。
だから少しだけ兄に対して憧れと同じくらいコンプレックスを抱いていたーー。

兄に張り合うように出場した猫コンテストでも一度も勝てたことはない。
努力して兄から王位を奪うのだと意気込んでいたが、兄はあっさりと王位を自分へ譲った。
大人気ないけれど、何気ない兄のその行動が劣等感を刺激した。

*

ミレンハン国の港の側には歓楽街がある。

「ガハハハ」

ミレンハン王はVIP専用の飲み屋で酒を浴びるように飲み上機嫌そうに笑っていた。
非公式の晩餐会と称し、お忍びでグレース皇子やヴェル王子、息子のゲーテ、トーマ王子らを連れて来たのだ。
普通のバーではあるが、店主が王のために舞台役者や踊り子をしているグラマラスな美女を呼び、お酌をしてくれるのだ。

女嫌いのグレース皇子は見知らぬ美女の隣で会話が弾まず居心地が悪そうにワインを飲み、ヴェル王子は猫の姿で愛想を振りまき美女達にチヤホヤされて楽しそうに笑っていた。

「父上……、ここに来たことを、母上にバレたらまた怒られますよ?」

「なあに、国賓を接待しているだけだ!美味い酒や料理には、ピチピチでセクシーでビューティーなお姉ちゃんが欠かせないだろう。仕事だ、仕事!問題ない!」

何回夫婦喧嘩になっても学習しない人だと、トーマ王子は呆れていた。

「申し訳ございません、グレース皇子……。こういう店は苦手でしたか?」

「いや……。酒や料理は美味い、が……、騎士に囲まれて育ったから、女と話すのは苦手なんだ。いつも地雷を踏んでは、怒らせてしまうんだ」

トーマ王子はグレース皇子の隣に座った。

「はは、俺もつまらない男だと呆れられますよ。そういえば、兄上が妃殿下の騎士をしていますよね?迷惑をかけて居りませんか?」

「いつも偉そうだし、シャルロットに馴れ馴れしい奴だな」

「はは。驚きました。野良猫みたいにフラフラしていた兄上が、まさか人に飼われるなんて。しかもプリンセスに膝を折り、大衆の面前で大胆な愛の告白ーー玉砕しても、騎士として健気に側にいるなんて。ラブロマンス小説みたいだと噂になっていますよ」

「ふふんっ、俺とシャルルをモデルに恋愛小説が書きたいと打診が来たから了承したぞ!グレース、お前が当て馬役でな!」

酔っ払って気分が良いゲーテは話に割り込んできた。

「お前なんか親衛隊をクビにしてやる、このままミレンハン国に留まればいい!」

グレース皇子は叫んだ。

「俺はシャルル個人に騎士として雇われてるんだ、お前がクビにできるわけないだろ!バーカ!」

「シャルロットに言って国外追放してやる!」

「ハン、やれるもんならなってみろよ。狭量な男だと呆れられるぜ?俺はシャルルが結婚していようが気にならないぜ。どうせ政略結婚だしな。結婚の自由がない王族の間では、婚外恋愛とかよくあることだろう」

「せ、政略結婚だが!俺とシャルロットはちゃんと愛し合ってるぞ」

「へえ~、だから?」

ゲーテは鼻で笑った。
そんなゲーテの背中に、猫のヴェル王子は飛び付いた。

「ゲーテ王子は僕と結婚するんだもんね~」

「はあ?まだ、オメェ、そんなこと言ってんのか?こら、離れろ」

「にゃあ~ん」

ゲーテ王子の膝の上で、マンチカンはお腹を露わにしてゴロンと寝そべり、くねくね動く。

「ウーン……プリンスたちの恋愛模様は、非常に複雑な多角関係なんですね。まさに、事実は小説よりも奇なり!ですねー」

グリムは苦笑した。

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