83 / 136
第5章 鳥籠の少女
39、十文字理沙はゲーセンに偏見を持つ
しおりを挟む
おそらく、絵美らが勉強会で勤しんでいた頃。
役立たず組は、3人でゲーセンに向かって歩いていた。
「ゲーセンなんてはじめてです……。わくわく、わくわく」
「なんだ理沙?お前ゲーセンとか行ったことないのか?」
「だって、先生が怖い人のたまり場だって脅すから……」
「キッズかよ」
「秀頼……、俺らもキッズなんだよ」
前世の記憶もあるせいで、自分の学年の年齢がまだ12~13歳という違和感がまだ抜けていなかった。
とっくに成人していてもおかしくないくらいに体験は色々と積んではいる。
「だいたい怖い人ってなんだよ?先生のボキャブラリーが曖昧過ぎるだろ」
「え?ゲーセンの怖い人って口裂け女とか花子さんとかがしゃどくろとか居るんじゃないですか……?」
「お化け屋敷じゃねーんだからさ」
本気で身震いをして反応する理沙に驚きである。
ゲーセン=カツアゲ、不良、チンピラってイメージする学校サイドも情報が古いのはゲームの中でも変わらないのかと突っ込みどころが満載だ。
「お前の妹って純粋だな」
「お前と違って穢れてないんだよ」
「誰が穢れてんだよ」
失礼なシスコン兄貴である。
「でもあれですよね。この3人で遊びに行くの新鮮ですね!」
「あぁ、理沙も秀頼のことをもっと色々知って欲しい」
「わかりました、兄さん」
理沙と俺の仲がそこまで親密ではないからか、そんな風にフォローを入れてくれるタケルは本当に優しい奴だと思う。
こんな優しい奴の気持ちを全部無下にする俺のキャラは本当に最低だ。
理沙ルートだとよくある十文字兄妹と俺という3人の構図だから新鮮さは全然感じられない。
しかもゲームだと理沙と秀頼の会話が結構多いからな。
そう考えるとゲームの俺と理沙の方が親密だった気もする。
ーーーーー
「兄さんは最近宮村さんとかと仲が良いんですよ」
「そりゃああれだ。タケルが宮村さんを狙ってんだよ」
「兄さんが宮村さんを……?」
秀頼が「あぁ」と真剣な顔で頷く。
心の中ではタケルのことなどどうでも良く、理沙の身体のことでいっぱいな本心を隠しつつ、どの様に彼女を誘導するのかを頭で幾通りものシチュエーションを考える。
「実際俺に対して『永遠に片思いをしているんだ』と先週相談された」
「え……?に、兄さんが……?」
「『毎日、永遠が『両親が心中した記憶』が忘れられなくて苦しんでいる姿に耐えられない。彼女の傷痕を俺が埋めてやりたい』……、真剣な顔してたな。ありゃあ間違いなくタケルは宮村さんにお熱を上げてるよ」
実際は『永遠ってなんであんなに苦しそうなんだろ?』と雑談程度にタケルが切り出した話題を、誇張して理沙の心に深く突き刺すように演技をする。
そもそも、十文字タケルから見た宮村永遠は『両親が心中して亡くなった事実』すら噂話程度にしか知らない仲である。
拗れる仲は拗れさせる。
歪められる情報は歪める。
それが明智秀頼という男のクズゲスな生き方だった。
「嫌……。そんなのやだ……。私、兄さんが1番好きなのに……。どうして兄さんは私を見てくれないの……?妹なのが、そんなにダメ……?」
「理沙ちゃん……。なら俺に相談しろよ!いくらでもタケルの相談に乗れるからさ」
「明智君……」
「俺にとってはタケルの妹は俺の妹みたいなもんよ。秀頼って呼んで良い。これから仲良くしていこうぜ」
「ありがとうございます、秀頼さん。頼りにさせていただきます」
ーーーーー
「…………」
変なイベントが頭に過った。
理沙ルートで『明智君』呼びが『秀頼さん』呼びに変わったシーンだ。
寝取る気満々で『こいつすげーな!』って秀頼にびっくりさせられるシーン。
好感度レベルを永遠ちゃんをやや高めにしながら、理沙ルートに突入した際に起こるイベント。
そのまま永遠ちゃんルートに突入したかったイベントだったのでなんとなく覚えてる。
結局永遠ちゃんに『理沙のために行ってあげて。ゴミクズから理沙を守るの!ファイト!』って背中を押してもらえるシーンが最高にエモい。
そしてタケルの背中を押した後、1人で息を殺して失恋で泣く永遠ちゃんのシーンはCGの一枚絵が完璧過ぎた。
理沙ルート派生で永遠攻略させろと思ったくらい輝くシーンである。
…………あれ!?
俺また永遠ちゃんにゴミクズ扱いされてる!?
ナチュラルゴミクズ扱いはメンタルにくる……。
「あっ!ゲームセンター見えてきました!」
理沙の嬉しそうで生き生きした声が響いた。
タケルを女性化させた様な顔の少女。
しかし、ユーザーから不人気でもやはりヒロイン。
絵にもなるし、可愛いなと思った。
彼女の元気なところ、常識的で真面目な子。
理沙も良い子だなって接していてよくわかる子である。
役立たず組は、3人でゲーセンに向かって歩いていた。
「ゲーセンなんてはじめてです……。わくわく、わくわく」
「なんだ理沙?お前ゲーセンとか行ったことないのか?」
「だって、先生が怖い人のたまり場だって脅すから……」
「キッズかよ」
「秀頼……、俺らもキッズなんだよ」
前世の記憶もあるせいで、自分の学年の年齢がまだ12~13歳という違和感がまだ抜けていなかった。
とっくに成人していてもおかしくないくらいに体験は色々と積んではいる。
「だいたい怖い人ってなんだよ?先生のボキャブラリーが曖昧過ぎるだろ」
「え?ゲーセンの怖い人って口裂け女とか花子さんとかがしゃどくろとか居るんじゃないですか……?」
「お化け屋敷じゃねーんだからさ」
本気で身震いをして反応する理沙に驚きである。
ゲーセン=カツアゲ、不良、チンピラってイメージする学校サイドも情報が古いのはゲームの中でも変わらないのかと突っ込みどころが満載だ。
「お前の妹って純粋だな」
「お前と違って穢れてないんだよ」
「誰が穢れてんだよ」
失礼なシスコン兄貴である。
「でもあれですよね。この3人で遊びに行くの新鮮ですね!」
「あぁ、理沙も秀頼のことをもっと色々知って欲しい」
「わかりました、兄さん」
理沙と俺の仲がそこまで親密ではないからか、そんな風にフォローを入れてくれるタケルは本当に優しい奴だと思う。
こんな優しい奴の気持ちを全部無下にする俺のキャラは本当に最低だ。
理沙ルートだとよくある十文字兄妹と俺という3人の構図だから新鮮さは全然感じられない。
しかもゲームだと理沙と秀頼の会話が結構多いからな。
そう考えるとゲームの俺と理沙の方が親密だった気もする。
ーーーーー
「兄さんは最近宮村さんとかと仲が良いんですよ」
「そりゃああれだ。タケルが宮村さんを狙ってんだよ」
「兄さんが宮村さんを……?」
秀頼が「あぁ」と真剣な顔で頷く。
心の中ではタケルのことなどどうでも良く、理沙の身体のことでいっぱいな本心を隠しつつ、どの様に彼女を誘導するのかを頭で幾通りものシチュエーションを考える。
「実際俺に対して『永遠に片思いをしているんだ』と先週相談された」
「え……?に、兄さんが……?」
「『毎日、永遠が『両親が心中した記憶』が忘れられなくて苦しんでいる姿に耐えられない。彼女の傷痕を俺が埋めてやりたい』……、真剣な顔してたな。ありゃあ間違いなくタケルは宮村さんにお熱を上げてるよ」
実際は『永遠ってなんであんなに苦しそうなんだろ?』と雑談程度にタケルが切り出した話題を、誇張して理沙の心に深く突き刺すように演技をする。
そもそも、十文字タケルから見た宮村永遠は『両親が心中して亡くなった事実』すら噂話程度にしか知らない仲である。
拗れる仲は拗れさせる。
歪められる情報は歪める。
それが明智秀頼という男のクズゲスな生き方だった。
「嫌……。そんなのやだ……。私、兄さんが1番好きなのに……。どうして兄さんは私を見てくれないの……?妹なのが、そんなにダメ……?」
「理沙ちゃん……。なら俺に相談しろよ!いくらでもタケルの相談に乗れるからさ」
「明智君……」
「俺にとってはタケルの妹は俺の妹みたいなもんよ。秀頼って呼んで良い。これから仲良くしていこうぜ」
「ありがとうございます、秀頼さん。頼りにさせていただきます」
ーーーーー
「…………」
変なイベントが頭に過った。
理沙ルートで『明智君』呼びが『秀頼さん』呼びに変わったシーンだ。
寝取る気満々で『こいつすげーな!』って秀頼にびっくりさせられるシーン。
好感度レベルを永遠ちゃんをやや高めにしながら、理沙ルートに突入した際に起こるイベント。
そのまま永遠ちゃんルートに突入したかったイベントだったのでなんとなく覚えてる。
結局永遠ちゃんに『理沙のために行ってあげて。ゴミクズから理沙を守るの!ファイト!』って背中を押してもらえるシーンが最高にエモい。
そしてタケルの背中を押した後、1人で息を殺して失恋で泣く永遠ちゃんのシーンはCGの一枚絵が完璧過ぎた。
理沙ルート派生で永遠攻略させろと思ったくらい輝くシーンである。
…………あれ!?
俺また永遠ちゃんにゴミクズ扱いされてる!?
ナチュラルゴミクズ扱いはメンタルにくる……。
「あっ!ゲームセンター見えてきました!」
理沙の嬉しそうで生き生きした声が響いた。
タケルを女性化させた様な顔の少女。
しかし、ユーザーから不人気でもやはりヒロイン。
絵にもなるし、可愛いなと思った。
彼女の元気なところ、常識的で真面目な子。
理沙も良い子だなって接していてよくわかる子である。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました
上野佐栁
ファンタジー
前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。
【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?
紺
ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。
世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。
ざまぁ必須、微ファンタジーです。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる