シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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【過去編】転生先はオリヴィア小国のお姫様?シャルロットとお兄様のホームメイド・トンプース

みんなで、北の海へ

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花冷えの間延びしたような春が通り過ぎて、ようやくオリヴィア小国にも短い夏がやって来た。

ーー今日は兄達と馬に乗って海へ来ていた。
母が新しく作ってくれた白いシフォンの軽やかなワンピースを着て、兄達も涼しげな装いだ。
シャルロットは大きな黒馬の背中に乗って、ルートヴィヒ王子がその馬の手綱を引いて砂利道を進む。

「潮の香りがする」

「あっちの木陰でランチにしよう。お腹いっぱいにしてから泳ごう」

兄のシーズは、シャルロットを抱き上げて馬から下ろしてあげた。

遠くに黒い船がいっぱい見える。
人も居ない静かな海辺、ここは王家の私有地らしい。
目隠しの囲いはあるが、領地の人々にも自由に開放しているようだ。

シーズは何も言わずにシャルロットの白いワンピースを突然脱がせた。
下着の白いレースのカボチャパンツ一枚に剥かれたシャルロットは屈んで悲鳴をあげる。

「きゃあ!」

「シャルロット?泳ぐんだろ?」

「えっと、このまま泳ぐの?」

「ああ、毎年こうやって泳いでいただろう」

周りの兄達も半裸になった。
シャルロットは戸惑い顔を真っ赤にさせたが、ここでは普通の事らしい。

一応水着は存在するようだが、この田舎では裸か軽装のまま泳ぐらしい。
公衆浴場も男女の区分がない世界らしく、あまり気に留めていないようだ。

(というか、そもそも、私は5歳の女の子だったわ)

みんな半裸のまま、木陰に座ってランチすることにした。

「へえ、シャルロットちゃんが作ったの?」

竹で編んだ手作りの籠の中には柑橘系のフルーツと、ライ麦パンのスライスにクリームチーズや葉野菜、ハムを挟んだサンドウィッチ。

「シャルロット、お前いつのまに料理なんか出来るようになったんだ?卵も割れなかったじゃないか」

「えっと…お稽古の先生に習ったの」

「ああ、美味しいなあ~」

ルートヴィヒ王子はニコニコ笑って食べていた。

「ふふ」

シャルロットは嬉しくて笑顔になる。
仲間意識からか、面倒見の良い彼にすっかり懐いたシャルロットは毎日ヒヨコのようにルートヴィヒ王子にぴったりくっついていた。

「ルッツお兄ちゃん、後どのくらいこの国にいるの?」

「うーん、冬までには帰る予定だよ。あんまり国を開けていると怒られるし」

「私、ルッツお兄ちゃんとなら結婚してもいいわ、だからこっちでずっと一緒に暮らしましょう?」

突然知らない世界へ転生して不安な毎日、異世界からやってきたシャルロットを理解できる仲間は彼しかいなかった。
しかし双子は憤怒した。

「シャルロット!こんなロリコン野郎なんて…兄は許さんからな!」

「でも……ううん……ルッツ……帰らないで」

シャルロットは寂しげな顔をした。

「シャルロットちゃん、ほら、泳ごう」

ルートヴィヒ王子はシャルロットの身体を抱き上げて浅瀬へ連れ去った。

「ひゃ!」

思ったよりも冷たい水温にキュッと身が縮こまる。
けれど慣れてくると冷水の中はとても気持ち良い。

「シャルロット、泳ぎを教えてやろう」

シーズはシャルロットの手を掴む。
シャルロットは必死に足をバタ足させて進んだ。

その様子を、ルートヴィヒ王子は微笑ましそうな顔で見ていた。
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