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第6章 偽りのアイドル

22、十文字理沙は荒れる

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「ずるーい!ズルすぎですよぉぉぉ!」



スタチャと会った次の日の朝、理沙は荒れていた。
プライベートな時間に直接彼女と会話し、ツーショットを撮り、サインをもらうというファンなら誰もが憧れる経験をしてしまった3人は申し訳ない感じになり、理沙に顔を向けられなかった。

「……タケル、こうなるとわかって理沙に言ったのか?」
「俺が理沙に隠し事ができるとでも?」
「知るかよ」
「オフのスタチャと会うとかずるいですよ明智君っ!」

理沙はもう出会いの瞬間からこればかりだった。
仕方ない、話題を反らす荒業に出るしかない。

「そういえば昨日の相撲見たか?あの張り手よ!」
「やべーよなあの張り手」
「痛そうな張り手でしたね」
「みんな相撲興味ないでしょ!?張り手って単語だけで誤魔化されないから!?話を反らさないで」

一瞬で見破られた……。

「あーけーちくーん!うーらーむー。私を呼ばないなんて!直接スタチャの下ろした髪見たかったぁぁぁ」
「そこ気にする?」
「絶対気にする!」

こんな感じで粘着されていた。
出会って6年以上立つがこんなにしつこく荒れてる理沙を見るのははじめてだ。

「理沙荒れてるな」
「何かありましたか?」
「珍しいわね」
「おはようございます!先輩方」

咲夜、永遠ちゃん、円、和が通学路で合流してきた。
理沙の態度にみんな目を丸くしていた。

「……明智君が私を誘ってくれなかったの」
「わたしも誘われてないけどね……」
「スタチャより先に絵美が来た時はスタチャの正体が絵美だと思ったぜ」
「あぁ、あれは焦った。俺の中で佐々木=スタチャ説出たからな」

俺とタケルがあの緊張した出来事を思いだしながら語る。

「え?それだけわたしが可愛いということ?」
「ふっ……、都合の良い解釈だな」
「なんですと!?」
「落ち着けよお前ら……」

咲夜と絵美のやり取りを俺が制止する。
喧嘩は良くない。

「でも絵美さんはスタチャに料理振る舞ったんでしょ!?」
「わたしの中であれは料理とは言わないよ……」

絵美は本当に偶然だったからな……。
本来はおばさんが対応していたかもしれない。

「スタチャに料理ってなんだ?」
「昨日俺の家にスターチャイルドが来て絵美が料理を振る舞ったんだ」
「何!?本当か!?絵美は何の料理を振る舞ったんだ!?」
「咲夜の驚きはそっち!?」

咲夜は料理を気にしていたが、永遠ちゃんらは「え?スタチャが!?」と非現実的な出来事を驚いていた。

「秀頼先輩!?なんで私を呼んでくれなかったんですか!」

そして、もう1人のスタチャファンの和も理沙と同じ状況になる。

「スタチャ……」
「スタチャ……」

2人して意気消沈していた。
なんか本当に申し訳なくなってきた。

「そんなにガッカリするな。ウチがスタチャの曲をカラオケで歌うぞ」
「なんの価値あるのそれ……?」
「コーヒーチャイルド、コヒチャと呼んでくれ」
「語呂悪っ……」
「ウチもついに歌手デビューだ」

咲夜もといコーヒーチャイルドはちょっと乗り気になっていた。

「和も理沙も歌手デビューするぞ」
「NODOKAデビューします」
「じゃあ私はLiS……」
「ストップだよ」
「でもコーヒーチャイルドの3人グループのトリオ見たいです」
「……」

永遠ちゃんがキラキラした目で咲夜、和、理沙のトリオグループを歓迎していた。

「あんたらは自由ね……」

円のまっとうな突っ込みを聞きながら、今日も1日が始まった。
昨日、スタチャが家に来ていた実感も今や遠い昔に感じる。



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