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第一章
第41話/丘の上から見える町
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2023年6月4日(日) 10:30 ガラガラ公園
「全然、楽勝だったね」
最後の段を蹴った黒葛が同時にゴールインした唯と顔を見合わせる。
「走って登っても余裕だったかも……昨日美月ちゃん言ってたもんね。疲れないからやだって……」
運動が苦手で体力もないはずの二人は200段近くはあろうかという石段を軽快に、休むことなく登ることができた。セックスのときも興奮由来の発熱や発汗、拍動はあれど、筋疲労をまるで感じなかったのでもしやと思ってはいたが、想像以上だった。
「唯も祐樹もかー。まぁいらん汗かかないのはいいけど……達成感がさ、ね」
先に駆け上がって待っていた美月はいかにも残念そうな表情だ。
「そー、がんばったご褒美、ほら」
「おおお……」
黒葛は唯が指差した方向を振り返り、感嘆の声を上げる。
眼下には宝月の町が広がっていた。
「いい眺めでしょ。本当はね、くたくたになって見るとすごいんだよこれ」
美月のように身体を追い込む趣味はない唯でも、この長い石段の先にある達成感は何にも代え難いものであると思っている。
「祐樹、こっちこっち、もうちょっと眺めスポットあるから」
手招きしながら駆け出す美月の後ろ姿があっという間に小さくなる。
「はっや」
「ほら祐樹くんいこ~」
呆気に取られる黒葛も唯に促される形でその後を追った。
走りながら唯は養生されている芝で覆われている一帯の斜面を指差す。
「あの辺ね、ガラガラ滑り台あったの。美月ちゃんはやーい」
「なにあれ……人間じゃない……」
滑り台どころではなかった。
もはや豆粒のように小さくなった美月の走りは、斜面の上へと落下していくかのような反重力走行だった。その強靭な脚力で大地を蹴り、飛び跳ねるようにして斜面を登っていく。
「や、でもめっちゃ軽い! 体!」
唯もその場でピョンとジャンプしてみてから一気呵成に駆け上がっていく。
美月ほどではないにせよ、こちらも恐ろしい速度だった。
飛び跳ねる反重力走行の美月に対して、まるで宙を滑るように軽やかな無重力の走り。それは遠目には飛行か滑空にも見えたかもしれない。
「祐樹もはやくー」
はるか彼方から美月の叫び声が聞こえる。おそらく黒葛の名前を呼んだ声としては過去最大のボリュームだった。そんな大声で醜男の名前を呼んだことがバレたら美月の沽券に関わるとして焦った黒葛も力の限りに駆ける。
黒葛は流れていく景色の速さに驚いた。
そして、足運びが分かる。
その足に置いていかれないように腹筋と背筋が上体を支えている。
腕の振りが下半身を引き上げている。
いや、上半身と下半身を区別するのが馬鹿らしいほどに身体全体で走っている。
身体のあっちとこっちが相互に作用し合って、爆発的なエネルギーを生んでいる。
走るってこういうことだったんだ!
「祐樹おそー!」
感動する黒葛へ美月の発破が飛ぶ。唯もいつの間にか美月の隣で手を振っていた。
「ええ~!?」
決して黒葛が遅いわけではなかった。
むしろ人間が出せる常識的な速度を凌駕していたものだった。ただ、人外の女子二人が速すぎたのである。
「ふー、さすがに……」
全力の疾走により上がった息を整えつつ二人に寄る黒葛。
「ここ! 一番の眺めスポット!」
手すりから身を乗り出した美月が眼下の景色を指差している。
「ここ懐かしいね~。天気よくてよかった」
帽子を被っている唯もさらに手で日よけを作り、美月の指差す方向を眺めている。
「おおー」
階段の上で見た景色よりもさらに広い画角で町が、山が空が一面パノラマだ。
初めて見る景色ながら、どこか懐かしい気がした。
それはこの景色を見る二人の気持ちなのだと理解する黒葛は、そして安心さえ覚える。
妙な話だが、二人と同化した今、この景色は自分にとって故郷の景色でもあるのだ。
「これ、見せたかったんだ」
坂の下から吹き上げてきた風が美月の髪をたなびかせている。
今度は唯が指差して見せる。
「祐樹くん、ほら、あの辺から来たんだよ。……あっすごい! うちが見える! この目すごい便利!」
黒葛がその方向を探る前に唯は指を引っ込めてしまう。
そして腰を屈め、まるで双眼鏡を構えるような手の形で景色を探り始めた。
かわいい。
「……ほんとだ! 望遠鏡いらずじゃん」
美月は直立のまま片手を腰に当て、片目に丸めた手を当てて景色を見渡している。
かっこいい。
同じ事をしているのにこうも違うものだろうか。
黒葛はパチパチと瞬いてみたり、目を細めたり、寄り目をしてみたりするが、自分の目には二人のような便利機能はなさそうだった。かといって無理に弄ろうとすると目から黒い泥が飛び出てしまう気がしてやめた。
「……んんー。僕それ多分無理かも……」
「そうなの? 不便だねぇ……まぁいいや。ほら、だからあそこがバス停じゃん。大きい通りがあって……」
美月の指が来た方と思われる辺りを差す。
あそこと言われても大雑把すぎるが、美月の目の解像度的にはしっかり見えているんだろう。
黒葛は美月の肩付近に顔を寄せ、伸びる腕と角度を合わせてみる。その先の指が止まった先は。
「駅だ」
私鉄の線路が南北に走っているのですぐに分かった。この町を走っている鉄道はあの路線だけのはずだ。
「そう。そんで、そこをさらに越えて……」
再び美月の指が東方向へと滑っていき、黒葛の首も追従する。そちら側は外から引っ越して来た黒葛にでもいくらか勝手が分かる。通学の際いつも渡っている大きな斜張橋はここからでも目を引くランドマークだ。
「うん、わかってきた。大きい川があって、さらにその向こうの方に……うちがある」
美月は今度は指を左の方に飛ばす。
その指の先を見た黒葛はパズルがはまったような気持ちよさを覚えた。
「あ、学校だ。あそこなんだ」
この公園を含む丘陵地帯から南東にちょこんとはみ出る形で学び舎がある。学校は小高い丘の上にあるため、黒葛は毎朝校門に続く坂道に苦労をしていた。
そして、こうして見ると学校も今いる丘陵系に属しているということがなんとなく分かる。学校を残して周囲の高台が削られ、今のような形になっているという方が正しいかもしれない。
「学校がそこだから……めっちゃ遠いね。通学。自転車じゃないんでしょ」
「うん、だからいつも歩いてる」
「そりゃ大変だって。自転車買いなー」
黒葛にとって徒歩はそれほど苦にはならない。というか、自転車が乗れないというだけだった。以前住んでいた場所は自転車がなくても特別困ることはなかったのだ。
しかし、二人と同化した今ならあの自転車とかいうわけのわからない乗り物も乗りこなせてしまうんだろう。
「川……ふたつ流れてるんだ。そっか、そういえばここに来るまでに川渡ったもんね」
「そうそう。祐樹くんちの方の川が沙須川っていう名前。さっき渡ったのが、会瀬川」
唯の言葉に黒葛が反応する。
「え、会瀬川って、あの会瀬川かな」
それは以前住んでいた自宅のすぐそばを流れていた川と同じ名前だった。
黒葛の知る会瀬川はほとんど河口付近だったため、今見えている川とは幅から雰囲気まで似ても似つかない。
会瀬川の流れの行く先を目で追ってみる。西から流れて来たそれは一度は沙須川の方へと寄っていくが合流せず、南西の方へ折れ離れていく。その先は山の影になって窺えなかった。
「そっか……じゃ、あの山の向こうが」
「祐樹くんの、地元?」
唯が黒葛の言葉を補うようにして訊ねた。
「多分……そっか、方角的にはそうだよね。……方角かぁ」
「方角?」
今度は美月が反応する。
黒葛は少し考えて口を開いた。
「僕……海が近いとこで育ったから、海がある方向が南って感覚。で、山がある方が北……みたいな」
美月は腕を組み、周りを見渡してみる。
「ああー、ここは盆地ってわけじゃないけど割と山に囲まれてるもんね」
「うん……なんかね、引っ越して来た時、そういうのもあってなんか迷子になった感じだった。自分の軸をどこに合わせればいいか? ……みたいな?」
ん? 迷子とは?
美月は首を傾げる。唯にも今ひとつ分からない感覚だったが、慣れない土地ということなら思い当たるフシがないことはなかった。
「うーん。渋谷とか新宿に行った時の感じかなぁ。あそこもよく分からないもんね」
「んんん? そ?」
ますます首を傾げる美月。
「美月ちゃんは頭の中に磁石でも入ってるんだよきっと」
昨日の買い物デートを思い出して唯はカラカラと笑った。
美月は都心部の地理に特別明るいわけではないが、行きたいと思う場所へ迷う事なく最短のルートで向かうことができる。人混みだけで酔いそうになる唯の手を引っ張って地上地下とお構いなしにズンドコ突き進む美月が実に頼もしかったのだった。
美月とは異なり生まれつき方向感覚がよろしくない黒葛にとって、方位の手がかりとなる“海”という存在を日常から取り上げられたということは、同時に黒葛が世界の中でどう自らを位置付けるかという座標——言い換えればアイデンティティの根拠のひとつを失調したということでもあった。
「でも、今ちょっとストンと来た気がする。色々、繋がった気がするよ」
この宝月という場所が自分の故郷と川を介して結ばれている。そのことを理解したことにより、黒葛は今初めてこの土地に引っ越しをしたという実感が持てた気がした。
あそこが故郷なら、北はこっち、東西はあっちとそっち。ちゃんと身体で分かる。
「ならよかった。やっぱ見るのが早いかなと思ってさ」
満足そう、というよりもしてりやったりという表情の美月。唯も頷き、また町並みを眺める。
「でもこうして見ると、結構変わったかもね」
「家とか、マンション、増えたね。もっと昔は空き地とか多かったのにね。ちょいちょい緑もあるけど……」
唯に続いて景色に目をやる美月は複雑そうに呟いた。
「あそこは? なんかちょっと森っぽいの」
黒葛はここから南南西方向に見える、こんもりとした緑の塊を指差す。
そこだけ不自然に木々が密に茂っており、地面に半分埋まったブロッコリーのようだ。
「ああ、あそこは神社。あのモコモコの森の向こう側に神社があるの。こっちからじゃ見えないけどね」
美月が即答し、唯がうんうんと頷いている。
この公園の正式名称をしっかり覚えていた唯の一方、町のどこに何があるかを身体的に理解し、文字通りマッピングする精度の高さは美月の方に分があるように思えた。
「その手前……」
ふと、黒葛はそのブロッコリーのそば、少し手前に見える大きな緑地帯が気になった。
「あ、ひょっとしてこの町の名前の由来?」
黒葛のその発言に対してそれまでとは違い二人の反応が悪い。
まるでピンと来ていないようだったので補足する。
「ほら、あの公園? 形がさ、きれいな三日月みたいだから」
唯がパンと手を叩いた。
「あ、宝月ね。ふふっなるほどー」
「そっか、確かに、そう見えるかもね」
少し遅れて美月も理解したようだった。
「まぁ……違うか」
肩を落とす黒葛。ちょっと町を知ったつもりになって調子に乗って、変な恥をかいてしまった。
きれいな月みたいな形の公園があるから町の名前が宝月だ?
そんなことってある? 我ながら恥ずかしい。
ふと黒葛の肩に乗せられた美月の腕がその緑地帯あたりをくるくると示す。
平然と腕を載せてくるあたり、改めて自分より身長が高いという事実を認識する。そして香るウルトラいい匂い。
「あの辺はもっと……それこそ森みたいだったんだよ。今だいぶすっきりしちゃったけど」
美月は指をその一帯差したままぐるぐる回したり。ピコピコ立ててみたりしながら説明する。指一本で多彩な表現力だ。
「昔美月ちゃん勝手にそこに秘密基地作って私もよく連れてかれたなぁ。大人の人に見つかってめっちゃ怒られたの」
“ひみつきち”というといかにも20世紀的な響きだ。この二人から出てくるエピソードのいちいちが同じ時代を過ごした人間とは思えない。過去からタイムスリップでもして来たのだろうか。
「あったあった。そうそう、森というか雑木林みたいな感じだけどね。今はだからその一部だけ残って三日月みたいになってる。そこが今公園だね。地蔵公園」
「じぞう……」
「勝手にそう呼んでるだけなんだけどね。お地蔵さんがいっぱい置いてあるから」
さすがの唯にも公園の名前は分からないのだろうか。黒葛は地蔵というものに詳しくはないが、公園に石像が並んでいる絵を想像して何やら気味の悪さを覚える。しかし、比較的新しい公園ということなら相応にキラキラした名前でもついているんだろう。それこそシャイニングクレセントムーンパークとか。
「昔、町のいろんな場所にね、お地蔵さん──私らは“おいこさん”って呼んでたんだけど。それをいつかのタイミングでさ、町の再開発? だかでまとめてその雑木林に移したの。同じタイミングでそこも開発されて、残った部分が公園になったって流れ。ちょうど……だから祐樹が来るちょっと前か」
黒葛が引っ越して来たのは2020年。中学2年に上がるタイミングだ。
「そこ、新しい図書館とか、体育館とかプールもあるよ。運動したくなったら行ってみる? 美月ちゃんの水泳の大会もそこでやったりするんだよ」
補足する唯の説明のとおり、確かに公園に隣接する形で新しげな大きめのハコモノがいくつか見える。
図書館が移転新設されたという話は知っていたが、自宅からやや遠方ということもあって行こうとは思わなかった。しかしなぜだろうか今、無性に図書館に対して惹かれる思いがある。
加えて体育館もプールも忌避したい施設だったはずだが、その響きにトキメキを覚えるようになっている、かもしれない。
前者は唯の、後者は美月の影響だろうか。唯の口ぶりからして彼女も運動に対して以前ほどネガティブな印象は持っていないようにも思えた。
「そっか、“おいこさん”が町の中にないってことだから、もうあれやってないよねきっと」
「あー“おいこさん”だよね?」
美月の呟きに唯が返すが、黒葛は何のことか全くついていけない。
“おいこさん”とやらが町にないから“おいこさん”をやってないとは?
「うん、私らが小6だか中学上がるときくらいじゃん、あの辺キレーになって地蔵公園できたのって」
会話ごとに黒葛の頭の上にクエスチョンマークが増えていく様子に唯が気付く。
「あ、ごめんね祐樹くん。全然分かんないよね……。“おいこさん”っていうのはお地蔵さんの呼び名でありつつ、また地域の……子供会でやってた行事の名前でもあるの。ややこいよね」
「あーそういうこと……」
“なまはげ”みたいなものだろうか。泣く子を追いかけ回す鬼の呼び名であって、行事の名前でもある。
「でも行事って?」
「唯、おいこさんの歌覚えてる?」
黒葛の問いを受けて唯に目配せをする美月。
「毎年やってたからねぇ」と言いながら唯は何か地団駄を踏むような仕草をして見せた。
それは自転車の空気入れをするような、あるいはある芸人の『関係ねぇ関係ねぇ』と連呼するネタのようにも見えた。
「おっ、じゃあ今ちょっとやってみる?」
「えー、ちょっと恥ずかしいけど……でも久しぶりに……やる?」
示し合わせた二人が向かい合わせに立ち、美月が軽く咳払いをする。
「じゃあ唯んちバージョンでやってみよ。せーの」
おいこの おいこの おいこのござる
いわって めでたき よいのはじまり
きょうのおひがら どってんしゃ
さあさかしこめ 茜川がみその
しもついわねのないふらず
いうてもきかぬ おにへびどもの
あかがちまなこはひっぱたけ
ここはてるてるかむにわなれば
ひとりさん おにげなさいな
ことりさん またどうぞ
不思議な光景だった。
シーソーで遊んでいるかのように唯と美月が交互にジャンプし、その二拍子の動作に合わせたリズムで意味の分からない囃子歌が歌われる。
黒葛の目には今見えているはずの公園の景色に、住宅街の路上の景色が重なって見えるようだった。
「おー最後ついてきたね祐樹!」
いつの間にか黒葛も知らないはずの歌の後半部分を二人に合わせて歌っていた。
「相当私らに染み付いてるんだね……これ」
「歌の意味……分かんないけどね」
黒葛が唯に肩をすくめて見せると、唯もはにかんで答える。
「私もわかんない」
黒葛と唯の視線が美月に向けられ、慌てて胸の前で手を振りその視線をかき消そうとする。
「唯が知らないなら私が知るわけないじゃん」
黒葛は腕を組みつつ歌詞を思い出してみる。
「なんか……物騒な歌だけど?」
鬼と蛇をひっぱたく? シメは小鳥を追い払う感じ? なんのことやら。
とはいえ、黒葛は楽しかった。それはきっと、この行事に参加してこの囃子を歌い踊っていたときの二人の気持ちそのものなのだろう。
唯が身体に染み付いていたと言ったとおり、そうした身体の同期を通じて、二人とより繋がれた気がした黒葛だった。そしておそらく二人を通して、この土地とも。
「とまぁ、こんな感じでね、地域ごとの子供会でそれぞれエリア分けておいこさん回って、終わったらご褒美のお菓子をもらって終わり。私と唯は近所だったから同じ子供会だったんよ」
「それぞれのおいこさんをお世話する家が決まっててね。まぁほんとはうちも美月ちゃんもお世話する家じゃないから……今のはテキトーバージョン」
顔を見合わせて懐かしむ二人の笑顔は童心に返ったかのようだった。黒葛に知らないはずの身体の記憶が喚び起こされたように、二人にも子どもの頃の感覚が蘇ったのかもしれない。
「ふうん……」
黒葛は下唇を突き出すようにして口を尖らせる。眉間には皺を寄せて、厳しい顔つきだった。
「なになにうらやましいの?」
美月がこれ見よがしに唯を後ろから抱きしめて見せる。
「いや、そういうわけじゃ……や、そうかもだけど……」
不機嫌そうに見えたのだろうか? そのような感情は一切なかった。単にものすごく興味深かったのでこの儀式に何の意味が込められているのか、思いを馳せていただけだった。
その心、表情に反してinterstingの極みであった。
あえて言うなら、路上でピョコピョコ飛び跳ねる二人の幼き日の姿を想像し、うっかり終末を迎えそうになった己の情緒を誤魔化そうとしたのかもしれない。でなければ顔面が色々な意味で溶解していたことだろう。
これまで黒葛が前髪で自分の顔を隠していたのも、このように自分の意図しない表情や仕草でそれを見る人に誤解を与えてしまうことが怖かったというのもある。
「おいこさんかぁ……」
黒葛が元々住んでいた場所にはない、摩訶不思議な行事だった。
話を聞いた限りでは、観光客に目配せをしたものでもなければ、よく聞くような町おこしの材料でもない。ただ、この土地の、この土地によるこの土地のための、行事。
この行事についてググったところで詳しい概要等は出てこないかもしれない。しかしこの町に昔から住む多くの人は知っているんだろう。その動作、囃子歌を身体に染み込ませて。
この謎の儀式を行っていた最後の世代であるこの二人が何かしらの記録を残さない限り、もしかしたらこの世界からなかったことになったりやしないか。
「なんか……もったいない気もするよね、そういうのなくなると」
「まぁねー。時代の流れってやつ?」
そう嘯いて見せる美月だったが、景色を見つめる目はどこか寂しそうではあった。
その目には“おいこさん”だけではない、時代の流れとして割り切るしかなかった、移ろい消えて行った幼き日の情景が映っているように思えた。
「僕……ふたりのこといっぱい知りたいって思うんだけど、ふたりのことって、やっぱさ、ここの町に紐づいてるんだよね。色々」
唯と美月が生まれ育ち、出会った場所なのだ。大好きな二人の、喜怒哀楽の全てをこの町は知っている。
「あるよー、色々。唯とはやっぱりほら、あの神社の夏祭りとかでねぇ」
「まぁ追々、ね? 私も祐樹くんのこと色々知りたいし……」
自分たちのことばかりでさすがにバツが悪くなったのだろう。唯は黒葛に目配せをして一旦思い出話を切り上げようとするが、これまで出てきたエピソードから帰納するに二人の話のネタは永遠に尽きなさそうに思える。翻って自分はというと、子どもの頃の話など何をすることがあるだろうか?
黒葛はこれからの日々が楽しみで仕方がなかった。
二人のこと、もっと知りたい。もっと二人の話が聞きたい。
ふと、唯が黒葛と美月に向き直る。
「昨日のね、漢詩……覚えてる?」
「国を去りて三巴遠く。楼に登れば万里春なり」
「えと、心を傷ましむ江上の客、是れ故郷の人ならず。……あれ、これって」
即反応した美月を追う形で続いた黒葛だったが、あることに気が付く。
「唯ちゃん、春じゃないけど……これシチュエーション的には」
小さく頷く唯。
「あれのね、昨日は言えなかった私の解釈なんだけど……」
手すりを掴み、遠くへと目をやって続ける。
「もしかしてね、故郷の人じゃないからこそ、見える景色もあるのかなって思ってて……」
黒葛も美月も、それぞれで景色に目をやりながら唯の言葉に耳を傾ける。
「極端を言えばね、景色一面がね、わー!春だー!ってなったのもね、もしかしたら……それがその土地の人じゃない、旅人だったからなのかなぁとか。みたいな。んー、解釈というか……単なる希望かな、私の」
手すりに腰をかけて空を仰ぐ唯。自説を開陳したことによる照れ隠しのようにも見えた。
「あー、実はその土地的には春っぽい感じじゃなくても、知らない人が見たらめっちゃ春じゃん! とか?」
「地元だったら当たり前すぎてたりして実は気にも留めない……とか、そんな感じ?」
美月の反応を受け、黒葛もイメージを描くことができる気がした。
「そうそう、そういう。ほら、地蔵公園が三日月みたい、とかさ、私たちにはない発想だったじゃない」
二人が乗って来たことで唯も少し安心したようだった。
昨日聞いた感じでは寂しい印象だった詩が、唯の解釈を経てまた変わって見える。
確かに、国語の問題でよくある“作者の気持ちを考えよ”的な視点で言えば想像に想像を重ねたもので、唯の主観的な希望も多分に含まれているので正答とはならないだろう。しかし、それを踏まえた上でさらに独自の解釈を照射することで、全く別の魅力が浮かび上がってくる。
それって、唯ちゃん、めちゃくちゃカッコよくないか。その一方で僕ときたら。
「全然、見当違いだったけどね……」と肩をすくめる黒葛に、唯は首を横に振る。
「誤解から生まれるものも、きっとあるんだろうね。春だってところ変われば定義も変わるし。ううん、人それぞれで違うもんね、季節の感じ方ってね」
「なんか季語み~! 季語みあるそれ!」
いと風流あわれなり。を美月が言うとこうなるらしい。黒葛は、なんとなく美月の表現の具合というものを掴めてきた気がした。
「でも私も、誤解は……うん、分かるなーなんか」
唯と並び美月も手すりに腰を掛ける。
「美月ちゃんでもそういうのあるの? なんか意外……」
「会話とかでもさ、よくあるよ。お互い全然別のこと想像してるのに、なぜか会話が成り立つことあるんだよね」
美月が両手それぞれでイヌだかキツネだかの形を作り、向かい合わせて口の部分をパクパクとさせる。
両者が勘違いしたまま勝手に話が進んでいく様子を戯画化したものは黒葛にも覚えがあった。
「あ、なんかそういうコントあったよね」
「そうそう。まさにあんな感じでさ。コントと違うのは落とし所がない分、予定調和じゃない謎グルーヴ感が出てね。普通に会話してたら気付かなかったような視点とかノリというか……そういうの楽しいよね」
両手のキツネを黒葛と唯に向けてニヤリを笑う美月。
「出たコミュ強者の境地……」
誤解の効能を説く唯も、日常会話での誤解にまで敷衍させるほどの度量はない。もちろんそれは黒葛も同様である。
「僕には全く想像つかない世界だけど……誤解かぁ」
唯が披露してみせた詩に対する解釈自体も誤解な可能性は十分にある。いや、ほとんど唯の願いにも似たこじつけなのだろう。しかしその解釈で少なくとも自分は救われる思いがした。今まで“誤解”というものは、すなわち悪でしかないと思っていたが、状況を好転させる要素になり得ることは少なからずあるのかもしれない。
「三日月みたいで宝月かー。確かになんで宝月っていうんだろ。唯知ってる?」
宝月の申し子みたいな名前でそれを言うか、と苦笑する唯だったが言われてみれば気にしたことがなかった。
「この土地から見える月がきれいとかかなぁ?」
何しろ生まれた日の満月が綺麗だったという理由で“美月”という名前を付けられた人がいるくらいなのだ。むしろ唯は、美月という宝のような存在がいるからこその宝月なのではと因果を無視した説を提唱してみたくもなる。
それはさておき。
「町の名前なんて、それこそ当たり前に思ってて気にしたことなかったねぇ」
「唯が知らんなら多分誰も知らんくない?」
そんなわけないだろうと思う黒葛だったが、美月はごく真面目そうだった。その手の固有名詞を覚える記録媒体として全幅の信頼を寄せているのだろう。
手すりに座り並んだ二人は会話が途切れると、感嘆詞ですらない何かを発声しながら脇をつつき合ったり袖を引っ張り合ったりし始める。完全にバカップルのそれだった。
黒葛は睦まじく戯れる二人の後方に広がる宝月の景色を今一度目に焼き付ける。
もし仮に、まだ人間であった時に一人でここに来たらどんな気持ちになっただろうか。
あの詩の旅人のように春を見出せただろうか。
山の向こうへと続く春の景色に、以前住んでいた海沿いのあの町の春を思い泣いていたかもしれない。
しかし今、春は黒葛のすぐ隣に咲いている。
そしてこの美しく可憐な春を通じて宝月という町に帰属していく自分自身に気が付くのだった。
「うーん」
「どしたー? 何かおもろいもんでも見つけた?」
美月の手が黒葛のシャツの裾を引っ張った。
黒葛が腕組みをしたまま美月の方を向く。
「いや、めっちゃよかったな、って思って」
シャツを引っ張る反対側の手は唯の手と繋がれていた。
黒葛は無意識に厳しい顔を緩め、そしてぎこちなくも微笑んでみる。
「ありがとう、美月さん。唯ちゃんも……来てくれてありがとう」
美月と唯は顔を見合わせ、してやったりとばかりに黒葛に向けて白い歯を光らせた。
「全然、楽勝だったね」
最後の段を蹴った黒葛が同時にゴールインした唯と顔を見合わせる。
「走って登っても余裕だったかも……昨日美月ちゃん言ってたもんね。疲れないからやだって……」
運動が苦手で体力もないはずの二人は200段近くはあろうかという石段を軽快に、休むことなく登ることができた。セックスのときも興奮由来の発熱や発汗、拍動はあれど、筋疲労をまるで感じなかったのでもしやと思ってはいたが、想像以上だった。
「唯も祐樹もかー。まぁいらん汗かかないのはいいけど……達成感がさ、ね」
先に駆け上がって待っていた美月はいかにも残念そうな表情だ。
「そー、がんばったご褒美、ほら」
「おおお……」
黒葛は唯が指差した方向を振り返り、感嘆の声を上げる。
眼下には宝月の町が広がっていた。
「いい眺めでしょ。本当はね、くたくたになって見るとすごいんだよこれ」
美月のように身体を追い込む趣味はない唯でも、この長い石段の先にある達成感は何にも代え難いものであると思っている。
「祐樹、こっちこっち、もうちょっと眺めスポットあるから」
手招きしながら駆け出す美月の後ろ姿があっという間に小さくなる。
「はっや」
「ほら祐樹くんいこ~」
呆気に取られる黒葛も唯に促される形でその後を追った。
走りながら唯は養生されている芝で覆われている一帯の斜面を指差す。
「あの辺ね、ガラガラ滑り台あったの。美月ちゃんはやーい」
「なにあれ……人間じゃない……」
滑り台どころではなかった。
もはや豆粒のように小さくなった美月の走りは、斜面の上へと落下していくかのような反重力走行だった。その強靭な脚力で大地を蹴り、飛び跳ねるようにして斜面を登っていく。
「や、でもめっちゃ軽い! 体!」
唯もその場でピョンとジャンプしてみてから一気呵成に駆け上がっていく。
美月ほどではないにせよ、こちらも恐ろしい速度だった。
飛び跳ねる反重力走行の美月に対して、まるで宙を滑るように軽やかな無重力の走り。それは遠目には飛行か滑空にも見えたかもしれない。
「祐樹もはやくー」
はるか彼方から美月の叫び声が聞こえる。おそらく黒葛の名前を呼んだ声としては過去最大のボリュームだった。そんな大声で醜男の名前を呼んだことがバレたら美月の沽券に関わるとして焦った黒葛も力の限りに駆ける。
黒葛は流れていく景色の速さに驚いた。
そして、足運びが分かる。
その足に置いていかれないように腹筋と背筋が上体を支えている。
腕の振りが下半身を引き上げている。
いや、上半身と下半身を区別するのが馬鹿らしいほどに身体全体で走っている。
身体のあっちとこっちが相互に作用し合って、爆発的なエネルギーを生んでいる。
走るってこういうことだったんだ!
「祐樹おそー!」
感動する黒葛へ美月の発破が飛ぶ。唯もいつの間にか美月の隣で手を振っていた。
「ええ~!?」
決して黒葛が遅いわけではなかった。
むしろ人間が出せる常識的な速度を凌駕していたものだった。ただ、人外の女子二人が速すぎたのである。
「ふー、さすがに……」
全力の疾走により上がった息を整えつつ二人に寄る黒葛。
「ここ! 一番の眺めスポット!」
手すりから身を乗り出した美月が眼下の景色を指差している。
「ここ懐かしいね~。天気よくてよかった」
帽子を被っている唯もさらに手で日よけを作り、美月の指差す方向を眺めている。
「おおー」
階段の上で見た景色よりもさらに広い画角で町が、山が空が一面パノラマだ。
初めて見る景色ながら、どこか懐かしい気がした。
それはこの景色を見る二人の気持ちなのだと理解する黒葛は、そして安心さえ覚える。
妙な話だが、二人と同化した今、この景色は自分にとって故郷の景色でもあるのだ。
「これ、見せたかったんだ」
坂の下から吹き上げてきた風が美月の髪をたなびかせている。
今度は唯が指差して見せる。
「祐樹くん、ほら、あの辺から来たんだよ。……あっすごい! うちが見える! この目すごい便利!」
黒葛がその方向を探る前に唯は指を引っ込めてしまう。
そして腰を屈め、まるで双眼鏡を構えるような手の形で景色を探り始めた。
かわいい。
「……ほんとだ! 望遠鏡いらずじゃん」
美月は直立のまま片手を腰に当て、片目に丸めた手を当てて景色を見渡している。
かっこいい。
同じ事をしているのにこうも違うものだろうか。
黒葛はパチパチと瞬いてみたり、目を細めたり、寄り目をしてみたりするが、自分の目には二人のような便利機能はなさそうだった。かといって無理に弄ろうとすると目から黒い泥が飛び出てしまう気がしてやめた。
「……んんー。僕それ多分無理かも……」
「そうなの? 不便だねぇ……まぁいいや。ほら、だからあそこがバス停じゃん。大きい通りがあって……」
美月の指が来た方と思われる辺りを差す。
あそこと言われても大雑把すぎるが、美月の目の解像度的にはしっかり見えているんだろう。
黒葛は美月の肩付近に顔を寄せ、伸びる腕と角度を合わせてみる。その先の指が止まった先は。
「駅だ」
私鉄の線路が南北に走っているのですぐに分かった。この町を走っている鉄道はあの路線だけのはずだ。
「そう。そんで、そこをさらに越えて……」
再び美月の指が東方向へと滑っていき、黒葛の首も追従する。そちら側は外から引っ越して来た黒葛にでもいくらか勝手が分かる。通学の際いつも渡っている大きな斜張橋はここからでも目を引くランドマークだ。
「うん、わかってきた。大きい川があって、さらにその向こうの方に……うちがある」
美月は今度は指を左の方に飛ばす。
その指の先を見た黒葛はパズルがはまったような気持ちよさを覚えた。
「あ、学校だ。あそこなんだ」
この公園を含む丘陵地帯から南東にちょこんとはみ出る形で学び舎がある。学校は小高い丘の上にあるため、黒葛は毎朝校門に続く坂道に苦労をしていた。
そして、こうして見ると学校も今いる丘陵系に属しているということがなんとなく分かる。学校を残して周囲の高台が削られ、今のような形になっているという方が正しいかもしれない。
「学校がそこだから……めっちゃ遠いね。通学。自転車じゃないんでしょ」
「うん、だからいつも歩いてる」
「そりゃ大変だって。自転車買いなー」
黒葛にとって徒歩はそれほど苦にはならない。というか、自転車が乗れないというだけだった。以前住んでいた場所は自転車がなくても特別困ることはなかったのだ。
しかし、二人と同化した今ならあの自転車とかいうわけのわからない乗り物も乗りこなせてしまうんだろう。
「川……ふたつ流れてるんだ。そっか、そういえばここに来るまでに川渡ったもんね」
「そうそう。祐樹くんちの方の川が沙須川っていう名前。さっき渡ったのが、会瀬川」
唯の言葉に黒葛が反応する。
「え、会瀬川って、あの会瀬川かな」
それは以前住んでいた自宅のすぐそばを流れていた川と同じ名前だった。
黒葛の知る会瀬川はほとんど河口付近だったため、今見えている川とは幅から雰囲気まで似ても似つかない。
会瀬川の流れの行く先を目で追ってみる。西から流れて来たそれは一度は沙須川の方へと寄っていくが合流せず、南西の方へ折れ離れていく。その先は山の影になって窺えなかった。
「そっか……じゃ、あの山の向こうが」
「祐樹くんの、地元?」
唯が黒葛の言葉を補うようにして訊ねた。
「多分……そっか、方角的にはそうだよね。……方角かぁ」
「方角?」
今度は美月が反応する。
黒葛は少し考えて口を開いた。
「僕……海が近いとこで育ったから、海がある方向が南って感覚。で、山がある方が北……みたいな」
美月は腕を組み、周りを見渡してみる。
「ああー、ここは盆地ってわけじゃないけど割と山に囲まれてるもんね」
「うん……なんかね、引っ越して来た時、そういうのもあってなんか迷子になった感じだった。自分の軸をどこに合わせればいいか? ……みたいな?」
ん? 迷子とは?
美月は首を傾げる。唯にも今ひとつ分からない感覚だったが、慣れない土地ということなら思い当たるフシがないことはなかった。
「うーん。渋谷とか新宿に行った時の感じかなぁ。あそこもよく分からないもんね」
「んんん? そ?」
ますます首を傾げる美月。
「美月ちゃんは頭の中に磁石でも入ってるんだよきっと」
昨日の買い物デートを思い出して唯はカラカラと笑った。
美月は都心部の地理に特別明るいわけではないが、行きたいと思う場所へ迷う事なく最短のルートで向かうことができる。人混みだけで酔いそうになる唯の手を引っ張って地上地下とお構いなしにズンドコ突き進む美月が実に頼もしかったのだった。
美月とは異なり生まれつき方向感覚がよろしくない黒葛にとって、方位の手がかりとなる“海”という存在を日常から取り上げられたということは、同時に黒葛が世界の中でどう自らを位置付けるかという座標——言い換えればアイデンティティの根拠のひとつを失調したということでもあった。
「でも、今ちょっとストンと来た気がする。色々、繋がった気がするよ」
この宝月という場所が自分の故郷と川を介して結ばれている。そのことを理解したことにより、黒葛は今初めてこの土地に引っ越しをしたという実感が持てた気がした。
あそこが故郷なら、北はこっち、東西はあっちとそっち。ちゃんと身体で分かる。
「ならよかった。やっぱ見るのが早いかなと思ってさ」
満足そう、というよりもしてりやったりという表情の美月。唯も頷き、また町並みを眺める。
「でもこうして見ると、結構変わったかもね」
「家とか、マンション、増えたね。もっと昔は空き地とか多かったのにね。ちょいちょい緑もあるけど……」
唯に続いて景色に目をやる美月は複雑そうに呟いた。
「あそこは? なんかちょっと森っぽいの」
黒葛はここから南南西方向に見える、こんもりとした緑の塊を指差す。
そこだけ不自然に木々が密に茂っており、地面に半分埋まったブロッコリーのようだ。
「ああ、あそこは神社。あのモコモコの森の向こう側に神社があるの。こっちからじゃ見えないけどね」
美月が即答し、唯がうんうんと頷いている。
この公園の正式名称をしっかり覚えていた唯の一方、町のどこに何があるかを身体的に理解し、文字通りマッピングする精度の高さは美月の方に分があるように思えた。
「その手前……」
ふと、黒葛はそのブロッコリーのそば、少し手前に見える大きな緑地帯が気になった。
「あ、ひょっとしてこの町の名前の由来?」
黒葛のその発言に対してそれまでとは違い二人の反応が悪い。
まるでピンと来ていないようだったので補足する。
「ほら、あの公園? 形がさ、きれいな三日月みたいだから」
唯がパンと手を叩いた。
「あ、宝月ね。ふふっなるほどー」
「そっか、確かに、そう見えるかもね」
少し遅れて美月も理解したようだった。
「まぁ……違うか」
肩を落とす黒葛。ちょっと町を知ったつもりになって調子に乗って、変な恥をかいてしまった。
きれいな月みたいな形の公園があるから町の名前が宝月だ?
そんなことってある? 我ながら恥ずかしい。
ふと黒葛の肩に乗せられた美月の腕がその緑地帯あたりをくるくると示す。
平然と腕を載せてくるあたり、改めて自分より身長が高いという事実を認識する。そして香るウルトラいい匂い。
「あの辺はもっと……それこそ森みたいだったんだよ。今だいぶすっきりしちゃったけど」
美月は指をその一帯差したままぐるぐる回したり。ピコピコ立ててみたりしながら説明する。指一本で多彩な表現力だ。
「昔美月ちゃん勝手にそこに秘密基地作って私もよく連れてかれたなぁ。大人の人に見つかってめっちゃ怒られたの」
“ひみつきち”というといかにも20世紀的な響きだ。この二人から出てくるエピソードのいちいちが同じ時代を過ごした人間とは思えない。過去からタイムスリップでもして来たのだろうか。
「あったあった。そうそう、森というか雑木林みたいな感じだけどね。今はだからその一部だけ残って三日月みたいになってる。そこが今公園だね。地蔵公園」
「じぞう……」
「勝手にそう呼んでるだけなんだけどね。お地蔵さんがいっぱい置いてあるから」
さすがの唯にも公園の名前は分からないのだろうか。黒葛は地蔵というものに詳しくはないが、公園に石像が並んでいる絵を想像して何やら気味の悪さを覚える。しかし、比較的新しい公園ということなら相応にキラキラした名前でもついているんだろう。それこそシャイニングクレセントムーンパークとか。
「昔、町のいろんな場所にね、お地蔵さん──私らは“おいこさん”って呼んでたんだけど。それをいつかのタイミングでさ、町の再開発? だかでまとめてその雑木林に移したの。同じタイミングでそこも開発されて、残った部分が公園になったって流れ。ちょうど……だから祐樹が来るちょっと前か」
黒葛が引っ越して来たのは2020年。中学2年に上がるタイミングだ。
「そこ、新しい図書館とか、体育館とかプールもあるよ。運動したくなったら行ってみる? 美月ちゃんの水泳の大会もそこでやったりするんだよ」
補足する唯の説明のとおり、確かに公園に隣接する形で新しげな大きめのハコモノがいくつか見える。
図書館が移転新設されたという話は知っていたが、自宅からやや遠方ということもあって行こうとは思わなかった。しかしなぜだろうか今、無性に図書館に対して惹かれる思いがある。
加えて体育館もプールも忌避したい施設だったはずだが、その響きにトキメキを覚えるようになっている、かもしれない。
前者は唯の、後者は美月の影響だろうか。唯の口ぶりからして彼女も運動に対して以前ほどネガティブな印象は持っていないようにも思えた。
「そっか、“おいこさん”が町の中にないってことだから、もうあれやってないよねきっと」
「あー“おいこさん”だよね?」
美月の呟きに唯が返すが、黒葛は何のことか全くついていけない。
“おいこさん”とやらが町にないから“おいこさん”をやってないとは?
「うん、私らが小6だか中学上がるときくらいじゃん、あの辺キレーになって地蔵公園できたのって」
会話ごとに黒葛の頭の上にクエスチョンマークが増えていく様子に唯が気付く。
「あ、ごめんね祐樹くん。全然分かんないよね……。“おいこさん”っていうのはお地蔵さんの呼び名でありつつ、また地域の……子供会でやってた行事の名前でもあるの。ややこいよね」
「あーそういうこと……」
“なまはげ”みたいなものだろうか。泣く子を追いかけ回す鬼の呼び名であって、行事の名前でもある。
「でも行事って?」
「唯、おいこさんの歌覚えてる?」
黒葛の問いを受けて唯に目配せをする美月。
「毎年やってたからねぇ」と言いながら唯は何か地団駄を踏むような仕草をして見せた。
それは自転車の空気入れをするような、あるいはある芸人の『関係ねぇ関係ねぇ』と連呼するネタのようにも見えた。
「おっ、じゃあ今ちょっとやってみる?」
「えー、ちょっと恥ずかしいけど……でも久しぶりに……やる?」
示し合わせた二人が向かい合わせに立ち、美月が軽く咳払いをする。
「じゃあ唯んちバージョンでやってみよ。せーの」
おいこの おいこの おいこのござる
いわって めでたき よいのはじまり
きょうのおひがら どってんしゃ
さあさかしこめ 茜川がみその
しもついわねのないふらず
いうてもきかぬ おにへびどもの
あかがちまなこはひっぱたけ
ここはてるてるかむにわなれば
ひとりさん おにげなさいな
ことりさん またどうぞ
不思議な光景だった。
シーソーで遊んでいるかのように唯と美月が交互にジャンプし、その二拍子の動作に合わせたリズムで意味の分からない囃子歌が歌われる。
黒葛の目には今見えているはずの公園の景色に、住宅街の路上の景色が重なって見えるようだった。
「おー最後ついてきたね祐樹!」
いつの間にか黒葛も知らないはずの歌の後半部分を二人に合わせて歌っていた。
「相当私らに染み付いてるんだね……これ」
「歌の意味……分かんないけどね」
黒葛が唯に肩をすくめて見せると、唯もはにかんで答える。
「私もわかんない」
黒葛と唯の視線が美月に向けられ、慌てて胸の前で手を振りその視線をかき消そうとする。
「唯が知らないなら私が知るわけないじゃん」
黒葛は腕を組みつつ歌詞を思い出してみる。
「なんか……物騒な歌だけど?」
鬼と蛇をひっぱたく? シメは小鳥を追い払う感じ? なんのことやら。
とはいえ、黒葛は楽しかった。それはきっと、この行事に参加してこの囃子を歌い踊っていたときの二人の気持ちそのものなのだろう。
唯が身体に染み付いていたと言ったとおり、そうした身体の同期を通じて、二人とより繋がれた気がした黒葛だった。そしておそらく二人を通して、この土地とも。
「とまぁ、こんな感じでね、地域ごとの子供会でそれぞれエリア分けておいこさん回って、終わったらご褒美のお菓子をもらって終わり。私と唯は近所だったから同じ子供会だったんよ」
「それぞれのおいこさんをお世話する家が決まっててね。まぁほんとはうちも美月ちゃんもお世話する家じゃないから……今のはテキトーバージョン」
顔を見合わせて懐かしむ二人の笑顔は童心に返ったかのようだった。黒葛に知らないはずの身体の記憶が喚び起こされたように、二人にも子どもの頃の感覚が蘇ったのかもしれない。
「ふうん……」
黒葛は下唇を突き出すようにして口を尖らせる。眉間には皺を寄せて、厳しい顔つきだった。
「なになにうらやましいの?」
美月がこれ見よがしに唯を後ろから抱きしめて見せる。
「いや、そういうわけじゃ……や、そうかもだけど……」
不機嫌そうに見えたのだろうか? そのような感情は一切なかった。単にものすごく興味深かったのでこの儀式に何の意味が込められているのか、思いを馳せていただけだった。
その心、表情に反してinterstingの極みであった。
あえて言うなら、路上でピョコピョコ飛び跳ねる二人の幼き日の姿を想像し、うっかり終末を迎えそうになった己の情緒を誤魔化そうとしたのかもしれない。でなければ顔面が色々な意味で溶解していたことだろう。
これまで黒葛が前髪で自分の顔を隠していたのも、このように自分の意図しない表情や仕草でそれを見る人に誤解を与えてしまうことが怖かったというのもある。
「おいこさんかぁ……」
黒葛が元々住んでいた場所にはない、摩訶不思議な行事だった。
話を聞いた限りでは、観光客に目配せをしたものでもなければ、よく聞くような町おこしの材料でもない。ただ、この土地の、この土地によるこの土地のための、行事。
この行事についてググったところで詳しい概要等は出てこないかもしれない。しかしこの町に昔から住む多くの人は知っているんだろう。その動作、囃子歌を身体に染み込ませて。
この謎の儀式を行っていた最後の世代であるこの二人が何かしらの記録を残さない限り、もしかしたらこの世界からなかったことになったりやしないか。
「なんか……もったいない気もするよね、そういうのなくなると」
「まぁねー。時代の流れってやつ?」
そう嘯いて見せる美月だったが、景色を見つめる目はどこか寂しそうではあった。
その目には“おいこさん”だけではない、時代の流れとして割り切るしかなかった、移ろい消えて行った幼き日の情景が映っているように思えた。
「僕……ふたりのこといっぱい知りたいって思うんだけど、ふたりのことって、やっぱさ、ここの町に紐づいてるんだよね。色々」
唯と美月が生まれ育ち、出会った場所なのだ。大好きな二人の、喜怒哀楽の全てをこの町は知っている。
「あるよー、色々。唯とはやっぱりほら、あの神社の夏祭りとかでねぇ」
「まぁ追々、ね? 私も祐樹くんのこと色々知りたいし……」
自分たちのことばかりでさすがにバツが悪くなったのだろう。唯は黒葛に目配せをして一旦思い出話を切り上げようとするが、これまで出てきたエピソードから帰納するに二人の話のネタは永遠に尽きなさそうに思える。翻って自分はというと、子どもの頃の話など何をすることがあるだろうか?
黒葛はこれからの日々が楽しみで仕方がなかった。
二人のこと、もっと知りたい。もっと二人の話が聞きたい。
ふと、唯が黒葛と美月に向き直る。
「昨日のね、漢詩……覚えてる?」
「国を去りて三巴遠く。楼に登れば万里春なり」
「えと、心を傷ましむ江上の客、是れ故郷の人ならず。……あれ、これって」
即反応した美月を追う形で続いた黒葛だったが、あることに気が付く。
「唯ちゃん、春じゃないけど……これシチュエーション的には」
小さく頷く唯。
「あれのね、昨日は言えなかった私の解釈なんだけど……」
手すりを掴み、遠くへと目をやって続ける。
「もしかしてね、故郷の人じゃないからこそ、見える景色もあるのかなって思ってて……」
黒葛も美月も、それぞれで景色に目をやりながら唯の言葉に耳を傾ける。
「極端を言えばね、景色一面がね、わー!春だー!ってなったのもね、もしかしたら……それがその土地の人じゃない、旅人だったからなのかなぁとか。みたいな。んー、解釈というか……単なる希望かな、私の」
手すりに腰をかけて空を仰ぐ唯。自説を開陳したことによる照れ隠しのようにも見えた。
「あー、実はその土地的には春っぽい感じじゃなくても、知らない人が見たらめっちゃ春じゃん! とか?」
「地元だったら当たり前すぎてたりして実は気にも留めない……とか、そんな感じ?」
美月の反応を受け、黒葛もイメージを描くことができる気がした。
「そうそう、そういう。ほら、地蔵公園が三日月みたい、とかさ、私たちにはない発想だったじゃない」
二人が乗って来たことで唯も少し安心したようだった。
昨日聞いた感じでは寂しい印象だった詩が、唯の解釈を経てまた変わって見える。
確かに、国語の問題でよくある“作者の気持ちを考えよ”的な視点で言えば想像に想像を重ねたもので、唯の主観的な希望も多分に含まれているので正答とはならないだろう。しかし、それを踏まえた上でさらに独自の解釈を照射することで、全く別の魅力が浮かび上がってくる。
それって、唯ちゃん、めちゃくちゃカッコよくないか。その一方で僕ときたら。
「全然、見当違いだったけどね……」と肩をすくめる黒葛に、唯は首を横に振る。
「誤解から生まれるものも、きっとあるんだろうね。春だってところ変われば定義も変わるし。ううん、人それぞれで違うもんね、季節の感じ方ってね」
「なんか季語み~! 季語みあるそれ!」
いと風流あわれなり。を美月が言うとこうなるらしい。黒葛は、なんとなく美月の表現の具合というものを掴めてきた気がした。
「でも私も、誤解は……うん、分かるなーなんか」
唯と並び美月も手すりに腰を掛ける。
「美月ちゃんでもそういうのあるの? なんか意外……」
「会話とかでもさ、よくあるよ。お互い全然別のこと想像してるのに、なぜか会話が成り立つことあるんだよね」
美月が両手それぞれでイヌだかキツネだかの形を作り、向かい合わせて口の部分をパクパクとさせる。
両者が勘違いしたまま勝手に話が進んでいく様子を戯画化したものは黒葛にも覚えがあった。
「あ、なんかそういうコントあったよね」
「そうそう。まさにあんな感じでさ。コントと違うのは落とし所がない分、予定調和じゃない謎グルーヴ感が出てね。普通に会話してたら気付かなかったような視点とかノリというか……そういうの楽しいよね」
両手のキツネを黒葛と唯に向けてニヤリを笑う美月。
「出たコミュ強者の境地……」
誤解の効能を説く唯も、日常会話での誤解にまで敷衍させるほどの度量はない。もちろんそれは黒葛も同様である。
「僕には全く想像つかない世界だけど……誤解かぁ」
唯が披露してみせた詩に対する解釈自体も誤解な可能性は十分にある。いや、ほとんど唯の願いにも似たこじつけなのだろう。しかしその解釈で少なくとも自分は救われる思いがした。今まで“誤解”というものは、すなわち悪でしかないと思っていたが、状況を好転させる要素になり得ることは少なからずあるのかもしれない。
「三日月みたいで宝月かー。確かになんで宝月っていうんだろ。唯知ってる?」
宝月の申し子みたいな名前でそれを言うか、と苦笑する唯だったが言われてみれば気にしたことがなかった。
「この土地から見える月がきれいとかかなぁ?」
何しろ生まれた日の満月が綺麗だったという理由で“美月”という名前を付けられた人がいるくらいなのだ。むしろ唯は、美月という宝のような存在がいるからこその宝月なのではと因果を無視した説を提唱してみたくもなる。
それはさておき。
「町の名前なんて、それこそ当たり前に思ってて気にしたことなかったねぇ」
「唯が知らんなら多分誰も知らんくない?」
そんなわけないだろうと思う黒葛だったが、美月はごく真面目そうだった。その手の固有名詞を覚える記録媒体として全幅の信頼を寄せているのだろう。
手すりに座り並んだ二人は会話が途切れると、感嘆詞ですらない何かを発声しながら脇をつつき合ったり袖を引っ張り合ったりし始める。完全にバカップルのそれだった。
黒葛は睦まじく戯れる二人の後方に広がる宝月の景色を今一度目に焼き付ける。
もし仮に、まだ人間であった時に一人でここに来たらどんな気持ちになっただろうか。
あの詩の旅人のように春を見出せただろうか。
山の向こうへと続く春の景色に、以前住んでいた海沿いのあの町の春を思い泣いていたかもしれない。
しかし今、春は黒葛のすぐ隣に咲いている。
そしてこの美しく可憐な春を通じて宝月という町に帰属していく自分自身に気が付くのだった。
「うーん」
「どしたー? 何かおもろいもんでも見つけた?」
美月の手が黒葛のシャツの裾を引っ張った。
黒葛が腕組みをしたまま美月の方を向く。
「いや、めっちゃよかったな、って思って」
シャツを引っ張る反対側の手は唯の手と繋がれていた。
黒葛は無意識に厳しい顔を緩め、そしてぎこちなくも微笑んでみる。
「ありがとう、美月さん。唯ちゃんも……来てくれてありがとう」
美月と唯は顔を見合わせ、してやったりとばかりに黒葛に向けて白い歯を光らせた。
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