シャルロット姫の食卓外交〜おかん姫と騎士息子の詰め所ごはん

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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ミレンハン国のトド王妃と赤獅子シモンのダイエット大作戦!?〜美しい公爵令嬢と獣人騎士の身分差恋愛の行方

その後

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 いつもより固めのベッドの上でシャルロットは寝かされていた。
 目を開けると見覚えのある天蓋ベッドの上で、ここは本殿のグレース皇子の寝室だ。
 あれからお城に帰ってすぐに倒れてしまったのだ。
 以降の記憶はない。

「………」

 身体を起こしたシャルロットはキョロキョロと辺りを見渡していた。
 ふと右下に視線を移すと、グレース皇子が仰向けでスヤスヤ眠っている。

「ぐ、グレース様……?」

 シャルロットはいつものナイトウェアを着せられている。
 きっと侍女たちが着せてくれたんだろう。

 部屋はロウソク一本の薄明かりだけ、しんと静まり返っている。
 シャルロットの足元では銀色の狼が眠っていた。
 眠気はもう無い、それどころか身体がすごく軽く楽になっている。
 シャルロットは大きく伸びをした。

「姫?……お早う……」

 グレース皇子が目を覚ました。

「お早うございます。あの……私は何故ここで眠ってるのかしら?」

「…姫が城に着いた途端眠ってしまって…ああ、その後すぐに俺も倒れたんだ」

「グレース様が?大丈夫なの?」

「ああ、過労と寝不足の上にグレイの封印を解いて王虎相手に大量の魔力を使ったからな……。クロウが魔力を分けてくれたんだろう、もう大丈夫だ」

 グレース皇子は横になったまま笑った。
 シャルロットもまた身体をベッドに倒し、グレース皇子の傍らに寄りかかる。

「……うちの父と兄が、本当にごめんなさい」

「姫が謝ることじゃない」

 優しく髪を撫でられ、シャルロットは頬を少し染めた。
 グレース皇子はシャルロットの額にキスをした。

「……この一ヶ月間王代理で忙しかったが、ケータリングと言ったか?姫が毎日 本殿まで食事を運んでくれて、時折一緒にブランチを食べて、それがどんなに励みになったか。姫が居なかったら、俺はこんなに頑張れなかった。ありがとう」

「ふふ。私がグレース様やクロウと一緒にご飯を食べたかっただけですわ。それに放って置いたらグレース様はお肉ばっかり食べるんですもの」

「今は野菜もちゃんと食べてるぞ」

 ベッドの上で久々にゆったりと談笑していると扉が開く音がして、間もなく重たい何かがシャルロットとグレース皇子の上にのしかかる。

 幻狼姿のクロウだ。
 尻尾をブンブン振りながらこっちを見ていた。

「起きたの~?二人とも」

「クロウ……!おはよう」

「まだ夜だけどね~」

「みんなは?」

「お城に帰ってきた後ユハが飲みニケーションとか言い出してね、ナージャ王妃とオリヴィア小国の王様達と飲み会してたの。みんな酔い潰れて寝ちゃってるよ」

 クロウはシャルロットとグレース皇子の間に入り、ゴロンッと横たわった。

「今日は疲れちゃった、私もこっちで眠る」

「ふふ、おやすみなさい」

 二匹の幻狼がベッドに上がるとキングサイズの大きなベッドも小さく感じる。
 でも、幸せに浸りながらシャルロット再び眠りについた。
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