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ワガママ王子様の更生プログラム〜ミレンハン国の俺様王子、騎士団で職業体験する
第一騎士団のキャトレール・サワークリームドーナツ
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第一騎士団 詰め所
白を基調としたすっきりとしたスタイリッシュな空間で、換気もされており整然としている。
長テーブルの周りを取り囲むように第一騎士団一同が介している。
男子校の教室みたいに荒れて乱雑に物が散乱し汗と泥と何かの男臭のキツい第二騎士団の詰め所とは大違いだ。
長テーブルの上座には白い騎士服に身を包んだ若い背の高い細身の美女が立っている。
キリッとした細い眉に面長の顔、切れ長の瞳に真っ赤な唇、焦げ茶色の爽やかなショートヘア、知的でクールな大人の女性っていう感じだ。
この方が第一騎士団の女団長メリーさんだ、シャルロットも何度か顔を合わせたことがあった。
「これはこれはシャルロット姫、お待ちしておりました。隣は……ゲーテ王子?」
「ごめんなさい、勝手についてきちゃったの」
「構わないが……、今日は第二騎士団に居ると聞いているが?」
「サボりのようです」
「ほう……」
メリーは呆れたように笑った。
ゲーテ王子は持っていたバスケットを長テーブルの上に置くと勝手に中を開けて立ったまま勝手に食べ始めた。
「はしたないですわ!」
「ちゃんと言われた通りに運んだだろ」
むしゃむしゃと咀嚼をしながらそう言うと、ゲーテ王子はそっぽうを向いた。
「どうぞ、姫と王子と侍女さんの分の紅茶です」
「お、お構いなく。ありがとうございます」
リディが恐縮するように礼を言った。
シャルロットも続いて礼をする。
席に着いたところでアダムがお茶を用意してくれた。
隣に座ってたキャロルはドーナツを嬉しそうに両手で持ち頬を染めて顔を緩ませていた。
「ドーナツに何かがかかっているぞ」
「シュガーグレーズですわ、サクサクしてて甘くて美味しいですわよ」
「キャロルがよく、姫様の作るお菓子の話をするから一度私も食べてみたかったのよ。うん、本当に美味しい」
メリーさんは上品にドーナツを口にした。
そしてクールに整った顔を緩めて幸せそうに頬張る。
「お口にあってよかったわ」
「騎士に料理を振る舞うなど、変わった姫だな」
横からゲーテ王子は真顔で言った。
シャルロットは笑い返す。
「美味しいご飯やお菓子って魔法みたいなものですわ、一緒に食べると尚 美味しくって楽しくなって、身分なんか関係ないです」
「……」
ゲーテ王子は沈黙したまま紅茶を飲んでいた。
シャルロットが首を傾げる。
「このドーナツとやらは俺の国の城下でもよく売られていた。子供の頃はグリムとよく城を抜け出して、屋台で売られていた庶民ドーナツを一緒に食べたものだ」
切ないような寂しそうな横顔をシャルロットは見つめていた。
「グリムさんとは仲が良いの?」
「幼馴染だ。昔は……そうだな親友だった。だが、宰相をしていたあいつの親父が死んで、あいつが宰相の座を継いでからはどうかな。王子らしくしろだのなんだの小言が増えてやかましくなった、今じゃ顔合わせりゃ喧嘩ばっかだ。それが、まさかーー俺を国から追い出すなど」
「何か事情があったのではないですか?」
「単に俺がうざくなったんだろ」
ケッと捻くれたようにゲーテはそっ方を向いた。
シャルロットはあることを思い出していた。
「“王子の好きなもの 肉、卵、麺類、じゃがいも、王子の嫌いなもの ピーマン、ほうれん草、人参、豆、オクラ、きゅうり…”」
シャルロットはブツブツ呟いた。
ゲーテ王子はギョッとした。
「グリムさん、城を去る前にわざわざ厨房の料理人に書き置きを残したんですよ?第二騎士団のコハン団長にも直々に挨拶したようです。自分に厳しい人が自分を嫌いだとは限りません。ゲーテ王子を騎士団に入れたのも愛情を持ってのことだと思いますけど?」
「……、ふ、ふん、そうか」
相変わらずしかめっ面で不遜な態度だが、顔を耳まで真っ赤にして照れていた。
嬉しそう?だ。
「だから、ちゃんと騎士団にも行くべきですよ。サボってたら本当の意味で見限られちゃいますわ」
「そうだな、俺が騎士団で成果の一つでも出せばあいつもギャフンと言うだろう!」
「その意気ですわ!」
どうにか、真面目に騎士団の業務に当たってくれそうだ。
シャルロットは安堵した。
「頼もう!!」
野太い声と共に詰め所の扉が勢いよく開いた。
コハン団長だ。
ゲーテ王子はゲッと不味そうな顔をする。
先に反応したのはメリー団長だった。
「何の用よ、ノックしてから入室しろと散々言ってるわよね!?ほんとガサツね」
「うるせぇな、来たくて来たわけじゃねえよ。用があってきたんだよ、おらゲーテ王子、外走って来いと言っただろ!こんなところで何してんだ!」
団長2人は顔を合わせるたびにいがみ合う。
どうやら相性が悪いようだ。
コハン団長はズカズカと部屋に入ってきてゲーテ王子の首根っこを捕まえて引き摺りながら扉へ向かって歩き出した。
「離せ!無礼者っ」
「サボんじゃねえぞ、夕飯抜きにするぞ」
詰め所を出てもなお遠くから声が響いてる。
シャルロットはクスクス笑った。
白を基調としたすっきりとしたスタイリッシュな空間で、換気もされており整然としている。
長テーブルの周りを取り囲むように第一騎士団一同が介している。
男子校の教室みたいに荒れて乱雑に物が散乱し汗と泥と何かの男臭のキツい第二騎士団の詰め所とは大違いだ。
長テーブルの上座には白い騎士服に身を包んだ若い背の高い細身の美女が立っている。
キリッとした細い眉に面長の顔、切れ長の瞳に真っ赤な唇、焦げ茶色の爽やかなショートヘア、知的でクールな大人の女性っていう感じだ。
この方が第一騎士団の女団長メリーさんだ、シャルロットも何度か顔を合わせたことがあった。
「これはこれはシャルロット姫、お待ちしておりました。隣は……ゲーテ王子?」
「ごめんなさい、勝手についてきちゃったの」
「構わないが……、今日は第二騎士団に居ると聞いているが?」
「サボりのようです」
「ほう……」
メリーは呆れたように笑った。
ゲーテ王子は持っていたバスケットを長テーブルの上に置くと勝手に中を開けて立ったまま勝手に食べ始めた。
「はしたないですわ!」
「ちゃんと言われた通りに運んだだろ」
むしゃむしゃと咀嚼をしながらそう言うと、ゲーテ王子はそっぽうを向いた。
「どうぞ、姫と王子と侍女さんの分の紅茶です」
「お、お構いなく。ありがとうございます」
リディが恐縮するように礼を言った。
シャルロットも続いて礼をする。
席に着いたところでアダムがお茶を用意してくれた。
隣に座ってたキャロルはドーナツを嬉しそうに両手で持ち頬を染めて顔を緩ませていた。
「ドーナツに何かがかかっているぞ」
「シュガーグレーズですわ、サクサクしてて甘くて美味しいですわよ」
「キャロルがよく、姫様の作るお菓子の話をするから一度私も食べてみたかったのよ。うん、本当に美味しい」
メリーさんは上品にドーナツを口にした。
そしてクールに整った顔を緩めて幸せそうに頬張る。
「お口にあってよかったわ」
「騎士に料理を振る舞うなど、変わった姫だな」
横からゲーテ王子は真顔で言った。
シャルロットは笑い返す。
「美味しいご飯やお菓子って魔法みたいなものですわ、一緒に食べると尚 美味しくって楽しくなって、身分なんか関係ないです」
「……」
ゲーテ王子は沈黙したまま紅茶を飲んでいた。
シャルロットが首を傾げる。
「このドーナツとやらは俺の国の城下でもよく売られていた。子供の頃はグリムとよく城を抜け出して、屋台で売られていた庶民ドーナツを一緒に食べたものだ」
切ないような寂しそうな横顔をシャルロットは見つめていた。
「グリムさんとは仲が良いの?」
「幼馴染だ。昔は……そうだな親友だった。だが、宰相をしていたあいつの親父が死んで、あいつが宰相の座を継いでからはどうかな。王子らしくしろだのなんだの小言が増えてやかましくなった、今じゃ顔合わせりゃ喧嘩ばっかだ。それが、まさかーー俺を国から追い出すなど」
「何か事情があったのではないですか?」
「単に俺がうざくなったんだろ」
ケッと捻くれたようにゲーテはそっ方を向いた。
シャルロットはあることを思い出していた。
「“王子の好きなもの 肉、卵、麺類、じゃがいも、王子の嫌いなもの ピーマン、ほうれん草、人参、豆、オクラ、きゅうり…”」
シャルロットはブツブツ呟いた。
ゲーテ王子はギョッとした。
「グリムさん、城を去る前にわざわざ厨房の料理人に書き置きを残したんですよ?第二騎士団のコハン団長にも直々に挨拶したようです。自分に厳しい人が自分を嫌いだとは限りません。ゲーテ王子を騎士団に入れたのも愛情を持ってのことだと思いますけど?」
「……、ふ、ふん、そうか」
相変わらずしかめっ面で不遜な態度だが、顔を耳まで真っ赤にして照れていた。
嬉しそう?だ。
「だから、ちゃんと騎士団にも行くべきですよ。サボってたら本当の意味で見限られちゃいますわ」
「そうだな、俺が騎士団で成果の一つでも出せばあいつもギャフンと言うだろう!」
「その意気ですわ!」
どうにか、真面目に騎士団の業務に当たってくれそうだ。
シャルロットは安堵した。
「頼もう!!」
野太い声と共に詰め所の扉が勢いよく開いた。
コハン団長だ。
ゲーテ王子はゲッと不味そうな顔をする。
先に反応したのはメリー団長だった。
「何の用よ、ノックしてから入室しろと散々言ってるわよね!?ほんとガサツね」
「うるせぇな、来たくて来たわけじゃねえよ。用があってきたんだよ、おらゲーテ王子、外走って来いと言っただろ!こんなところで何してんだ!」
団長2人は顔を合わせるたびにいがみ合う。
どうやら相性が悪いようだ。
コハン団長はズカズカと部屋に入ってきてゲーテ王子の首根っこを捕まえて引き摺りながら扉へ向かって歩き出した。
「離せ!無礼者っ」
「サボんじゃねえぞ、夕飯抜きにするぞ」
詰め所を出てもなお遠くから声が響いてる。
シャルロットはクスクス笑った。
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