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第二章
第55話/矛盾
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2023年7月9日(日) 17:00
まだ陽が落ち切らない中、唯と美月はバスの後方座席で揺られていた。
西へ向かいつつも夏至が近いからか太陽の位置の関係でそれほど眩しくはない。それでもすれ違う対向車が黄金色の日差しをバスの中に反射させ、その度に並び座る唯と美月は同じタイミングで目を細める。
桜永家では本日、美月が夕食当番ということもあり、早めの解散となった。
もしあのような“変身イベント”があると知っていたなら、美月は弟に無理を言ってでも代わってもらっていたかもしれない。
「祐樹くん残念そうだったね」
そう言って苦笑する唯も後ろ髪を引かれる思いだった。何しろ見違えるほどに性的な魅力を振りまく“オトナっぽい”姿に変身できるようになったのだ。あの姿でどこまで恋人たちの欲情を引き出し滾らせることができるか試してみたかったし、何より試験期間中は“おあずけ”だったのだ。しかし、それゆえに盛り上がってしまうと時間を忘れて朝まで放蕩三昧コースになるのは明らかだった。
「しょうがないよ、明日学校もあるし。それに、私もさっきの気になるし……」
「すごい変身のこと?」
唯は隣に座る美月の顔を覗き込む。傾国の妖狐は元通り、濡烏の黒髪の美少女に戻っている。
そして何かを気に留めている表情をしてはいるが、昨日まで時折見せたような憂鬱に塞ぎ込むようなものではなかった。
「や、それもあるけど。ほら、お面のこと」
まだそれが気になるのか、と唯は小さく溜息をついて背もたれに倒れる。
「なんかと勘違いしてるんじゃないかな~。そういうのたまにない? 記憶がいつのまにか変わってたり」
比較的もの覚えの良い唯だが、本を乱読しているせいで物語の結末を別の話と混同することなどはままある。ほかにも、すでに鬼籍に入ったと思い込んでいた有名人が実はまだ存命だったり。記憶とは、得てしてかなり適当なものである。
しかし、記念写真は嘘をつくことはない。そして唯はその写真を毎日見ているのだ。
「私も写真をグループチャットに送るね」
唯のその言葉に対し、美月は顎を突き出すようにして頷いた。
明らかに釈然としない様子だったが、明らかな証拠を持っている唯にとってはお面ことはどうでもよかった。それよりも、先ほどの変身である。
同化後、絶倫の体力を誇る唯であっても今日は身体が妙なことになったからか、幾らか疲労感がある。唯は車窓に肘をつき、窓に頭をもたれかけた。
窓ガラスにうっすらと映る自分の顔は、よく知る自分のタヌキ顔だった。
耳も尖っていなければ、妙な副翼もない。
黒葛の異能の亜種だか派生だかによって、これまでも身体を部分的には操作することができた。
おかげで裸眼で生活できるようになったし、髪も肌も思いのままだ。究極的には男性の生殖器に相当するものさえも自在に発生させることができる。
それでも、今日の変身はそれとは次元の異なるものだった。その機序も果たしてこれまでと同様のものか分からない。
ド文系の唯であっても、これまでの自分たちの身に起こったことが既知の物理法則から逸脱したものであることは分かっていた。液状化した黒葛は体積も質量も変えて自分の体内に入ってきたし、自分たちの発揮できる規格外のエネルギーの源は何なのかも不明だった。
今更、宙に浮いたとて、天井に張り付いたとて、もう不思議と“そういうものだ”と思ってしまう。そして、これまた不思議なのはあの場にいた誰もがその瞬間をカメラで撮影しようと思わなかったことだ。驚きのあまり忘れていたのかもしれないが、三者三様にあの“映える”絵面を写真に残そうと思わなかったのはどういうことだろうか。
まぁ、いつでも撮れるからいいか、と思う程度には唯にとってあの変身がごくごくありふれた──それこそコーヒーを淹れる程度の日常的なアクションの一つに過ぎないという認識になってきているのが自覚できた。美月もきっと、そうなのかもしれない。
姿を変えられるのは、“そういうものだ”。
バスは駅東口のロータリーを周り、帰路にある人々を乗せる。
唯は、ここひと月ほどバスを利用したことは過去なかったな、と思った。生まれ育ち慣れ親しんだこの町であっても、バスという交通機関を利用するにはなかなかハードルが高いものがある。
今なら空を飛んで移動できるという確信的な予感があるも、さすがに人目につくと問題なのでまだしばらくバスの世話になるのだろう。
それはともかく。
「はぁ~美月ちゃんの尻尾、やばかったなぁ~」
唯はまた椅子の背もたれに体重を預けながらあの蠱惑的とも言えるモフモフの感触を思い出す。
「びっくりしたよ。唯がいつの間にか巻き込まれてたもん」
美月は呆れるように言った。思いもよらぬ姿になり混乱していたところ、さらに未知の刺激に襲われたのだ。驚き振り返れば、自失の唯が未知の毛玉に吸い込まれようとしているところだった。
「見るからにふわっふわで……あれ尻尾の中に入ったら頭おかしくなるんじゃないかな……今度やっていい?」
「ダメダメ。なんかくすぐったいもん」
美月からすればあの毛玉の尻尾は自分の身体の一部になる。つまりその尻尾の中は美月の体内領域も同様だった。その中に人間大の異物が入るというのはあまり想像をしたいものではない。腕を入れられただけで妙な感覚になったのだから。
バスの中にまばらに客はいたが、二人は特段声を潜めることなく互いの姿への所感を交換し合った。ほかの客に聞かれたところで、ゲームのアバターか何かの話だと思うだけだろう。
喫茶店だろうが電車の中だろうが、女子高生がこんな妙なことを話していた、などと律儀にSNSに上げる人など実際はそういるものではない。
「お面のことは気になるけどさ、ちょっと吹っ切れた感じ」
「……身体の、こと?」
さすがに遠慮がちに聞き返す唯に美月は微笑み、頷いた。
「前までね、変わる前の自分と、変になった自分と……ズレみたいなのがすごい気持ち悪かったんだけど、それがなくなったかも」
唯もそう言われればそんな気がしてくる。やはり美月は自身の身体に対する感覚の解像度のレベルが違うのだろう。
「そういう意味でさ、これが、今の私の体なんだなって、納得できる感じには……とりあえずなってるかな」
特別強がるふうでもなく空元気でもない。ある意味、諦観の色も込められているかもしないが、しかし穏やかな声音だった。
唯は膝の上で両手を広げてみる。
手の甲、手のひらと何回か返してみるが、何の変哲もないちんちくりんな手だ。
丸みを帯びた爪は子どもの頃からほとんど変わらない形状をしている。
そのいかにも幼げな指に今日生まれて初めてリングが通った。両手中指に嵌ったそれはオトナっぽい黒色のドレスグローブのパーツの一部として、夢魔となった唯を艶やかに彩った。
「いよいよ……人間やめちゃったね」
唯は一段、声のトーンを落とし、美月にのみ聞こえる声で呟いた。
「いいよ……唯となら。今日、そう思えたらから」
美月もまた同じ声量で返事をし、唯の手に自分の手を重ねた。
唯も手を返し、指を絡めてその手を握り返す。
バスの狭い座席は、嬉しい。お互いの体温を感じながらコトコト揺れる振動に身も心も安らぎ、唯も美月も眠たくなってくる。
唯にはおそらくもうあの夢──真っ黒な海で泳ぐ夢は見ることはないのだろうという予感があった。あの夢は、きっと自分を海の底に潜らせるための舞台装置だったのかもしれない。
そしてそれは今日、役目を終えた。
かくして生み出されたあの姿が無意識の産物なのか何か分からないが、何か作為的なものも感じなくはない。
衣装のディティールだって凝っていた。実際にあれを作ろうとすると、服飾関係の相当な知見が必要になるはずだ。それが果たして自分たちの中にあるものだろうか? いや、ない。
唯は美月の手の感触を確かめるように指を動かす。
「何か、意味があるのかなぁ。私たちがこうなったこと」
「考えるの疲れたけど……試験終わったし、また考えなきゃね、色々」
美月は明日の予定について思いを巡らせようとして、ある重大なイベントを思い出した。
「そいや転校生って明日?」
「あ……そうだね、試験明けの月曜だし。どんな人だろうね。外国からって……」
とは言うものの、唯は筆記はともかくリスニングもスピーキングも得意な方ではないのであまり自分が関わることもないのだろうな、と思う。英語の授業も当然美月と同じクラスになるはずだ。
第一、同じ言語を話す日本人ともうまくコミュニケーションができないのだから、ましてや外国の人と会話ができようはずもない。
「私ちょっと楽しみかも。うまく喋れるかな~」
フン、という美月の荒い鼻息が唯の髪を揺らした。
そういえばこの人は会話の中にスリルを見出し楽しむ人なのだ。気落ちする前の美月が戻って来たようだった。
唯は目を閉じ、美月の肩に頭を預けた。
しかし翌日の朝。唯たちは転校生どころではなかった。
「だから言ったままだって」
「怖い怖いなんで?」
朝礼前、唯の席を囲んで黒葛と美月が言い合っていた。
クラスメイト何人かが聞き耳を立てているのは明らかだったので説明に苦慮する黒葛は頭を掻く。最初から会話を聞いているものは二人のアタマだか精神状態を心配しているに違いない。
むしろそう思われた方が都合がいいだろうかと黒葛は思いつつ、何度目かになる同じ説明を繰り返す。
「だからさ、その年にはそのお面、存在するはずないんだよ」
「いやいやいやそれおかしいじゃん」
美月も美月で何度目かになる同じ反応をしたところで座席の主が教室に入ってきた。
「早いね美月ちゃん。おはよー」
「あ……唯おはよ……いや怖くて全然寝れなくてさ昨日……」
美月はぐったりと膝を曲げ、机にぶら下がるように頬杖をつく。
「あの話? 結局どしたの?」
「唯ちゃん、あの夏祭りって2012年で間違いないんでしょ?」
黒葛は渡りに舟とばかりにカバンを下ろしきらない唯に訊ねた。
「うん。2013年が私達が小学校1年生だから、その前の年。それがおかしいとかそういう話だっけ?」
昨晩、グループチャットで何やら美月と黒葛が喧々諤々やりあっていたのは知っていたが、何年だの何歳だのと数字が飛び交っていたので自分の領分ではないと踏んだ唯はほとんど斜め読みだった。
唯は唯で証拠となる写真を送ったのだからそれで解決すると思ったらどうもそうでもなかったらしい。
「美月ちゃんプリティアのお面かぶってたじゃん。私の送った写真でさ」
「そうだけど……」
唯が送った写真が示すのは、唯の記憶通りの過去だった。
すなわち、2012年の夏祭りの記念写真に写っていたのは、美月の両親と唯、そしてプリティアのお面を被ってアニメのポーズをとっていた美月の4人だった。
美月が両親に確認したところ、父と母も唯が証言したままのことを覚えており、唯にプリントして渡した写真の元のデータまでも見せてくれたが当然同じ画像だった。
それだけであれば美月の記憶違いで済む話だった。
美月の母がその時のお面をしまっているというので出してもらったら、果たしてそれはプリティアのお面などではなかった。
「いやでも、ほら、送ったじゃん、お面の写真さー」
美月は机の上のスマホの画面を傾けスリープを解く。
そこにはやや変色し黄ばんだ風合いのプラスチックのお面が──キツネを模したキャラクターのお面が映っていた。
「これ、ほら、ポシェモンのキャラなんでしょ? 私よく知らないけどこのお面なんだってば」
「そうだよ、このお面は2012年には絶対存在してない。少なくとも、世に出回ってはない。このキャラが発表されたのは、2013年。ゲームの発売のタイミングだから」
唯が椅子に座ってなお黒葛と美月は無限にループしそうなやりとりを繰り返している。
いくら大好きな二人の声とはいえ、登校して早々に耳元で右から左からギャンギャンとやり合っているというのは、朝から大盛りのカレーライスを食べさせられている気持ちになる。
特に黒葛はオタクの例に漏れず、自身の興味のある分野だと饒舌になるのが厄介だった。
「よくわかんないけどゆうきくんがまちがえてるとかないの」
スロースターターな唯はあくび交じりで訊ねてみる。唯にとって二人のうちどちらの言い分がより信頼できるかは言うまでもない。
少し軽んじられた気がした黒葛はムキになって自分のスマホをスワイプしながら語気を強める。
「僕当時すごいポシェモンやり込んでたから覚えてるよ。あのキツネのキャラはポシェモンシリーズの第6世代のキャラね。これ、ほら、ほら、ね、2013年10月発売のやつ」
そう言って黒葛が突き出した割れた画面には wikipedia の記事が映っていた。
国民的なビデオゲームであるポシェットモンスター。その6番目となるシリーズの発売日は黒葛の言う通り、あの夏祭りの翌年だった。
「えええ、ほらやっぱおかしくない? なんでじゃあ私がそれ持ってんの?」
「それが分からない。発売の年の夏くらいにはキャラだけは発表されてた可能性はあるけど……でもあれ最終進化系だからなー。発売後だと思うんだよなー」
つまり、キツネのお面の存在に矛盾があるということだった。
2012年の時点ではキツネのお面のデザイン元となったキャラクターは発表されておらず、必然的にお面にもなっていない。
となると、美月が2013年以降──小学校に上がって以降に夏祭りに行き、キツネの面を手に入れたということになる。しかし。
「いやいや私もうその後しばらく夏祭り行ってないし……中学んとき一度友達と行ったけど、お面なんてそのときは……」
「だと思うよ。人気キャラだったけどさすがに旬が過ぎてるし……弟のどっちかのお面だったりしないの?」
唯は目を擦りながら黒葛の会話能力の上達具合に感心する。激論をしているようで基本的には美月の意見を尊重しつつほかに考えられる現実的な可能性も探っているようだった。うかうかしているとコミュニケーション能力で黒葛の後塵を拝してしまう。
「私さ、あのお面気に入ってたから、弟に取られないように名前書いてたんだよ、ひらがなで。……小学校上がる前の私の字だった」
美月が言った通り、お面の裏側には擦れ気味ながら美月の名前が書いてあった。
「美月ちゃんのお父さんとお母さんは?」
「……唯と行ったって言ってた。で、私が唯を連れて迷子になったから肝冷やしたって。お面は……よく覚えてないみたいだったけど……。でも、うん、震災の翌年って言ってたから、2012年だと思う」
美月の声音は言葉を紡ぐごとにどんどんと低くくぐもっていった。
「うーん、よくわかんないなぁ」
黒葛は無為なスワイプを繰り返しながら思案する。
唯の言う『小学校に上がる前の年』というのと、大人が言う『震災の翌年』はどちらも覚え方としてはインパクトがあり、確度が高い。
それにあのお面の風合いからしてゲーム発売の頃のものであることは間違いなさそうだが、キャラクターが発表される前にお面になることはあるのだろうか? 当時黒葛は指を折りながら発売日と、新しいキャラクターの発表を心待ちにしていたのだ。
「私ウソは言ってないから……たぶん」
美月はしばらく精神的に不安定な日々を経て、昨日は自分の存在そのものが根底から覆るような体験をしたのだ。自分というものを疑ってしまいそうにもなる。
「僕も唯ちゃんも嘘だって思ってないよ。何よりお面っていう現物があるし……逆にプリティアのお面はおうちにはなかったわけでしょ?」
口を尖らせたまま頷く美月は、朝礼前とは思えないほどに目がしょぼくれていた。
「でも……やっぱり、私の記憶が変なのかも……」
そして唯の机に突っ伏す。
「唯だと思ってた子は唯じゃなかったし、そこで唯と初めて会ったって勘違いしてたし……ちゃんと考えたらそんなことないのにね」
かけがえのない存在である唯との出会いの場面を勘違いしていたことは、美月にとって少なからずショックだった。自分にとって、唯はその程度の認識でしかなかったのだろうか?
「美月ちゃん……」
唯が美月の背中をさすろうとした時、予鈴が鳴った。
クラスメイトたちがぞろぞろと自席に向かう中、美月は口を尖らせたまま黒葛を睨むようにして呟く。
「……ね、今日石搗さん行ってみたい。午後さ」
石搗さんというのは、石搗神社のことだ。例の夏祭りが行われた神社であり、そして古くからこの宝月町に存在する神社だ。そして今日はテスト採点日のため午前授業で終業となる。
「僕も、行きたかったんだ。唯ちゃんも行けそう?」
「もちだよ。私も気になるし……んじゃバス調べとくね」
まだ陽が落ち切らない中、唯と美月はバスの後方座席で揺られていた。
西へ向かいつつも夏至が近いからか太陽の位置の関係でそれほど眩しくはない。それでもすれ違う対向車が黄金色の日差しをバスの中に反射させ、その度に並び座る唯と美月は同じタイミングで目を細める。
桜永家では本日、美月が夕食当番ということもあり、早めの解散となった。
もしあのような“変身イベント”があると知っていたなら、美月は弟に無理を言ってでも代わってもらっていたかもしれない。
「祐樹くん残念そうだったね」
そう言って苦笑する唯も後ろ髪を引かれる思いだった。何しろ見違えるほどに性的な魅力を振りまく“オトナっぽい”姿に変身できるようになったのだ。あの姿でどこまで恋人たちの欲情を引き出し滾らせることができるか試してみたかったし、何より試験期間中は“おあずけ”だったのだ。しかし、それゆえに盛り上がってしまうと時間を忘れて朝まで放蕩三昧コースになるのは明らかだった。
「しょうがないよ、明日学校もあるし。それに、私もさっきの気になるし……」
「すごい変身のこと?」
唯は隣に座る美月の顔を覗き込む。傾国の妖狐は元通り、濡烏の黒髪の美少女に戻っている。
そして何かを気に留めている表情をしてはいるが、昨日まで時折見せたような憂鬱に塞ぎ込むようなものではなかった。
「や、それもあるけど。ほら、お面のこと」
まだそれが気になるのか、と唯は小さく溜息をついて背もたれに倒れる。
「なんかと勘違いしてるんじゃないかな~。そういうのたまにない? 記憶がいつのまにか変わってたり」
比較的もの覚えの良い唯だが、本を乱読しているせいで物語の結末を別の話と混同することなどはままある。ほかにも、すでに鬼籍に入ったと思い込んでいた有名人が実はまだ存命だったり。記憶とは、得てしてかなり適当なものである。
しかし、記念写真は嘘をつくことはない。そして唯はその写真を毎日見ているのだ。
「私も写真をグループチャットに送るね」
唯のその言葉に対し、美月は顎を突き出すようにして頷いた。
明らかに釈然としない様子だったが、明らかな証拠を持っている唯にとってはお面ことはどうでもよかった。それよりも、先ほどの変身である。
同化後、絶倫の体力を誇る唯であっても今日は身体が妙なことになったからか、幾らか疲労感がある。唯は車窓に肘をつき、窓に頭をもたれかけた。
窓ガラスにうっすらと映る自分の顔は、よく知る自分のタヌキ顔だった。
耳も尖っていなければ、妙な副翼もない。
黒葛の異能の亜種だか派生だかによって、これまでも身体を部分的には操作することができた。
おかげで裸眼で生活できるようになったし、髪も肌も思いのままだ。究極的には男性の生殖器に相当するものさえも自在に発生させることができる。
それでも、今日の変身はそれとは次元の異なるものだった。その機序も果たしてこれまでと同様のものか分からない。
ド文系の唯であっても、これまでの自分たちの身に起こったことが既知の物理法則から逸脱したものであることは分かっていた。液状化した黒葛は体積も質量も変えて自分の体内に入ってきたし、自分たちの発揮できる規格外のエネルギーの源は何なのかも不明だった。
今更、宙に浮いたとて、天井に張り付いたとて、もう不思議と“そういうものだ”と思ってしまう。そして、これまた不思議なのはあの場にいた誰もがその瞬間をカメラで撮影しようと思わなかったことだ。驚きのあまり忘れていたのかもしれないが、三者三様にあの“映える”絵面を写真に残そうと思わなかったのはどういうことだろうか。
まぁ、いつでも撮れるからいいか、と思う程度には唯にとってあの変身がごくごくありふれた──それこそコーヒーを淹れる程度の日常的なアクションの一つに過ぎないという認識になってきているのが自覚できた。美月もきっと、そうなのかもしれない。
姿を変えられるのは、“そういうものだ”。
バスは駅東口のロータリーを周り、帰路にある人々を乗せる。
唯は、ここひと月ほどバスを利用したことは過去なかったな、と思った。生まれ育ち慣れ親しんだこの町であっても、バスという交通機関を利用するにはなかなかハードルが高いものがある。
今なら空を飛んで移動できるという確信的な予感があるも、さすがに人目につくと問題なのでまだしばらくバスの世話になるのだろう。
それはともかく。
「はぁ~美月ちゃんの尻尾、やばかったなぁ~」
唯はまた椅子の背もたれに体重を預けながらあの蠱惑的とも言えるモフモフの感触を思い出す。
「びっくりしたよ。唯がいつの間にか巻き込まれてたもん」
美月は呆れるように言った。思いもよらぬ姿になり混乱していたところ、さらに未知の刺激に襲われたのだ。驚き振り返れば、自失の唯が未知の毛玉に吸い込まれようとしているところだった。
「見るからにふわっふわで……あれ尻尾の中に入ったら頭おかしくなるんじゃないかな……今度やっていい?」
「ダメダメ。なんかくすぐったいもん」
美月からすればあの毛玉の尻尾は自分の身体の一部になる。つまりその尻尾の中は美月の体内領域も同様だった。その中に人間大の異物が入るというのはあまり想像をしたいものではない。腕を入れられただけで妙な感覚になったのだから。
バスの中にまばらに客はいたが、二人は特段声を潜めることなく互いの姿への所感を交換し合った。ほかの客に聞かれたところで、ゲームのアバターか何かの話だと思うだけだろう。
喫茶店だろうが電車の中だろうが、女子高生がこんな妙なことを話していた、などと律儀にSNSに上げる人など実際はそういるものではない。
「お面のことは気になるけどさ、ちょっと吹っ切れた感じ」
「……身体の、こと?」
さすがに遠慮がちに聞き返す唯に美月は微笑み、頷いた。
「前までね、変わる前の自分と、変になった自分と……ズレみたいなのがすごい気持ち悪かったんだけど、それがなくなったかも」
唯もそう言われればそんな気がしてくる。やはり美月は自身の身体に対する感覚の解像度のレベルが違うのだろう。
「そういう意味でさ、これが、今の私の体なんだなって、納得できる感じには……とりあえずなってるかな」
特別強がるふうでもなく空元気でもない。ある意味、諦観の色も込められているかもしないが、しかし穏やかな声音だった。
唯は膝の上で両手を広げてみる。
手の甲、手のひらと何回か返してみるが、何の変哲もないちんちくりんな手だ。
丸みを帯びた爪は子どもの頃からほとんど変わらない形状をしている。
そのいかにも幼げな指に今日生まれて初めてリングが通った。両手中指に嵌ったそれはオトナっぽい黒色のドレスグローブのパーツの一部として、夢魔となった唯を艶やかに彩った。
「いよいよ……人間やめちゃったね」
唯は一段、声のトーンを落とし、美月にのみ聞こえる声で呟いた。
「いいよ……唯となら。今日、そう思えたらから」
美月もまた同じ声量で返事をし、唯の手に自分の手を重ねた。
唯も手を返し、指を絡めてその手を握り返す。
バスの狭い座席は、嬉しい。お互いの体温を感じながらコトコト揺れる振動に身も心も安らぎ、唯も美月も眠たくなってくる。
唯にはおそらくもうあの夢──真っ黒な海で泳ぐ夢は見ることはないのだろうという予感があった。あの夢は、きっと自分を海の底に潜らせるための舞台装置だったのかもしれない。
そしてそれは今日、役目を終えた。
かくして生み出されたあの姿が無意識の産物なのか何か分からないが、何か作為的なものも感じなくはない。
衣装のディティールだって凝っていた。実際にあれを作ろうとすると、服飾関係の相当な知見が必要になるはずだ。それが果たして自分たちの中にあるものだろうか? いや、ない。
唯は美月の手の感触を確かめるように指を動かす。
「何か、意味があるのかなぁ。私たちがこうなったこと」
「考えるの疲れたけど……試験終わったし、また考えなきゃね、色々」
美月は明日の予定について思いを巡らせようとして、ある重大なイベントを思い出した。
「そいや転校生って明日?」
「あ……そうだね、試験明けの月曜だし。どんな人だろうね。外国からって……」
とは言うものの、唯は筆記はともかくリスニングもスピーキングも得意な方ではないのであまり自分が関わることもないのだろうな、と思う。英語の授業も当然美月と同じクラスになるはずだ。
第一、同じ言語を話す日本人ともうまくコミュニケーションができないのだから、ましてや外国の人と会話ができようはずもない。
「私ちょっと楽しみかも。うまく喋れるかな~」
フン、という美月の荒い鼻息が唯の髪を揺らした。
そういえばこの人は会話の中にスリルを見出し楽しむ人なのだ。気落ちする前の美月が戻って来たようだった。
唯は目を閉じ、美月の肩に頭を預けた。
しかし翌日の朝。唯たちは転校生どころではなかった。
「だから言ったままだって」
「怖い怖いなんで?」
朝礼前、唯の席を囲んで黒葛と美月が言い合っていた。
クラスメイト何人かが聞き耳を立てているのは明らかだったので説明に苦慮する黒葛は頭を掻く。最初から会話を聞いているものは二人のアタマだか精神状態を心配しているに違いない。
むしろそう思われた方が都合がいいだろうかと黒葛は思いつつ、何度目かになる同じ説明を繰り返す。
「だからさ、その年にはそのお面、存在するはずないんだよ」
「いやいやいやそれおかしいじゃん」
美月も美月で何度目かになる同じ反応をしたところで座席の主が教室に入ってきた。
「早いね美月ちゃん。おはよー」
「あ……唯おはよ……いや怖くて全然寝れなくてさ昨日……」
美月はぐったりと膝を曲げ、机にぶら下がるように頬杖をつく。
「あの話? 結局どしたの?」
「唯ちゃん、あの夏祭りって2012年で間違いないんでしょ?」
黒葛は渡りに舟とばかりにカバンを下ろしきらない唯に訊ねた。
「うん。2013年が私達が小学校1年生だから、その前の年。それがおかしいとかそういう話だっけ?」
昨晩、グループチャットで何やら美月と黒葛が喧々諤々やりあっていたのは知っていたが、何年だの何歳だのと数字が飛び交っていたので自分の領分ではないと踏んだ唯はほとんど斜め読みだった。
唯は唯で証拠となる写真を送ったのだからそれで解決すると思ったらどうもそうでもなかったらしい。
「美月ちゃんプリティアのお面かぶってたじゃん。私の送った写真でさ」
「そうだけど……」
唯が送った写真が示すのは、唯の記憶通りの過去だった。
すなわち、2012年の夏祭りの記念写真に写っていたのは、美月の両親と唯、そしてプリティアのお面を被ってアニメのポーズをとっていた美月の4人だった。
美月が両親に確認したところ、父と母も唯が証言したままのことを覚えており、唯にプリントして渡した写真の元のデータまでも見せてくれたが当然同じ画像だった。
それだけであれば美月の記憶違いで済む話だった。
美月の母がその時のお面をしまっているというので出してもらったら、果たしてそれはプリティアのお面などではなかった。
「いやでも、ほら、送ったじゃん、お面の写真さー」
美月は机の上のスマホの画面を傾けスリープを解く。
そこにはやや変色し黄ばんだ風合いのプラスチックのお面が──キツネを模したキャラクターのお面が映っていた。
「これ、ほら、ポシェモンのキャラなんでしょ? 私よく知らないけどこのお面なんだってば」
「そうだよ、このお面は2012年には絶対存在してない。少なくとも、世に出回ってはない。このキャラが発表されたのは、2013年。ゲームの発売のタイミングだから」
唯が椅子に座ってなお黒葛と美月は無限にループしそうなやりとりを繰り返している。
いくら大好きな二人の声とはいえ、登校して早々に耳元で右から左からギャンギャンとやり合っているというのは、朝から大盛りのカレーライスを食べさせられている気持ちになる。
特に黒葛はオタクの例に漏れず、自身の興味のある分野だと饒舌になるのが厄介だった。
「よくわかんないけどゆうきくんがまちがえてるとかないの」
スロースターターな唯はあくび交じりで訊ねてみる。唯にとって二人のうちどちらの言い分がより信頼できるかは言うまでもない。
少し軽んじられた気がした黒葛はムキになって自分のスマホをスワイプしながら語気を強める。
「僕当時すごいポシェモンやり込んでたから覚えてるよ。あのキツネのキャラはポシェモンシリーズの第6世代のキャラね。これ、ほら、ほら、ね、2013年10月発売のやつ」
そう言って黒葛が突き出した割れた画面には wikipedia の記事が映っていた。
国民的なビデオゲームであるポシェットモンスター。その6番目となるシリーズの発売日は黒葛の言う通り、あの夏祭りの翌年だった。
「えええ、ほらやっぱおかしくない? なんでじゃあ私がそれ持ってんの?」
「それが分からない。発売の年の夏くらいにはキャラだけは発表されてた可能性はあるけど……でもあれ最終進化系だからなー。発売後だと思うんだよなー」
つまり、キツネのお面の存在に矛盾があるということだった。
2012年の時点ではキツネのお面のデザイン元となったキャラクターは発表されておらず、必然的にお面にもなっていない。
となると、美月が2013年以降──小学校に上がって以降に夏祭りに行き、キツネの面を手に入れたということになる。しかし。
「いやいや私もうその後しばらく夏祭り行ってないし……中学んとき一度友達と行ったけど、お面なんてそのときは……」
「だと思うよ。人気キャラだったけどさすがに旬が過ぎてるし……弟のどっちかのお面だったりしないの?」
唯は目を擦りながら黒葛の会話能力の上達具合に感心する。激論をしているようで基本的には美月の意見を尊重しつつほかに考えられる現実的な可能性も探っているようだった。うかうかしているとコミュニケーション能力で黒葛の後塵を拝してしまう。
「私さ、あのお面気に入ってたから、弟に取られないように名前書いてたんだよ、ひらがなで。……小学校上がる前の私の字だった」
美月が言った通り、お面の裏側には擦れ気味ながら美月の名前が書いてあった。
「美月ちゃんのお父さんとお母さんは?」
「……唯と行ったって言ってた。で、私が唯を連れて迷子になったから肝冷やしたって。お面は……よく覚えてないみたいだったけど……。でも、うん、震災の翌年って言ってたから、2012年だと思う」
美月の声音は言葉を紡ぐごとにどんどんと低くくぐもっていった。
「うーん、よくわかんないなぁ」
黒葛は無為なスワイプを繰り返しながら思案する。
唯の言う『小学校に上がる前の年』というのと、大人が言う『震災の翌年』はどちらも覚え方としてはインパクトがあり、確度が高い。
それにあのお面の風合いからしてゲーム発売の頃のものであることは間違いなさそうだが、キャラクターが発表される前にお面になることはあるのだろうか? 当時黒葛は指を折りながら発売日と、新しいキャラクターの発表を心待ちにしていたのだ。
「私ウソは言ってないから……たぶん」
美月はしばらく精神的に不安定な日々を経て、昨日は自分の存在そのものが根底から覆るような体験をしたのだ。自分というものを疑ってしまいそうにもなる。
「僕も唯ちゃんも嘘だって思ってないよ。何よりお面っていう現物があるし……逆にプリティアのお面はおうちにはなかったわけでしょ?」
口を尖らせたまま頷く美月は、朝礼前とは思えないほどに目がしょぼくれていた。
「でも……やっぱり、私の記憶が変なのかも……」
そして唯の机に突っ伏す。
「唯だと思ってた子は唯じゃなかったし、そこで唯と初めて会ったって勘違いしてたし……ちゃんと考えたらそんなことないのにね」
かけがえのない存在である唯との出会いの場面を勘違いしていたことは、美月にとって少なからずショックだった。自分にとって、唯はその程度の認識でしかなかったのだろうか?
「美月ちゃん……」
唯が美月の背中をさすろうとした時、予鈴が鳴った。
クラスメイトたちがぞろぞろと自席に向かう中、美月は口を尖らせたまま黒葛を睨むようにして呟く。
「……ね、今日石搗さん行ってみたい。午後さ」
石搗さんというのは、石搗神社のことだ。例の夏祭りが行われた神社であり、そして古くからこの宝月町に存在する神社だ。そして今日はテスト採点日のため午前授業で終業となる。
「僕も、行きたかったんだ。唯ちゃんも行けそう?」
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