ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

文字の大きさ
上 下
58 / 136
第5章 鳥籠の少女

14、悲劇の夢

しおりを挟む
絵美と永遠ちゃんの邂逅したその日の放課後。
緊急事態として、俺は津軽円を例の川原へ呼び寄せていた。

アクシデントと言ったら、『アクシデント』という言葉に驚き、彼女が横文字NGということを知った俺だが、そこは本題ではない。

議題は絵美らの原作の記憶問題である。
一部始終を語れる範囲で語っておく。

「いや、それかなりヤバイんじゃない?」
「や、やっぱりそうだよな……」
「しかも絵美が原作のことを知っているかのように言ったのが2回目というのが不穏ね……」

1回目に起きた理沙シナリオの言及についてはかなり昔の話なので、津軽にも話すのを忘れていた。
そして、絵美以外にも永遠ちゃんにもその兆候がきている旨も伝える。

「俺もよくゲームキャラクターに会う時、そういった原作の惨劇をリプレイする夢を見ることはあるな……。少なからず、彼女らにも起きている可能性は高い」
「ふーん」
「逆に君はないの!?」
「全然。私、そもそもそんな役割ないし。そういえばはじめて話し合いをした時も夢がどうたら言ってたわね。逆にちょっと津軽円目線の夢とか見てみたいわね」

呑気なことを言う転生者である。
同じ転生者なのに、秀頼と津軽とのフラグの多さと忙しさの差がえぐすぎる……。

「そういえば私もすれ違っただけだけど宮村永遠に会ったわよ」
「おお!?ついに俺の推しを見てしまったのか」
「何よあの子!?ちょっと反則過ぎるくらい可愛いわね!?ゲームではほとんどハイライトのない目でしか出演しないから陰キャみたいな印象しかなかったけどこれはちょっと反則すぎるのではないかって!」
「ついに君も永遠ちゃんの魅力に気付いたか?」
「気付いちゃった!はあああ、可愛い!!」
「尊い……」
「愛でたい……」

後半、お互いに永遠ちゃんを褒め称える会に変更されていたことに気付くのは解散する直前であった。


―――――


津軽と別れて自宅へ向かいながら、色々な思考をしながら歩く。
今後の立ち回り方。
永遠ちゃんの家庭の問題。
絵美と永遠ちゃんの原作の記憶問題。
永遠ちゃん以降のヒロインの問題。
完全に空気で無能役として存在が消えているタケル。

考えなくてはいけないことが多すぎるなと毒づきながら歩いていると、俺の家が見えてきた。
そして……。

「秀頼君、遊びにきちゃった」
「良いよ、中に入れよ」

絵美が俺の家の前で待ち伏せしていた。
多分何かしらの確認したいことがあるのかもしれない。
そのまま流れで、自室まで彼女を案内する。

「どうした?」
「どうしたんだろうね……?」
「え?」

絵美が首を上にして部屋の天井へ視線を移す。
その顔色からは、迷いが見える。

「たまに変な夢とか見ちゃってさ……。わたし、……宮村さんに恨まれても仕方ないみたいなことをしていて……。内容は全然覚えてないんだけど……」
「うん……」
「でも、今日の秀頼君の行動見て、もしかしたら同じ体験してるのかなってなんとなく思っちゃった」
「夢は見るよ……」

この世界は『悲しみの連鎖を断ち切り』というゲームの世界ですとは言えないけど、夢は俺も見ていたから……。

「酷く悲しい、悲劇の夢」
「…………」
「でも夢だろ?気にすんなよ」
「え?」
「大丈夫。……絵美を守るから、みんなを守るから」

そのためには、ギフトだってなんだって活用してやる。
それが、俺が記憶を思い出した意味なんだと思う。

「むしろわたしは……、秀頼君が心配だよ。抱え込まないで教えて欲しい」
「……いや、何も抱えていねぇよ!大丈夫だ」
「…………わかった。そういうことにする」

絵美が立ち上がり、俺に背を向ける。
どうやら会話も終わりのようだ。

「いつか、秀頼君の口から本心を聞きたいな。わたし、秀頼君のこと、す…………大事にしてるんだからね!……じゃあ、またね」
「あぁ……、またな」

扉が閉まる音が耳に届く。
絵美は鋭いな……。
いつか、俺も抱えていること全部バラしてやりてぇよ。

俺が自分が明智秀頼になった際に、ゲームの展開をまとめたノートを取り出す。

「…………母さん、父さん、来栖さん……。俺辛いよ……。1回死んだからこそ、またいつか死ぬかもって恐怖に耐えられなくなりそうだよ」

このノートが俺と前世を繋ぐ大事な情報源。

「来栖さんは強いね。身体が弱くて病弱の身体を引きずってまで学校来てさ、格好良い。輝いて見えた……」

まだ前世の恋を引きずってるとかキモいよな俺……。
早く、吹っ切っていかないといけないのにさ。

「大丈夫、……生きる。大事な人を犠牲にさせないでこのゲームを終わらせるんだ」

ノートを握る力が強くなっているのに気付き離した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令息の三下取り巻きに転生したけれど、チートがすごすぎて三下になりきれませんでした

あいま
ファンタジー
悪役令息の取り巻き三下モブに転生した俺、ドコニ・デモイル。10歳。 貴族という序列に厳しい世界で公爵家の令息であるモラハ・ラスゴイの側近選別と噂される公爵家主催のパーティーへ強制的に行く羽目になった。 そこでモラハ・ラスゴイに殴られ、前世の記憶と女神さまから言われた言葉を思い出す。 この世界は前世で知ったくそ小説「貴族学園らぶみーどぅー」という学園を舞台にした剣と魔法の世界であることがわかった。 しかも、モラハ・ラスゴイが成長し学園に入学した暁には、もれなく主人公へ行った悪事がばれて死ぬ運命にある。 さらには、モラハ・ラスゴイと俺は一心同体で、命が繋がる呪いがオプションとしてついている。なぜなら女神様は貴腐人らしく女同士、男同士の恋の発展を望んでいるらしい。女神様は神なのにこの世界を崩壊させるつもりなのだろうか? とにかく、モラハが死ぬということは、命が繋がる呪いにかかっている俺も当然死ぬということだ。 学園には並々ならぬ執着を見せるモラハが危険に満ち溢れた学園に通わないという選択肢はない。 仕方がなく俺は、モラハ・ラスゴイの根性を叩きなおしながら、時には、殺気を向けてくるメイドを懐柔し、時には、命を狙ってくる自称美少女暗殺者を撃退し、時には、魔物を一掃して魔王を返り討ちにしたりと、女神さまかもらった微妙な恩恵ジョブ変更チート無限を使い、なんとかモラハ・ラスゴイを更生させて生き残ろうとする物語である。 ーーーーー お読みくださりありがとうございます<(_ _)>

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...