シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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【過去編】転生先はオリヴィア小国のお姫様?シャルロットとお兄様のホームメイド・トンプース

王の寝室

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クライシア大国の月守ーレイメイの私室を、王弟レイター公爵は訪れていた。

クライシア王の部屋の中にはたくさんの船の模型が飾られていた。
寝室の天蓋ベッドの隣には妻カメリア妃の肖像画と魔法のガラスケースに入った美しいピンク色の乙女椿、死んだカメリア妃の遺品も自室に移動し大切に保管している。

王は息子のグレースをベッドの上に寝かせて愛しい我が子の髪を撫でていた。
小さなグレースの両脇にはオオカミの精霊クロウとコボルトが挟むように伏せ寝して、大きな欠伸をしていた。

落ち込んでいるグレースを心配し、自分の部屋に呼んで同じベッドで親子は寝ていた。

「そうか……」

レイター公爵から報告を受けたクライシア王。

「兄上、どうしてシャルロット王女にこだわるんですか?」

「……優しい子だからだ。グレースは心が繊細だし純粋で頭も頑固な子だ。王には向かないだろうーーけれど、必ずしも王が優秀である必要はないのだ」

「はあ?」

「王が頼りなくても、女房が賢くてしっかりしていれば案外、国も家も正しく回るのだ。それに、お前も魔人なら分かるだろ?この気難しい子が初めて会った姫の前で昼寝とはーー魔力や波長の相性も良さそうだ」

王はシャルロットが作った香り枕をさすった。

「あの心が温かくて、優しい姫が隣にいてくれたら、この子も幸せになると思ったんだ」

妻が国葬されたあの日、あの小さな王女が癒してくれたようにーー。

「私はあきらめない」

「兄上、ほどほどに…。精霊達も我らを警戒していましたよ」

「ふふ」

王はグレースの額にキスをした。

「この子が戴冠する日までに、私は過去の負をすべて清算し、地盤を固めよう」

優しい父の顔で微笑んでいた。
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