上 下
39 / 136
第4章 変人親子の喫茶店

3、コーヒーにわかを殺すゲーム

しおりを挟む
コーヒーにわかを殺すゲームの説明を咲夜の口から説明された。
ざっくり言うとAとBのコーヒーカップを用意してマスターと咲夜のどっちが淹れたコーヒーかを当てるゲームということらしい。

「なるほど……、要約するとコーヒーにわかを殺すゲームということか」
「流行ってんのその単語?咲夜以外でノリノリでその言葉を口にしてる人はじめて聞いた……」
「ウチは秀頼のノリの良さは好きだぞ」
「あっ、はい」

さっきまで散々と貴様だのキッズだのと罵る咲夜であったが、突然褒めてきてとにかく返事だけしておいた。

「じゃあウチとマスターがコーヒーの準備をするから秀頼は外にいろ」
「めんどー……」

店の外で数分間待たされる。
何もしないで待たされるのも苦痛だ。
スマホもまだ子供だから持たされてないし、時間潰しをすることできない。

ずっと空を眺めていると「準備ができたぞ」と咲夜が飛び出してきた。
そのまま席まで案内してくれた。

「このゲームの正解率は?」
「1パーセントだ」
「ほぅ……」

前世で『惨劇に挑め。正解率1%』というキャッチコピーの同人ゲームを思い出してしまい苦笑する。
やってることはただの格付けチェックだけど。

「ははっ、まあ秀頼君。頑張って」

娘に巻き込まれても真面目にやるマスターの大人っぷりが凄い。
プロって感じがする。
先にBのコーヒーから手に取る。

「ひねくれ者か貴様!」
「わかったよ、うるさいな……」

Bのコーヒーを置き、Aのコーヒーを手にする。

「ふっ、ベタだな貴様」
「どっちから取っても罵倒される流れ!?そんな酷い扱いある!?」

腑に落ちない感覚をしながらも、香りから楽しみ1口Aのコーヒーを飲み込む。

「なるほど、中々深い香りをしていらっしゃいますね」
「貴様っ!それっぽいコメントしてるだけだろ!」
「あの……、なんで俺、咲夜からこんな舐められてるの……?」
「舐めてないさ。個人的な感想だ」
「個人的な感想って言えばなんでも許されると思うなよ」

マスターからは「仲良いねー」と微笑ましい目で見られている。
というか、咲夜のキャラが濃い!
ゲームのモブですらないのにこんなに濃いとかゲームの世界怖い。

「ほら、次はBを飲め」

彼女に勧められてBのコーヒーも啜る。

「…………」
「貴様!なんかコメントしろっ!」
「コメントしなくても怒られるの!?」

色々と思うところのあるコーヒーにわかを殺すゲームである。
そういうことをやりそうだよなぁ……。

「どうだい秀頼君、自信はあるかい?」
「どうだろうな……、ただちょっとな……」
「ちょっと?」
「おいたが過ぎるなと思って」
「へぇー」

マスターがニヤニヤ笑う。
意味がわかっていない咲夜が頭に?を浮かべている。

「それで、貴様みたいなキッズがコーヒーの違いを当てられるのか?」
「これどっちもマスターのコーヒーだろ」
「はぇ…………?」
「どうせ咲夜の差し金だろ」

前世のコーヒー大好き母さんの影響で、色々な違いを教えられてきた。
プロと素人のどちらが淹れたかくらいはなんとなくわかる。

どっちも美味しいコーヒーだったのがこのゲームの判断ポイントである。

「俺はこれまでの人生、コーヒーをたくさん飲んできたんだ。コーヒー愛好家の俺としてはキッズが作ったかどうかくらいわかるよ」
「なるほどねー。君の年齢でコーヒー愛好家とか、将来カフェイン中毒になるよ」
「カフェ中上等」
「カフェイン中毒をカフェ中と略す小学生はじめて見たよ……」

マスターはそんなことを言いつつ正解を当てられたからか目が嬉しそうにしていた。
しかしその娘の反応は……。

「イカサマだぁー!」

逆ギレしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】死がふたりを分かつとも

杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」  私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。  ああ、やった。  とうとうやり遂げた。  これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。  私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。 自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。 彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。 それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。 やれるかどうか何とも言えない。 だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。 だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺! ◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。 詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。 ◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。 1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。 ◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます! ◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。

ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?

ラララキヲ
恋愛
 乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。  学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。  でも、ねぇ……?  何故それをわたくしが待たなきゃいけないの? ※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。 ◇テンプレ乙女ゲームモノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...