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【過去編】転生先はオリヴィア小国のお姫様?シャルロットとお兄様のホームメイド・トンプース
野ばらのジャムと森の中の侵入者?
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白いフリルのヘッドドレスに、胸に大きなリボンがついた真紅のドレス。
シャルロットはお城を抜け出して野ばらを積んでいた。
「おや、シャルロットちゃん」
ルートヴィヒ王子がやって来た。
「おめかしして、今日はどうしたの?」
「ソレイユ国のお祖母様からドレスをプレゼントしてもらったのよ、素敵なドレスよね?」
「うん、可愛いよ」
シャルロットは照れ笑いした。
彼女が持っているバスケットの中には野ばらの花片がいっぱい詰まっていた。
「この花びらを使って野ばらのジャムを作るの、お母様が風邪気味だから、このジャムで栄養をつけてもらうわ」
「花って食べられるんだね」
「ええ。ルッツお兄ちゃんは何していたの?……ヴァイオリン?」
「ああ、この城のだけどね。久しぶりに弾いてみよっかなって思ってさ」
「わあ、何か弾いてくれない?」
「ううん……」
ルートヴィヒ王子はヴァイオリンで『野ばら』を上手に弾いてくれた。
シャルロットはニコニコと笑いながらメロディーに合わせて歌う。
「……俺の可愛い野ばらちゃん、君のことは愛しているけど、俺は君のことを手折らずに行くよ。無垢な野の薔薇は、ここで無邪気に咲いているほうが幸せだ」
「ルッツ……?」
ルートヴィヒ王子はシャルロットを抱き締める。
「シャルロットちゃんが大きくなったら、俺が君のために世界一の宮殿を作ってあげる」
「ほんと?」
「うん、約束だ。シャルロットちゃん」
「ありがとう!ルッツお兄ちゃん。私、頑張って働いてお金稼いで、貯めておくわね!宮殿っていくらなんだろう?35年ローンで買える?」
「はは、シャルロットちゃん。お金持ちの男捕まえて建てちゃいなよ!」
「ルッツお兄ちゃんが私と結婚してくれるんでしょ?」
「俺はこれから建築家目指すから、金ないぜ?シャルロットちゃんのヒモになっちゃうぞ」
「良いわ。私が養ってあげるわ。私、お姫様だもん」
「だめだめ、結婚の申し込みなんてしたら左王様がショックでひっくり返っちゃうし、俺、双子に殺されちゃう」
駄々をこねるように、シャルロットはルートヴィヒ王子の右脚に抱き着いた。
「シャルロットちゃん、いいか?結婚すんならバーテンダー・美容師・バンドマンは地雷だ!いくらイケメンでもやめとけ!」
「ルッツがいい」
「…ごめんね」
茶化すように笑って、それから立ち上がると背中を向けた。
*
ルートヴィヒ王子は森に入ると、木の精霊たちに呼び掛けた。
「木の精霊よ、クライシア大国の騎士、レイター公爵と秘書を乗せた馬車がこの城へやって来るのを阻止してくれ」
ペレー国王家の人間は代々、木の精霊と契約している。
ルートヴィヒ王子の声に応えるかのように木々の青葉が風も凪いでいるのにざわめく。
ペレー国はかつて軍事大国であったが、全盛期の王が崩御した現在では衰退していた。
それでも戦争を繰り返し小国の領土を奪還し国を広げようと躍起になっている。
それが、精霊王の末裔の姫と婚約を結ぶなどーー精霊の力を手に入れたら他国は太刀打ちできないし、脅威でしかないだろう。
数日前にクライシア王よりオリヴィア小国へ、政略結婚に関して話し合いがしたいという旨の書簡が届いた。
王弟のレイター公爵が話し合いのため城へ向かっているらしい。
ルートヴィヒ王子はそれを足止めした。
公爵一行を乗せた馬車が通る道ーー木の太い枝が勢いよく成長して道を防ぎ、通せんぼしていた。
それに馬が悲鳴をあげながら驚いて横転。
ルートヴィヒ王子はまずいと思い、魔法で転倒を防いだ。
「な!なんだ!?」
騎士らは馬から降りて辺りを警戒している。
彼らの前に、馬に乗ったシャリーが姿を現す。
「大丈夫ですか?申し訳ございません。きっと精霊たちのイタズラです……」
魔力がないシャリー達に精霊の姿は見えないが、長い間 この国は精霊たちが守っていた。
何度か領地を奪おうと他国が侵略していたが、その度に国中に潜む精霊達が追い払ってくれている。
「いや……精霊が怒るのも無理はありません。私こそ、突然押し掛けて申し訳ございません。なにぶん、うちの陛下の命令なので……」
「いえ。どうぞ、城へご案内いたします。私がそばにいれば精霊達も攻撃を控えるでしょう。平和的に話し合いましょう」
レイター公爵はちらっと周りを見る。
木の精霊たちだろう、雄々しい巨人男の集団が目を釣り上げ怒髪天で、こっちを睨みつけている。
しかし、シャリーの後ろ姿を気にしながらグッと拳を握って堪えている。
レイター公爵は顔を真っ青にしていた。
シャルロットはお城を抜け出して野ばらを積んでいた。
「おや、シャルロットちゃん」
ルートヴィヒ王子がやって来た。
「おめかしして、今日はどうしたの?」
「ソレイユ国のお祖母様からドレスをプレゼントしてもらったのよ、素敵なドレスよね?」
「うん、可愛いよ」
シャルロットは照れ笑いした。
彼女が持っているバスケットの中には野ばらの花片がいっぱい詰まっていた。
「この花びらを使って野ばらのジャムを作るの、お母様が風邪気味だから、このジャムで栄養をつけてもらうわ」
「花って食べられるんだね」
「ええ。ルッツお兄ちゃんは何していたの?……ヴァイオリン?」
「ああ、この城のだけどね。久しぶりに弾いてみよっかなって思ってさ」
「わあ、何か弾いてくれない?」
「ううん……」
ルートヴィヒ王子はヴァイオリンで『野ばら』を上手に弾いてくれた。
シャルロットはニコニコと笑いながらメロディーに合わせて歌う。
「……俺の可愛い野ばらちゃん、君のことは愛しているけど、俺は君のことを手折らずに行くよ。無垢な野の薔薇は、ここで無邪気に咲いているほうが幸せだ」
「ルッツ……?」
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「ほんと?」
「うん、約束だ。シャルロットちゃん」
「ありがとう!ルッツお兄ちゃん。私、頑張って働いてお金稼いで、貯めておくわね!宮殿っていくらなんだろう?35年ローンで買える?」
「はは、シャルロットちゃん。お金持ちの男捕まえて建てちゃいなよ!」
「ルッツお兄ちゃんが私と結婚してくれるんでしょ?」
「俺はこれから建築家目指すから、金ないぜ?シャルロットちゃんのヒモになっちゃうぞ」
「良いわ。私が養ってあげるわ。私、お姫様だもん」
「だめだめ、結婚の申し込みなんてしたら左王様がショックでひっくり返っちゃうし、俺、双子に殺されちゃう」
駄々をこねるように、シャルロットはルートヴィヒ王子の右脚に抱き着いた。
「シャルロットちゃん、いいか?結婚すんならバーテンダー・美容師・バンドマンは地雷だ!いくらイケメンでもやめとけ!」
「ルッツがいい」
「…ごめんね」
茶化すように笑って、それから立ち上がると背中を向けた。
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ルートヴィヒ王子は森に入ると、木の精霊たちに呼び掛けた。
「木の精霊よ、クライシア大国の騎士、レイター公爵と秘書を乗せた馬車がこの城へやって来るのを阻止してくれ」
ペレー国王家の人間は代々、木の精霊と契約している。
ルートヴィヒ王子の声に応えるかのように木々の青葉が風も凪いでいるのにざわめく。
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それでも戦争を繰り返し小国の領土を奪還し国を広げようと躍起になっている。
それが、精霊王の末裔の姫と婚約を結ぶなどーー精霊の力を手に入れたら他国は太刀打ちできないし、脅威でしかないだろう。
数日前にクライシア王よりオリヴィア小国へ、政略結婚に関して話し合いがしたいという旨の書簡が届いた。
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それに馬が悲鳴をあげながら驚いて横転。
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「な!なんだ!?」
騎士らは馬から降りて辺りを警戒している。
彼らの前に、馬に乗ったシャリーが姿を現す。
「大丈夫ですか?申し訳ございません。きっと精霊たちのイタズラです……」
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何度か領地を奪おうと他国が侵略していたが、その度に国中に潜む精霊達が追い払ってくれている。
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