シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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奪われたお城と皇子の愛を取り戻せ!?〜シャルロットの幸せウエディングパレード

いざ お城へ、操られた騎士団

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「な、なにこれ!」

お城を黒い霧が囲んでいた。
空気は重たくてピリついている。お城の中にいた人達はみんな虚ろな目をして、ゾンビのようにフラフラしていた。
シャルロットはハリセンを持ちながら幻狼姿のグレイの背中に乗って城門の前にいた。

門番2人も魔法に掛かっている。
シャルロットの顔を見るなり剣を抜いた。
騎士キャロルとユーシンがシャルロットを庇うように前に出た。

門番が騎士に気を取られている隙に、シャルロットは持っていた思い切りハリセンを振りかざした。
魔術師に操られている作用だろうか?動きは鈍くてすぐに仕留められた。

ハリセンは見事に門番の頭に直撃した。

「な、な……!」

「えっ?あれ?俺は何を……」

2人の魔法は解けて、正気を取り戻していた。
彼らは動揺していた。

「お願い!門を開けてちょうだい!グレース皇子たちが……お城が危ないの!」

「エッ、エッ?」

「開けてくれないか?」

シャルロットの後ろにはコボルトに跨る騎士服姿の王の姿。
門番は目ん玉が飛び出るくらいに驚いていた。

正面突破を試みたのにも理由はあった。

「お前たちはここを封鎖してくれ、誰一人、外へ出すんじゃないぞ」

「は!はい!」

王は手を宙に翳すと、城を丸ごと取り囲むような大きな結界を張った。
その気配に気づいたのかすぐさま城内を見張っていた第一騎士団が駆け付ける。

シャルロット達は包囲されてしまった。
だが、第二騎士団がシャルロットと王を守るように取り囲んでくれた。

「お前ら!誰に向かって剣を向けているんだ!そいつを早く下げろ!」

第二騎士団のリッキーとアヴィは叫んだ。
まるで操られたロボットみたいだ。とても正気じゃない第一騎士団の様子に、シャルロットはヒヤヒヤしていた。

グレイはシャルロットが着ているジャケットの襟を咥えるとグイッと持ち上げて宙に浮かんだ。

「きゃあ!っ」

シャルロットがブラブラと宙に浮かぶ。
グレイは第一騎士らの頭上までシャルロットを運んだ。

操られてはいてもほんの少しの理性は保っているようだ、彼らはシャルロットに手を出すのを必死に躊躇っていた。

「ご、ごめんなさい~!」

シャルロットは大声で何度も謝りながら、第一騎士団の騎士らの頭をハリセンでバシバシと打った。
異様な光景に、遠くから見ていた門番も目を丸くしている。

シャルロットに打たれた騎士らの魔法はすぐに解けた。

「姫様…!すみません」

「陛下!申し訳ございません」

わらわらと空を舞うお姫様に群がり謝罪の嵐に、シャルロットはグレイに咥えられたまま苦笑いをしていた。

「よかったわ!魔法が解けて……!」

第二騎士団はプギャー!っと大笑いして目の前の第一騎士団を馬鹿にした。

「軟弱な野郎どもめ!」

「魔人のくせにまんまと魔法なんかにかかりやがって」

「ダッサ~!」

第一騎士団は歯をギリギリさせたり睨む。
またいつもの喧嘩が始まりそうになって、シャルロットは地に降り立つと間に入った。

「みんな!喧嘩をしてる場合じゃないわ!城の中にも魔法にかかった騎士や使用人達がいるんでしょう?それにグレース様も……!早くみんなを助けなきゃ」

「でも、一人一人シャルルさんがハリセンで殴るのは効率が悪いよな~」

「城の中にある魔鉱石を全て破壊しろ。そうすれば魔術師の魔法は破られる」

王は断言した。

「……だめだ。魔力のこもったダミーの石を沢山ばら撒かれていて気配を探れない」

