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ヤンデレ伯爵様VSドSアウトロー牧師!?
番外編 ゴールデンレトリバー・バイオレット視点
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わたしの名前はバイオレット。
クリーム色の毛並みをしたゴールデンレトリバーの1歳の女の子。
実はわたしには前世の記憶がある。
前世は地球という世界の日本という国に住んでいた女の子だった。
前世のわたしは産まれ付き不治の病を患っていて人生の殆どを病院のベッドの上で過ごした。
13歳の誕生日を迎えた2週間後、突然病状が悪化し呆気なく死んでしまった。
今世は犬か…。
けど健康な身体を手に入れて、ブリーダーのお姉さんやお手伝いのお婆さん達はとても優しくて、犬の仲間たちと自由に広い庭を走り回って遊んで、伸び伸びと暮らせてる今がとっても幸せだった。
「まあ、奥様にワンちゃんをプレゼントなさるんですか?」
「ああ、いつも屋敷にこもってるから、友達が必要かなって思ってね」
思い出したのは数ヶ月前くらいかな。あの男の顔を見た瞬間、ビビビッと頭に電流が流れーーそして全てを思い出した。
青色の髪、すごく整った顔の超イケメン、真夏でもきっちりと涼しい顔でスリーピースのスーツを着こなしている。
(見たことある!あの人!……確か前世読んでた小説の挿絵で!)
ブリーダーのお姉さんの弾む声。
ここにはわたし以外にもたくさんの種類の犬が暮らしてて、外からやってくる人たちが新しい家族を迎えにやってくる。
この国は今ペットブームみたい。
もっぱら人気なのは猟犬か、可愛らしい小型犬か子犬。繁殖しないオス犬。
ここら辺の街は庭がない小さな屋敷や、アパートメント住まいの人が多くって、わたしのような大型犬は人気がなくてずっと売れ残っていた。
(オスワルド伯爵だ!)
わたしはすぐに分かった。
前世のわたしは恋愛小説を読むことが好きだった。
姉といろんな恋愛小説やラノベを回し読みしていて、その中でも1番のお気に入りTL小説があった。
『悪の華は氷の牧師に手折られる』
ヒロインはクローディアって名前の商家の娘で、美しい娘だがワガママで横暴で強欲な性格の女性だった。
お金目当てで好きでもない伯爵と結婚、伯爵夫人となった彼女は夢のような贅沢な暮らしを満喫する……。
クローディアの結婚した伯爵こそが、今わたしの目の前にいる この飄々とした笑みを浮かべている青髪の男、オスワルド伯爵だ。
クローディアはある日偶然屋敷の前の林の中で牧師のクリオスと出会う。
優しくて清らかで純粋、しかしどこか憂いや影のある表情を浮かべる美しいヒーローにいつしかクローディアは心を奪われる。
実は彼はヒロインの旦那であるオスワルド伯爵の弟。
兄弟間には昔から確執があり、彼は兄に復讐をするためにクローディアに近付いたのだ。
それでもクローディアは構わなかった、彼を愛すると心に決めた。
過去に受けた心の傷から愛という物が心底信じられないヒーローのクリオスはクローディアを拒絶するが、ヒロインはどんなに彼に拒絶されようと愛し続けた。
愛だの恋だのと言い続けるクローディアに苛立ったクリオスは乱暴に彼女の身体を求める。
虐げられながらーーボロボロになりながらもクローディアは変わらず彼を愛し、やがてクリオスの氷のような心は溶かされクローディアを受け入れた。
想いが通じ合った2人は夢中で互いを求め合う。
今度は優しく、宝物のように、花のように扱いーー愛しい彼女を抱くクリオス。
恋人同士になった2人は何気ない日々を幸せに過ごした。
2人で駆け落ちをする約束までした。
2人の関係がやがてクローディアの夫オスワルド伯爵にバレた。
クローディアはオスワルド伯爵に全てを打ち明け離縁を求めた。激怒した伯爵と派手に揉め屋敷で軟禁されてしまう。
1ヶ月が過ぎた頃、オスワルド伯爵から『クリオスは自分が殺してやった!』と伝えられたクローディアはショックを受け絶望した。
その夜 彼女は伯爵の目を盗み部屋を抜け出すと、伯爵邸の近くにある湖で入水自殺。
クリオスの死は伯爵の狂言であり、生きていたクリオスはクローディアの死を知らされて悲しんだ。
その日の内に彼女が命を絶った真冬の湖で後を追うように入水自殺ーーという悲恋もの。
続編は『孤独な暗黒伯爵と闇に堕ちたガーベラ』というタイトルで、『悪の華は氷の牧師に手折られる』のオスワルド伯爵がヒーローを務めるスピンオフで告知も出ていた。
(……残念ながら、続編が出る前に死んじゃったんだよね……)
挿絵もすごく美麗で、冒頭では悪役のように描かれていたヒロインが恋に落ちるとすごく健気で可愛い、ヒーローはドSで腹黒系でカッコいい、中盤までちょっぴりバイオレンス系で痛々しく過激なのに、両想いになった後のエピソードがすごく可愛くて微笑ましかった。
だからこそラストがすごく悲しくて……。
(もしかして、ここって本の中なの?ってことはクローディアやクリオスも存在してるの?)
わたしは思わず駆け走る。
オスワルド伯爵目掛けて一直線に走った。
(わたしなら運命を変えられるかも!)
犬の姿で必死に伯爵の長い脚にしがみついた。
「あらあら、どうしたの?ごめんなさいね、いつもはおとなしいんだけど……」
ブリーダーがわたしを押さえる。
でもわたしは必死で彼に縋る。
(わたしを飼って~!)
「よし、この子を連れて帰ってもいいか?」
「え、ええ」
*
こうしてわたしは伯爵邸の犬となった。
そしてある日、クローディアと中庭で遊んでいた時。
中庭の向こう…従業員用の小さな出入り口の門が開いたままだった。 わたしはこの好機を待っていた!
くるっと彼女に背を向けてわたしはひた走る。
「あっ、バイオレット!」
わたしはクローディアの呼び掛けも無視して屋敷の外へと逃げ出した。
そして林の中へと入っていく。
「待って!バイオレット!」
予想通り、追い掛けてくるクローディア。
(こっちよ、こっち!)
誘導するように時折立ち止まって後ろを振り返る。
クローディアは息を切らして苦しそうだった。
伯爵邸の林には、オスワルドの弟クリオスが所有する隠れ家的なログハウスがある。はずだ。
小説の中だと、林の中で迷子になったクローディアが偶然クリオスのログハウスに辿り着いて運命の出会いを果たすのよね。
それなのにリアルのクローディアは屋敷から一歩も外出しないんだもの。
だから、なかなかヒーローのクリオスとも出会わないのよね。
「キャンッ!」
悲鳴が出る。
何かに躓いてわたしは転倒する。
転倒した先が傾斜になっていて、ゴロゴロと転がりポッカリと空いた穴に落ちた。
痛い……前脚が裂けて血が出てる。
それに穴は大きくはなかったが大型犬が一匹すっぽりと入る大きさ。
とても犬の姿では登れないわ。
「ワン!ワン!」
吠える声がこだまする。
(クローディア?居ないの?)
「ワン!」
必死に吠えた。
すると枯れ葉を踏むような足音が耳に入る。
(クローディア?)
「……大丈夫か?」
穴を覗いたのは銀髪ロングの美形な男ーーー。
(クリオス!!)
クリオスだ。
クリオスは穴に落ちたわたしを救出してくれた。
彼に抱っこされてる、ああ良い匂いがする。体温は低いのね……尻尾を振って生クリオスに興奮するわたし。
それに怪我の治療までスマートにやってもらって、美味しい犬のおやつまでくれた。
(小説ではドS設定なんてあるけど…めっちゃ良いやつじゃない)
ふと部屋を見渡すと、彼のログハウスには小型犬がいた。
豆柴の子犬……可愛らしい。
(クリオスって犬を飼っていたっけ?小説には登場しなかったけど…)
(だあれ?おばさん)
豆柴はわたしに声をかけた。
(おばさんじゃないわ!失礼ねえ!あんた、誰よ?ちんちくりん)
(ぼく~わかんない。ニンゲンに捨てられたの、その男に拾われたの)
(へえ)
人間とは会話できないけれど犬同士なら喋れるわたし。
クリオスはわたしの怪我の手当てをすると、椅子に座りコーヒーを飲みながら読書を始めた。
「っと~!バイオレット~!」
クローディアの声にわたしの耳は反応してピクッと動いた。
すぐさま戸に向かって走る。
「どうした?」
クリオスが不思議そうな顔でわたしを見ながら戸を開けてくれた。
「ワンワン!」
吠えながら勢いよくクローディアに飛びついた。
クローディアはホッとしたような顔でわたしを抱き締めた。
「よかった~迷子になっちゃったのかと思ったじゃない!外にでちゃダメでしょ」
「その犬はーー君の犬なの?」
わたしを間に挟んで、クローディアとクリオスが対面した。
(や、やったぁ……!ヒロインとヒーロー、2人がやっと出会えた!小説とは展開が違うけれど……)
わたしは嬉しくてブンブン尻尾を振った。
明日も今日と同じように中庭から抜け出して、クローディアをあのログハウスへ誘導すれば……!
なんて考えていたのにーー。
翌朝 クローディアと一緒に中庭へ出ると、林へ続く扉が無くなっていて壁になっていた。
わたしは愕然とした。
「もうバイオレットとディアが逃げてしまわないように……扉は排除したよ。もともと、あまり使ってなかったしね」
クローディアの後ろでオスワルド伯爵が黒い笑みを浮かべてる。
(なんてことを?これじゃあ、クローディアをログハウスへ連れて行けないやん!)
「逃げないわよ!」
「ふふ」
口を開けて目を点にしながらオスワルド伯爵を見る。
オスワルド伯爵がクローディアを見つめながら幸せそうに笑ってる。
(オスワルド伯爵も小説とイメージが違うかも?こんなに明るく笑う人だっけ?)
ブンブンとわたしは頭を振る。
(ぜったい、クローディアとクリオス、この2人の恋をわたしがハッピーエンドで終わらせてやるんだ!)
悲恋では終わらせないーー。
俄然やる気が出た。
クリーム色の毛並みをしたゴールデンレトリバーの1歳の女の子。
実はわたしには前世の記憶がある。
前世は地球という世界の日本という国に住んでいた女の子だった。
前世のわたしは産まれ付き不治の病を患っていて人生の殆どを病院のベッドの上で過ごした。
13歳の誕生日を迎えた2週間後、突然病状が悪化し呆気なく死んでしまった。
今世は犬か…。
けど健康な身体を手に入れて、ブリーダーのお姉さんやお手伝いのお婆さん達はとても優しくて、犬の仲間たちと自由に広い庭を走り回って遊んで、伸び伸びと暮らせてる今がとっても幸せだった。
「まあ、奥様にワンちゃんをプレゼントなさるんですか?」
「ああ、いつも屋敷にこもってるから、友達が必要かなって思ってね」
思い出したのは数ヶ月前くらいかな。あの男の顔を見た瞬間、ビビビッと頭に電流が流れーーそして全てを思い出した。
青色の髪、すごく整った顔の超イケメン、真夏でもきっちりと涼しい顔でスリーピースのスーツを着こなしている。
(見たことある!あの人!……確か前世読んでた小説の挿絵で!)
ブリーダーのお姉さんの弾む声。
ここにはわたし以外にもたくさんの種類の犬が暮らしてて、外からやってくる人たちが新しい家族を迎えにやってくる。
この国は今ペットブームみたい。
もっぱら人気なのは猟犬か、可愛らしい小型犬か子犬。繁殖しないオス犬。
ここら辺の街は庭がない小さな屋敷や、アパートメント住まいの人が多くって、わたしのような大型犬は人気がなくてずっと売れ残っていた。
(オスワルド伯爵だ!)
わたしはすぐに分かった。
前世のわたしは恋愛小説を読むことが好きだった。
姉といろんな恋愛小説やラノベを回し読みしていて、その中でも1番のお気に入りTL小説があった。
『悪の華は氷の牧師に手折られる』
ヒロインはクローディアって名前の商家の娘で、美しい娘だがワガママで横暴で強欲な性格の女性だった。
お金目当てで好きでもない伯爵と結婚、伯爵夫人となった彼女は夢のような贅沢な暮らしを満喫する……。
クローディアの結婚した伯爵こそが、今わたしの目の前にいる この飄々とした笑みを浮かべている青髪の男、オスワルド伯爵だ。
クローディアはある日偶然屋敷の前の林の中で牧師のクリオスと出会う。
優しくて清らかで純粋、しかしどこか憂いや影のある表情を浮かべる美しいヒーローにいつしかクローディアは心を奪われる。
実は彼はヒロインの旦那であるオスワルド伯爵の弟。
兄弟間には昔から確執があり、彼は兄に復讐をするためにクローディアに近付いたのだ。
それでもクローディアは構わなかった、彼を愛すると心に決めた。
過去に受けた心の傷から愛という物が心底信じられないヒーローのクリオスはクローディアを拒絶するが、ヒロインはどんなに彼に拒絶されようと愛し続けた。
愛だの恋だのと言い続けるクローディアに苛立ったクリオスは乱暴に彼女の身体を求める。
虐げられながらーーボロボロになりながらもクローディアは変わらず彼を愛し、やがてクリオスの氷のような心は溶かされクローディアを受け入れた。
想いが通じ合った2人は夢中で互いを求め合う。
今度は優しく、宝物のように、花のように扱いーー愛しい彼女を抱くクリオス。
恋人同士になった2人は何気ない日々を幸せに過ごした。
2人で駆け落ちをする約束までした。
2人の関係がやがてクローディアの夫オスワルド伯爵にバレた。
クローディアはオスワルド伯爵に全てを打ち明け離縁を求めた。激怒した伯爵と派手に揉め屋敷で軟禁されてしまう。
1ヶ月が過ぎた頃、オスワルド伯爵から『クリオスは自分が殺してやった!』と伝えられたクローディアはショックを受け絶望した。
その夜 彼女は伯爵の目を盗み部屋を抜け出すと、伯爵邸の近くにある湖で入水自殺。
クリオスの死は伯爵の狂言であり、生きていたクリオスはクローディアの死を知らされて悲しんだ。
その日の内に彼女が命を絶った真冬の湖で後を追うように入水自殺ーーという悲恋もの。
続編は『孤独な暗黒伯爵と闇に堕ちたガーベラ』というタイトルで、『悪の華は氷の牧師に手折られる』のオスワルド伯爵がヒーローを務めるスピンオフで告知も出ていた。
(……残念ながら、続編が出る前に死んじゃったんだよね……)
挿絵もすごく美麗で、冒頭では悪役のように描かれていたヒロインが恋に落ちるとすごく健気で可愛い、ヒーローはドSで腹黒系でカッコいい、中盤までちょっぴりバイオレンス系で痛々しく過激なのに、両想いになった後のエピソードがすごく可愛くて微笑ましかった。
だからこそラストがすごく悲しくて……。
(もしかして、ここって本の中なの?ってことはクローディアやクリオスも存在してるの?)
わたしは思わず駆け走る。
オスワルド伯爵目掛けて一直線に走った。
(わたしなら運命を変えられるかも!)
犬の姿で必死に伯爵の長い脚にしがみついた。
「あらあら、どうしたの?ごめんなさいね、いつもはおとなしいんだけど……」
ブリーダーがわたしを押さえる。
でもわたしは必死で彼に縋る。
(わたしを飼って~!)
「よし、この子を連れて帰ってもいいか?」
「え、ええ」
*
こうしてわたしは伯爵邸の犬となった。
そしてある日、クローディアと中庭で遊んでいた時。
中庭の向こう…従業員用の小さな出入り口の門が開いたままだった。 わたしはこの好機を待っていた!
くるっと彼女に背を向けてわたしはひた走る。
「あっ、バイオレット!」
わたしはクローディアの呼び掛けも無視して屋敷の外へと逃げ出した。
そして林の中へと入っていく。
「待って!バイオレット!」
予想通り、追い掛けてくるクローディア。
(こっちよ、こっち!)
誘導するように時折立ち止まって後ろを振り返る。
クローディアは息を切らして苦しそうだった。
伯爵邸の林には、オスワルドの弟クリオスが所有する隠れ家的なログハウスがある。はずだ。
小説の中だと、林の中で迷子になったクローディアが偶然クリオスのログハウスに辿り着いて運命の出会いを果たすのよね。
それなのにリアルのクローディアは屋敷から一歩も外出しないんだもの。
だから、なかなかヒーローのクリオスとも出会わないのよね。
「キャンッ!」
悲鳴が出る。
何かに躓いてわたしは転倒する。
転倒した先が傾斜になっていて、ゴロゴロと転がりポッカリと空いた穴に落ちた。
痛い……前脚が裂けて血が出てる。
それに穴は大きくはなかったが大型犬が一匹すっぽりと入る大きさ。
とても犬の姿では登れないわ。
「ワン!ワン!」
吠える声がこだまする。
(クローディア?居ないの?)
「ワン!」
必死に吠えた。
すると枯れ葉を踏むような足音が耳に入る。
(クローディア?)
「……大丈夫か?」
穴を覗いたのは銀髪ロングの美形な男ーーー。
(クリオス!!)
クリオスだ。
クリオスは穴に落ちたわたしを救出してくれた。
彼に抱っこされてる、ああ良い匂いがする。体温は低いのね……尻尾を振って生クリオスに興奮するわたし。
それに怪我の治療までスマートにやってもらって、美味しい犬のおやつまでくれた。
(小説ではドS設定なんてあるけど…めっちゃ良いやつじゃない)
ふと部屋を見渡すと、彼のログハウスには小型犬がいた。
豆柴の子犬……可愛らしい。
(クリオスって犬を飼っていたっけ?小説には登場しなかったけど…)
(だあれ?おばさん)
豆柴はわたしに声をかけた。
(おばさんじゃないわ!失礼ねえ!あんた、誰よ?ちんちくりん)
(ぼく~わかんない。ニンゲンに捨てられたの、その男に拾われたの)
(へえ)
人間とは会話できないけれど犬同士なら喋れるわたし。
クリオスはわたしの怪我の手当てをすると、椅子に座りコーヒーを飲みながら読書を始めた。
「っと~!バイオレット~!」
クローディアの声にわたしの耳は反応してピクッと動いた。
すぐさま戸に向かって走る。
「どうした?」
クリオスが不思議そうな顔でわたしを見ながら戸を開けてくれた。
「ワンワン!」
吠えながら勢いよくクローディアに飛びついた。
クローディアはホッとしたような顔でわたしを抱き締めた。
「よかった~迷子になっちゃったのかと思ったじゃない!外にでちゃダメでしょ」
「その犬はーー君の犬なの?」
わたしを間に挟んで、クローディアとクリオスが対面した。
(や、やったぁ……!ヒロインとヒーロー、2人がやっと出会えた!小説とは展開が違うけれど……)
わたしは嬉しくてブンブン尻尾を振った。
明日も今日と同じように中庭から抜け出して、クローディアをあのログハウスへ誘導すれば……!
なんて考えていたのにーー。
翌朝 クローディアと一緒に中庭へ出ると、林へ続く扉が無くなっていて壁になっていた。
わたしは愕然とした。
「もうバイオレットとディアが逃げてしまわないように……扉は排除したよ。もともと、あまり使ってなかったしね」
クローディアの後ろでオスワルド伯爵が黒い笑みを浮かべてる。
(なんてことを?これじゃあ、クローディアをログハウスへ連れて行けないやん!)
「逃げないわよ!」
「ふふ」
口を開けて目を点にしながらオスワルド伯爵を見る。
オスワルド伯爵がクローディアを見つめながら幸せそうに笑ってる。
(オスワルド伯爵も小説とイメージが違うかも?こんなに明るく笑う人だっけ?)
ブンブンとわたしは頭を振る。
(ぜったい、クローディアとクリオス、この2人の恋をわたしがハッピーエンドで終わらせてやるんだ!)
悲恋では終わらせないーー。
俄然やる気が出た。
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