77 / 136
第5章 鳥籠の少女
33、佐々木絵美はプールで迷う
しおりを挟む
喫茶店での雑談も終わり、ぼちぼちと家の遠い永遠ちゃん、津軽、タケル・理沙と家へと帰って行く。
店から家がやや近い距離の俺と絵美が残された状態になる。
そこで幹事2人は、どこのプールに行くかを打ち合わせしていた。
「プールって室内と屋外どっちにするべきかな!?」
「天気関係ない室内じゃないかな」
こういう場合はニーズで考えるべきだ。
焼けたくない女性が集まると仮定すると、屋外よりも室内の方の方が人気なはず。
つまり、色白美人な水着ギャルを拝めるのは室内という推理である。
「室内ねー。でも、プールって屋外のイメージない?」
「無いね。それは小学生の集まるキッズの話だろ。大人のプールは室内だよ」
「秀頼がウチみたいなこと言ってる……」
絵美の隣に座り黙って見ていた咲夜が口を出してくる。
マスターは店仕舞いをしていてちょっと忙しい。
「でも、わたし達はまだ中学生だし大人向けよりキッズ向けの方が良いのでは?」
「絵美もウチみたいなこと言ってる……」
「いやいやいや、室内の方がキッズが迷子になっても見付かりやすいだろ?キッズだけで行くなら室内でしょ」
「さっきの言い分と矛盾してない?」
優柔不断を発揮する絵美に、俺は室内プールを推しまくった。
色白美人の水着ギャルが狙いという部分は伏せつつ、あくまで天気が雨でも行けるでしょ?というスタンスだ。
「というか、そもそもキッズだけでプール行けるのか?保護者付かないとダメなんじゃ?」
「なーに、心配するなよ咲夜。君のお父さんがいるじゃないか」
「僕も巻き添え!?」
黙って店をモップ掛けしてしていたマスターから大声で反応された。
「え?来ないの?」
「僕店あるから来れないでしょ。引率なら姉貴に頼みなよ」
「でもマスター?水曜日の定休日なら空いてるでしょ?夏休みなら全員と都合合うでしょ?」
「咲夜……、背中から切らないで……」
俺が言いたかったことを娘のアシストで逃げられなくなるマスター。
娘には相変わらず弱い……。
「それに永遠は『このメンバーでプール行きたいです!』って言ってた。マスターも入ってる」
「入ってるわけないでしょ!」
「あ、あはは……」
絵美がマスターの苦労人振りに同情するかの様に笑う。
俺は自分で動かなくても、咲夜が勝手に説得してくれるので黙って見ていた。
「それに僕の車、そんなに人入らないよ」
「個人で電車使うだろ」
「水着持ってないよ」
「買えば良いだろ」
「僕、プール行きたくないよ」
「ウチはマスターとプール行きたい」
「…………」
マスターが娘に次々と論破されていく。
本当に不憫な人だ……。
「お、面白い人ですね……。マスターさん……」
「あぁ。なんたって咲夜の親父だからな。面白いよ」
「そうだね」
「なんの納得?」
マスターが「はぁ……」とため息を付く。
降参の合図だなと察した。
そのままモップ掛けを終えて、自分の手を洗いはじめた。
「で、君が佐々木さんだね」
「はじめまして、佐々木絵美です」
絵美が短いツインテールを揺らしながら頭を下げた。
マスターが値踏みをするみたいに絵美をじっと見ていた。
「いつも秀頼君からマスターさんのこと色々聞いてますよ」
「いつもマスターのこと色々教えてますよ」
「ロクなこと言ってないのわかるわー……」
絵美の声色を真似したけど、マスターからは「可愛くないよ」と不評である。
「いつも話が面白くて、相談に乗ってくれて、価値観も合いやすいし、自分の兄貴みたいだと語ってくれています」
「意外と真面目なこと言ってるね」
「……ただ、親バカな変人だと」
「さっきの評価全部吹っ飛んだよ」
蛇口の水を止めて、タオルで手を拭く彼は余計なお世話だというニュアンスである。
「僕も佐々木さんのこと色々秀頼君に聞いてるよ」
「え?そうなんですか?」
「うん。自分にとって誰よりも1番近くて、愛想もよくて、近くにいると落ち着けるし、楽しい気持ちになれるし、最高に可愛いって」
「や、やだ。秀頼君。わたしをそんな風に思っていたなんて……。本当に素敵」
「……あと、自分にとって妹みたいな存在だと」
「は?」
「え……?」
一瞬で絵美が不機嫌な声になった。
え?マスターの俺が語った絵美の評価に対する怒りポイントがまったくわからなかった。
全部真実だし、褒めたつもりだったのだけど。
「わたし、秀頼君のそういうところがイラっとするの」
しかも、絵美がかなり睨みながらこっちを見ている。
なんで?
なんで俺怒られてるの?
