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第一章
第1話/茜川 唯:1
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2023年5月31日(水) 8:00 朝礼前
茜川唯は教室に入り、そして普段とは少し異なる雰囲気に気付く。
朝礼前だというのに、クラスメイトたちはどこか浮き足立っている様子だ。
彼ら彼女らが“何か”を意識しないようとするあまり、かえってその“何か”へと意識が向かっていってしまっている。
茜川唯はその衆目が向かう先を一瞥し、理解する。
“彼”が登校している。
教室奥、窓側に向かった唯は自分の席に鞄を下ろし、椅子を引く。
教室のあちこちではクラスメイトたちが声を潜めて何かを話しているが、唯が話題に入ることのできる輪はない。
クラスが変わりふた月ほど。
5月の最終日にもなれば唯も、そしてほかのクラスメイトたちもそのことを承知している。
──茜川さんに話を振ってもノリが悪いし、話しかけたら迷惑そうに見える──
面と向かって言われたわけではないが、そのように思われているんだろうと唯は思うし、そして実際にそれは当たっているのだった。
友人の一挙手一投足にバラエティ番組で見るような当意即妙な反応ができる甲斐性は自分にはないし、どうがんばったところで身につかない能力だろう。
一度だけ。唯のたったひとりの親友である幼馴染のように、明るく誰とでも仲よくなれる人間になろうと思ったこともあったが、ただひたすらに消耗をして終わったつらい過去がある。
唯は鞄から一冊、文庫本を取り出し読みさしのページに指をかけた。
本は、本の世界は唯にとってなくてはならないものだ。
読書は紙と文字を通じた世界との対話であり、そして自分自身との対話でもある。
その対話の中に、ボケやツッコミといった技巧、探り合いや虚飾、見栄さえも必要ない。
ただ、著者が提示する目眩く世界と向き合い、自分のペースで咀嚼し、飲み込んだそれが自分の中でどう響き、自分がどう変わるか。
読書は一見、単なるインプット行為のようでありながら、唯にとってはインもアウトもなく、本の世界と自分とが互いに照射し合い、ひとつに溶け合っていく営為という認識でいる。
文字の羅列が身体に染み込むうちに本の中へと沈み、だんだんと自分という存在が消えていく。
読み終わった瞬間、水の底から浮かび上がった自分は新しい何かになっている。
それが、たまらなく気持ちよく、心地よい。
唯の目が活字を辿るうちに、視界外周に映る教室の風景が本の中の情景に描き変わろうかというときだった。
馴染みのある声が、ふいに後ろから聞こえてきた。
「おはよ、唯」
あたりは再びいつもの教室の風景に戻っていた。
唯は声がした方に顔を向ける。
分厚いレンズを二つはめ込んだ黒縁眼鏡が、慣性によりややズレてしまう。
「美月ちゃん。おはよう」
無意識に正した眼鏡のレンズの先では、幼馴染の友人が白い歯を光らせながら微笑んでいる。
朝に弱くまだ頭と体がぼんやりしたままの唯にとっては嘘のように血色のいい笑顔だ。
桜永美月。
唯にとって嘘のように思えるのは肌の血色だけはない。
信じられないくらいきれいで信じられないくらい優しくて信じられないくらい明るくて……。
何より信じられないのは、そんな信じられない要素まみれの人が自分の唯一無二の友人であることである。
「あっ、ごめん! 本読んでた?」
「ううん」
女子はおろか、クラスの男子平均と比べても長身である桜永美月はおもむろに腰をかがめ、唯に顔を近付ける。
心臓の鼓動が跳ね上がる。
唯は、立ち上がりの遅い自分の脳へようやく血液が巡りはじめたのを感じた。
「唯、実はさ……」
美月は囁きながら自らの後方側へ目をやる。
ああ、やっぱり美月ちゃんも“彼”の話だろうか。
どう反応するのが正解になるのだろうかと思い巡らせようとしたところで美月の顔にぎゅっと喜色が差す。
「今日から売店のパンに新メニューが入るんだって! しかもバーガーってやばくない!?」
思いもよらなかった話題にあっけにとられる唯。
美月が見ていたのは、“彼”のその向こうにある教室の掲示板だった。
「そ、そうなんだっけ?」
こんなときクラスメイトたちなら何て返すんだろう。
「バーガーは絶対人気でるからー、唯にも教えとこうと思って! これ秘密ね!」
そう言うだけ言ってひらひらと手を振りながら自分の席に戻っていく。
水泳部のエースでありながら、およそ日常的に塩素を浴びているとは信じられないほど艶やかな後ろ髪が翻る。
その青黒い髪が彼女の歩調に合わせてサラサラと揺れなびくのを、唯の目は自然と追ってしまう。
美月が席につくやいなや、クラスメイトの女子二人が駆け寄り談笑を始めた。
小野塚実咲と佐海なぎさ。
高校入学時に同じクラスになった三人はウマが合ったのかすぐに打ち解けて“親友”になった。
唯が十年以上をかけて縮めたと思っていた美月との距離を、彼女たちは校門の桜の花びらが散り切るまでのわずかな期間で追い抜いてしまった。
少なくとも唯の目にはそのように映っていた。
自分が、ほかの誰よりも知っていると思っていた友人が、自分の知らない声のトーン、速度、抑揚で話している。
唯と美月がひとつ会話を交わすのにかかる同じ時間で、三人は10も20も会話を交換し合う。
女三人寄れば、とは言うが今朝はひときわ三人の談笑が明るく響く。
ほかのクラスメイトの多くがデリケートな話題を抑え気味に話しているからだろう。
鈍く湿った空気を教室の外に押し出すように、会話の花が次々と咲き乱れ、教室内を明るく照らしていく様子を唯は幻視した。
昨日、大変に面白い生配信があったらしい。
美月はそれを視聴していなかったようだが、すっかり興奮した小野塚、佐海が身振りを交じえ伝える内容に、美月もまるで映像を見てきたかのように驚き声を上げて笑う。
この三人はいつもこんな調子だ。
唯は、美月の口から他人への影口・悪口が出たのを聞いたことがない。
いや、幼稚園の頃からすでにスポーツ万能で怪力少女だった彼女を「ゴリラおんな」と呼んだ男子の悪口を延々と聞かされた覚えはあるが、精々それくらいだ。
そんな美月と、体育会系であり竹を割ったような性格の小野塚、そしていつも気怠げな雰囲気をまとう佐海は二人とは真逆のタイプのようでありながら、その誰にも物怖じしない人となりは相性がよかったのだろう。
三人が出会って“トリオ”になるのは必然だった。
流れでロックバンドでも結成していないのが不自然にすら思えるほどに。
唯がまた本を開こうかというところでHRのチャイムが鳴り、担任教師が教室のドアを開ける。
それを受けてクラスメイトたちがノロノロと自席へと戻った。
「えー……」
担任教師は教室を見渡しながら、続く言葉を選んでいる。
「……事故から1ヶ月が過ぎて、まぁまだ全然大変な状況ではあるのだけど、我々は勉強をしてね、我々の日常というものをね、こうやってね」
国語教師とは思えない日本語だなと思う唯も、自分が先生の立場ならこの状況で何も言えないなとも思う。
「で、今日から全員そろってまたね。黒葛が今日から復帰して──」
教室中の視線が黒葛祐樹の曲がった背中に殺到する。
「知ってる人はいるかもしれんが、黒葛はしばらく調査とか検査とか、あと病院とか、ね。色々と大変だったわけで、当然授業にも出られてないのでね、みんな助けて色々協力してね、だからクラス一丸になることがこのクラスにとっての日常になって前に進めるんじゃないかと思っている」
意味が分からないが、何かいいこと言ってるふうなときだけ妙に流暢になるんだ、この先生は。
唯は再び教室前あたりに座る黒葛に目をやる。
じっと俯いたまま、ピクリと動くこともなく背中を丸めている。
あの事故の日、現場から唯一発見されたのが彼、黒葛祐樹だった。
ほかの住民は彼の家族を含めて神隠しにでもあったかのように、現在も行方が分かっていない。
57世帯、127人がだ。
たまたまその時間、自宅にいなかったために難を逃れた人もいるというが、市内の、アパートや戸建てが建ち並ぶ住宅街の一角が今はほぼ無人の区画となっている。
今日彼は誰もいない自宅を出て今ここにおり、そして授業が終わるとまた誰もいない自宅に帰るのだろうか。
HRが終わり、1限目の移動教室に向けてクラス内が慌ただしくなる中、渦中の黒葛に声をかける人はいない。
彼の置かれた境遇にかける言葉がない、というのもそうだが、元々黒葛はクラスから浮いた存在だった。
浮いた、という表現が適切かは分からない。
逆に沈み過ぎていると言う方が正確かもしれない。
例えば茜川唯はクラスの雰囲気に馴染めず、浮いている存在と言えるだろう。
しかし、黒葛祐樹の場合は唯とは比較にならないレベルで他者とコミュニケーションがとれず、また本人の極度に地味な印象もあってクラスに馴染む馴染めない以前の存在なのである。
存在というが、今日この日まで彼が同じクラスに存在していたということを知らなかったクラスメイトがいたとしても何らおかしくない。
黒葛はゆっくりと立ち上がり、教材を抱えて動き始めた。
周囲の慌ただしさにより、相対的に一層緩慢な動作に見える。
立ち上がってもなお、猫背にもほどがある背骨のカーブを唯の視線がなぞっていたとき、その脊椎の先にある首がそれまでにない速度でぐるりと回る。
口に届くほどに伸びた簾のような前髪は、その下の表情を隠しているが、教室後方にいた唯と目が合った気がした。
唯は反射的に目を逸らし、足早に教室後ろのドアから廊下に出ていく。
その姿を、黒葛祐樹の首がゆっくりと追っていた。
茜川唯は教室に入り、そして普段とは少し異なる雰囲気に気付く。
朝礼前だというのに、クラスメイトたちはどこか浮き足立っている様子だ。
彼ら彼女らが“何か”を意識しないようとするあまり、かえってその“何か”へと意識が向かっていってしまっている。
茜川唯はその衆目が向かう先を一瞥し、理解する。
“彼”が登校している。
教室奥、窓側に向かった唯は自分の席に鞄を下ろし、椅子を引く。
教室のあちこちではクラスメイトたちが声を潜めて何かを話しているが、唯が話題に入ることのできる輪はない。
クラスが変わりふた月ほど。
5月の最終日にもなれば唯も、そしてほかのクラスメイトたちもそのことを承知している。
──茜川さんに話を振ってもノリが悪いし、話しかけたら迷惑そうに見える──
面と向かって言われたわけではないが、そのように思われているんだろうと唯は思うし、そして実際にそれは当たっているのだった。
友人の一挙手一投足にバラエティ番組で見るような当意即妙な反応ができる甲斐性は自分にはないし、どうがんばったところで身につかない能力だろう。
一度だけ。唯のたったひとりの親友である幼馴染のように、明るく誰とでも仲よくなれる人間になろうと思ったこともあったが、ただひたすらに消耗をして終わったつらい過去がある。
唯は鞄から一冊、文庫本を取り出し読みさしのページに指をかけた。
本は、本の世界は唯にとってなくてはならないものだ。
読書は紙と文字を通じた世界との対話であり、そして自分自身との対話でもある。
その対話の中に、ボケやツッコミといった技巧、探り合いや虚飾、見栄さえも必要ない。
ただ、著者が提示する目眩く世界と向き合い、自分のペースで咀嚼し、飲み込んだそれが自分の中でどう響き、自分がどう変わるか。
読書は一見、単なるインプット行為のようでありながら、唯にとってはインもアウトもなく、本の世界と自分とが互いに照射し合い、ひとつに溶け合っていく営為という認識でいる。
文字の羅列が身体に染み込むうちに本の中へと沈み、だんだんと自分という存在が消えていく。
読み終わった瞬間、水の底から浮かび上がった自分は新しい何かになっている。
それが、たまらなく気持ちよく、心地よい。
唯の目が活字を辿るうちに、視界外周に映る教室の風景が本の中の情景に描き変わろうかというときだった。
馴染みのある声が、ふいに後ろから聞こえてきた。
「おはよ、唯」
あたりは再びいつもの教室の風景に戻っていた。
唯は声がした方に顔を向ける。
分厚いレンズを二つはめ込んだ黒縁眼鏡が、慣性によりややズレてしまう。
「美月ちゃん。おはよう」
無意識に正した眼鏡のレンズの先では、幼馴染の友人が白い歯を光らせながら微笑んでいる。
朝に弱くまだ頭と体がぼんやりしたままの唯にとっては嘘のように血色のいい笑顔だ。
桜永美月。
唯にとって嘘のように思えるのは肌の血色だけはない。
信じられないくらいきれいで信じられないくらい優しくて信じられないくらい明るくて……。
何より信じられないのは、そんな信じられない要素まみれの人が自分の唯一無二の友人であることである。
「あっ、ごめん! 本読んでた?」
「ううん」
女子はおろか、クラスの男子平均と比べても長身である桜永美月はおもむろに腰をかがめ、唯に顔を近付ける。
心臓の鼓動が跳ね上がる。
唯は、立ち上がりの遅い自分の脳へようやく血液が巡りはじめたのを感じた。
「唯、実はさ……」
美月は囁きながら自らの後方側へ目をやる。
ああ、やっぱり美月ちゃんも“彼”の話だろうか。
どう反応するのが正解になるのだろうかと思い巡らせようとしたところで美月の顔にぎゅっと喜色が差す。
「今日から売店のパンに新メニューが入るんだって! しかもバーガーってやばくない!?」
思いもよらなかった話題にあっけにとられる唯。
美月が見ていたのは、“彼”のその向こうにある教室の掲示板だった。
「そ、そうなんだっけ?」
こんなときクラスメイトたちなら何て返すんだろう。
「バーガーは絶対人気でるからー、唯にも教えとこうと思って! これ秘密ね!」
そう言うだけ言ってひらひらと手を振りながら自分の席に戻っていく。
水泳部のエースでありながら、およそ日常的に塩素を浴びているとは信じられないほど艶やかな後ろ髪が翻る。
その青黒い髪が彼女の歩調に合わせてサラサラと揺れなびくのを、唯の目は自然と追ってしまう。
美月が席につくやいなや、クラスメイトの女子二人が駆け寄り談笑を始めた。
小野塚実咲と佐海なぎさ。
高校入学時に同じクラスになった三人はウマが合ったのかすぐに打ち解けて“親友”になった。
唯が十年以上をかけて縮めたと思っていた美月との距離を、彼女たちは校門の桜の花びらが散り切るまでのわずかな期間で追い抜いてしまった。
少なくとも唯の目にはそのように映っていた。
自分が、ほかの誰よりも知っていると思っていた友人が、自分の知らない声のトーン、速度、抑揚で話している。
唯と美月がひとつ会話を交わすのにかかる同じ時間で、三人は10も20も会話を交換し合う。
女三人寄れば、とは言うが今朝はひときわ三人の談笑が明るく響く。
ほかのクラスメイトの多くがデリケートな話題を抑え気味に話しているからだろう。
鈍く湿った空気を教室の外に押し出すように、会話の花が次々と咲き乱れ、教室内を明るく照らしていく様子を唯は幻視した。
昨日、大変に面白い生配信があったらしい。
美月はそれを視聴していなかったようだが、すっかり興奮した小野塚、佐海が身振りを交じえ伝える内容に、美月もまるで映像を見てきたかのように驚き声を上げて笑う。
この三人はいつもこんな調子だ。
唯は、美月の口から他人への影口・悪口が出たのを聞いたことがない。
いや、幼稚園の頃からすでにスポーツ万能で怪力少女だった彼女を「ゴリラおんな」と呼んだ男子の悪口を延々と聞かされた覚えはあるが、精々それくらいだ。
そんな美月と、体育会系であり竹を割ったような性格の小野塚、そしていつも気怠げな雰囲気をまとう佐海は二人とは真逆のタイプのようでありながら、その誰にも物怖じしない人となりは相性がよかったのだろう。
三人が出会って“トリオ”になるのは必然だった。
流れでロックバンドでも結成していないのが不自然にすら思えるほどに。
唯がまた本を開こうかというところでHRのチャイムが鳴り、担任教師が教室のドアを開ける。
それを受けてクラスメイトたちがノロノロと自席へと戻った。
「えー……」
担任教師は教室を見渡しながら、続く言葉を選んでいる。
「……事故から1ヶ月が過ぎて、まぁまだ全然大変な状況ではあるのだけど、我々は勉強をしてね、我々の日常というものをね、こうやってね」
国語教師とは思えない日本語だなと思う唯も、自分が先生の立場ならこの状況で何も言えないなとも思う。
「で、今日から全員そろってまたね。黒葛が今日から復帰して──」
教室中の視線が黒葛祐樹の曲がった背中に殺到する。
「知ってる人はいるかもしれんが、黒葛はしばらく調査とか検査とか、あと病院とか、ね。色々と大変だったわけで、当然授業にも出られてないのでね、みんな助けて色々協力してね、だからクラス一丸になることがこのクラスにとっての日常になって前に進めるんじゃないかと思っている」
意味が分からないが、何かいいこと言ってるふうなときだけ妙に流暢になるんだ、この先生は。
唯は再び教室前あたりに座る黒葛に目をやる。
じっと俯いたまま、ピクリと動くこともなく背中を丸めている。
あの事故の日、現場から唯一発見されたのが彼、黒葛祐樹だった。
ほかの住民は彼の家族を含めて神隠しにでもあったかのように、現在も行方が分かっていない。
57世帯、127人がだ。
たまたまその時間、自宅にいなかったために難を逃れた人もいるというが、市内の、アパートや戸建てが建ち並ぶ住宅街の一角が今はほぼ無人の区画となっている。
今日彼は誰もいない自宅を出て今ここにおり、そして授業が終わるとまた誰もいない自宅に帰るのだろうか。
HRが終わり、1限目の移動教室に向けてクラス内が慌ただしくなる中、渦中の黒葛に声をかける人はいない。
彼の置かれた境遇にかける言葉がない、というのもそうだが、元々黒葛はクラスから浮いた存在だった。
浮いた、という表現が適切かは分からない。
逆に沈み過ぎていると言う方が正確かもしれない。
例えば茜川唯はクラスの雰囲気に馴染めず、浮いている存在と言えるだろう。
しかし、黒葛祐樹の場合は唯とは比較にならないレベルで他者とコミュニケーションがとれず、また本人の極度に地味な印象もあってクラスに馴染む馴染めない以前の存在なのである。
存在というが、今日この日まで彼が同じクラスに存在していたということを知らなかったクラスメイトがいたとしても何らおかしくない。
黒葛はゆっくりと立ち上がり、教材を抱えて動き始めた。
周囲の慌ただしさにより、相対的に一層緩慢な動作に見える。
立ち上がってもなお、猫背にもほどがある背骨のカーブを唯の視線がなぞっていたとき、その脊椎の先にある首がそれまでにない速度でぐるりと回る。
口に届くほどに伸びた簾のような前髪は、その下の表情を隠しているが、教室後方にいた唯と目が合った気がした。
唯は反射的に目を逸らし、足早に教室後ろのドアから廊下に出ていく。
その姿を、黒葛祐樹の首がゆっくりと追っていた。
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