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シャルロットと精霊博士のサンクスギビング・ターキーデー
ベンジーと優しい精霊博士
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ベンジャミン・シーボルト、両親は魔人で、北大陸にあるペレー国出身の軍医だった。
両親はベンジャミンが生まれる前に仕事で新大陸エスター国に移住した。
先祖代々医者家系の家に産まれたベンジャミンは、当然のように幼い頃から医師を目指していた。
ベンジャミンが5歳になったばかりの冬。
両親が軍医として戦場へ駆り出されることになったため、ベンジャミンは幼い妹と一緒にペレー国の祖父母の元へ2~3年ほど預けられることになった。
そこで父方の祖父母と初めて対面した。
父と同じく大柄で体格の良い祖父は立派な白ひげを生やしていて、優しげな目をしていた。祖母はふっくらとした丸っこい体型で元気で明るい女性。
祖父は王家にも仕えていた優秀な医師、祖母は看護婦をしていたらしい。
二人とも既に引退しており、田舎でのんびりと暮らしていた。
エスター国の都会で生まれ育ったベンジャミンにはド田舎暮らしは毎日が新鮮だった。
ある日、裏山にある祖父の秘密のログハウスの中に、ベンジャミンは招かれた。
祖父がログハウスに近付くと木立の中から不思議な光の玉がフヨフヨと宙を泳いで現れた。
「精霊だ!」
エスター国にもいるが、数が全然違う。
ベンジャミンは飛び跳ねて喜んだ。
「博士」
精霊達は祖父をそう呼び、慕っていた。
祖父も満更ではない様子だった。
昔から趣味で、精霊について研究していた祖父はベンジャミンにいろいろなことを教えてくれた。
ベンジャミンは率先して研究のアシスタントをしていた。
精霊の折れた羽根を治してあげたり、魔力が枯渇した精霊を回復させたり、魔物に襲われて瀕死の精霊を蘇生したり…、祖父の隣で色んなものを見て来た。
「すごい!おじいちゃんは精霊のお医者さんなんだね~!」
ベンジャミンは祖父をとても尊敬していた。
しかし、両親は「精霊などくだらない」と祖父を馬鹿にしていた。
それから、ベンジャミンが16歳になった春に祖父は老衰で亡くなった。
彼は祖父がもう長くはないと報せを受け、家族でペレー国までやって来ていた。
祖父の死に目に会うことができたのは幸いだった。
祖父の葬式の日には大陸中から精霊がたくさん集まり、野山から摘んできた花を一輪ずつ棺に添えて、祖父の遺体はあっという間に花で埋もれてしまった。
ベンジャミンは安らかに眠る祖父の顔を見て決意した。
「俺……おじいちゃんの跡を継いで、精霊博士になる!」
もちろん、両親は猛反対だった。
「何、馬鹿みたいなことを言ってるの?」
「ああ、親父にお前を預けるんじゃなかった……」
眉をひそめる両親を前に、ベンジャミンは絶対に引かなかった。
成績優秀で将来を期待されていた自慢の息子を、そんな得体の知れないものにさせたくなかったようだ。
それから何年も説得して、医師の資格を取ったら好きにさせてもらえる約束で親達も妥協した。
それなのにーー今後は医師ではなく精霊の研究をメインにしていくと話した途端に、両親は激怒し、学費などの支援を強引に断ち切った。
だから、自身で開発した新薬や研究データを売ったりして金を工面していた。
ある日、ベンジャミンの研究所にある男から依頼が入った。
畑を魔物に食い荒らされて困っているので、魔物の捕獲用のケージを作って欲しいという依頼だ。
男には大金を前払いでもらっていたし、捕獲用ケージは容易く作ることができた。
大量発注で大変だったが、まとまった金が入るのでケージを作っては、男に渡していた。
しかし、ベンジャミンが造ったケージは密猟者に高値で転売され、精霊を捕獲することに悪用されていた。
それを知ったベンジャミンはショックを受け、同時に激しく悔いた。
だから、彼は自分の手でーー自分が造った忌々しいケージを破壊して精霊たちを救出していた。
しかしケージの設計図は既に他者へ渡っており、どんなに破壊してもケージは量産されていく、歯止めが効かない。
なんとかして精霊の密猟を終わらせなければ……!
厳しい状況のなか、ベンジャミンは気を強く持った。
両親はベンジャミンが生まれる前に仕事で新大陸エスター国に移住した。
先祖代々医者家系の家に産まれたベンジャミンは、当然のように幼い頃から医師を目指していた。
ベンジャミンが5歳になったばかりの冬。
両親が軍医として戦場へ駆り出されることになったため、ベンジャミンは幼い妹と一緒にペレー国の祖父母の元へ2~3年ほど預けられることになった。
そこで父方の祖父母と初めて対面した。
父と同じく大柄で体格の良い祖父は立派な白ひげを生やしていて、優しげな目をしていた。祖母はふっくらとした丸っこい体型で元気で明るい女性。
祖父は王家にも仕えていた優秀な医師、祖母は看護婦をしていたらしい。
二人とも既に引退しており、田舎でのんびりと暮らしていた。
エスター国の都会で生まれ育ったベンジャミンにはド田舎暮らしは毎日が新鮮だった。
ある日、裏山にある祖父の秘密のログハウスの中に、ベンジャミンは招かれた。
祖父がログハウスに近付くと木立の中から不思議な光の玉がフヨフヨと宙を泳いで現れた。
「精霊だ!」
エスター国にもいるが、数が全然違う。
ベンジャミンは飛び跳ねて喜んだ。
「博士」
精霊達は祖父をそう呼び、慕っていた。
祖父も満更ではない様子だった。
昔から趣味で、精霊について研究していた祖父はベンジャミンにいろいろなことを教えてくれた。
ベンジャミンは率先して研究のアシスタントをしていた。
精霊の折れた羽根を治してあげたり、魔力が枯渇した精霊を回復させたり、魔物に襲われて瀕死の精霊を蘇生したり…、祖父の隣で色んなものを見て来た。
「すごい!おじいちゃんは精霊のお医者さんなんだね~!」
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しかし、両親は「精霊などくだらない」と祖父を馬鹿にしていた。
それから、ベンジャミンが16歳になった春に祖父は老衰で亡くなった。
彼は祖父がもう長くはないと報せを受け、家族でペレー国までやって来ていた。
祖父の死に目に会うことができたのは幸いだった。
祖父の葬式の日には大陸中から精霊がたくさん集まり、野山から摘んできた花を一輪ずつ棺に添えて、祖父の遺体はあっという間に花で埋もれてしまった。
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「俺……おじいちゃんの跡を継いで、精霊博士になる!」
もちろん、両親は猛反対だった。
「何、馬鹿みたいなことを言ってるの?」
「ああ、親父にお前を預けるんじゃなかった……」
眉をひそめる両親を前に、ベンジャミンは絶対に引かなかった。
成績優秀で将来を期待されていた自慢の息子を、そんな得体の知れないものにさせたくなかったようだ。
それから何年も説得して、医師の資格を取ったら好きにさせてもらえる約束で親達も妥協した。
それなのにーー今後は医師ではなく精霊の研究をメインにしていくと話した途端に、両親は激怒し、学費などの支援を強引に断ち切った。
だから、自身で開発した新薬や研究データを売ったりして金を工面していた。
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しかしケージの設計図は既に他者へ渡っており、どんなに破壊してもケージは量産されていく、歯止めが効かない。
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