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第5章 鳥籠の少女

37、女子4人の勉強会

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秀頼さんと絵美の意図がわからないまま、私は自宅へと案内をする。
家族ーー特に父が友達を家にあげるのを嫌う人なのだけれど『私のクラスメート数人で勉強会をするの』と言うと渋々了承をしてくれた。

絵美の入れ知恵が上手くはまった。
多分『友達が遊びに来る』と説明すると、『ダメだ、勉強をしなさい』と一蹴される。

ただ、絵美のアドバイスは、『クラスメートという他人行儀さ、勉強会という勉強に関係するのが一目瞭然なので断り辛いでしょ』というものだった。
確かにこれなら納得しても良いかもと思わせる言葉遣いであり、私も唸らされた。

「おじゃましまーす」

そうやって声をかけると母が出迎えてくれた。
各々が挨拶を済ませて広い部屋へと案内をした。

「絵美、ウチらは何する?」

部屋に案内されて全員座ると咲夜が絵美に問いかける。
絵美の反応は、「当然……」と声をかけてカバンを漁る。
筆記用具やノートを取り出して満面な笑みを浮かべて彼女は答える。

「勉強」
「…………ウチ帰る」
「いやいやいやいや……」

絵美が咲夜の制服を掴みながら制止させた。

「勉強するって言ったよね、咲夜?」
「うん」

絵美のお説教が始まった。
咲夜は頷きながら説教を聞いている。

「じゃあ勉強やろう!」
「秀頼は?」
「ゲーセン寄るって」
「ウチも」
「ダメダメ」
「勉強やだーっ!」

絵美から捕まり、逃げようとするもビクとも動けない咲夜。
涼しい顔の絵美。
…………地味に絵美の力強くない?

「まどかぁ……。円からも絵美になんか言ってやれぇ」
「なんか」
「ネタが古い!」

津軽さんを見ながら素っ気ないなと思う。
全然咲夜に興味がなさそうだ。

「そんなに性格キツイと男にモテないぞ!」
「わたしなんかまだまだ優しい方ですよ」
「でも、秀頼は絵美をウチと同じくキツイと思ってるかもしれん」
「なんでもかんでも秀頼君の名前出せば動揺を誘えると思わないことだね」
「秀頼とキスして来よう」
「うん。させるわけないよね」
「ぁぁぁぁぁ」

絵美にがっしりと腕を掴まれる咲夜。
じたばたしようとしているけど、絵美の腕はうんともすんともいわない。

「ステンレスかなんかか?お前の腕力……?」
「わたし握力なくてクラス最下位なんだよね」
「え?……いや、全然動かせないんだけどウチの腕」
「じゃあわたしより弱いんじゃない?」

確かに絵美は身体も手も小さいので握力が弱いというのもあり得る話。
しかし、あまりにも咲夜の抵抗を受け付けない絵美の腕が凄い。
男性でもかなりの力が必要そうな気がする。
本当は握力が強いのを隠してサバ読んでるだけかもしれないけど……。

「おい、円も絵美にズバッとなんか言ってやるんだ!」
「ズバッ」
「ネタが古い!」

津軽さんはノートをペラペラと見ていて、白紙のページを見付けてテーブルに置いた。

「ぐおお、腕を離せ絵美」
「じゃあ勉強しようよ……」
「ウチは勉強ができない」
「尚更しようよ……」

呆れた声の絵美は「はぁ……」とため息を付く。

「マスターさんも秀頼君も放任主義っぽいからね。咲夜が志望校行けるようにわたし頑張るよ」
「頑張るな!どうせウチはマスターの家継ぐからニートになるんだ」
「甘やかされて育ってるね……」

中学生の段階で真面目にニート宣言をしている女子をはじめて見た気がする。
確かにマスターさんも、秀頼さんも咲夜に『勉強しろ』って言ってるイメージが沸かなかった。

「おい、円も絵美に『このチビ女!』って言ってやれ」
「…………」
「無視するなぁぁぁぁ、まどかぁ……」
「このコーヒー女」
「ウチの悪口になってる!」

既に淡々と勉強をはじめている津軽さんはとてもクールだ。
まだ部屋に入って5分も経っていないのにとても賑やかな空間だった。

「ふふふっ」
「ん?どうした永遠?突然笑いだして」
「いや、咲夜も絵美も津軽さんも面白いなと思って。この輪に入れて良かったと思って」

咲夜の問いに答えてようやく実感できた。
この地に引っ越して、このメンバーに会えたのが良い出会いだったなと、そう思える。

「咲夜のせいでわたしまで面白い人扱いじゃないですか!」
「こいつをやっちまうか」
「やめて!円まで敵にまわるのやめて!」
「あはは……、勉強会ですよね……?」

はじまらない勉強会だったが、ずっとこのまま楽しい時間を過ごしたいとも思ってきたのであった。
それからは、渋々と咲夜は宿題を取り出していた。
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