シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

文字の大きさ
上 下
208 / 262
シャルロットと精霊博士のサンクスギビング・ターキーデー

白雪の子幻狼

しおりを挟む

ここは新大陸エスター国にある大学都市。

この広い街全部がアカデミーが所有する区域だと言うから驚きだ。
シャルロットとグレース、3匹の幻狼たちがここへ引っ越し、早いもので3ヶ月が経過していた。
季節はすっかり秋、それも通り越して冬が近付いていた。

シャルロット達が生活しているのは大学都市内でも一等地にある邸宅。
ここはエスター国の大統領が直々に貸してくれた邸宅で、とても華やかな豪邸だ。

キングサイズの大きベッドでシャルロットはグレース皇子に寄り添いすやすやと寝息を立てて眠っていた。
夜も深まった頃ーーベッドの下で伏せ寝していたオオカミ姿のグレイは静かに立ち上がり、何も言わずに寝室を抜け出た。

「ぐっ、グレイ~」

その後ろを慌てた様子のフクシアが追い掛ける。

「……ん……?グレイ?……」

シャルロットはふと眼を覚ます。
足元でオオカミ姿のクロウが鼻提灯を膨らませ、ムニャムニャ寝言を言いながら丸まって眠っていた。

「シャルロット、どうした?」

グレース皇子も一緒に眼を覚ます。

「いいえ…。ごめんなさい、起こしてしまったかしら……」

シャルロットはベッドから降りると、寝室を出た。
真っ暗な廊下を進むと、突然 左手にある扉が開いたままの一室が白く発光した。

「???」

部屋を覗くと、居間の窓辺で月の光を浴びたグレイが苦しそうな顔で震えていた。
フクシアはグレイに付き添い、不安げな顔をしている。

「グレイっ……どうしたの?」

シャルロットはびっくりして思わず声を上げた、それから真っ直ぐに彼らの元へ駆け付ける。
 グレイから放たれる白い光は更に強まり、やがて白い光の玉が弾けるように飛び出した。

眩しさに眼を細めていたシャルロットーーやがて光が引くと、そこには子オオカミが立っていた。

「!、ま、まぁ!幻狼の赤ちゃんだわ」

真っ白な毛並みに円らな黄金の瞳を持つカワイイ子幻狼だった。
グレイは愛おしそうに我が子を見つめて、身体をグルーミングしていた。
フクシアは床に飛び跳ねて大喜びしている。

「はじめまして、グレイの赤ちゃん」

「オレが父ちゃんだぜー!我が子よー!」

「ねえ、赤ちゃんの名前は決めてあるの?」

「……雪のように白いから、スノウにしよう。」

グレイは我が子の顔をペロリと舐めてあげながら、淡々と言った。

「スノウか~!よろしくだぜ、スノウ~うはは!」

祝福ムード、嬉しくって深夜だと言うことも忘れてはしゃぎ出すフクシアとシャルロットだったが、だんだんとグレイの顔が曇って行くのに気付いた。
グレイが見つめる子オオカミは元気が無く、フラフラしており脚元が覚束ない。
やがてパッタリとグレイにもたれかかるように倒れてしまった。

「スノウ……?」

グレイは眼を見開いている。

「え?どっ……どうしちゃったの?」

子幻狼のスノウは眼を開いているが、具合がとても悪そうだ。プルプルと身震いしている。
2匹の幻狼は心配そうに弱ってる我が子の顔を覗き込んだ。

「グレイ?子が産まれたのかーー」

遅れて部屋にやって来たグレース皇子の声に、シャルロットは振り向いた。

「ええ。でも、なんだか様子がおかしいの……」

「……」

グレース皇子は子オオカミの身体を優しく撫でて考え込んだ。


「オレの赤ちゃん、どうしちゃったの?病気なの?」

「わからん。東の魔女ルシアに診てもらうにも、ここからじゃ遠いからな……。転移魔法するにもこの様子じゃ体がもたないだろう」

「……スノウ……」

「……俺が通ってるアカデミーに精霊に詳しい奴がいる。精霊博士って呼ばれているんだ。そいつに診てもらおうか」

「できるなら、お願いしてもいいかしら?心配だもの」

不安でいっぱいな様子のグレイの頭を、シャルロットは落ち着かせるように微笑しながら撫でてあげる。

「きっと大丈夫よ、グレイ」

「シャルロット……、うん……」

グレイはシャルロットの優しげな瞳を見つめて、コクリと頷いた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

処理中です...