上 下
50 / 136
第5章 鳥籠の少女

7、佐々木絵美の恋愛分析

しおりを挟む
わたし自慢の幼馴染。
明智秀頼君はとにかくモテます。

「なー、津軽?どう思う?」
「知らないわよ。あんたが恥ずかしいとか知ったこっちゃないわよ」

円は表立って秀頼君と仲良くはしません。
でも、なんかたまにコソコソと2人で内緒話をしています。
内緒話の内容を秀頼君に聞くと『共通の話題』、円に聞くと『明智君がやらなきゃいけないこと』と答えます。
微妙に食い違っている返答な気がする。

それに、本当に『秀頼君がやらなきゃいけないこと』を秀頼君が相談しているなら……。
わたしに相談してくれないことが悲しい……。



「スターチャイルド本当にヤバいです!あの歌唱力リピート確定なんですけど!」
「わかるわかる。理沙も順調にスターチャイルドファンに育って嬉しいぜ」
「なんであんなに凄いのに無名なのがおかしいですよ!」
「なーに、言うなれば今はツボミの状態よ。デビューしてすぐなんてそんなもんよ。後から一気にメジャーになるから」

理沙ちゃんは最近、秀頼君の影響でアイドルにはまったらしいです。
十文字君と共通の話題を見つけるためにそんな相談をしたらしい。
……でも、なんか……。

「楽しみですね!明智君っ!」
「あぁ、期待大だ」

十文字君より秀頼君と仲良くなってない!?
理沙ちゃんが十文字君とアイドル話をしているより、断然秀頼君としている姿を目撃しています。



「秀頼、貴様は今日、店に来い!」
「なんで?」
「貴様に美味しいって言わせるためのコーヒーを改良中だ。第37回コーヒーにわかを殺すゲームの開催だっ!」
「最近、咲夜のコーヒーも段々マスターの味に近付き過ぎて難しいんだよ……」
「でも36回連続で正解を当てるじゃないか!秀頼のキッズ舌を騙すまでやり続けるぞ」
「しょーがねーなー」
「やった!やった!」

咲夜ちゃんは絶対秀頼君が好きなのがほぼ確定。
最近秀頼君を喫茶店に連れ込むペースが異常。
全然家に居ないんだもん。

秀頼君は鈍感なので咲夜ちゃんを意識してない。
ただ、意識をしてないからこそ、意識をしてしまったら咲夜ちゃんの距離感の異常に気付く。

咲夜ちゃんを妹みたいに見ているのかもしれないけど……。
多分それは、わたしと理沙ちゃんも含まれている(円だけは妹みたいに見られていないのがポイント)。

距離感の咲夜ちゃん。
十文字君という親友とセットでいられるから美味しい立ち位置の理沙ちゃん。
案外1番異性として見られている円。

極めつけはあれだ。



「全く好みじゃない女性と、めっちゃ好みの男性。そりゃあ俺は断然めっちゃ好みの男性を選ぶぜ!秀頼はどうだ?」
「いや、俺はそんなすぐ決まらないよ!?」
「じゃあそうだな……。ヘドロみたいな女と俺だったらどっちとキスするよ?」
「んー……、我慢してタケルかな」
「じゃあめっちゃ好みの男性のが有りってことだろうがっ!」
「そうだな」

あれが1番ヤバい。

わたしが最初に秀頼君と運命の赤い糸で結ばれていると言ったのに、いつの間にか秀頼君との出会いは運命とかいってパクリだした男!
狙ってる!絶対狙ってるよ!

十文字君とか選ばれたら、もはやわたし立ち直れないよ!

とにかく、あの男は異常にモテるんです。
理沙ちゃんは十文字君好きだとノーマークでしたが、ここ最近の仲はちょっと近すぎるんじゃないかな!?



「あー……、中学って大変だなぁ……。俺が1番大変だったのも中学の記憶だもん」
「いや、それって今じゃない?」
「まー。そうだけど……」

秀頼君ってたまにこう、……わたしより遥かに年上なんじゃないかって思う。
十文字君や理沙ちゃんらと長い付き合いだけど、彼らは成長したなって感じがするんだけど。
秀頼君は、全く成長していない。

バカにしているわけではない。
初対面の時に、既に秀頼君という存在がすでに完成されていた。
そんな風に感じる。

普通、子供はレベルアップする。
学校に通い、新しい出会いと別れを通じてドンドンレベルが上がる。

しかし、秀頼君にはそれらが全く見当たらない。
最初からレベルがカンストしていたみたいにあまりに成長が不自然なのだ。

それだけ、秀頼君は昔から素敵ってことだよねっ!

「…………」
「…………」
「…………」
「……あ、あのっ!秀頼君は頭良いですよね!どうしてそんなに頭が良いのかなって……?」
「勉強してたから」
「あっ、はい……」

『勉強してた』ってなんでしょう?
『勉強してる』って言うべきなんじゃないでしょうか?
ただのニュアンスの違いのような気がするけど……。

それよりも……。







あれ?
わたしが1番、秀頼君と距離遠くない?

衝撃の事実に気付いてしまった。
もっと、秀頼君と話したい!

恋のライバルが多すぎる……。
分析ばかりではなく何か行動に移さないと色々と置いて行かれる。

「佐々木さん!」
「えっ!?は、はい!?」

わたしが焦りを感じていた頃、横から突然接点のないクラスメートから声を掛けられた。

「み、宮村さん……?」
「あっ、私のこと知っていたんですね!嬉しいですっ!」

私の両手を握り、嬉しそうに微笑む宮村さん。

宮村永遠さん。
いかにも秀頼君が大好きなゲームに登場しそうなくらいの美人。
成績優秀で、スタイル抜群、クラスメートの注目を浴びている人だ。
秀頼君こういう人好きそうだなぁ。

秀頼君との接点はなさそうだけど。

いかにも地味で小さいわたしと並べられると、世の中って不公平だと思う。

「あ、……あのっ!?友達になってくださいっ!」
「え……?」
「佐々木さん、めっちゃ可愛いですっ!」

なんか、嵐の予感。
円との初対面と同じ、なんか色々とわたしの交友関係が大きく変わりそうな気がしてならなかった……。

そして、が酷く気持ち悪い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

処理中です...