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シャルロットと精霊博士のサンクスギビング・ターキーデー
ケーキに命をふきこもう
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「にゃあん」
上の階から綺麗な水色の毛色をした猫が飛び降りてきた。
お尻にはハート型の痣がある。
猫が鳴くと、眠り込んでいた周囲の人達が一斉に目を覚ました。
「え?」
「どうして……」
「わああ!」
辺りはめちゃくちゃな光景を見て騒然としていた。
「ベンジー!」
水色の猫は宙で華麗に一回転すると美しい女性の姿に変化し、真下にいたベンジャミンの首に思い切り抱き着いた。
そして彼の頰にキッスした。ベンジーは苦笑しながら彼女の頭を撫でた。
ベンジャミンに纏わり付いたまま、側にいたシャルロットやジュリアンを警戒するように見てる。
「眠り猫っていう眠りの精霊だ。彼女の力でみんなを眠らせていたんだ」
「えっと……シャルロットですわ」
「わたしはポピーよ、ベンジーの番なの!わたしのベンジーに横恋慕しないでねっ!」
「おいおい、違うだろ。ポピーは俺が契約してる精霊だ」
ベンジャミンは困ったようにすぐさま訂正する。眠り猫のポピーはベンジャミンにメロメロでデレデレ、恋しているようだった。
「……えっと、そういえば貴女……」
シャルロットはジュリアンの顔を見た。
「あたしはジュリアンよ。シャルロットって言うの?そっちはベンジー?」
ジュリアンは元気がない、頰を真っ赤に腫らし浮かない顔をしていた。
「あの……」
気まずそうにベンジーに話し掛けた。
ベンジーは穏やかな顔をして彼女の頭を撫でてあげた。
「ジュリアン、お願いがあるんだ。密猟者や売人達について情報をくれないか?もう、あの黒馬のような被害は出したくないんだ……」
「力になれるのかわからないけど協力するよ!……それであたしのして来た事が清算されるわけじゃないけど、償いをするチャンスが欲しいの……」
「わかった、よろしく頼むよ」
2人は握手を交わした。
「あ…、ケーキが潰れちゃってるわ……」
スイーツアートコンテストの会場を覗くと、目を覚ました学生らが頭を抱えながら絶叫していた。
シャルロットは会場の中に入ると、絶望している学生たちに向かって声を上げた。
決して裕福ではない学生が集まる菓子職人育成コースは色々と金を掛かる。
コンテストは客から入場料を取ったり、ケーキを販売して利益を出し、授業の諸経費を補填するための金を集めることが最大の目的だった。
これでは今年は難しい。
「みんなで手を合わせて、作り直しましょう?あなた達のケーキを楽しみにしてる人達がいっぱいいるの。私もその1人よ!諦めちゃダメよ」
「あなたは……」
「私はシャルロットよ、私も手伝うわ」
出しゃばった真似だったけど、学生らはフレンドリーにシャルロットを歓迎した。
「ジュリアン、あなたも手伝ってちょうだい」
「あたし……?」
「ええ!」
シャルロットはにっこりと笑った。
ジュリアンは戸惑っていたが、黙って頷いた。
みんなで掃除を済ませて、ケーキの修復に当たった。
「そこまで酷い状態じゃないわ、生クリームを削いで使えそうなスポンジを集めて」
「え……?焼き直すんじゃなくて、ダメになったケーキを再利用するんですか?」
学生らは不思議そうな顔をした。
「材料も限られているし、焼き直すには時間が足りないわ。何より、まだ食べられる部分も多いものーー全部破棄するにはもったいないわ。それに、あなた達が一生懸命作ったものよ?」
「あ、あのっ……、崩れたスポンジを使って『ドームケーキ』を作るのはどう?型に押し込んで固めれば形になるさ!粉々に崩れたやつもサンデーの土台に利用して販売用に回せばいいわよ」
ジュリアンがアイディアを投じた。
皆は彼女に注目した。
幼い頃、ジュリアンはスポンジケーキ作りに何度も失敗していた。
どうしても焼きあがった時にヒビが入ったり、膨らみが足りなかったり、崩れてしまうのだ。
失敗したスポンジをジュリアンの母は捨てずに他のケーキにリメイクしてくれた。
絶望的なケーキが魔法がかかったように息を吹き返すのだ。
「でも、型がないわ……」
「あたしが学園内を回って探してくる!」
ジュリアンは走り出した。
上の階から綺麗な水色の毛色をした猫が飛び降りてきた。
お尻にはハート型の痣がある。
猫が鳴くと、眠り込んでいた周囲の人達が一斉に目を覚ました。
「え?」
「どうして……」
「わああ!」
辺りはめちゃくちゃな光景を見て騒然としていた。
「ベンジー!」
水色の猫は宙で華麗に一回転すると美しい女性の姿に変化し、真下にいたベンジャミンの首に思い切り抱き着いた。
そして彼の頰にキッスした。ベンジーは苦笑しながら彼女の頭を撫でた。
ベンジャミンに纏わり付いたまま、側にいたシャルロットやジュリアンを警戒するように見てる。
「眠り猫っていう眠りの精霊だ。彼女の力でみんなを眠らせていたんだ」
「えっと……シャルロットですわ」
「わたしはポピーよ、ベンジーの番なの!わたしのベンジーに横恋慕しないでねっ!」
「おいおい、違うだろ。ポピーは俺が契約してる精霊だ」
ベンジャミンは困ったようにすぐさま訂正する。眠り猫のポピーはベンジャミンにメロメロでデレデレ、恋しているようだった。
「……えっと、そういえば貴女……」
シャルロットはジュリアンの顔を見た。
「あたしはジュリアンよ。シャルロットって言うの?そっちはベンジー?」
ジュリアンは元気がない、頰を真っ赤に腫らし浮かない顔をしていた。
「あの……」
気まずそうにベンジーに話し掛けた。
ベンジーは穏やかな顔をして彼女の頭を撫でてあげた。
「ジュリアン、お願いがあるんだ。密猟者や売人達について情報をくれないか?もう、あの黒馬のような被害は出したくないんだ……」
「力になれるのかわからないけど協力するよ!……それであたしのして来た事が清算されるわけじゃないけど、償いをするチャンスが欲しいの……」
「わかった、よろしく頼むよ」
2人は握手を交わした。
「あ…、ケーキが潰れちゃってるわ……」
スイーツアートコンテストの会場を覗くと、目を覚ました学生らが頭を抱えながら絶叫していた。
シャルロットは会場の中に入ると、絶望している学生たちに向かって声を上げた。
決して裕福ではない学生が集まる菓子職人育成コースは色々と金を掛かる。
コンテストは客から入場料を取ったり、ケーキを販売して利益を出し、授業の諸経費を補填するための金を集めることが最大の目的だった。
これでは今年は難しい。
「みんなで手を合わせて、作り直しましょう?あなた達のケーキを楽しみにしてる人達がいっぱいいるの。私もその1人よ!諦めちゃダメよ」
「あなたは……」
「私はシャルロットよ、私も手伝うわ」
出しゃばった真似だったけど、学生らはフレンドリーにシャルロットを歓迎した。
「ジュリアン、あなたも手伝ってちょうだい」
「あたし……?」
「ええ!」
シャルロットはにっこりと笑った。
ジュリアンは戸惑っていたが、黙って頷いた。
みんなで掃除を済ませて、ケーキの修復に当たった。
「そこまで酷い状態じゃないわ、生クリームを削いで使えそうなスポンジを集めて」
「え……?焼き直すんじゃなくて、ダメになったケーキを再利用するんですか?」
学生らは不思議そうな顔をした。
「材料も限られているし、焼き直すには時間が足りないわ。何より、まだ食べられる部分も多いものーー全部破棄するにはもったいないわ。それに、あなた達が一生懸命作ったものよ?」
「あ、あのっ……、崩れたスポンジを使って『ドームケーキ』を作るのはどう?型に押し込んで固めれば形になるさ!粉々に崩れたやつもサンデーの土台に利用して販売用に回せばいいわよ」
ジュリアンがアイディアを投じた。
皆は彼女に注目した。
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どうしても焼きあがった時にヒビが入ったり、膨らみが足りなかったり、崩れてしまうのだ。
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絶望的なケーキが魔法がかかったように息を吹き返すのだ。
「でも、型がないわ……」
「あたしが学園内を回って探してくる!」
ジュリアンは走り出した。
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