シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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新婚旅行はミレンハン国へ!猫になったシャルロットとポチたま大論争勃発!?

バテスト産院の視察(後編)

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産院の中はとても清潔感があって、整然としていた。

「ナージャ王妃、シャルロット妃殿下、ようこそ」

客間に入ると、長身で中性的な雰囲気の女性が椅子から立ち上がり会釈した。
艶やかな暗色の髪に東洋人風の顔付きの中年女性は、この産院の院長でエリナと名乗った。
東の国からミレンハン国へ数十年前に移住し、ナージャ王妃とは年も近いので懇意にしているそうだ。

かつては看護婦として働いていた経験があるようだ。
その経験を活かし、この産院で働いている。彼女がこの国にやってきてから出生率、出産後の母子の生存率は大幅にアップし、病気などによる死亡者も減少している。

他国からこの産院に子を産みに来る貴族や王族もいるそうだ。

「シャルロット姫、この院長先生は僕の母親です」

グリムはにっこり笑うと院長エリナの横に立った。

「まあ、そうだったの…言われてみれば…どことなくにてるわね

シャルロットは驚愕した。

人の良さそうな顔のエリナはシャルロットを見てニコリと笑った。

「こちらが今後産院の入院食として試作中のメニューです。感想をいただけると幸いでございますわ」

「わあ…」

蒸した野菜とチキンのサラダ、暖かいミルクリゾット、ノヂシャのサラダ、お魚や根菜が入ったスープ、ハーブティー。
全体的に薄味で、脂も控えめなメニューだった。

「うん、ヘルシーだし食べ応えもあって美味しいですわ」

「シャルロットさんが教えてくれたダイエットメニューもね、すごく人気があるのよ。お豆腐を作る専門の料理人も雇ったわよ」

「気に入ってもらえてよかったわ。ナージャ王妃、あれからずっと体型を維持されていらっしゃって素晴らしいです」

王妃様は楽しそうに笑っている。

「ナージャ王妃はいつもシャルロットさんの料理のお話をするのよ」

エリナ院長もにこやかに笑う。

「あ、そうだ。ダイエットメニューで作っていたケーキやお菓子のレシピも教えるわ。砂糖やバターやクリームを控えて、3食では補えない栄養をプラスするの。それに妊娠中や母乳与えてる時って甘いもの控えていたから、やたらとお腹が空いちゃうし、食事制限ってすごく地獄だったのよね……」

シャルロットは前世での子育ての経験を反芻しながら提案した。

「いいアイディアだわ、それでは……」

終始和やかな雰囲気で試食会は終わった。
その後ガラス張りの保育室を見学した。

「可愛い赤ちゃんたちですね」

ユーシンやキャロル、騎士達もガラスの向こうの無菌室でスヤスヤ眠っている産まれたての赤ん坊を優しい目で見つめていた。

「私もナージャ王妃のように、いっぱい子供が欲しいわ」

「ふふん、じゃあ私から結婚祝いとレシピのお礼にアレをプレゼントするわ」

「アレ?…」

首をかしげるシャルロットを見て、ナージャ王妃は楽しげに笑う。

*
夜、バルコニーでお腹を出しながら眠っていたチワワのクロウはふと目が覚ました。
身体を起こして後ろを振り返ると鉄製の小さなケージがあって、その中には何か物体が蠢いている。
薄暗くてよく見えないので、ケージの柵の隙間に顔を近付けると、檻の中の生き物が長い首を突き出してきたーー。

危うく鼻先を噛み付かれる所だった。

「ふぎゃああ!」

チワワは絶叫し腰を抜かす。

「クロウ?」

ハンモックの上で仮眠していたグレース皇子が目を覚ました。

「2人とも起きたのね」

バルコニーにシャルロットがやってきた。
いつのまにか離宮に帰ってきていたようだ。

「シャルロット、この檻はなんだ?何が入っているんだ?」

「生きたスッポンよ。ナージャ王妃からいただいた食材なの。精力増強の効果があるんですって。ミレンハン国ではメジャーな食材らしいの」

「か……亀を食べるのか?」

グレース皇子は顔を真っ青にしていた。

「明日はスッポン鍋にしましょう。料理人が宮殿からきて、捌いてくれるみたい」

「いや、俺は……」

グレース皇子は首を横に振った。

「グレース様ってば、好き嫌いはいけないわ!」

「シャルロット……」

「グレース様にはもう少し頑張ってもらわないと…」

「なっ……!?」

押しの強いシャルロットに困惑するグレース皇子だった…。
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