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奪われたお城と皇子の愛を取り戻せ!?〜シャルロットの幸せウエディングパレード
犬薔薇ケーキと楽しいパーティー
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秋真っ只中のとあるよく晴れた日曜日。
街外れにある孤児院をシャルロットとユハにリリース、アルハンゲル、護衛の騎士キャロルとアダム、勝手に付いて来たゲーテ王子、四匹の幻狼ワンコ達が訪れ 子供達に美味しい料理を振る舞った。
全員ラフな私服姿で、四匹の小型犬は背中に妖精の羽根を模した飾りや大きなリボンをつけて可愛く着飾り、子供達に取り囲まれている。
あれからマーク侯爵がきちんと管理してくれているんだろう。
施設の中は見違えるように綺麗になっていたし、子供達も以前訪れた時よりずっと顔色も良くなり笑顔が増え元気に走り回っている。
ビッグママ達からは恐縮するくらいに何度も何度も丁寧に感謝の言葉をもらった。
遅れて若い女性の従者と共にマリヤが施設に現れた。
レモンビーグルのミモザはマリヤの顔を見るなり気まずくなったのか、シャルロットの脚の影に隠れてソワソワし出した。
「ミモザ?」
「……姉さんも呼んでいたのか?シャルロット」
「犬の姿じゃ貴方がルエ王子だなんて気付か無いわ、お姉さんに挨拶くらいしたら?」
「……」
マリヤは自分をジッと見つめているレモンビーグルの犬の視線には気付くことはなく、身を屈めると自分を取り囲んでいる子供達に優しく話し掛けていた。
彼女が声を掛けているのはソレイユ国の移民の孤児だという、あの小さな姉弟。
マリヤは目を細めて、慈しみ深い笑みを浮かべていた。
「ふわふわ~!」
ユハが焼いてくれた鮮やかなピンク色のスポンジケーキを子供達は物珍しそうに見ている。
犬薔薇の果実とラズベリーを加えたスポンジケーキを何枚も焼いて、トッピングはせずに孤児院に持ち込んだ。
子供達と一緒にケーキの飾り付けをしようと、ユハが提案してくれたのだ。
ユハとアルハンゲルとゲーテ王子が生クリームを泡立てくれて、子供達はホイップクリームをスポンジケーキに塗ったり季節のフルーツやクッキーを飾り付けて楽しそうに盛り付けを行なっている。
「ゲーテ王子、上手になったわね」
「ふん、こんくらい俺様の手にかかれば簡単だ」
ゲーテ王子は得意げに笑う。
意外にもゲーテ王子は子供達にも気さくに話し掛けて人気を得ていた、同じレベルで騒いで男の子達と無邪気に追いかけっこまでしている。
クロウはチワワ姿で子供達に寄贈した絵本を読み聞かせてるし、グレイは壁の前の置物と化してる。
フクシアは寒い中 庭で男の子達とかくれんぼしていた。
女の子達はやっぱりお菓子作りや甘いものに夢中だ。
「上手にできたわね!」
「えへへ」
三歳くらいのおかっぱ頭の女の子はシャルロットに褒められて嬉しそうだ。
「……薄く切ったスポンジケーキをこう、こうして巻くと、薔薇の形になる」
アルハンゲルもぎこちなくも小さな女の子達とコミュニケーションを取ろうと頑張っていた。
ピンク色のスポンジケーキをくるくると巻いて花の形を作ってケーキの上に飾った。
「わぁ~食べられるお花さん」
「すご~い」
貴族を見て萎縮する平民も少なくない。かつての苛政で貴族や王室を毛嫌っているお年寄りも少なくなかった。
突然 孤児院の院長になったシャルロットはどうやってこの施設の子供達と関わろうかと悩んでいたのだが……やっぱり美味しい物をみんなで一緒に食べるとすぐに打ち解けられるようだ。
「マル、おっきくなったらケーキ屋さんになりたい」
さっきのおかっぱ頭の女の子だ。
女の子らしい可愛い夢を無邪気な笑顔で語ってる。
こうしてクライシア大国に暮らす人たちと面と向かって話すようになって、漠然としていた考えがまとまってきた。
自分が今後王妃となって何がしたいのかがより明確になった気がする……。
ーーこの子達の笑顔や夢を守りたい。
「昨日あたしとシャルロットで犬薔薇のジャムもたくさん作ったのよ。栄養たっぷりで病気予防にもなるから食べなさいね」
「ありがとうございます」
「あ、あれ?……ジャムの入った麻袋が……」
「きっと外の馬車の中よ。リリース、わたしが取ってくるわね」
シャルロットは立ち上がると一人で部屋を退室した。
馬車は施設の門の前に停まっているし、馬子も待機しているはずだ。
一人でも平気よね?向こうでユハと話し込んでいる護衛騎士達には声を掛けずに一人で廊下を渡り、建物外へ出た。
施設の門はシャルロットの背丈よりもずっと大きくて頑丈だった。
内側の鍵を開けて外へ出たシャルロットはキョロキョロと辺りを見渡して馬車を探した。
来た時は門前にあったが、移動してしまったんだろうか見当たらない。
敷地を取り囲む柵を辿り、曲がり角を曲がると知っている少女にばったりと出くわした。
「……レイナさん?」
お城のお仕着せの上から深い赤茶色の外套を羽織りフードを目深く被っていたが、シャルロットを見つけると顔をパッとあげて、何故か勝ち誇ったようにほくそ笑んだ。
「あら、シャルロット様、わざわざ呼び出す手間が省けたわ」
「レイナさん?どうしてここへ……?」
レイナの様子が変だ、彼女の周りを紙で出来た作り物のような黒い蝶々が複数舞って、怪しい深い紫色の光を放っている。
シャルロットは足を止めた。
レイナが手に持っているのは一本のマッチ……。
レイナは再びほくそ笑むと何も言わずにマッチを摩擦し、着火した。
「……!」
レイナは平然とした顔で火のついたマッチ棒を施設の中へと投げ入れた。
シャルロットは驚いて地に落ちたマッチ棒を素手で拾おうとして手を伸ばすが、手のひらが火に触れて軽い火傷を負って身を竦めた。
「なっ……あなた……な、なんてことを!何するの!?」
ーー火は庭の枯れ木や経年劣化でカラカラに乾いた建物の木製の壁に燃え移り、瞬く間に勢いを増した。
火はどんどん屋敷の壁に広がっていく……中には子供達がいるのに。
「か、火事になっちゃうわ……っ、だ、だれか……!」
「きゃあああ!やめてぇ~~!シャルロット様っ!」
突然レイナは叫ぶと、大声を出した。
レイナの声に通りすがりの市民が集まってくる、みんな血相を変えて消火活動に当たる。
シャルロットは駆け付けた大男二人にに取り押さえられ、乱暴に羽交い締めにされた。
「お前か……!火を付けたのは……!」
「違うわ!私じゃない!」
「彼女が……っ突然魔法で……!屋敷に火をつけたの!あたし……たまたま見かけて……!」
「ち……違っ……」
騒ぎを聞きつけたキャロルとアダム、ユハとゲーテ王子が中から出てきてシャルロットを地面に押さえつけていた大男に掴みかかった。
「おい!お前っ、姫様に何をしてるんだ!」
「こいつがこの屋敷に火を放ったんだ…!」
大男は怒鳴る。
「……姫様がそんなことするわけないだろ!」
「ひ、姫?……」
大男はギョッとした顔で驚いてシャルロットの腕を放す。
シャルロットは脱力して地面の上に座り込んだ。心配そうにキャロルはシャルロットの顔を覗き込んだ。
「……は、話が違うじゃない……。どうしてアイツらは“魔法”にかかってないの?……」
レイナは呆然としているキャロル達を見て奥歯をぎりっと噛み締めながら呟いた。
しかし、また震える声で叫んだ。
「きっと……姫様の、ひっ、火の魔法が暴走したんでしょう?」
「違うわ!レイナさんが火を付けたんじゃない!」
「…あたし……違うわ!酷いっ……シャルロット様……」
レイナは露骨にボロボロと泣き崩れた。
「自分の不始末を侍女になすりつけるのか……嫌な姫だな」
大男はシャルロットの耳に届くような声で苦笑した。
周りの野次馬がざわめき出す。
シャルロットが振り向くと彼は気まずそうに目をそらした。
火は消し止められたが、壁一面と隣接していた部屋の一部が焼け焦げてしまった。
その後 巡察隊が駆け付け、遅れて城から第一騎士団がシャルロットを迎えにやってきた。
「……姫様、城で取り調べがございます。ご同行願います」
「……え?」
まるでシャルロットを放火魔だと決め付けているかのような口振り、背後に控えている騎士達も皆 軽蔑するかのような冷たい視線をシャルロットに向けていた。
白い馬に乗った第一騎士団の騎士ワグナーが呆然としているシャルロットの真ん前に立ち、彼女に厳しい目を向けていた。
アダムは同僚の騎士ワグナーの前に立つと彼にはっきりとした口調で言った。
「姫様は何もしていない!取り調べをする理由などない!」
「そうだ!シャルルがそんなことするわけないだろ!バカか?お前らは」
ゲーテ王子も叫ぶ。
「お前は下がってろ、アダム。俺はただ彼女を城へ連れて行くために遣わされただけだ。姫様、早く馬車にお乗りください」
ワグナーの目は不気味に黒く濁っている。
彼だけではない、後ろの騎士らも同じ目をしていた。
異様な雰囲気にアダムは言葉を失った。
騎士のワグナーは手荒にシャルロットの腕を引っ張る。
「シャルロット……っ!」
馬車に乗せられたシャルロットに向かってチワワとポメラニアンが走ってくる。
だが、馬車は動き出す。
「クロウ……!グレイ……!」
シャルロットの悲痛な叫び声が遠退いていくーー。
野次馬が集り騒然とする屋敷の前で一人、レイナはクスッと隠れて笑っていた。
街外れにある孤児院をシャルロットとユハにリリース、アルハンゲル、護衛の騎士キャロルとアダム、勝手に付いて来たゲーテ王子、四匹の幻狼ワンコ達が訪れ 子供達に美味しい料理を振る舞った。
全員ラフな私服姿で、四匹の小型犬は背中に妖精の羽根を模した飾りや大きなリボンをつけて可愛く着飾り、子供達に取り囲まれている。
あれからマーク侯爵がきちんと管理してくれているんだろう。
施設の中は見違えるように綺麗になっていたし、子供達も以前訪れた時よりずっと顔色も良くなり笑顔が増え元気に走り回っている。
ビッグママ達からは恐縮するくらいに何度も何度も丁寧に感謝の言葉をもらった。
遅れて若い女性の従者と共にマリヤが施設に現れた。
レモンビーグルのミモザはマリヤの顔を見るなり気まずくなったのか、シャルロットの脚の影に隠れてソワソワし出した。
「ミモザ?」
「……姉さんも呼んでいたのか?シャルロット」
「犬の姿じゃ貴方がルエ王子だなんて気付か無いわ、お姉さんに挨拶くらいしたら?」
「……」
マリヤは自分をジッと見つめているレモンビーグルの犬の視線には気付くことはなく、身を屈めると自分を取り囲んでいる子供達に優しく話し掛けていた。
彼女が声を掛けているのはソレイユ国の移民の孤児だという、あの小さな姉弟。
マリヤは目を細めて、慈しみ深い笑みを浮かべていた。
「ふわふわ~!」
ユハが焼いてくれた鮮やかなピンク色のスポンジケーキを子供達は物珍しそうに見ている。
犬薔薇の果実とラズベリーを加えたスポンジケーキを何枚も焼いて、トッピングはせずに孤児院に持ち込んだ。
子供達と一緒にケーキの飾り付けをしようと、ユハが提案してくれたのだ。
ユハとアルハンゲルとゲーテ王子が生クリームを泡立てくれて、子供達はホイップクリームをスポンジケーキに塗ったり季節のフルーツやクッキーを飾り付けて楽しそうに盛り付けを行なっている。
「ゲーテ王子、上手になったわね」
「ふん、こんくらい俺様の手にかかれば簡単だ」
ゲーテ王子は得意げに笑う。
意外にもゲーテ王子は子供達にも気さくに話し掛けて人気を得ていた、同じレベルで騒いで男の子達と無邪気に追いかけっこまでしている。
クロウはチワワ姿で子供達に寄贈した絵本を読み聞かせてるし、グレイは壁の前の置物と化してる。
フクシアは寒い中 庭で男の子達とかくれんぼしていた。
女の子達はやっぱりお菓子作りや甘いものに夢中だ。
「上手にできたわね!」
「えへへ」
三歳くらいのおかっぱ頭の女の子はシャルロットに褒められて嬉しそうだ。
「……薄く切ったスポンジケーキをこう、こうして巻くと、薔薇の形になる」
アルハンゲルもぎこちなくも小さな女の子達とコミュニケーションを取ろうと頑張っていた。
ピンク色のスポンジケーキをくるくると巻いて花の形を作ってケーキの上に飾った。
「わぁ~食べられるお花さん」
「すご~い」
貴族を見て萎縮する平民も少なくない。かつての苛政で貴族や王室を毛嫌っているお年寄りも少なくなかった。
突然 孤児院の院長になったシャルロットはどうやってこの施設の子供達と関わろうかと悩んでいたのだが……やっぱり美味しい物をみんなで一緒に食べるとすぐに打ち解けられるようだ。
「マル、おっきくなったらケーキ屋さんになりたい」
さっきのおかっぱ頭の女の子だ。
女の子らしい可愛い夢を無邪気な笑顔で語ってる。
こうしてクライシア大国に暮らす人たちと面と向かって話すようになって、漠然としていた考えがまとまってきた。
自分が今後王妃となって何がしたいのかがより明確になった気がする……。
ーーこの子達の笑顔や夢を守りたい。
「昨日あたしとシャルロットで犬薔薇のジャムもたくさん作ったのよ。栄養たっぷりで病気予防にもなるから食べなさいね」
「ありがとうございます」
「あ、あれ?……ジャムの入った麻袋が……」
「きっと外の馬車の中よ。リリース、わたしが取ってくるわね」
シャルロットは立ち上がると一人で部屋を退室した。
馬車は施設の門の前に停まっているし、馬子も待機しているはずだ。
一人でも平気よね?向こうでユハと話し込んでいる護衛騎士達には声を掛けずに一人で廊下を渡り、建物外へ出た。
施設の門はシャルロットの背丈よりもずっと大きくて頑丈だった。
内側の鍵を開けて外へ出たシャルロットはキョロキョロと辺りを見渡して馬車を探した。
来た時は門前にあったが、移動してしまったんだろうか見当たらない。
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「……レイナさん?」
お城のお仕着せの上から深い赤茶色の外套を羽織りフードを目深く被っていたが、シャルロットを見つけると顔をパッとあげて、何故か勝ち誇ったようにほくそ笑んだ。
「あら、シャルロット様、わざわざ呼び出す手間が省けたわ」
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シャルロットは足を止めた。
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「……!」
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シャルロットは驚いて地に落ちたマッチ棒を素手で拾おうとして手を伸ばすが、手のひらが火に触れて軽い火傷を負って身を竦めた。
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「ち……違っ……」
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「おい!お前っ、姫様に何をしてるんだ!」
「こいつがこの屋敷に火を放ったんだ…!」
大男は怒鳴る。
「……姫様がそんなことするわけないだろ!」
「ひ、姫?……」
大男はギョッとした顔で驚いてシャルロットの腕を放す。
シャルロットは脱力して地面の上に座り込んだ。心配そうにキャロルはシャルロットの顔を覗き込んだ。
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「…あたし……違うわ!酷いっ……シャルロット様……」
レイナは露骨にボロボロと泣き崩れた。
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大男はシャルロットの耳に届くような声で苦笑した。
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「……え?」
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アダムは同僚の騎士ワグナーの前に立つと彼にはっきりとした口調で言った。
「姫様は何もしていない!取り調べをする理由などない!」
「そうだ!シャルルがそんなことするわけないだろ!バカか?お前らは」
ゲーテ王子も叫ぶ。
「お前は下がってろ、アダム。俺はただ彼女を城へ連れて行くために遣わされただけだ。姫様、早く馬車にお乗りください」
ワグナーの目は不気味に黒く濁っている。
彼だけではない、後ろの騎士らも同じ目をしていた。
異様な雰囲気にアダムは言葉を失った。
騎士のワグナーは手荒にシャルロットの腕を引っ張る。
「シャルロット……っ!」
馬車に乗せられたシャルロットに向かってチワワとポメラニアンが走ってくる。
だが、馬車は動き出す。
「クロウ……!グレイ……!」
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