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シャルロットと精霊博士のサンクスギビング・ターキーデー
感謝祭・当日
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シャルロットは朝早くから広い客間のテーブルに最近買ったばかりの真っ赤なテーブルクロスを敷いていた。
それをキャロルが手伝ってくれている。
「う~ん、椅子は足りるかしら?」
「俺、物置小屋を見てきますよ。シャルルさん」
騎士のアヴィが手を挙げ、使用人のおばさんと共に部屋を出て行った。
入れ違いでグレース皇子の専属の執事タランダがやってきた。
「シャルロット様にお客様でございます。一階の応接間に案内致しております」
「え?誰かしら……?ジュリアン達が来るには早いわね……」
「オリヴィア小国から、シーズ大公です」
「エッ?……お兄様?」
思い掛けない来訪に驚いたシャルロットは、小走りで中央階段を下り応接間へ直行した。
そこには来客用のソファーに座ったスーツ姿の左王シーズと、その背後に背筋を伸ばしてピシッと立っているスーツ姿のイルカルが居た。
彼の向かいにはグレース皇子が座っていた。
「あ!イルカル!」
キャロルも驚いている。
イルカルはクライシア大国の騎士だったが、現在はオリヴィア小国で左王の側近をしている。
「シャルロット、久しぶりだな。急に来て悪かった」
「いいえ、でも……どうして?」
「仕事でエスター国まで来たんだ、ほら、ソレイユ国とエスター国が数年前に外交で大揉めしただろ?ソレイユ国からの公使を全面拒否してるだろ。尻拭いが、中立国であるうちに回ってきたんだ」
「それで、後のことはソレイユ国の外相に任せて、帰る前に姫様の顔でも見ようって事になったんですよね!」
イルカルが笑った。
「ああ、シャルロット、しばらくこちらに泊まってもいいか?」
「泊まるって……オリヴィア小国のみんなは知ってるの?お仕事もあるでしょう?」
「知らん」
左王はなんだか怒っている様子だった。
「シャリーお兄様かお母様とケンカしたんでしょう?家出なんて王様がすることじゃないわよ、子供みたいね」
「あはは~。実は右王様が、勝手に奥様のビオラ様を連れて国外へ1週間ほど旅行へ行ってしまったんです。それで左王様は怒ってるんですよ。小さい王子様たちの面倒や、公務も左王様が全部やったんですよ」
イルカルが困ったように笑った。
「何それ、お兄様達ってば勝手すぎるわよ。来るにしても事前連絡はできないの?」
「何故、妹の家に行くのに連絡せねばならんのだ」
「来るなんてわからないから何も用意してないわ、感謝祭だから使用人たちも休ませているし、お店も閉まっているのに……」
兄妹喧嘩が始まりそうになりグレース皇子は焦った。
「…いいじゃないか、シャルロット。お義兄様、執事に言ってすぐに部屋を用意します。自宅だと思って、どうぞごゆっくり」
「グレース様、ここは迷惑だと、ビシッと言って差し上げないと!」
「何を言ってるんだ?シャルロット……兄弟は大事にしろ」
「もう!グレース様ったら!実家のお母様に後で怒られるのは私なのよ?」
左王を兄のように慕っているグレース皇子はかなり嬉しそうで、舞い上がっていた。
シャルロットはムカムカして声を荒げる。
左王を睨むが、左王は涼しい顔をして紅茶を飲んでいた。
「もう……。いいわ。今日は感謝祭で食事会をする予定だったの。お兄様とイルカルさんもぜひ食べて行ってください」
「ありがとうございます、すみません……姫様」
イルカルは申し訳無さそうな顔をした。
シャルロットは笑い返す。
「いいえ、イルカルさんに怒ったんじゃないの。こんなマイペースなお兄様のお世話なんて大変ね」
夕方にはジュリアンやベンジャミンが訪ねてくる。
今夜は賑やかな食事会になりそうだ。
それをキャロルが手伝ってくれている。
「う~ん、椅子は足りるかしら?」
「俺、物置小屋を見てきますよ。シャルルさん」
騎士のアヴィが手を挙げ、使用人のおばさんと共に部屋を出て行った。
入れ違いでグレース皇子の専属の執事タランダがやってきた。
「シャルロット様にお客様でございます。一階の応接間に案内致しております」
「え?誰かしら……?ジュリアン達が来るには早いわね……」
「オリヴィア小国から、シーズ大公です」
「エッ?……お兄様?」
思い掛けない来訪に驚いたシャルロットは、小走りで中央階段を下り応接間へ直行した。
そこには来客用のソファーに座ったスーツ姿の左王シーズと、その背後に背筋を伸ばしてピシッと立っているスーツ姿のイルカルが居た。
彼の向かいにはグレース皇子が座っていた。
「あ!イルカル!」
キャロルも驚いている。
イルカルはクライシア大国の騎士だったが、現在はオリヴィア小国で左王の側近をしている。
「シャルロット、久しぶりだな。急に来て悪かった」
「いいえ、でも……どうして?」
「仕事でエスター国まで来たんだ、ほら、ソレイユ国とエスター国が数年前に外交で大揉めしただろ?ソレイユ国からの公使を全面拒否してるだろ。尻拭いが、中立国であるうちに回ってきたんだ」
「それで、後のことはソレイユ国の外相に任せて、帰る前に姫様の顔でも見ようって事になったんですよね!」
イルカルが笑った。
「ああ、シャルロット、しばらくこちらに泊まってもいいか?」
「泊まるって……オリヴィア小国のみんなは知ってるの?お仕事もあるでしょう?」
「知らん」
左王はなんだか怒っている様子だった。
「シャリーお兄様かお母様とケンカしたんでしょう?家出なんて王様がすることじゃないわよ、子供みたいね」
「あはは~。実は右王様が、勝手に奥様のビオラ様を連れて国外へ1週間ほど旅行へ行ってしまったんです。それで左王様は怒ってるんですよ。小さい王子様たちの面倒や、公務も左王様が全部やったんですよ」
イルカルが困ったように笑った。
「何それ、お兄様達ってば勝手すぎるわよ。来るにしても事前連絡はできないの?」
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「来るなんてわからないから何も用意してないわ、感謝祭だから使用人たちも休ませているし、お店も閉まっているのに……」
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「…いいじゃないか、シャルロット。お義兄様、執事に言ってすぐに部屋を用意します。自宅だと思って、どうぞごゆっくり」
「グレース様、ここは迷惑だと、ビシッと言って差し上げないと!」
「何を言ってるんだ?シャルロット……兄弟は大事にしろ」
「もう!グレース様ったら!実家のお母様に後で怒られるのは私なのよ?」
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シャルロットはムカムカして声を荒げる。
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「もう……。いいわ。今日は感謝祭で食事会をする予定だったの。お兄様とイルカルさんもぜひ食べて行ってください」
「ありがとうございます、すみません……姫様」
イルカルは申し訳無さそうな顔をした。
シャルロットは笑い返す。
「いいえ、イルカルさんに怒ったんじゃないの。こんなマイペースなお兄様のお世話なんて大変ね」
夕方にはジュリアンやベンジャミンが訪ねてくる。
今夜は賑やかな食事会になりそうだ。
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