シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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シャルロットと精霊博士のサンクスギビング・ターキーデー

大きなドレスケーキとお礼のエッグノッグ

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なんとかジュリアンが学園中を走り型になりそうなものを借りれないかと聞き回り、他学部にあった大鍋を借りることが出来た。
釣鐘型の巨大な鉄鍋で、大人数分のスープを作るときに使用する学園の備品らしい。

釣鐘型の鍋にスポンジケーキと生クリーム、フルーツやジャムを交互に詰めて、重たいので騎士のアーサーやグレイ、フクシアが魔法で浮かせて展示台の上にひっくり返してくれた。
そしてゆっくりと鍋を持ち上げると、綺麗なドーム型に型にスポンジケーキが整った。

「大っきいケーキ~!」

エステルとスノウはケーキを見上げた。

「まだまだよ」

学生達は踏み台を持ってきて、各々協力してケーキのデコレーションを始めた。
シャルロットは少し離れた場所に下がり、それを見守っていた。

「すごいわ……!」

職人技のような手付きでさらさらとカラフルに着色した生クリームを絞り、宝石のようにキラキラ輝く蜜漬けのフルーツや飴細工の花をトッピング、ケーキに生花まで飾り付けている。

「あれはエディブルフラワーよ、食べられる花なの」

ジュリアンが教えてくれた。

「へえ~、綺麗ね」

学生の1人がドームケーキの中央に、大きな人型のクッキーを差した。

「あれって……!」

ドームケーキはあっという間にフレアな舞踏会用のドレスに、ふわふわの薄ピンク色の髪はコットンキャンデーで出来てる。
帽子や周りのお花は繊細な飴細工。

短時間でここまで作れるなんて、エスター国の菓子職人のたまごたちの技術は素晴らしい。

「素敵ですわ!可愛いお姫様のケーキね」

「すごい……美術品のようですね」

「ああ、クライシア大国のケーキや菓子はこじんまりしてて地味なものばっかだからなあ……」

「お料理って国民性が出るわよね」

騎士らとケーキを見つめながら談笑していた。

「シャルロット~~!」

人型のクロウが会場にやってきてシャルロットを後ろから思い切り抱きしめた。
そのままシャルロットの肩に手を回してギューっと抱き着いている。

「あ、エステルもいる~!エステルもギュ~」

「あはは、パパ、久しぶり!」

クロウはエステルをハグした。
エステルは嬉しそうに笑顔になった。

「クロウ、展示会の方はどうなったの?」

展示されていた精霊は全て逃げてしまった。
眠り猫の魔法で展示会にいた人たちは眠ってしまっていたので、目を覚ました途端大騒ぎだったみたいだ。

「今は封鎖してるよ~、売人たちなんて顔が真っ青でさ~、取引中だったお客さんと大揉めしちゃって修羅場で面白かったよ~!」

クロウは楽しそうだった。
誰もベンジャミンとクロウの仕業だとは気付いていないみたい。

ケーキが次々に完成し、販売用のケーキも準備するとオープンの時間がやってきた。
予定より1時間も遅れてしまったけれど、外には大行列。

「シャルルさん、これ、学生のみんなからお礼だってさ!」

騎士アヴィとキャロルが運んできたのはエッグノッグと呼ばれているエスター国の国民的なドリンクだった。
牛乳と生クリームに溶き卵を加えて砂糖で甘くしたミルクセーキに似てる。
今の時期によく飲まれている伝統的な飲料で、コンテスト会場で販売用に作っていたものだ。

「うふふ。甘~い、シナモンのいい香りもするわ」

一口飲むと、シャルロットは顔を緩めた。

「美味しいね、お母ちゃん」

グレイの手で飲まされていたスノウもにっこり笑顔になる。
ジュリアンもエッグノッグを見つめながら小さく笑っていた……。

「久し振りにケーキが作れて………楽しかったわ」

「ジュリアンさんはケーキ作りが好きなのね。クリームを撹拌するのも上手だし、すごく手際もよかったわ!」

「まーね……」

「ねえ、エスター国ではこれから感謝祭っていう行事があるんでしょ?」

来週行われる感謝祭、サンクスギビングデーはエスター国のビッグイベントで国を挙げてパレードをしたり、家族で集まってパーティーをするようだ。

シャルロットは初めて参加するイベントに心を躍らせていた。

「私の家で一緒にケーキやご馳走を作りましょう?ジュリアンさんのお祖母様も招待して、みんなで、ね?」

「シャルロット……、あたしは……お祖母ちゃんに合わせる顔なんてないわよ。最後に会ったときから喧嘩別れしたままだし」

さっきアヴィからチラッとジュリアンの境遇などについて聞いた。

「感謝祭って家族や友達や周りの人に、日頃良くしてもらってありがとうって感謝を伝えるお祭りでしょ?お祖母様のために美味しいケーキを焼きましょうよ。美味しいものを一緒に食べれば、きっとすぐに仲直りできるわ」

私も、グレース様と仲直りしなきゃ……。
ちゃんと話し合えばよかったのに、お互いに意地を張り合ってーー。

帰ったら、とりあえずゴメンって謝ろうと、シャルロットは胸の内で思っていた。
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