ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

文字の大きさ
上 下
136 / 136
第6章 偽りのアイドル

37、谷川咲夜は改造したい

しおりを挟む
「いらっしゃい」
「こんちは、マスター」

時間より早く、俺は喫茶店に来ていた。
今日は達裄さんの思い付きで店を借りてしまい申し訳ないことを謝るつもりでいた。

「ごめんなさいマスター、日曜日に店閉めちゃって」
「別に良いよ。達裄君から1週間ぶんくらいの売上受け取ってるし」
「……え?」
「むしろ毎日借りて欲しいくらいだ」

冗談っぽく「あはは」と笑っているが、この親父絶対ガチで言ってんだろうなと思う。
達裄さんはあれからも何回か喫茶店に通っていて常連客になっているらしい。

「む?来たな、秀頼」
「咲夜」

マスターと他愛ない雑談をしていると、娘の咲夜が自宅になっている2階から降りてきた。

「今日はコーヒーチャイルド降臨だ☆」
「いや、君は主役じゃねーよ?」

スタチャスマイルのパクリと思われるコヒチャスマイルをしてくる咲夜。
最近コヒチャにはまってるらしい。

「いやー、スタチャの相方決まったね」
「この親バカが……」

マスターが咲夜を見ながら拍手していた。
咲夜、もといコヒチャは満足そうだった。

「てかこんな店にスタチャが本当に来るのか?」
「自分の家をこんな店とか言うのを止めなさい」
「達裄さんは連れて来るってさ。しかし、客が来ないのはマスターのマーケティング力低いんじゃない?」

いつ来てもマスターが雑談してくれるんだもん。
知り合いとか咲夜抜きでこの店来て、俺含めて3人の客が来てたのが最高の客の出入り。
正直どうやって利益が出ているのかさっぱりわからない。

「僕の店のコンセプトは静かな空間で優雅にコーヒーを楽しむことだからさ。狙ってるのさ」
「じゃあ客で賑わってる店と常に客のいない寂れた店、どっちに喫茶店を進化させていきたいよ?」
「…………前者」
「これは近々マスターの店を改造しなくちゃいけないな」
「ウチもマスターの店改造する」
「不安過ぎる人選!」

俺と咲夜で喫茶店に客を呼び込める改造をしようという話なのに不安とか言われるのが心外だ。

「秀頼、客を呼ぶならどうすると良い?」
「まぁ、当然マスターはリストラで」
「ちょっと!ちょっと!僕の店なのに僕をリストラするなよ!」
「ウチが3代目じぇーそーるマスターズになるしかないか……」
「コミュ障娘に任せられるか!」

それにはまったくの同意見であった。
この親子がそもそも喫茶店に向いてない気がする。
関係ないけど、マスター2代目なんだ。
おばさんとマスターの父親が立てた店なのかもしれない。

「じゃあ名物マスターで推していきたいな」
「というと?」
「うーん……。………………コーヒーがおいしいマスター」
「なんの捻りもないな!そんで僕の魅力ゼロか!」

名物マスターにしようにも、良い肩書きがなかった。
しかし、突っ込まれながら良い案が浮かんだ。

「毒舌マスターでいこう。口の悪さはジャパンイチ」
「もっと客が離れちゃうよ!」
「でもジャパンで1位よ?見たくならない?『どんだけ口悪いマスター出るの!?』ってなるでしょ」
「うーん、確かになるかも……」
「俺は絶対行かないけどな」
「君のそういうところがキ●ガイなんだよ」
「酷い言い分だ……」

俺はアドバイスをしているだけなのに、マスターが全然頷いてくれなかった。

「ここでウチが看板娘になる、むふーっ」
「いらっしゃいませの1つも言えない奴が何を言ってやがる」
「いらっしゃいませ」
「言えたよこの子!?」

でも確かに黙っていれば可愛い咲夜だ。
看板娘がいれば店は華やかになる。

「確かになぁ、この店マスターだけでむさいよな。看板娘欲しいなぁ……」
「僕だけで店がまわるんだよ」
「言ってて悲しくならないかあんた……?」
「中学生に同情されたくないよ!」

