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*シャルロット姫と食卓外交
夫の甘い軟禁?
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「ん~~?里緒?」
クロウが目を覚ました。
ベッドのそばの小さな椅子に座っていたシャルロットを見つけパァッと明るく笑うとすぐさま後ろから腰に腕を回し、またズルズルとベッドの中に引きずり込む。
「クロウ……」
「ウフフ、里緒~」
もう半日近くもずっとこの調子だ。
シャルロットはなんとかクロウの腕から逃れると彼に言った。
「あのね、クロウ。お願いがあるのっ!」
「なあに?」
「あの、私、お風呂に入りたいわ!身体中 汗でベタベタだもの。着替えもしたいわ」
「じゃあ私が濡れ布巾で拭いてあげる」
クロウはニコニコ笑ってる。
この塔には入浴室は無い、水場もない、お風呂に入るためには一度この塔から出なければいけないのだ。
シャルロットはゴホンっと咳払いをし、はっきりと言った。
「せめて水浴びくらいさせてほしいわ。この塔の近くに湖があるでしょう?そこで湖水浴がしたいのだけど」
「それなら良いよ」
よかった、納得してくれた。
シャルロットは気分が上がった。
*
またクロウにお姫様だっこをされて塔を降下した。
シャルロットはクロウに腕の中で先ほどの白い鳩の姿のアダムと交わした話を思い出していた。
シャルロットを救出に第二騎士団を中心に騎士が王有林に入ったこと、
クロウの塔には結界が二重三重に張り巡らされてあって、優秀な魔人が集う第一騎士団でさえ結界をぶち破れず立ち入れないこと、
どうにかシャルロット自身でクロウを誘導して塔から出て欲しい、アダムは言った。
クロウを騙すようで気分は悪いが、この際仕方ない。
他国の姫、この国の皇子の婚約者を勝手に連れ出して監禁したことが発覚すれば、幻狼のクロウだってきっと何かしら罰を受けるかもしれない。
ーーだからごめんね。
シャルロットは心の中で目の前の彼に謝った。
やがて湖畔に降り立った。
朝焼けの中、水面は曙色に染まっていて雲の隙間から差し込む光でキラキラ光っていた。
空気はよく澄んでいて、風も涼しく心地よい。
「服を脱ぐからあっちへ行ってちょうだい。覗いちゃだめよ?」
「夫婦なんだから気にしなくても良いのに~」
「ダメよ。覗いたら一生口聞かないわ。わかった?」
「はぁい」
急に戻ってきて変に思われないように、形だけでも湖水浴をしよう。
シャルロットはドレスを脱ぎ髪を束ねるとシュミーズ姿になった。
着ていた服をクロウに渡したから、さすがに肌着姿で逃げるわけないって思い込んで気を緩めてくれるだろう。
城から着替えを持ってくるように頼んだし、時間は稼げた。
シャルロットはクロウに立ち去った後をキョロキョロ見渡して、居なくなった事を確認すると胸を撫で下ろした。
そしてひんやりと冷たい湖の中に入水。
そして騎士たちの助けを待つ……。
やがて羽音とともに頭上に白い鳩が現れた。
シャルロットは表情を明るくさせた。
「姫様」
「アダムさん!」
「こっちです、早く」
シャルロットは濡れたシュミーズ姿のまま湖から出ると、アダムが誘導してくれた方向へと裸足のまま足を進めた。
しばらく進んだのち、アダムは変化を解いて元の姿に戻った。
そして自身が着ていたマントを脱ぐと、それを肌着一枚のシャルロットに羽織らせた。
そして気遣うようにニッコリと微笑んでる。
「着ていてください」
「ありがとうございます」
「いいえ。早く、皇子たちと合流しましょう」
「……グレース様もいらっしゃるの?」
「姫様の事を大変心配しておられました」
クロウが目を覚ました。
ベッドのそばの小さな椅子に座っていたシャルロットを見つけパァッと明るく笑うとすぐさま後ろから腰に腕を回し、またズルズルとベッドの中に引きずり込む。
「クロウ……」
「ウフフ、里緒~」
もう半日近くもずっとこの調子だ。
シャルロットはなんとかクロウの腕から逃れると彼に言った。
「あのね、クロウ。お願いがあるのっ!」
「なあに?」
「あの、私、お風呂に入りたいわ!身体中 汗でベタベタだもの。着替えもしたいわ」
「じゃあ私が濡れ布巾で拭いてあげる」
クロウはニコニコ笑ってる。
この塔には入浴室は無い、水場もない、お風呂に入るためには一度この塔から出なければいけないのだ。
シャルロットはゴホンっと咳払いをし、はっきりと言った。
「せめて水浴びくらいさせてほしいわ。この塔の近くに湖があるでしょう?そこで湖水浴がしたいのだけど」
「それなら良いよ」
よかった、納得してくれた。
シャルロットは気分が上がった。
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またクロウにお姫様だっこをされて塔を降下した。
シャルロットはクロウに腕の中で先ほどの白い鳩の姿のアダムと交わした話を思い出していた。
シャルロットを救出に第二騎士団を中心に騎士が王有林に入ったこと、
クロウの塔には結界が二重三重に張り巡らされてあって、優秀な魔人が集う第一騎士団でさえ結界をぶち破れず立ち入れないこと、
どうにかシャルロット自身でクロウを誘導して塔から出て欲しい、アダムは言った。
クロウを騙すようで気分は悪いが、この際仕方ない。
他国の姫、この国の皇子の婚約者を勝手に連れ出して監禁したことが発覚すれば、幻狼のクロウだってきっと何かしら罰を受けるかもしれない。
ーーだからごめんね。
シャルロットは心の中で目の前の彼に謝った。
やがて湖畔に降り立った。
朝焼けの中、水面は曙色に染まっていて雲の隙間から差し込む光でキラキラ光っていた。
空気はよく澄んでいて、風も涼しく心地よい。
「服を脱ぐからあっちへ行ってちょうだい。覗いちゃだめよ?」
「夫婦なんだから気にしなくても良いのに~」
「ダメよ。覗いたら一生口聞かないわ。わかった?」
「はぁい」
急に戻ってきて変に思われないように、形だけでも湖水浴をしよう。
シャルロットはドレスを脱ぎ髪を束ねるとシュミーズ姿になった。
着ていた服をクロウに渡したから、さすがに肌着姿で逃げるわけないって思い込んで気を緩めてくれるだろう。
城から着替えを持ってくるように頼んだし、時間は稼げた。
シャルロットはクロウに立ち去った後をキョロキョロ見渡して、居なくなった事を確認すると胸を撫で下ろした。
そしてひんやりと冷たい湖の中に入水。
そして騎士たちの助けを待つ……。
やがて羽音とともに頭上に白い鳩が現れた。
シャルロットは表情を明るくさせた。
「姫様」
「アダムさん!」
「こっちです、早く」
シャルロットは濡れたシュミーズ姿のまま湖から出ると、アダムが誘導してくれた方向へと裸足のまま足を進めた。
しばらく進んだのち、アダムは変化を解いて元の姿に戻った。
そして自身が着ていたマントを脱ぐと、それを肌着一枚のシャルロットに羽織らせた。
そして気遣うようにニッコリと微笑んでる。
「着ていてください」
「ありがとうございます」
「いいえ。早く、皇子たちと合流しましょう」
「……グレース様もいらっしゃるの?」
「姫様の事を大変心配しておられました」
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