そう思っていると、絵美の隣に座る咲夜も口を開く。
「絵美」
「どうしました、咲夜?」
おっ、咲夜がフォローにまわってくれる。
俺が普段から絵美を褒めていると伝えてくれと心でエールを送る。
「ウチも同感。秀頼のそういうところが殴りたくなる」
「なんで!?」
喫茶店を出るまで、機嫌が悪くなった2人の相手をするのが本当に大変だった。
妹と年下に見られているのがダメなのかもしれない。
『姉と思っている』と伝えた方が女子の反応が良いかもと考えるようになった。
店から家がやや近い距離の俺と絵美が残された状態になる。
そこで幹事2人は、どこのプールに行くかを打ち合わせしていた。
「プールって室内と屋外どっちにするべきかな!?」
「天気関係ない室内じゃないかな」
こういう場合はニーズで考えるべきだ。
焼けたくない女性が集まると仮定すると、屋外よりも室内の方の方が人気なはず。
つまり、色白美人な水着ギャルを拝めるのは室内という推理である。
「室内ねー。でも、プールって屋外のイメージない?」
「無いね。それは小学生の集まるキッズの話だろ。大人のプールは室内だよ」
「秀頼がウチみたいなこと言ってる……」
絵美の隣に座り黙って見ていた咲夜が口を出してくる。
マスターは店仕舞いをしていてちょっと忙しい。
「でも、わたし達はまだ中学生だし大人向けよりキッズ向けの方が良いのでは?」
「絵美もウチみたいなこと言ってる……」
「いやいやいや、室内の方がキッズが迷子になっても見付かりやすいだろ?キッズだけで行くなら室内でしょ」
「さっきの言い分と矛盾してない?」
優柔不断を発揮する絵美に、俺は室内プールを推しまくった。
色白美人の水着ギャルが狙いという部分は伏せつつ、あくまで天気が雨でも行けるでしょ?というスタンスだ。
「というか、そもそもキッズだけでプール行けるのか?保護者付かないとダメなんじゃ?」
「なーに、心配するなよ咲夜。君のお父さんがいるじゃないか」
「僕も巻き添え!?」
黙って店をモップ掛けしてしていたマスターから大声で反応された。
「え?来ないの?」
「僕店あるから来れないでしょ。引率なら姉貴に頼みなよ」
「でもマスター?水曜日の定休日なら空いてるでしょ?夏休みなら全員と都合合うでしょ?」
「咲夜……、背中から切らないで……」
俺が言いたかったことを娘のアシストで逃げられなくなるマスター。
娘には相変わらず弱い……。
「それに永遠は『このメンバーでプール行きたいです!』って言ってた。マスターも入ってる」
「入ってるわけないでしょ!」
「あ、あはは……」
絵美がマスターの苦労人振りに同情するかの様に笑う。
俺は自分で動かなくても、咲夜が勝手に説得してくれるので黙って見ていた。
「それに僕の車、そんなに人入らないよ」
「個人で電車使うだろ」
「水着持ってないよ」
「買えば良いだろ」
「僕、プール行きたくないよ」
「ウチはマスターとプール行きたい」
「…………」
マスターが娘に次々と論破されていく。
本当に不憫な人だ……。
「お、面白い人ですね……。マスターさん……」
「あぁ。なんたって咲夜の親父だからな。面白いよ」
「そうだね」
「なんの納得?」
マスターが「はぁ……」とため息を付く。
降参の合図だなと察した。
そのままモップ掛けを終えて、自分の手を洗いはじめた。
「で、君が佐々木さんだね」
「はじめまして、佐々木絵美です」
絵美が短いツインテールを揺らしながら頭を下げた。
マスターが値踏みをするみたいに絵美をじっと見ていた。
「いつも秀頼君からマスターさんのこと色々聞いてますよ」
「いつもマスターのこと色々教えてますよ」
「ロクなこと言ってないのわかるわー……」
絵美の声色を真似したけど、マスターからは「可愛くないよ」と不評である。
「いつも話が面白くて、相談に乗ってくれて、価値観も合いやすいし、自分の兄貴みたいだと語ってくれています」
「意外と真面目なこと言ってるね」
「……ただ、親バカな変人だと」
「さっきの評価全部吹っ飛んだよ」
蛇口の水を止めて、タオルで手を拭く彼は余計なお世話だというニュアンスである。
「僕も佐々木さんのこと色々秀頼君に聞いてるよ」
「え?そうなんですか?」
「うん。自分にとって誰よりも1番近くて、愛想もよくて、近くにいると落ち着けるし、楽しい気持ちになれるし、最高に可愛いって」
「や、やだ。秀頼君。わたしをそんな風に思っていたなんて……。本当に素敵」
「……あと、自分にとって妹みたいな存在だと」
「は?」
「え……?」
一瞬で絵美が不機嫌な声になった。
え?マスターの俺が語った絵美の評価に対する怒りポイントがまったくわからなかった。
全部真実だし、褒めたつもりだったのだけど。
「わたし、秀頼君のそういうところがイラっとするの」
しかも、絵美がかなり睨みながらこっちを見ている。
なんで?
なんで俺怒られてるの?
そう思っていると、絵美の隣に座る咲夜も口を開く。
「絵美」
「どうしました、咲夜?」
おっ、咲夜がフォローにまわってくれる。
俺が普段から絵美を褒めていると伝えてくれと心でエールを送る。
「ウチも同感。秀頼のそういうところが殴りたくなる」
「なんで!?」
喫茶店を出るまで、機嫌が悪くなった2人の相手をするのが本当に大変だった。
妹と年下に見られているのがダメなのかもしれない。
『姉と思っている』と伝えた方が女子の反応が良いかもと考えるようになった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる