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ミレンハン国のトド王妃と赤獅子シモンのダイエット大作戦!?〜美しい公爵令嬢と獣人騎士の身分差恋愛の行方
コーヒーブレイクのお供に桜のシフォンケーキ
しおりを挟む早朝のピークの時間が過ぎたまったりムードの食堂内。
空色の艶やかな髪をしたスレンダーな美魔女がタイトなドレスを身に纏い、天女が舞うようにひらりと一回転した。
「どうかしら?」
シャルロットやユハ、リリース達の目の前には、一ヶ月騎士団で厳しいダイエットを行なっていたナージャ王妃が立っていた。
一同は目を輝かせながら拍手喝采。
ナージャ王妃は満足げに笑った。
「すごいですわ!本当に見違えて……」
痩せると益々ゲーテ王子にそっくりだ。
「まあ、せいぜいすぐにリバウンドしないように祈っておくわね」
ニッコリ笑っているバルキリーをナージャ王妃は睨んだ。
二人は犬猿の仲のようだ。
「シモンとあなた達のダイエットメニューのお陰よ!お礼は弾むわ!何でも言ってちょうだい!」
「お礼なんてとんでもな……」
「じゃあ、ミレンハン国の特産品の大豆を仕入れたいんだけど、関税をまけてくれない?☆」
ユハが突然話に割り込んできて、シャルロットはびっくりした。
「あら、そんな事でいいの?別に良いわよ~」
ユハの要望に、ナージャ王妃は考える間もなく即答した。
隣にいたグリムは苦笑している。
「王妃様、勝手に決められては困ります」
「ハァ?何か文句でもあるの?王妃のあたしが良いって言うんだから良いのよ」
ナージャ王妃に睨まれて普段は口が達者なグリムも笑顔のまま押し黙った。
「シモンさんも顔色がとても良くなったわね、お肌も艶が戻ってきているわ」
「ええ、最近とても調子がいいんです。食堂のご飯と騎士団での運動のおかげです。本当にありがとうございます」
穏やかに笑うシモンに、ナージャ王妃は冷やかしのつもりかケラケラ笑った
。
「そこは恋人のおかげでしょう?毎日クリスティちゃんが騎士団の詰め所にやってきてイチャイチャを見せつけてくれるものね」
「いっ……イチャイチャなど、断じてしておりません!あれはクリスティが勝手に押し掛けてくるだけです!」
シモンは首を思い切り振って否定した。
ナージャ王妃が、クリスティの父であるレイター公爵に進言した事により2人はようやくレイター公爵からもお付き合いをするお許しをもらえた。現在は婚約中である。
それから、旅に出ていたクライシア王や左王たちも帰国し、グレース皇子の忙しい王代理も終了した。
だが、引き続き王のもとで補佐として仕事を続けるようで奮闘していた。
今はクライシア王がお土産に持ってきた桜のシフォンケーキを皆でいただいているところだ。
「あら、美味しいわ。春って感じ」
淡いピンク色のフワフワとしたシフォンケーキに粗めの砂糖が入ったジャリジャリとした舌触りのホイップを添えて、グリムが淹れてくれた緑茶と共にいただいた。
「シャルロット~!」
厨房で皿洗いをしていた人間姿のクロウが両腕を上げながら駆けて来て、思い切りシャルロットに抱きついた。
「クロウ、お手伝いは終わったの?」
「ううん~、今度は床掃除……」
銀の間を破壊した罰に社員食堂のお手伝いをすることになったクロウ。
だが、やけに機嫌が良かった。
「うふふ、でもここに居たらずっとシャルロットと一緒に居られるもんね~。幸せ~」
シャルロットを抱きしめながらクロウはニコニコ笑っていた。
シャルロットはそんなクロウの顔を見つめ、淡々と言った。
「私、来週から2週間オーギュスト国へ行きますわよ?」
「え!?」
「ヴェル殿下のお誕生日パーティーに招待されているの。あとはゲーテ王子も。各国から要人が集まるから、パーティー料理を是非食堂のみんなにプロデュースして欲しいんですって!お仕事の依頼よ」
「そ、そんなぁ……私も行くよ!」
「ダメよ。食堂のお仕事をするのが罰なんでしょう?またチワワにされるわよ?」
「私はシャルロットに着いて行くけどね」
シャルロットの隣に座り優雅に茶を飲んでいた人間姿のグレイは挑発的な笑みを浮かべてクロウを見下していた。
クロウは歯をギリギリ噛み締めながらグレイを睨むと、今度はシクシクと泣きながら床の雑巾掛けを始めた。
*
本殿の庭園の中にあるガゼボ内。
桜のシフォンケーキとコーヒーをコボルトが用意してくれたので、クライシア王やオリヴィア小国の双子の王と上王と共にコーヒーブレイクを楽しんでいた。
シフォンケーキを一口食べて、グレース皇子は目を見開いた。
「……なんだか懐かしい味がします」
そう小さく呟いた息子を見て、クライシア王は目を細めた。
「美味しいね~」
ニッコリと笑顔でケーキを頬張る右王、その隣で左王は黙々とコーヒーを飲んでいた。
庭園内には美しいバラが咲き乱れていた。
赤やピンク、白など、クロウが庭師と共に育てたバラが吹き抜ける温かい春の風に触れて揺れている。
「朝、食堂を覗いてみました。娘がとても楽しそうに働いていましたよ」
上王が穏やかな口調で話し始めた。
「とても働き者なお嬢さんだ。騎士や使用人たちともすぐに打ち解けて、シャルロット姫が来てから城の中の雰囲気も変わったよ。グレースも姫に感化されて成長したからな」
クライシア王は笑う。
「それは良かった」
両国の王は和やかムードで笑い合う。
「あ、そういえば公爵家のお嬢さんから素敵な本をもらったんだ~!なんと、私をモデルにした本だって!タンザナイトの勇者シーズの伝説を綴った本はいっぱいあるけど私のは一冊もなかったから嬉しいなあ!伝記本出してくれるなんて!昨日献本を貰ったんだ!こちらの国の文字で書かれてあるから読めないのが残念だけれど……私の嫁のビオラがクリスティ先生の大ファンなんだ!サインももらえたし、彼女にあげるよ!」
何も知らずに舞い上がっている右王を見てグレース皇子は引きつった笑いを浮かべていた。
「子どもが産まれたらシャルロットをオリヴィア小国へ里帰りさせておくれ。妻も私の兄夫婦もシャルロットをとても心配していた。それに、孫の顔も見たいし」
上王は言った。
「ええ、もちろん、わかりました」
「グレース皇子も我が国へ是非お越しください。おもてなししますよ」
「はい……!」
一時は拗れかかった親戚関係だが、再び両国の和平は結ばれた。
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