俺が死ぬかもしれない高校3年が終わるまでは存続して欲しい。
なんとしてでも俺はこの喫茶店を守るんだ。

「人を雇えないならペコちゃん人形やサンダースおじさんみたいに咲夜の人形を店前に置くしかないか」
「ウチが嫌だよ」
「じゃあどうすんだよ?」
「津軽円の人形を置く」
「良いアイデアだ」
「まずそんなの買うお金ないから却下だよ。津軽さん、絶対君ら2人を恨むよ」

そもそも経費がないのか。
広告費も使えないとなると難しい。

「スタチャのサイン飾って、スタチャからSNS拡散してもらうのが考えられる即効的な案かな。スタチャを客寄せパンダに使うしかないか」
「急に現実味のある意見で驚いたよ!」
「でもなぁ、バズを作ってもそれじゃあ継続しないか……」

スタチャのサインくらいなら貰える気がする。
ただ、ほんの一時しのぎだ。
根本的な解決が必要なはずだ。

「コーヒーチャイルド、店に立つ」
「俺とマスターの前みたいに会話できると良いけど、普段の君無口じゃん」
「じゃあ常にマスターと貴様を店に置けば問題あるまい」
「なんで俺を巻き込むんだよ」
「むしろ秀頼がマスターになれば良い」
「なん……だと……?」

谷川一家の喫茶店に巻き込まれた……。
俺はあくまでアドバイス役に徹するつもりだったのに。

「なるほど、秀頼君が僕のマスターの名前を受け継ぐのか」
「ウチ秀頼の奥さんになる。解決だな」
「なんの解決にもなってねーよ。こんな店11日で潰すよ」
「山崎の戦い……三日天下……」

結局グダクダな会話ばかりになっていく。
いつもこんな会話ばっかりだな。
達裄さんなら解決できそうだけと、あの人に頼んだら負けになってしまいそうで多分しないだろうな……。

そんな会話をしていると、人がやって来る。

「こんにちはー、秀頼さん、咲夜、マスターさん」
「うむ、こんにちは。永遠、よく来た」
「本日はお招きいただきありがとうございます!」

咲夜が出迎えていた。
俺は2人の会話を黙って聞いていた。

「今日はなんか盛り上がっていたみたいですね。何かあったんですか?」
「そうだ!永遠は学年1位の頭脳だ!マスター、秀頼!永遠から店のアドバイスもらうぞ!」
「……アドバイス?」

頭が良くてもマーケティングの知識のない永遠ちゃんでどうにかなるのかわからないが、咲夜が店を盛り上げるためにどうしたら良いのかなどを尋ねていたのであった。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

2021.08.18 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

解除
スパークノークス

お気に入りに登録しました~

解除
花雨
2021.08.13 花雨

作品お気に入り登録しときますね(^^)

解除

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

裏切られた公爵令嬢は、冒険者として自由に生きる

小倉みち
ファンタジー
 公爵令嬢のヴァイオレットは、自身の断罪の場で、この世界が乙女ゲームの世界であることを思い出す。  自分の前世と、自分が悪役令嬢に転生してしまったという事実に気づいてしまったものの、もう遅い。  ヴァイオレットはヒロインである庶民のデイジーと婚約者である第一王子に嵌められ、断罪されてしまった直後だったのだ。  彼女は弁明をする間もなく、学園を退学になり、家族からも見放されてしまう。  信じていた人々の裏切りにより、ヴァイオレットは絶望の淵に立ったーーわけではなかった。 「貴族じゃなくなったのなら、冒険者になればいいじゃない」  持ち前の能力を武器に、ヴァイオレットは冒険者として世界中を旅することにした。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。