シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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新婚旅行はミレンハン国へ!猫になったシャルロットとポチたま大論争勃発!?

バテスト産院の視察(前編)

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翌日の朝、シャルロットは猫の姿を解いてもらって人間姿へ戻っていた。
フォーマルなワンピースを着ると、グレース皇子が長くて絡まりやすいシャルロットの猫っ毛気味な髪を手に取り、優しくブラッシングしてくれた。

「グレース様、私がやるわ」

グレース皇子には専属の執事が2人同伴していたが、シャルロットは侍女を旅行へ同行させていないため、身の回りの事は全て自分でやっていた。

(自分でできるし、侍女を連れて国外へ行くとお金がかかってしまうもの)

グレース皇子はシャルロットの髪を編み込んでくれた。
そして真珠の髪飾りを着けてあげた。

「グレース様、これ……」

「昨日宮殿へ宝石商が営業にやって来たんだ。その時にクロウと一緒に選んで買った。新婚旅行の記念だ、受け取ってくれ」

派手さは無い、シンプルだけど清楚なデザインのバレッタだ。
だから、こうして外交用に仕立てたフォーマルなワンピースを着ていても浮く事はなく、馴染んでいる。

「ありがとうございます、グレース様!とっても素敵ね!嬉しいわ」

シャルロットは笑顔になってグレース皇子に抱き着いた。
グレース皇子も抱きしめ返し、そしてバルコニーの前で眩しい朝陽を浴びながらキスを交わした。

ベッドの上でまだ眠ってるチワワとポメラニアンのおでこにもそっとキスをして、シャルロットは部屋を出た。

今日はナージャ王妃と街までお出掛けだ。
ミレンハン国の宮殿は郊外の海辺にあり、首都は内陸部にあった。
小さな国だが人は多く、活気にあふれていて文化もかなり成熟している。やっぱり野良猫は多い。

普段使いの黒い馬車に乗って街へ降りたシャルロットとナージャ王妃、宰相のグリム。
護衛のゲーテとユーシン、キャロルは馬に乗って馬車の周りを並走していた。

「わあ~、子供がいっぱいあの建物に入って行くわ」

黄色のシンプルなシャツと短パンを着た子供達がぞろぞろと道を歩き、大きな屋敷へ入っていく。

「あれは子供たちの学び舎です。国の子供たちには学び舎に通う事を法律で義務付けしているんです。ここは通商が盛んな国ですし商人の子供も多いので、読み書きや外国語、算数を教えています」

「へえ……」

義務教育だ。
貴族の娘でも、花嫁修行は徹底していても、学問は学ぶ必要がないっていう昔気質な親が多い。
平民の貧しい子供は読み書きや足し算もできない子が多かった。

「ゲーテ王子は宮殿で家庭教師を雇っていましたが、トーマ王子以下の王子様も、みんな平民と同じ学校で勉強したんですよ」

「王子たちが?」

「これから向かう産院も、あの学び舎も、ナージャ王妃が作ったんですよ」

シャルロットは向いの席のナージャ王妃に目をやる。
彼女は社会福祉に力を入れているようだ。

「この国の女性は若い母親や年配の女性まで働いている方が多いので、仕事中に小さい子供を預かる託児所もあるんですよ」

「保育園もあるのね…すごいわ」

「産院や子供たちの学び舎に食堂を作る計画も進んでいます。これはゲーテの提案よ」

「食堂……、給食……?」

「ええ、妊婦や小さい子供たちは栄養たっぷり食事が必要だ、と。しっかり食べれば身体も丈夫になって病気にも強くなるって。きっとシャルロットさんの影響ね」

「まあ…」

いつだったか、ゲーテは料理のレシピを教えて欲しいと、シャルロットやユハに直々に頼み込んでいた事を思い出していた。

話しているうちに馬車はバテスト産院に到着した。
老婆や白衣の女性たちが門の前に待機しており、ナージャ王妃が馬車から降りると仰々しく頭を下げた。

「頭を上げなさいミッシー、こちらはクライシア大国から視察に来たシャルロット妃殿下よ」

「まあまあ、ようこそ我が産院へ!ゲーテ王子も大きくなったねえ」

彼女は医者で、50年前からずっとミレンハン国の宮殿で産婆をしていた。
周りの白衣の女性達は産院のスタッフらしい。

シャルロット一行は産院の中へ入った。
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