コボルトは呟いた。

「……ううん」

シャルロットはぼんやり考え込みながら何気なく後ろへ後退すると、突然背後から爆音が轟いた。
背後の地面が爆発してシャルロットの小さな身体を吹き飛ばした。

目の前にいたリッキーがシャルロットを抱き留めた。

「だいじょーぶー?シャルルさん?」

「え。ええ…ありがとう…」

威力はそんなになかったが、怪我人が出そうだ。
地雷のようなものかしら?こんなものまで仕掛けるなんて何て非道な…。シャルロットは怒りが湧いてきた。

グレイはシャルロットをリッキーの腕の中から回収してまた自分の背中に乗せた。

「シャルロットは私に捕まってて」

「うん……」

背中にシャルロットを乗せたグレイは本殿へ向かって走り出した。
コボルトや騎士らもそれに続く。

「グレース様はどこだろう?」

不気味なほど静かな本殿内、シャルロットは辺りを見渡した。

「俺らは手分けして魔鉱石を探すぞ!」

「お~!」

第二騎士団は元気にあちらこちらに散らばった。

「ゴルソン侯爵は陛下と姫を捕まえるように、多少手荒でも、生死も問わないから牢に打ち込めと騎士や兵士らに命じているんです」

「……そんな、馬鹿な……!」

ゴルソン侯爵にはそんな権限はないはずだ。
絶対にありえない、非常識なこと。ーー普通なら騎士も大臣らも絶対に従わないはずだろう。だが魔法で操っているから皆そのように動いているんだ。

「姫様、絶対に私達から離れないでください」

第一騎士団らはシャルロットを取り囲んで、辺りを警戒する。

「は、はい…」

シャルロットは騎士キャロルの後ろにぴったりとくっ付いて、足を進めた。
そこに本殿内に居た第一騎士団の騎士らと対峙してしまった。

彼らも魔法にかかっているーー。

二分する第一騎士団。
両者は険しい顔で見合っていた。

「おい!お前ら目を覚ませ!お前らは魔法で操られてるんだ!」

魔法にかかった同胞は抜き身の剣を振るって襲って来た。

「ぐっ……!」

仲間を傷付けられないと、シャルロットを取り囲む騎士らはシャルロットを庇いながら守りに入っていた。
本気を出して攻撃してくる騎士らにシャルロットは怯えていたが、そうしていられないとハリセンをギュッと強く握って、自分の盾になってくれている騎士らの間から前に出た。

「姫様!」

「目を覚ましなさい!えいっ!」

シャルロットは真剣を向け襲い掛かってくる騎士にハリセンで立ち向かったーー。

*

「…でも、おかしいっすね。お城には幻狼の結界が張られてあったのに……」

「コボルトさんさえ太刀打ちできないって……」

「まさか、魔術師ごときが精霊に張り合えるわけないさ」

城内を回りながら騎士らは喋っていた。
その前を歩く幻狼コボルトは黙ったまま、何かを考えていた。

「あ、クロウだ」

先に城に潜入していたクロウは無我夢中で中庭の地面を掘っていた。
土の中には魔鉱石があった。

「え!?クロウ?それ!」

「魔鉱石だよ!あのレイナとかいう子が埋めてたの…っ」

「いや……それはダミーだろ」

コボルトは石を目にしてすぐにため息をついた。
クロウはがっくりと肩を落とす。

「……大月堂の月長石、この国の建国時から代々王家に受け継がれている魔石……。あの力を使えば魔術師でも精霊とも張り合える……!」

大月堂はとても大きな離宮。
お城の敷地内にある。
沢山の人を収容できるほど広くて、主に大規模なパーティーなどで使われているた。

その離宮の中には大きな月長石という宝石の塊が展示されている。
石の中にかなり強くて強烈な魔力を溜め込んでいる石だ。

国宝とされている。

「ま、まさか……鍵がかかってるのに」

「とにかく行ってみよう?何か手掛かりがあるかも……!」

一同は堂へ向かって走り出した。
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