絶対お兄ちゃん主義!

桜祭

文字の大きさ
上 下
27 / 33
1章

10分

しおりを挟む
講習での初めての休憩。
時間は10分、どのくらいの時間置きの休憩とは決めないが、目安は学校の授業と同じく50分置きを目標にしている。
アラームをセットさせ流亜を休憩させると椅子の上でぐーっと伸びた。

「達裄先輩、青空高校の由来とかってあるんですか?」
「なんかあったな。青空の様に広い知識を持つ人間に成れとかそんな意味」
「流石、優等生を育てる学校ですね。そんな意味があったんですか。てっきり空の様に高い偏差値と倍率で受験生を真っ青にさせるというドSな意味があると思ってました」
「お前すっげーネガティブな」

くだらない雑談で休憩時間を消費させては勉強の繰り返しを続けるのであった。
流亜は基礎はなっているが応用する問題が苦手でそこを中心に教えていた。

「いいか、文章題は読みながら使う公式を絞っていくんだ。読み終えた途端計算に移れる様にな。消去法がてっとり早いな。どうせ使う公式はこれの内のどれかだからこれを消して解いていく。これは暗記しとくと7割解ける」
「へぇ、こんなに絞って7割ってすごいですね。というか教えるセンスありますね。先生の授業よりわかりやすいです」
「教師の授業ってすぐ脱線して1個1個ゆっくり進めるから次の授業いったら忘れやすいかな。一気にこれ大事って言われた方が覚えられると思う。でも俺教えるセンスなんか無いぞ」
「去年の経験上の話ですか?」
「ちょっと違うな。勉強を教える側って3倍理解しないといけないって言うだろ?俺には3倍では無理だった。8倍理解してやっと教えられたよ。でも教えられただけ。だから解説も出来る様になるまで10倍理解したから」
「……誰ですかあんた?」

教えるとすぐに実践、これでいいか問う。
光、星丸はそれが出来ないで、実践して無理だったから嘘付こうというスタイルで最悪だった。
何回見捨てようと縁を切ろうと迷ったもんだ。
流亜は正直にわからなかったら聞く。
これが出来るか出来ないかで結構変わるのではないだろうか。

「早いなもうあと1セットってとこか。今日最後の休憩だ」
「うぅ、勉強ばっかり……」
「俺は何しに来てんだよ……。じゃあ休憩の10分間俺がなんかしてやろう。肩もみでもマッサージでも柔道でも」

アラームを手に持ち流亜の頼みごとを聞いたら押してやろう。
要望を聞いている今から押す程小さい男ではない。

「柔道いらんでしょ。そうですね、……なら先輩プレイをしましょう」

先輩プレイ。
全く意味がわからなかった。

「私憧れのシチュエーションプレイですよ。私が達裄先輩の後輩ですがプレイの間だけ私が先輩になって達裄先輩が後輩になって学園生活の恋愛シチュエーションを演じるんです。アドリブで私を楽しませてください」
「時間勿体なくね?」

しかし本人はそれが良いと言うので今から開始すると宣言しアラームをセットした。
残り9分59秒と表示されて先輩プレイが幕を揚げた。

―――――

日の明るさがまだ残る放課後。
だるそうに机から立ち上がる遠野達裄。
今日は部活をさぼってゲーセンでも行こうと財布を覗き込むがお金が無かった。
仕方ない、帰るかと教室の外へゆらゆら歩いて昇降口玄関へ辿り着き外履きを持ち出そうとする彼に甲高い聞きなれた声が響いた。

「こらー、達裄また部活さぼろうとしてる」
「げっ、流亜。違うんすよ、今日じいちゃんの法事なんだよ」
「先輩を呼び捨てにするなっていつも言ってるじゃない。というか今年のじいちゃんの法事16回もしてるよね?」
「俺じいちゃん48人居るんで」
「複雑な家庭事情グループOLD48、……なわけないじゃない。どうして実力あるくせにさぼるのよ」
「見たくねー顔があんだよ。しかも目の前に」
「はぁ!?せ、先輩にそういう事言う!?」

いつもは口でぶーぶー言いながらも見逃す先輩の流亜。
しかし今日の流亜は引き下がらなかった。

「というか心配してあげてる先輩にそういう事思っても言わなくない?」
「はぁ!?何うぜー事言ってんだよチビ!てめーは実力無いんだからそんな事言ってる時間無いだろ」
「っ、……酷いよ達裄……」

さっきまでの強さはどこへやら。
簡単に涙目になる流亜は先輩の威厳など既に消えてた。
溜め息をついた達裄、面倒そうな目で流亜を見ているのであった。

「そういううざったいけどキレイな顔で泣くからお前を見たくないんだよ。あまり俺を好きにさせるな。マジ恥ずかしくなるからさ……。恥ずかしすぎて顔見れなくなると俺が顔見たくても見れなくなる」
「な、何言ってんのよ達裄……」
「こんなキレイな顔見てると愛おしくなる。キスしたくなる。つーかする。嫌なら逃げろよ後悔するから」

気になる後輩、そんな彼をずっと叱って気を惹かせようとしていた。
それがこんな形で告白されるとは。
覚悟した流亜の目の前残り5センチ。
ーー3センチ。




ピリリリリ!
タイムアップの電子音が無常に鳴り響いた。


―――――


「よし、休憩終わり」

流亜の唇残り3センチ目の前で流亜の背に合わせた目線を上げていつもの視点の高さに戻す。
流亜はまるでメデューサの姿を見て石にされたかの如く固まったまま動かなかった。

「おーい、流亜?ルアルア?ルアー?アルー?ルアちん?ルーアー?」
「た、達ゆき……」

流亜のあだ名を色々付けてみて呼んでみたものの混乱しているのかいまだに呼び捨てであった。
個人的ルアルアが好きだ。

「いつまでそうやってんだよ……」

結局5分間観察していたが動く気配がなく、それからもう5分やっと流亜は混乱状態が解かれて復活した。

「し、してくれないんですか?」
「……」

おかしい。
いまだに混乱している。
本当に混乱が解けて思い出した時、ふいに口走った言葉で悶絶する。
今の状態はそんなわけもわからず自分を攻撃している様なものなのだろうか?
光ならまだそう思っている可能性はあるかもしれないが、流亜が俺なんかとキスをしたいと思うわけないしな。
女との距離感は難しい。

「遊びとか軽い気持ちでキスする程流亜の存在は俺にとって小さくないからしないよ」
「じ、じゃあ今のって……」
「タイミング見計らってたね」
「うわわぁ……」
すごく慌ててしまった。
赤くなって両手で頭を押さえて俺と目を合わせない為か下を向いてしまった。

「ほら座れって。本当は言いたくなかったんだけどさ、俺お前と一緒に学校行きたいから協力してるんだぜ。だから俺の気持ちも汲んでくれよ」

そう言って流亜の背中を勉強机の椅子まで押す。
流亜は俺に押されたままにされて足を動かしていた。

「そ、そんなに私と一緒に行きたいですか。なら頑張りますよ!…………私の気持ちも少しは汲めよなぁ……」

元気な宣言からぼそっと愚痴がこぼれていた。

「俺もお前の気持ち汲んでるさ。青高行くんだろ」
「だからなんでぼそっと呟いた言葉聞こえてんですかぁ!この地獄耳!鈍感!そして解釈の仕方!」
「?」

鈍感?
むしろ星丸と雨が付き合う前から気持ちに気付いていたから鈍感ではない気するんだけどなぁ。
解釈の仕方ってどういう事だ?
青高に行きたいんじゃなくて、秋風女子に行きたくないって事か?

それからはさっきまでの時間同様に勉強を教えていき、昼の12時から10分ぐらい延長して今日の勉強会はお開きになった。
流亜の家から徒歩10分の道のりを歩き、我が家へと帰還するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!

電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。 しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。 「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」 朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。 そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる! ――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。 そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。 二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ

みずがめ
恋愛
 俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。  そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。  渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。  桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。  俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。  ……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。  これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

処理中です...