81 / 136
第5章 鳥籠の少女
37、女子4人の勉強会
しおりを挟む
秀頼さんと絵美の意図がわからないまま、私は自宅へと案内をする。
家族ーー特に父が友達を家にあげるのを嫌う人なのだけれど『私のクラスメート数人で勉強会をするの』と言うと渋々了承をしてくれた。
絵美の入れ知恵が上手くはまった。
多分『友達が遊びに来る』と説明すると、『ダメだ、勉強をしなさい』と一蹴される。
ただ、絵美のアドバイスは、『クラスメートという他人行儀さ、勉強会という勉強に関係するのが一目瞭然なので断り辛いでしょ』というものだった。
確かにこれなら納得しても良いかもと思わせる言葉遣いであり、私も唸らされた。
「おじゃましまーす」
そうやって声をかけると母が出迎えてくれた。
各々が挨拶を済ませて広い部屋へと案内をした。
「絵美、ウチらは何する?」
部屋に案内されて全員座ると咲夜が絵美に問いかける。
絵美の反応は、「当然……」と声をかけてカバンを漁る。
筆記用具やノートを取り出して満面な笑みを浮かべて彼女は答える。
「勉強」
「…………ウチ帰る」
「いやいやいやいや……」
絵美が咲夜の制服を掴みながら制止させた。
「勉強するって言ったよね、咲夜?」
「うん」
絵美のお説教が始まった。
咲夜は頷きながら説教を聞いている。
「じゃあ勉強やろう!」
「秀頼は?」
「ゲーセン寄るって」
「ウチも」
「ダメダメ」
「勉強やだーっ!」
絵美から捕まり、逃げようとするもビクとも動けない咲夜。
涼しい顔の絵美。
…………地味に絵美の力強くない?
「まどかぁ……。円からも絵美になんか言ってやれぇ」
「なんか」
「ネタが古い!」
津軽さんを見ながら素っ気ないなと思う。
全然咲夜に興味がなさそうだ。
「そんなに性格キツイと男にモテないぞ!」
「わたしなんかまだまだ優しい方ですよ」
「でも、秀頼は絵美をウチと同じくキツイと思ってるかもしれん」
「なんでもかんでも秀頼君の名前出せば動揺を誘えると思わないことだね」
「秀頼とキスして来よう」
「うん。させるわけないよね」
「ぁぁぁぁぁ」
絵美にがっしりと腕を掴まれる咲夜。
じたばたしようとしているけど、絵美の腕はうんともすんともいわない。
「ステンレスかなんかか?お前の腕力……?」
「わたし握力なくてクラス最下位なんだよね」
「え?……いや、全然動かせないんだけどウチの腕」
「じゃあわたしより弱いんじゃない?」
確かに絵美は身体も手も小さいので握力が弱いというのもあり得る話。
しかし、あまりにも咲夜の抵抗を受け付けない絵美の腕が凄い。
男性でもかなりの力が必要そうな気がする。
本当は握力が強いのを隠してサバ読んでるだけかもしれないけど……。
「おい、円も絵美にズバッとなんか言ってやるんだ!」
「ズバッ」
「ネタが古い!」
津軽さんはノートをペラペラと見ていて、白紙のページを見付けてテーブルに置いた。
「ぐおお、腕を離せ絵美」
「じゃあ勉強しようよ……」
「ウチは勉強ができない」
「尚更しようよ……」
呆れた声の絵美は「はぁ……」とため息を付く。
「マスターさんも秀頼君も放任主義っぽいからね。咲夜が志望校行けるようにわたし頑張るよ」
「頑張るな!どうせウチはマスターの家継ぐからニートになるんだ」
「甘やかされて育ってるね……」
中学生の段階で真面目にニート宣言をしている女子をはじめて見た気がする。
確かにマスターさんも、秀頼さんも咲夜に『勉強しろ』って言ってるイメージが沸かなかった。
「おい、円も絵美に『このチビ女!』って言ってやれ」
「…………」
「無視するなぁぁぁぁ、まどかぁ……」
「このコーヒー女」
「ウチの悪口になってる!」
既に淡々と勉強をはじめている津軽さんはとてもクールだ。
まだ部屋に入って5分も経っていないのにとても賑やかな空間だった。
「ふふふっ」
「ん?どうした永遠?突然笑いだして」
「いや、咲夜も絵美も津軽さんも面白いなと思って。この輪に入れて良かったと思って」
咲夜の問いに答えてようやく実感できた。
この地に引っ越して、このメンバーに会えたのが良い出会いだったなと、そう思える。
「咲夜のせいでわたしまで面白い人扱いじゃないですか!」
「こいつをやっちまうか」
「やめて!円まで敵にまわるのやめて!」
「あはは……、勉強会ですよね……?」
はじまらない勉強会だったが、ずっとこのまま楽しい時間を過ごしたいとも思ってきたのであった。
それからは、渋々と咲夜は宿題を取り出していた。
家族ーー特に父が友達を家にあげるのを嫌う人なのだけれど『私のクラスメート数人で勉強会をするの』と言うと渋々了承をしてくれた。
絵美の入れ知恵が上手くはまった。
多分『友達が遊びに来る』と説明すると、『ダメだ、勉強をしなさい』と一蹴される。
ただ、絵美のアドバイスは、『クラスメートという他人行儀さ、勉強会という勉強に関係するのが一目瞭然なので断り辛いでしょ』というものだった。
確かにこれなら納得しても良いかもと思わせる言葉遣いであり、私も唸らされた。
「おじゃましまーす」
そうやって声をかけると母が出迎えてくれた。
各々が挨拶を済ませて広い部屋へと案内をした。
「絵美、ウチらは何する?」
部屋に案内されて全員座ると咲夜が絵美に問いかける。
絵美の反応は、「当然……」と声をかけてカバンを漁る。
筆記用具やノートを取り出して満面な笑みを浮かべて彼女は答える。
「勉強」
「…………ウチ帰る」
「いやいやいやいや……」
絵美が咲夜の制服を掴みながら制止させた。
「勉強するって言ったよね、咲夜?」
「うん」
絵美のお説教が始まった。
咲夜は頷きながら説教を聞いている。
「じゃあ勉強やろう!」
「秀頼は?」
「ゲーセン寄るって」
「ウチも」
「ダメダメ」
「勉強やだーっ!」
絵美から捕まり、逃げようとするもビクとも動けない咲夜。
涼しい顔の絵美。
…………地味に絵美の力強くない?
「まどかぁ……。円からも絵美になんか言ってやれぇ」
「なんか」
「ネタが古い!」
津軽さんを見ながら素っ気ないなと思う。
全然咲夜に興味がなさそうだ。
「そんなに性格キツイと男にモテないぞ!」
「わたしなんかまだまだ優しい方ですよ」
「でも、秀頼は絵美をウチと同じくキツイと思ってるかもしれん」
「なんでもかんでも秀頼君の名前出せば動揺を誘えると思わないことだね」
「秀頼とキスして来よう」
「うん。させるわけないよね」
「ぁぁぁぁぁ」
絵美にがっしりと腕を掴まれる咲夜。
じたばたしようとしているけど、絵美の腕はうんともすんともいわない。
「ステンレスかなんかか?お前の腕力……?」
「わたし握力なくてクラス最下位なんだよね」
「え?……いや、全然動かせないんだけどウチの腕」
「じゃあわたしより弱いんじゃない?」
確かに絵美は身体も手も小さいので握力が弱いというのもあり得る話。
しかし、あまりにも咲夜の抵抗を受け付けない絵美の腕が凄い。
男性でもかなりの力が必要そうな気がする。
本当は握力が強いのを隠してサバ読んでるだけかもしれないけど……。
「おい、円も絵美にズバッとなんか言ってやるんだ!」
「ズバッ」
「ネタが古い!」
津軽さんはノートをペラペラと見ていて、白紙のページを見付けてテーブルに置いた。
「ぐおお、腕を離せ絵美」
「じゃあ勉強しようよ……」
「ウチは勉強ができない」
「尚更しようよ……」
呆れた声の絵美は「はぁ……」とため息を付く。
「マスターさんも秀頼君も放任主義っぽいからね。咲夜が志望校行けるようにわたし頑張るよ」
「頑張るな!どうせウチはマスターの家継ぐからニートになるんだ」
「甘やかされて育ってるね……」
中学生の段階で真面目にニート宣言をしている女子をはじめて見た気がする。
確かにマスターさんも、秀頼さんも咲夜に『勉強しろ』って言ってるイメージが沸かなかった。
「おい、円も絵美に『このチビ女!』って言ってやれ」
「…………」
「無視するなぁぁぁぁ、まどかぁ……」
「このコーヒー女」
「ウチの悪口になってる!」
既に淡々と勉強をはじめている津軽さんはとてもクールだ。
まだ部屋に入って5分も経っていないのにとても賑やかな空間だった。
「ふふふっ」
「ん?どうした永遠?突然笑いだして」
「いや、咲夜も絵美も津軽さんも面白いなと思って。この輪に入れて良かったと思って」
咲夜の問いに答えてようやく実感できた。
この地に引っ越して、このメンバーに会えたのが良い出会いだったなと、そう思える。
「咲夜のせいでわたしまで面白い人扱いじゃないですか!」
「こいつをやっちまうか」
「やめて!円まで敵にまわるのやめて!」
「あはは……、勉強会ですよね……?」
はじまらない勉強会だったが、ずっとこのまま楽しい時間を過ごしたいとも思ってきたのであった。
それからは、渋々と咲夜は宿題を取り出していた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる