シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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【過去編】転生先はオリヴィア小国のお姫様?シャルロットとお兄様のホームメイド・トンプース

大人たちの話し合い

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「ルートヴィヒ王子の、偽装死だって?」

 ルートヴィヒ王子と彼の主治医、そしてオリヴィア小国の王2人、シャリーとシーズ双子の王子は執務室で向かい合って話し込んで居た。

「貴国には、ただ証言してもらえるだけでいいんだ。ペレー国とオリヴィア小国は敵対しているわけでもないし、関わりも薄い赤の他人のような国だろう?利害関係のない第三者が証言してくれる方が信ぴょう性は高まる」

「しかし…、ルッツ……、その後はどうするんだ?」

 シャリーは聞いた。

「長い付き合いのある、俺の親友のマギャー国のシシィ王妃が亡命をサポートしてくれる。落ち着いたら、名を変えて新大陸へ移住する予定だ。協力してくれる報酬として、オリヴィア小国をマギャー国に一時的に保護させるように口利きしよう」

「えっ…」

「今まではソレイユ王の保護下にあったが、その王は死刑になった。オリヴィア小国は現在どこにも属さず後ろ盾もない不安定な状態だ。反王派の新政府にここの領地を没収されるか、クライシア大国や周辺国に狙われているだろ。精霊王の存在があるから迂闊に手出ししてこないだけで、今のままではいつか戦争が起こるかもしれないぞ?」

 オリヴィア小国の王を最近悩ませていたことだった。

 ソレイユ国王が死刑にされた後、王党派の貴族や聖職者らは次々と逮捕され処刑台へ送られた。
 処刑を恐れて爵位や財産を捨てオリヴィア小国やクライシア大国、新大陸などの他国に帰化した貴族もいる。

 オリヴィア小国は昔から中立国という立ち位置にいたため、無事だった。

「マギャー国とは昔から貿易で交流がある。シシィ王妃とも何度かお会いしたことがあるが……」

「オリヴィア小国の王家はボロい城に平民のような慎ましい暮らしをしてるから周辺国は貧しい国だと思い込んでいるが……それは他国の目を欺くための演出に過ぎない」

 ルートヴィヒ王子はひと息つくと口を開く。


「この公領には、過去に精霊の祝福によって得た秘密の鉱山や黄金郷があるし、精霊王が遺した膨大な財産を隠し持っているそうだな。領土は小さいが、その国庫金は大陸一」

「なぜ、それを……!」

 代々王や王位継承者しか知らされていない秘匿にされていた事実を突きつけられて驚いた。


「安心して、俺しか知らない事実だ。脅しじゃなくてーー俺が言いたいのは、一時的にマギャー国に帰属して、頃合いを見て領地を金で買い取れば良い。マギャー国は今、戦争続きで金に困ってるから有り難い話。どちらにもメリットがあるだろう」

「う~ん……」

 表立って金銭を渡せば他国にあらぬ誤解を与える。
 領地を奪われたから金で買い戻した形にすれば、その問題もクリアになる。

「まだ、しばらく滞在させてもらいます。ゆっくり考えてみてください」

 ルートヴィヒ王子は椅子を立つと、一礼して部屋を出て行った。
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