46 / 262
ワガママ王子様の更生プログラム〜ミレンハン国の俺様王子、騎士団で職業体験する
第一騎士団のキャトレール・サワークリームドーナツ
しおりを挟む
第一騎士団 詰め所
白を基調としたすっきりとしたスタイリッシュな空間で、換気もされており整然としている。
長テーブルの周りを取り囲むように第一騎士団一同が介している。
男子校の教室みたいに荒れて乱雑に物が散乱し汗と泥と何かの男臭のキツい第二騎士団の詰め所とは大違いだ。
長テーブルの上座には白い騎士服に身を包んだ若い背の高い細身の美女が立っている。
キリッとした細い眉に面長の顔、切れ長の瞳に真っ赤な唇、焦げ茶色の爽やかなショートヘア、知的でクールな大人の女性っていう感じだ。
この方が第一騎士団の女団長メリーさんだ、シャルロットも何度か顔を合わせたことがあった。
「これはこれはシャルロット姫、お待ちしておりました。隣は……ゲーテ王子?」
「ごめんなさい、勝手についてきちゃったの」
「構わないが……、今日は第二騎士団に居ると聞いているが?」
「サボりのようです」
「ほう……」
メリーは呆れたように笑った。
ゲーテ王子は持っていたバスケットを長テーブルの上に置くと勝手に中を開けて立ったまま勝手に食べ始めた。
「はしたないですわ!」
「ちゃんと言われた通りに運んだだろ」
むしゃむしゃと咀嚼をしながらそう言うと、ゲーテ王子はそっぽうを向いた。
「どうぞ、姫と王子と侍女さんの分の紅茶です」
「お、お構いなく。ありがとうございます」
リディが恐縮するように礼を言った。
シャルロットも続いて礼をする。
席に着いたところでアダムがお茶を用意してくれた。
隣に座ってたキャロルはドーナツを嬉しそうに両手で持ち頬を染めて顔を緩ませていた。
「ドーナツに何かがかかっているぞ」
「シュガーグレーズですわ、サクサクしてて甘くて美味しいですわよ」
「キャロルがよく、姫様の作るお菓子の話をするから一度私も食べてみたかったのよ。うん、本当に美味しい」
メリーさんは上品にドーナツを口にした。
そしてクールに整った顔を緩めて幸せそうに頬張る。
「お口にあってよかったわ」
「騎士に料理を振る舞うなど、変わった姫だな」
横からゲーテ王子は真顔で言った。
シャルロットは笑い返す。
「美味しいご飯やお菓子って魔法みたいなものですわ、一緒に食べると尚 美味しくって楽しくなって、身分なんか関係ないです」
「……」
ゲーテ王子は沈黙したまま紅茶を飲んでいた。
シャルロットが首を傾げる。
「このドーナツとやらは俺の国の城下でもよく売られていた。子供の頃はグリムとよく城を抜け出して、屋台で売られていた庶民ドーナツを一緒に食べたものだ」
切ないような寂しそうな横顔をシャルロットは見つめていた。
「グリムさんとは仲が良いの?」
「幼馴染だ。昔は……そうだな親友だった。だが、宰相をしていたあいつの親父が死んで、あいつが宰相の座を継いでからはどうかな。王子らしくしろだのなんだの小言が増えてやかましくなった、今じゃ顔合わせりゃ喧嘩ばっかだ。それが、まさかーー俺を国から追い出すなど」
「何か事情があったのではないですか?」
「単に俺がうざくなったんだろ」
ケッと捻くれたようにゲーテはそっ方を向いた。
シャルロットはあることを思い出していた。
「“王子の好きなもの 肉、卵、麺類、じゃがいも、王子の嫌いなもの ピーマン、ほうれん草、人参、豆、オクラ、きゅうり…”」
シャルロットはブツブツ呟いた。
ゲーテ王子はギョッとした。
「グリムさん、城を去る前にわざわざ厨房の料理人に書き置きを残したんですよ?第二騎士団のコハン団長にも直々に挨拶したようです。自分に厳しい人が自分を嫌いだとは限りません。ゲーテ王子を騎士団に入れたのも愛情を持ってのことだと思いますけど?」
「……、ふ、ふん、そうか」
相変わらずしかめっ面で不遜な態度だが、顔を耳まで真っ赤にして照れていた。
嬉しそう?だ。
「だから、ちゃんと騎士団にも行くべきですよ。サボってたら本当の意味で見限られちゃいますわ」
「そうだな、俺が騎士団で成果の一つでも出せばあいつもギャフンと言うだろう!」
「その意気ですわ!」
どうにか、真面目に騎士団の業務に当たってくれそうだ。
シャルロットは安堵した。
「頼もう!!」
野太い声と共に詰め所の扉が勢いよく開いた。
コハン団長だ。
ゲーテ王子はゲッと不味そうな顔をする。
先に反応したのはメリー団長だった。
「何の用よ、ノックしてから入室しろと散々言ってるわよね!?ほんとガサツね」
「うるせぇな、来たくて来たわけじゃねえよ。用があってきたんだよ、おらゲーテ王子、外走って来いと言っただろ!こんなところで何してんだ!」
団長2人は顔を合わせるたびにいがみ合う。
どうやら相性が悪いようだ。
コハン団長はズカズカと部屋に入ってきてゲーテ王子の首根っこを捕まえて引き摺りながら扉へ向かって歩き出した。
「離せ!無礼者っ」
「サボんじゃねえぞ、夕飯抜きにするぞ」
詰め所を出てもなお遠くから声が響いてる。
シャルロットはクスクス笑った。
白を基調としたすっきりとしたスタイリッシュな空間で、換気もされており整然としている。
長テーブルの周りを取り囲むように第一騎士団一同が介している。
男子校の教室みたいに荒れて乱雑に物が散乱し汗と泥と何かの男臭のキツい第二騎士団の詰め所とは大違いだ。
長テーブルの上座には白い騎士服に身を包んだ若い背の高い細身の美女が立っている。
キリッとした細い眉に面長の顔、切れ長の瞳に真っ赤な唇、焦げ茶色の爽やかなショートヘア、知的でクールな大人の女性っていう感じだ。
この方が第一騎士団の女団長メリーさんだ、シャルロットも何度か顔を合わせたことがあった。
「これはこれはシャルロット姫、お待ちしておりました。隣は……ゲーテ王子?」
「ごめんなさい、勝手についてきちゃったの」
「構わないが……、今日は第二騎士団に居ると聞いているが?」
「サボりのようです」
「ほう……」
メリーは呆れたように笑った。
ゲーテ王子は持っていたバスケットを長テーブルの上に置くと勝手に中を開けて立ったまま勝手に食べ始めた。
「はしたないですわ!」
「ちゃんと言われた通りに運んだだろ」
むしゃむしゃと咀嚼をしながらそう言うと、ゲーテ王子はそっぽうを向いた。
「どうぞ、姫と王子と侍女さんの分の紅茶です」
「お、お構いなく。ありがとうございます」
リディが恐縮するように礼を言った。
シャルロットも続いて礼をする。
席に着いたところでアダムがお茶を用意してくれた。
隣に座ってたキャロルはドーナツを嬉しそうに両手で持ち頬を染めて顔を緩ませていた。
「ドーナツに何かがかかっているぞ」
「シュガーグレーズですわ、サクサクしてて甘くて美味しいですわよ」
「キャロルがよく、姫様の作るお菓子の話をするから一度私も食べてみたかったのよ。うん、本当に美味しい」
メリーさんは上品にドーナツを口にした。
そしてクールに整った顔を緩めて幸せそうに頬張る。
「お口にあってよかったわ」
「騎士に料理を振る舞うなど、変わった姫だな」
横からゲーテ王子は真顔で言った。
シャルロットは笑い返す。
「美味しいご飯やお菓子って魔法みたいなものですわ、一緒に食べると尚 美味しくって楽しくなって、身分なんか関係ないです」
「……」
ゲーテ王子は沈黙したまま紅茶を飲んでいた。
シャルロットが首を傾げる。
「このドーナツとやらは俺の国の城下でもよく売られていた。子供の頃はグリムとよく城を抜け出して、屋台で売られていた庶民ドーナツを一緒に食べたものだ」
切ないような寂しそうな横顔をシャルロットは見つめていた。
「グリムさんとは仲が良いの?」
「幼馴染だ。昔は……そうだな親友だった。だが、宰相をしていたあいつの親父が死んで、あいつが宰相の座を継いでからはどうかな。王子らしくしろだのなんだの小言が増えてやかましくなった、今じゃ顔合わせりゃ喧嘩ばっかだ。それが、まさかーー俺を国から追い出すなど」
「何か事情があったのではないですか?」
「単に俺がうざくなったんだろ」
ケッと捻くれたようにゲーテはそっ方を向いた。
シャルロットはあることを思い出していた。
「“王子の好きなもの 肉、卵、麺類、じゃがいも、王子の嫌いなもの ピーマン、ほうれん草、人参、豆、オクラ、きゅうり…”」
シャルロットはブツブツ呟いた。
ゲーテ王子はギョッとした。
「グリムさん、城を去る前にわざわざ厨房の料理人に書き置きを残したんですよ?第二騎士団のコハン団長にも直々に挨拶したようです。自分に厳しい人が自分を嫌いだとは限りません。ゲーテ王子を騎士団に入れたのも愛情を持ってのことだと思いますけど?」
「……、ふ、ふん、そうか」
相変わらずしかめっ面で不遜な態度だが、顔を耳まで真っ赤にして照れていた。
嬉しそう?だ。
「だから、ちゃんと騎士団にも行くべきですよ。サボってたら本当の意味で見限られちゃいますわ」
「そうだな、俺が騎士団で成果の一つでも出せばあいつもギャフンと言うだろう!」
「その意気ですわ!」
どうにか、真面目に騎士団の業務に当たってくれそうだ。
シャルロットは安堵した。
「頼もう!!」
野太い声と共に詰め所の扉が勢いよく開いた。
コハン団長だ。
ゲーテ王子はゲッと不味そうな顔をする。
先に反応したのはメリー団長だった。
「何の用よ、ノックしてから入室しろと散々言ってるわよね!?ほんとガサツね」
「うるせぇな、来たくて来たわけじゃねえよ。用があってきたんだよ、おらゲーテ王子、外走って来いと言っただろ!こんなところで何してんだ!」
団長2人は顔を合わせるたびにいがみ合う。
どうやら相性が悪いようだ。
コハン団長はズカズカと部屋に入ってきてゲーテ王子の首根っこを捕まえて引き摺りながら扉へ向かって歩き出した。
「離せ!無礼者っ」
「サボんじゃねえぞ、夕飯抜きにするぞ」
詰め所を出てもなお遠くから声が響いてる。
シャルロットはクスクス笑った。
0
お気に入りに追加
396
あなたにおすすめの小説

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。


断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる