絶対お兄ちゃん主義!

桜祭

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1章

理想のメイド降臨!

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10分くらいの電話を終えて恋は受話器を置いた。
顔から察するに大丈夫であったらしい。

「対決の方も参加してくれるらしいです。それで3対3の男女平等なゲームの提案もお願いしたら2つ返事でOKをくれました」
「すげー優秀だな」

ぶっちゃけ名前も知らない方なのだが、恋の友達ってどんな人なのだろうか?
やっぱり恋の様に身長が低かったりするのだろうか。

それから30分。
みんなでの雑談が始まっていたのだが来客を告げるインターホンで雑談がピタリと止んだ。
俺と恋だけ玄関に向かい、他のみんなは居間に残した。
俺が玄関のドアを開けると目を疑うような人物が目の前に立っていた。

「はじめまして、よろしくお願いします。わたくし平手千ヒラテセンと申します。以後お見知りおきを」

そう言ってペコリと頭を下げた。

「ただいま戻りました、ご主人様」

目の前に立っていたのは紛れもなくメイドだった……。
茶髪のセミロング、二重のくりくりとしたぱっちりした目、フリフリのメイド服。
右の目の下に神秘的に写る泣き黒子。
ふわりと広がる布面積の広い大きなスカートに、白いリボンタイに白いエプロンに白いカチューシャ、白い首輪、水色のメイド服。
ただのメイドだった。
理想のメイドだった。

「お久しぶりです千ちゃん」
「そうですね、1ヶ月ぶりぐらいですね。恋ちゃんだけ引っ越して巫女様だけマンションにいらっしゃるんだもんね」

突っ込まない恋。
そういえば人を貸す会社だっけ?
何故メイド?

「え、えっと遠野達裄です」
「はい、ご主人様。わたくしの事は千と呼び捨てで構いません。わたくしはご主人様にたくさんご奉仕していきます」

行儀よく体勢を仕えるかの如くしゃがんでいた。
明らかに恋と俺への態度が違っていた。

「お、俺も恋みたいに普通な感じでいいですよ。……せ、千」
「よ、よろしいのですかご主人様!?」
「俺の事も達裄でいいよ……」

そう言うと千は少し硬いながらも、さっきまでの礼儀正しいメイド状態は解かれるのであった。

「よろしくお願いします達裄さん。常々挨拶をとも思っていたのですがそんな機会もなくて……。本当は今年の夏にチャンスはあったのですが夏風邪になってしまいご紹介にあがる事も出来ずに」
「あれ?夏なんかあったっけ?」

そんな事よりも千の背中にある物に突っ込みたかった。
しかし今年の夏になんかあったのかも気になるのであった。

「はい。夏に1度巫女様を通してボディーガードを2人雇わられておりますよね。その時の事をわたくしは申し上げております」
「巫女には巫女様なんだな……」
「巫女様が『絶対巫女様主義!』とのご命令だったので」
「聞かなくていいよそんな命令」

ボディーガード、聞きなれない言葉だが確か星丸の廃墟探索の話だろう。
でもあれ秋ぐらいだった記憶もあるが、会社の履歴を見れるであろう千が言うのであれば夏なのであろう。

「なあ、あんた私生活でもわたくしなのか?」
「いえ、私で通しております。わたくしも青空高校の生徒で達裄さんと同じ学年で同じ学校なのですがやはりご存じありませんか……」
「まじで?」
「いえ、達裄さんは学校でも『孤高のボッチ』で有名でありますが、わたくしは普段は地味アンド地味なので」
「『孤高のボッチ』!?カッコイイのかかっこ悪いのかわかんねー。君も美人じゃないですか。とても最高のメイドですよ!」
「もう、達裄さんったらご冗談を」

メイド好きの俺ならわかる。
その気になればメイドで天下を取れる存在であると。
しかし、俺ってそんなに有名か?
すごく浮いてるだけな気もするが当事者がわからないのは当たり前か。

「ところで後ろの何これ?」
「トラックでございます」

超大型トラックが千の後ろに停車していた。
話を聞く限りこれに乗せてきてもらって来た(会社の備品)との事。
対決を彼女に任せたらしいがそれで使うのか、ただこのトラックでこの家に来たってだけなのか。
10分くらいも長話してしまい、よく考えればメイド服姿の彼女が居てお隣の回覧板を渡したおばさんなどに目撃され変な噂がたつかもしれないと気付いて手遅れかもしれないが中へと通すのであった。

千に普通に学校で居る感じで良いと言伝しみんなの元へ案内した。
案の定何故メイド?と固まっていた。

「あれ、千ちゃん?」
「こんにちは光さん」

どうやら光と知り合いらしく隣のクラスの子が千らしく体育で一緒に授業をしているらしい。

「テニスやバドなら勝てるけど徒競走とかでは勝てるかってぐらい運動神経良いし学力も高いんだよ。千ちゃんは有名人よ」

「ふふ」と笑う俺と星丸。
疑問を持った光が星丸に聞くと「お前運動得意が取り柄なのに頭も良い平手さんが居たらお前存在価値ねーじゃん」と言いぶん殴られた。
俺は流石に存在価値無いとまでは思っていない。
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