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【過去編】転生先はオリヴィア小国のお姫様?シャルロットとお兄様のホームメイド・トンプース
しんみり苺のミルフィーユ
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この不思議な世界で目を覚まして早1カ月ーー。
今もペレー国からやって来たルートヴィヒ王子はオリヴィア小国に滞在している。
まだ肌寒いが、長い冬が終わって雪野原にはカラフルなチューリップが咲いていた。
この国での生活にも慣れたが、夜寝る前になると前の世界に置いて来た家族や友人の顔を思い出して寂しくなって毎晩ベッドの上ですすり泣いていた。それをこちらの世界のシャルロットの母が心配し、気晴らしに母の実家へ連れて行ってもらえることになった。
双子の片割れシーズと3人で馬車に乗って夜明け前に出発し、母の故郷であるソレイユ国到着したのが夕刻。
母のオルタンスはソレイユ国の侯爵家の三女らしい。結婚前はソレイユ国の前代王妃の女官をしており、当時オリヴィア小国の王子だった父にダンスパーティーで出逢って一目惚れされたらしい。
美人で聡明だったからソレイユ国の当時の王に気に入られており、豪華な宝石や金を贈られて愛人にならないかと誘われていたが、母は拒否。
小さくてど田舎の国の父を選んだ。
そんな馴れ初めを、退屈な馬車の中で母は話してくれた。
「お父様ね、私がパーティーで決まって『シャルロット』って言うケーキを好んで食べていたの憶えていたのよ。わざわざシャルロットケーキを作って来て、バラの花束とラブレターをよく届けに来てくれたの」
「私の名前って……」
「そうよ」
母はにっこり笑った。
「ソレイユ国王の愛人になれば贅沢で豪華な暮らしができるから、周りはバカな選択だって陰で言っていたけれど…私はお父様と結婚できて、オリヴィア小国へ嫁いで幸せよ」
母はギュッとシャルロットを抱き寄せた。
「あなたもいつか幸せな結婚をしなさいね」
「は、はい…お母様」
(もしかして…あの変態ペド王子と無理矢理結婚させられそうだったから落ち込んでたって勘違いしてるのかな?)
……まあ、たった5歳の女の子には酷い話だけど。
母の実家の侯爵家の屋敷に到着すると大勢のメイド軍団がお出迎えしてくれた。
正面入り口の前には大きな階段があって、白髪頭のシャルロットの祖母が小走りで飛んできた。
「まあ!シャルロットちゃん!」
祖母は孫がやって来るのを心待ちにしていたようだ。
ソレイユ国は内戦続きで治安も良くないので実家に帰るのは数年ぶりだそうだ。
「さあさあ、美味しいケーキを作らせて用意してるの。ばあばとお庭でお茶しましょうね。明日は仕立て屋を呼んでるの。新しいお洋服と靴を作らなきゃね~」
庭にある花園で白いテーブルを囲んでケーキを食べた。
「はい、シャルロット。プレゼントよ」
「ありがとうございます。お祖母様」
大きな白いテディベア。
目には宝石が埋まってて、可愛いレースの大きなリボン。とても高価なものだろう。
お城のシャルロットの部屋も可愛いぬいぐるみやビスクドールで溢れていた。
シャルロットはギュッともらったぬいぐるみを抱きしめて、白い木の椅子に座った。隣にはシーズが座ってる。
(…この身体の持ち主……シャルロットお姫様はみんなに愛されて幸せに暮らしていたのね)
「これ……苺のミルフィーユね」
「シャルロット好きだったろ」
ケーキを見つめて、ふっと頭に死んだ夫の顔が過ぎる。
(昔はよく一つのケーキを半分こして食べたっけ……)
死んだら天国でまた会えると思っていた。
(あの世や天国ってなかったのね……)
シャルロットの瞳がまたじわっと潤う。
でも、心配させなように堪えて笑った。
「とても美味しいわ!」
今もペレー国からやって来たルートヴィヒ王子はオリヴィア小国に滞在している。
まだ肌寒いが、長い冬が終わって雪野原にはカラフルなチューリップが咲いていた。
この国での生活にも慣れたが、夜寝る前になると前の世界に置いて来た家族や友人の顔を思い出して寂しくなって毎晩ベッドの上ですすり泣いていた。それをこちらの世界のシャルロットの母が心配し、気晴らしに母の実家へ連れて行ってもらえることになった。
双子の片割れシーズと3人で馬車に乗って夜明け前に出発し、母の故郷であるソレイユ国到着したのが夕刻。
母のオルタンスはソレイユ国の侯爵家の三女らしい。結婚前はソレイユ国の前代王妃の女官をしており、当時オリヴィア小国の王子だった父にダンスパーティーで出逢って一目惚れされたらしい。
美人で聡明だったからソレイユ国の当時の王に気に入られており、豪華な宝石や金を贈られて愛人にならないかと誘われていたが、母は拒否。
小さくてど田舎の国の父を選んだ。
そんな馴れ初めを、退屈な馬車の中で母は話してくれた。
「お父様ね、私がパーティーで決まって『シャルロット』って言うケーキを好んで食べていたの憶えていたのよ。わざわざシャルロットケーキを作って来て、バラの花束とラブレターをよく届けに来てくれたの」
「私の名前って……」
「そうよ」
母はにっこり笑った。
「ソレイユ国王の愛人になれば贅沢で豪華な暮らしができるから、周りはバカな選択だって陰で言っていたけれど…私はお父様と結婚できて、オリヴィア小国へ嫁いで幸せよ」
母はギュッとシャルロットを抱き寄せた。
「あなたもいつか幸せな結婚をしなさいね」
「は、はい…お母様」
(もしかして…あの変態ペド王子と無理矢理結婚させられそうだったから落ち込んでたって勘違いしてるのかな?)
……まあ、たった5歳の女の子には酷い話だけど。
母の実家の侯爵家の屋敷に到着すると大勢のメイド軍団がお出迎えしてくれた。
正面入り口の前には大きな階段があって、白髪頭のシャルロットの祖母が小走りで飛んできた。
「まあ!シャルロットちゃん!」
祖母は孫がやって来るのを心待ちにしていたようだ。
ソレイユ国は内戦続きで治安も良くないので実家に帰るのは数年ぶりだそうだ。
「さあさあ、美味しいケーキを作らせて用意してるの。ばあばとお庭でお茶しましょうね。明日は仕立て屋を呼んでるの。新しいお洋服と靴を作らなきゃね~」
庭にある花園で白いテーブルを囲んでケーキを食べた。
「はい、シャルロット。プレゼントよ」
「ありがとうございます。お祖母様」
大きな白いテディベア。
目には宝石が埋まってて、可愛いレースの大きなリボン。とても高価なものだろう。
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シャルロットはギュッともらったぬいぐるみを抱きしめて、白い木の椅子に座った。隣にはシーズが座ってる。
(…この身体の持ち主……シャルロットお姫様はみんなに愛されて幸せに暮らしていたのね)
「これ……苺のミルフィーユね」
「シャルロット好きだったろ」
ケーキを見つめて、ふっと頭に死んだ夫の顔が過ぎる。
(昔はよく一つのケーキを半分こして食べたっけ……)
死んだら天国でまた会えると思っていた。
(あの世や天国ってなかったのね……)
シャルロットの瞳がまたじわっと潤う。
でも、心配させなように堪えて笑った。
「とても美味しいわ!」
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