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【過去編】転生先はオリヴィア小国のお姫様?シャルロットとお兄様のホームメイド・トンプース
お姫様のルーティーン
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昼過ぎ、シャルロットはお城の裏手にいた。
兄のシーズが生きたガチョウを数羽黙々と捌いていたので見学していた。
シャルロットがビクビクしながら、少し遠巻きに解体作業を見守る。
昨日の朝、シャルロットが餌を与えていたお尻の毛が少し禿げていた大きなガチョウだ。城の中で飼育している家畜で、毎朝の餌やりはシャルロットの役割だった。
「お兄様、そのガチョウ……」
「今夜の飯だ」
何の感情も無さそうな顔で、兄は淡々とガチョウの羽根を慣れた手付きで削ぎ落としている。
シャルロットの顔は真っ青で言葉が出なかった。
この世界にはスーパーマーケットは無いし、お肉屋さんはあるけど街にある。
オリヴィア小国のお城は広くて要塞も兼ねているので、有事の際に食糧を確保する為に、一画で野菜を作ったり卵や家畜も飼育していて自給自足していた。
平民達も家の庭で鶏を飼ってて、卵を採ったり捌いてお肉にして食べるのは普通のことらしい。
「か、かわいそう」
「可哀想でも、生きる為には食べなきゃいけないんだ」
「そうね……」
お肉なんて、お店で売られているパック詰めの生肉の状態しか目にしたことはないし、調理したことがなくて、あまり深く考えたことがなかった。
「あの……お兄様、私にも捌き方教えて欲しいの」
「え?」
「お前、見るのも嫌がってたろ」
「ううん、やるわ」
「…ん、おいで。シャルロット」
兄は手招いた。
シャルロットを自分の身体の前に座らせ、後ろからシャルロットを抱き込むような姿勢でお肉を捌き始めた。
そして、ぶっきらぼうな口調だけど、ゆっくりとした動作で丁寧に説明してくれる。
ーーもう一つの日課。
早朝、鶏舎でニワトリに餌を与え、産みたての卵を回収するのもシャルロットのお仕事。
鶏舎では管理人のおじさんがせっせと掃除していた。
オリヴィア小国の王家の家訓は『働かざる者食うべからず』ーーこれは先祖であるオリヴァー大公爵・精霊王が決めた。
だからこの国の人たちは太陽よりも早く起きて、とてもよく働く。
「きゃっ!」
卵を取ろうと手を伸ばしたらニワトリに手の甲を突かれた。
「はは、大丈夫か?シャルロット」
「ええ……」
シャルロットは手に取った卵を見つめた。
「産みたての卵ってかなり熱いのね。茹でたてのゆで卵みたい。これ…中身は固まって無いの?」
産みたて卵も初めて目にするシャルロットは、興味津々。
「うん、生卵だよ」
お姫様の一日のスケジュール。
毎朝まだ空が真っ暗な時に起きて簡単な畑仕事や鶏舎、家畜のお世話。
午前中は家庭教師の先生がお城にやって来てホームスクーリング。外国語を習ったり、数学や歴史のお勉強。
この世界の王族や貴族の子供は学校へ通うより、家庭教師を付けるのが一般的だそうだ。
お昼は軽く済ませて、午後はプリンセス・レッスンと呼ばれる時間。
ピアノやヴァイオリンを習ったり、ダンス、社交術、礼儀作法や言葉遣いなど日替わりで習う。
やっと自由な時間になるのは夕方以降。
「お姫様ってなんとなく毎日遊んで暮らせるものだと思ってたわ」
シャルロットは城の窓から遠くにあるチューリップ畑を眺めていた。
「シャルロットちゃん!」
下から自分を呼ぶ声がして、視線を下ろした。
ルートヴィヒ王子が笑顔で手を振っていた。
「お菓子をあげるから、お兄ちゃんと遊ばないか?」
「変質者みたいな誘い方ね!?」
わざわざペレー国から主治医まで呼び付けて、病気で調子が良くないからしばらくこの国で静養すると言っていたがーー顔色は良いし元気そうだ。
「待って。今そこへ行くわ」
ーー兄達には変態には近寄るなと注意されていたけれど…。
だが、シャルロットは彼と2人で話したいこともあったので、彼の元へ向かった。
兄のシーズが生きたガチョウを数羽黙々と捌いていたので見学していた。
シャルロットがビクビクしながら、少し遠巻きに解体作業を見守る。
昨日の朝、シャルロットが餌を与えていたお尻の毛が少し禿げていた大きなガチョウだ。城の中で飼育している家畜で、毎朝の餌やりはシャルロットの役割だった。
「お兄様、そのガチョウ……」
「今夜の飯だ」
何の感情も無さそうな顔で、兄は淡々とガチョウの羽根を慣れた手付きで削ぎ落としている。
シャルロットの顔は真っ青で言葉が出なかった。
この世界にはスーパーマーケットは無いし、お肉屋さんはあるけど街にある。
オリヴィア小国のお城は広くて要塞も兼ねているので、有事の際に食糧を確保する為に、一画で野菜を作ったり卵や家畜も飼育していて自給自足していた。
平民達も家の庭で鶏を飼ってて、卵を採ったり捌いてお肉にして食べるのは普通のことらしい。
「か、かわいそう」
「可哀想でも、生きる為には食べなきゃいけないんだ」
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「え?」
「お前、見るのも嫌がってたろ」
「ううん、やるわ」
「…ん、おいで。シャルロット」
兄は手招いた。
シャルロットを自分の身体の前に座らせ、後ろからシャルロットを抱き込むような姿勢でお肉を捌き始めた。
そして、ぶっきらぼうな口調だけど、ゆっくりとした動作で丁寧に説明してくれる。
ーーもう一つの日課。
早朝、鶏舎でニワトリに餌を与え、産みたての卵を回収するのもシャルロットのお仕事。
鶏舎では管理人のおじさんがせっせと掃除していた。
オリヴィア小国の王家の家訓は『働かざる者食うべからず』ーーこれは先祖であるオリヴァー大公爵・精霊王が決めた。
だからこの国の人たちは太陽よりも早く起きて、とてもよく働く。
「きゃっ!」
卵を取ろうと手を伸ばしたらニワトリに手の甲を突かれた。
「はは、大丈夫か?シャルロット」
「ええ……」
シャルロットは手に取った卵を見つめた。
「産みたての卵ってかなり熱いのね。茹でたてのゆで卵みたい。これ…中身は固まって無いの?」
産みたて卵も初めて目にするシャルロットは、興味津々。
「うん、生卵だよ」
お姫様の一日のスケジュール。
毎朝まだ空が真っ暗な時に起きて簡単な畑仕事や鶏舎、家畜のお世話。
午前中は家庭教師の先生がお城にやって来てホームスクーリング。外国語を習ったり、数学や歴史のお勉強。
この世界の王族や貴族の子供は学校へ通うより、家庭教師を付けるのが一般的だそうだ。
お昼は軽く済ませて、午後はプリンセス・レッスンと呼ばれる時間。
ピアノやヴァイオリンを習ったり、ダンス、社交術、礼儀作法や言葉遣いなど日替わりで習う。
やっと自由な時間になるのは夕方以降。
「お姫様ってなんとなく毎日遊んで暮らせるものだと思ってたわ」
シャルロットは城の窓から遠くにあるチューリップ畑を眺めていた。
「シャルロットちゃん!」
下から自分を呼ぶ声がして、視線を下ろした。
ルートヴィヒ王子が笑顔で手を振っていた。
「お菓子をあげるから、お兄ちゃんと遊ばないか?」
「変質者みたいな誘い方ね!?」
わざわざペレー国から主治医まで呼び付けて、病気で調子が良くないからしばらくこの国で静養すると言っていたがーー顔色は良いし元気そうだ。
「待って。今そこへ行くわ」
ーー兄達には変態には近寄るなと注意されていたけれど…。
だが、シャルロットは彼と2人で話したいこともあったので、彼の元へ向かった。
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