51 / 136
第5章 鳥籠の少女
8、鳥籠の少女は孤独
しおりを挟む
新しい中学校へ進学した春。
私は自分の知人のいないこの地へ引っ越してきた。
本当の本当に新しい世界の始まりだった。
数百人の同い年の子が学校にいるのに、誰1人知らない顔というのはとても変な感覚だ。
自分の教室にいても、既にいくつかの友達グループが出来上がっていた。
元の学校の同級生な人ばかりなんだろうな。
男子は男子、女子は女子。
そんな風に別れていた。
「居場所がない……」
私の席の目の前で女子グループで4人ほど集まっていた。
輪の中に入れてと言えれば良いのだけれど、彼女らはちょっと化粧が濃い感じがしたり、言葉遣いが男っぽくて私と話が合いそうにないグループだ。
目を付けられたらパシりとかにされるのも嫌なので廊下に出た。
「…………はぁ。ちょっとハードモード過ぎるって」
家族の事情とはいえ、巻き込まれた娘は全部の人間関係をリセットされた。
6年間ずっと仲良く笑っていた子らは、全員違う学校なのだから。
「憂鬱……」
ぼーっとクラス前の教室に佇む。
人並みをそのまま眺めて人間観察みたいになる。
クラスに馴染むまで3ヶ月くらい掛かりそう……。
そんな風に悩んでいると3人組になった1つのグループが目に入る。
「それでな理沙がな!」
「それでね理沙ちゃんがね!」
「……あぁ、うん……」
中性的な感じの男の子。
背が低くて、髪を2つに結った女の子。
面倒そうではあるけど返事をしている目付きの悪い男の子。
彼らが私の目を引く。
なんで彼らが目を引いたのかというと、男女混合で歩いていたからだった。
他のグループは同性同士の集団だったので、なお目を引く。
良いなぁ、私も男の子とそんな風に混ざって行動してみたい。
男女に混ざってなんかをするというのに強い憧れがあった。
だから、一緒に歩いている背の低い女の子が羨ましかった。
目元の黒子とか可愛いし、もしかしてどっちかと付き合っていたりするのかな?とか無粋な推測をする。
しかも、『理沙』という女子っぽい名前も彼らから出てきた。
あのグループには他にも女の子がいるっぽい。
私の憧れを実現していた人達だった。
「新しい出会いにワクワクするな!」
「わたしは秀頼君の出会いだけでもう満足です」
そう言って2人は教室に入っていく。
しかし、目付きの悪い気だるげな男子は私の方に振り向いた。
「おはよう!」
う、うわわわっ!?
不意打ち気味にその人は私に挨拶をしてくれた。
突然で、心臓はばくばくだったけど出せる声を振り絞る。
「お、おはようございます!」
今日、はじめて自分の声を第3者に向けた。
変な声になっていないかなど、恥ずかしさが過る。
「俺の名前、明智秀頼って言います。よろしくね」
「は、はい!私の名前は宮村永遠です。永遠と書いて『トワ』です。明智さん、よろしくお願いいたします」
明智さんは優しい顔を浮かべて自己紹介をしてきたので、私も明智さんに知ってもらうために自分の名前を教える。
よく『エイエン』と間違われるので覚えてもらえる様に『トワ』であるとアピールする。
「俺の名前は明智光秀と豊臣秀頼が混ざったみたいな変わった名前だからさ。ちょっと宮村さんと親近感あるね」
おちゃらけたみたいに笑う明智さんに、私も釣られて笑う。
明智さんはとても話しやすくて、良い人だなと心を開き始めた。
「ふふっ、面白い人ですねっ!明智さんもこちらのクラスですか?」
「そうだよ。ということは宮村さんも?」
「はい、一緒のクラスです。明智さんみたいな人と同じクラスで私も嬉しいです!」
良かった!
明智さんとは同じクラスになれたら良いなと思っていたけど本当に同じなんて。
「そっかそっか。気軽に話しかけてくれると俺も嬉しいよ」
「はい!わかりました!」
「じゃあ俺、友達待たせてるから。ここで」
「はい。話しかけてくれてありがとうございました」
親しみやすくて格好良いなぁ。
目付きの悪さ以外は、かなり私のタイプ。
でも、私と話している時は目付きの悪さは気にならなかったなぁ……。
これからの学校生活が、俄然楽しみになってきた!
教室を覗くと明智さんが「悪い、悪い」と謝っている。
「あれ?秀頼、お前どこ行ってたの?」
「あぁ、ちょっとUFO見付けて」
「えぇ!?凄い!それだったらわたしたちも呼んでよ!」
「UFOって何色だっ!?」
「…………ブラウン?」
明智さんが友達の元で変な言い訳をしているのが面白くて笑ってしまう。
時間差で教室に入ると、明智さんも気付いて目が合う。
良い印象を持たせたいな、と思い微笑みを返す。
「ブラウンって何色だっ!?」
「茶色」
仲良さそうに話す明智君に目を奪われる。
あんな風に私とも会話をして欲しいな。
それを一緒に笑う女の子。
あの輪に入りたかった。
うーん……。
いきなり明智さんと話すのはハードルが高い。
そっちの男の子も、男子女子関係なく話してくれそうだけど、明智さんよりもハードルが高い。
そうなると……、あの女の子に認知されるといけるかな?
