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ワガママ王子様の更生プログラム〜ミレンハン国の俺様王子、騎士団で職業体験する
ドレスアップ
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-ミレンハン国 宮殿 大殿
「……これはなんの真似かな?」
グリムはニッコリと笑いながら声を凄め、真っ赤な絨毯の上に淹れたての紅茶を注いでいた。
侍女が顔面蒼白しながら脚と顎をガクガク大きく震わせていた。
「毒を盛るのが侍女の仕事だったかな?」
「……ち、ちがうんです!わ、わ、私は頼まれただけです!ほんとは嫌だったんです!でもっ……」
「あははは、僕の殺害計画とかそんな重要な話を宮殿内でするべきではなかったよね。間抜けな暗殺者さん?ごめんね?僕ってば地獄耳なんだ」
「ヒィッ」
グリムは笑ったまま部屋の隅に立っていた騎士2人に目配せをした。
騎士たちは黙って立ち竦む侍女を捕らえた。
「とうとう手段を選ばなくなってきましたね」
ハァっとグリムは深い息を吐いた。
「グリムさん!」
侍女を連れて出て行く騎士たちと入れ違いで秘書が緊迫した様子で部屋に入ってきた。
「チッ…思ったより早く王子の居場所を勘付かれたか。雑魚のくせになかなか聡い奴らですね」
グリムは立ち上がり、すぐさま秘書に指示を出した。
「馬車を出せ、クライシア大国へ向かうぞ。君は城のネズミたちの駆除を頼むよ」
*
ーーシャルロットの私室。
「とてもよく似合っております、シャルロット様」
侍女のリディが笑う。
リディの周りにいる侍女たちもウンウンと頷くのでシャルロットは少し照れたように笑った。
「ありがとう」
今夜クライシア大国の城で行われる舞踏会のためにグレース皇子からプレゼントしていただいたオートクチュールの淡い黄色と白を基調としたベルラインの可愛らしいドレス。
髪にはクロウが作ってくれたライムグリーンのアナベルの花のコサージュと、六芒星のイヤリングと天然石のネックレス。
それからコーラルピンクのヘルシーな色味の口紅を引き、髪もテールアップに整えてもらい着飾ったシャルロット。
「なんだか落ち着かないわ、普段はほとんどお仕着せかシンプルなワンピースだから」
「シャルロット様は無頓着すぎるわ。せっかく容姿もお可愛らしいのに」
リディは不満そうに苦笑い。
自国に居た頃は毎日母やリディの着せ替え人形にされていたっけ、シャルロットは思い出し笑った。
前世からファッションには疎いシャルロット。
昔も最低限の薄化粧だったし、服を買うのも機能性や動きやすさ重視だった。
準備が整ったところで私室の扉がノックされた。
入室してきたのは第一騎士団のキャロルと、キャロルの腕に抱かれた黒チワワのクロウだった。
「姫様、お迎えにあがりまし……」
「わぁ!シャルロット!可愛い!」
「わっ」
キャロルの挨拶を遮って黒チワワはシャルロットに思い切り飛びついた。
シャルロットは不意打ちと慣れないヒールの靴でうっかりよろめいた。
キャロルは咄嗟に黒チワワの首根っこを捕まえ回収し、後ろに倒れそうになったシャルロットを腰に腕を回し支える。
「ありがとう、キャロルさん」
「もっ……申し訳ございませんっっ」
倒れるのを防ぐ為だったとはいえシャルロットを抱き寄せる体勢になってしまったことに今更気付いて、キャロルは顔を真っ赤にして思い切り頭を下げた。
「いいえ、悪いのは突進してきたクロウですわ。転倒せずにすみました。ありがとう」
ドラジェの精霊の祝福を受けて以後、今までは城内であれば自由に行動ができたのだがーー今後はどこへ行くのも第一騎士団のキャロルとアダムの護衛が必須となった。
「幻狼の私が居れば護衛なんて要らないのにねえ」
「チワワの姿で言われても説得力ありませんわ。まあ、でも、護衛は大袈裟よね」
「何を仰います、“ドラジェの精霊の祝福を受けた乙女”はどの国も喉から手が出るほど欲しがる貴重な存在です。まだ公になってはいませんが、既に噂も広がりつつあります。もし姫様が誘拐でもされたら……」
「うーん……そ、そうなの……」
力説してくるキャロルに押されてシャルロットは頷いた。
「あ!キャロルさん、まだ夜の舞踏会にはお時間ありますわよね?庭園のガゼボでお茶でもどうかしら?リディ、よろしくね」
「了解しました」
シャルロットはキャロルの腕を引きニコニコ笑いながらバラ庭園を目指した。
「姫様?」
キャロルは困惑している。
「……これはなんの真似かな?」
グリムはニッコリと笑いながら声を凄め、真っ赤な絨毯の上に淹れたての紅茶を注いでいた。
侍女が顔面蒼白しながら脚と顎をガクガク大きく震わせていた。
「毒を盛るのが侍女の仕事だったかな?」
「……ち、ちがうんです!わ、わ、私は頼まれただけです!ほんとは嫌だったんです!でもっ……」
「あははは、僕の殺害計画とかそんな重要な話を宮殿内でするべきではなかったよね。間抜けな暗殺者さん?ごめんね?僕ってば地獄耳なんだ」
「ヒィッ」
グリムは笑ったまま部屋の隅に立っていた騎士2人に目配せをした。
騎士たちは黙って立ち竦む侍女を捕らえた。
「とうとう手段を選ばなくなってきましたね」
ハァっとグリムは深い息を吐いた。
「グリムさん!」
侍女を連れて出て行く騎士たちと入れ違いで秘書が緊迫した様子で部屋に入ってきた。
「チッ…思ったより早く王子の居場所を勘付かれたか。雑魚のくせになかなか聡い奴らですね」
グリムは立ち上がり、すぐさま秘書に指示を出した。
「馬車を出せ、クライシア大国へ向かうぞ。君は城のネズミたちの駆除を頼むよ」
*
ーーシャルロットの私室。
「とてもよく似合っております、シャルロット様」
侍女のリディが笑う。
リディの周りにいる侍女たちもウンウンと頷くのでシャルロットは少し照れたように笑った。
「ありがとう」
今夜クライシア大国の城で行われる舞踏会のためにグレース皇子からプレゼントしていただいたオートクチュールの淡い黄色と白を基調としたベルラインの可愛らしいドレス。
髪にはクロウが作ってくれたライムグリーンのアナベルの花のコサージュと、六芒星のイヤリングと天然石のネックレス。
それからコーラルピンクのヘルシーな色味の口紅を引き、髪もテールアップに整えてもらい着飾ったシャルロット。
「なんだか落ち着かないわ、普段はほとんどお仕着せかシンプルなワンピースだから」
「シャルロット様は無頓着すぎるわ。せっかく容姿もお可愛らしいのに」
リディは不満そうに苦笑い。
自国に居た頃は毎日母やリディの着せ替え人形にされていたっけ、シャルロットは思い出し笑った。
前世からファッションには疎いシャルロット。
昔も最低限の薄化粧だったし、服を買うのも機能性や動きやすさ重視だった。
準備が整ったところで私室の扉がノックされた。
入室してきたのは第一騎士団のキャロルと、キャロルの腕に抱かれた黒チワワのクロウだった。
「姫様、お迎えにあがりまし……」
「わぁ!シャルロット!可愛い!」
「わっ」
キャロルの挨拶を遮って黒チワワはシャルロットに思い切り飛びついた。
シャルロットは不意打ちと慣れないヒールの靴でうっかりよろめいた。
キャロルは咄嗟に黒チワワの首根っこを捕まえ回収し、後ろに倒れそうになったシャルロットを腰に腕を回し支える。
「ありがとう、キャロルさん」
「もっ……申し訳ございませんっっ」
倒れるのを防ぐ為だったとはいえシャルロットを抱き寄せる体勢になってしまったことに今更気付いて、キャロルは顔を真っ赤にして思い切り頭を下げた。
「いいえ、悪いのは突進してきたクロウですわ。転倒せずにすみました。ありがとう」
ドラジェの精霊の祝福を受けて以後、今までは城内であれば自由に行動ができたのだがーー今後はどこへ行くのも第一騎士団のキャロルとアダムの護衛が必須となった。
「幻狼の私が居れば護衛なんて要らないのにねえ」
「チワワの姿で言われても説得力ありませんわ。まあ、でも、護衛は大袈裟よね」
「何を仰います、“ドラジェの精霊の祝福を受けた乙女”はどの国も喉から手が出るほど欲しがる貴重な存在です。まだ公になってはいませんが、既に噂も広がりつつあります。もし姫様が誘拐でもされたら……」
「うーん……そ、そうなの……」
力説してくるキャロルに押されてシャルロットは頷いた。
「あ!キャロルさん、まだ夜の舞踏会にはお時間ありますわよね?庭園のガゼボでお茶でもどうかしら?リディ、よろしくね」
「了解しました」
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「姫様?」
キャロルは困惑している。
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