名前は、佐々木絵美さんらしい。
よし、私も勇気を出して佐々木さんと友達になってみよう!
私は自分の知人のいないこの地へ引っ越してきた。
本当の本当に新しい世界の始まりだった。
数百人の同い年の子が学校にいるのに、誰1人知らない顔というのはとても変な感覚だ。
自分の教室にいても、既にいくつかの友達グループが出来上がっていた。
元の学校の同級生な人ばかりなんだろうな。
男子は男子、女子は女子。
そんな風に別れていた。
「居場所がない……」
私の席の目の前で女子グループで4人ほど集まっていた。
輪の中に入れてと言えれば良いのだけれど、彼女らはちょっと化粧が濃い感じがしたり、言葉遣いが男っぽくて私と話が合いそうにないグループだ。
目を付けられたらパシりとかにされるのも嫌なので廊下に出た。
「…………はぁ。ちょっとハードモード過ぎるって」
家族の事情とはいえ、巻き込まれた娘は全部の人間関係をリセットされた。
6年間ずっと仲良く笑っていた子らは、全員違う学校なのだから。
「憂鬱……」
ぼーっとクラス前の教室に佇む。
人並みをそのまま眺めて人間観察みたいになる。
クラスに馴染むまで3ヶ月くらい掛かりそう……。
そんな風に悩んでいると3人組になった1つのグループが目に入る。
「それでな理沙がな!」
「それでね理沙ちゃんがね!」
「……あぁ、うん……」
中性的な感じの男の子。
背が低くて、髪を2つに結った女の子。
面倒そうではあるけど返事をしている目付きの悪い男の子。
彼らが私の目を引く。
なんで彼らが目を引いたのかというと、男女混合で歩いていたからだった。
他のグループは同性同士の集団だったので、なお目を引く。
良いなぁ、私も男の子とそんな風に混ざって行動してみたい。
男女に混ざってなんかをするというのに強い憧れがあった。
だから、一緒に歩いている背の低い女の子が羨ましかった。
目元の黒子とか可愛いし、もしかしてどっちかと付き合っていたりするのかな?とか無粋な推測をする。
しかも、『理沙』という女子っぽい名前も彼らから出てきた。
あのグループには他にも女の子がいるっぽい。
私の憧れを実現していた人達だった。
「新しい出会いにワクワクするな!」
「わたしは秀頼君の出会いだけでもう満足です」
そう言って2人は教室に入っていく。
しかし、目付きの悪い気だるげな男子は私の方に振り向いた。
「おはよう!」
う、うわわわっ!?
不意打ち気味にその人は私に挨拶をしてくれた。
突然で、心臓はばくばくだったけど出せる声を振り絞る。
「お、おはようございます!」
今日、はじめて自分の声を第3者に向けた。
変な声になっていないかなど、恥ずかしさが過る。
「俺の名前、明智秀頼って言います。よろしくね」
「は、はい!私の名前は宮村永遠です。永遠と書いて『トワ』です。明智さん、よろしくお願いいたします」
明智さんは優しい顔を浮かべて自己紹介をしてきたので、私も明智さんに知ってもらうために自分の名前を教える。
よく『エイエン』と間違われるので覚えてもらえる様に『トワ』であるとアピールする。
「俺の名前は明智光秀と豊臣秀頼が混ざったみたいな変わった名前だからさ。ちょっと宮村さんと親近感あるね」
おちゃらけたみたいに笑う明智さんに、私も釣られて笑う。
明智さんはとても話しやすくて、良い人だなと心を開き始めた。
「ふふっ、面白い人ですねっ!明智さんもこちらのクラスですか?」
「そうだよ。ということは宮村さんも?」
「はい、一緒のクラスです。明智さんみたいな人と同じクラスで私も嬉しいです!」
良かった!
明智さんとは同じクラスになれたら良いなと思っていたけど本当に同じなんて。
「そっかそっか。気軽に話しかけてくれると俺も嬉しいよ」
「はい!わかりました!」
「じゃあ俺、友達待たせてるから。ここで」
「はい。話しかけてくれてありがとうございました」
親しみやすくて格好良いなぁ。
目付きの悪さ以外は、かなり私のタイプ。
でも、私と話している時は目付きの悪さは気にならなかったなぁ……。
これからの学校生活が、俄然楽しみになってきた!
教室を覗くと明智さんが「悪い、悪い」と謝っている。
「あれ?秀頼、お前どこ行ってたの?」
「あぁ、ちょっとUFO見付けて」
「えぇ!?凄い!それだったらわたしたちも呼んでよ!」
「UFOって何色だっ!?」
「…………ブラウン?」
明智さんが友達の元で変な言い訳をしているのが面白くて笑ってしまう。
時間差で教室に入ると、明智さんも気付いて目が合う。
良い印象を持たせたいな、と思い微笑みを返す。
「ブラウンって何色だっ!?」
「茶色」
仲良さそうに話す明智君に目を奪われる。
あんな風に私とも会話をして欲しいな。
それを一緒に笑う女の子。
あの輪に入りたかった。
うーん……。
いきなり明智さんと話すのはハードルが高い。
そっちの男の子も、男子女子関係なく話してくれそうだけど、明智さんよりもハードルが高い。
そうなると……、あの女の子に認知されるといけるかな?
名前は、佐々木絵美さんらしい。
よし、私も勇気を出して佐々木さんと友達になってみよう!
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる