38 / 136
第4章 変人親子の喫茶店
2、谷川咲夜
しおりを挟む
俺に絡んできたガキは、短い髪型をしていてかなり癖っ毛の強い子である。
コーヒーカップが付いているヘアゴムを止めている。
身長はやや低め(絵美よりは高い。絵美が低すぎるだけだが……)の体型である。
「貴様、名前を名乗れ」
「明智秀頼だよ」
「なんだその中途半端な名前は!?明智なら光秀。豊臣なら秀頼と名前をきちんと付けろ」
「いや、俺が決めた名前じゃねーし……」
というか、俺の前世の名前が豊臣光秀なんだよ。
ちょっと複雑な気分になるからやめて欲しい。
「秀頼からはクズでゲスで性根が腐ってるオーラを感じるな」
「初対面でなんでそんなに罵倒されるの……?」
「罵倒ではない。ウチの個人的な感想だ」
「個人的な感想って言えばなんでも許されると思うなよ」
しかもある意味その評価が間違っていない。
「君は?」
「ウチの名前は谷川咲夜だ」
「た、谷川咲夜!?」
彼女の名前は……、知らん。
本気で誰だ?
俺の知り合う人全員がゲームキャラクターなわけではないから本気でわからない。
当然、谷川咲夜なんてキャラクターは『悲しみの連鎖を断ち切り』には登場しない。
「ふーっ。疲れた……。ん?」
そこへマスターが帰ってきて、俺と女の子を視界に入れた。
「来たかマスター。ケーキを所望する」
「咲夜……、君もか……」
「マスター、誰なのこの礼儀知らずの子供は?」
「君も、十分礼儀ないからね」
やれやれと息を付きながらマスターは、冷蔵庫へ行きケーキを取り出していた。
「咲夜は僕の娘だよ」
「え!?マスターの名字谷川なの!?」
「あ、そこから知らないんだ……」
苦笑いをしながらケーキを女の子の前に置いた。
「なんで娘からもマスターって呼ばれてるの?」
「テレビっ子だからさ。ハードボイルドなドラマ見てマスターって呼んだり、時代劇のドラマ見て貴様って呼んだり」
「そっか、俺の隣の家に住む女も恋愛ドラマの影響受けて頭の中身がピンクなんだがそれと一緒だな」
「咲夜には恋愛ドラマを見せないようにしよう……」
娘の前のマスターは、親バカ感溢れる雰囲気に見える。
「というわけだ。秀頼、ここは貴様のようなキッズが来る様な店ではない。ここは大人が楽しむ店だ」
「ほぅ、大人が楽しむ店か。詳しく頼む」
「ここには安らぎと快楽に飢えた大人たちが楽しむ場だ。お金を支払い気持ち良くなって帰っていただく。そういう大人のお店だ」
「お金を支払い気持ち良くなって帰っていただくかぁ!」
「やめて!言い方が悪すぎるでしょ!」
発言者本人である咲夜は父親がなぜ止めたのか理解できていないらしい。
「マスターの娘は素で『気持ち良くなって帰っていただく大人のお店』とか言うのか。将来有望だな」
「君はわかって言ってるね?姉貴は君にどんな教育してんだよ……」
殴られている子供を助けないで怯えていた人ですとは言わないでおこう……。
そう心で呟いていると、ようやく目の前にエスプレッソを置かれる。
「それでマスター!このキッズはなんだ!?」
「姉貴が預かってる子供だよ」
「預かってる子供?産んだ子供ではないのか?」
「姉貴と秀頼君は血の繋がりないからね。産んでないよ」
つまり、俺と咲夜は完全な赤の他人となる。
親子の会話を聞きながらコーヒーをすする。
「あー、やっぱりマスターのコーヒーは良いな」
「常に素直なら君も可愛い子供に見えるんだけどねー」
マスターもひねくれ者なので、これでも喜んでいるのがわかる。
そのやり取りを見た咲夜が口を尖らせた。
「キッズなんか何出されても喜ぶでしょ」
「なんだと?俺は味の違いがわかる男だ」
「なら勝負しよう」
「勝負?」
咲夜は厨房へ歩いていき、空のカップを2つ用意して、自分の目の前に並べる。
そして、宣言する。
「コーヒーにわかを殺すゲームだ」
「なるほど、つまりコーヒーにわかを殺すゲームということだな」
「そうだ。コーヒーにわかを殺すのだ」
「そんな悪魔のゲームが……。まるでコーヒーにわかを殺すゲームみたいなものが存在するのか」
「……仲良いね、君ら。打ち解けるのがはやっ」
咲夜からコーヒーにわかを殺すゲームの詳細を伺う。
コーヒーカップが付いているヘアゴムを止めている。
身長はやや低め(絵美よりは高い。絵美が低すぎるだけだが……)の体型である。
「貴様、名前を名乗れ」
「明智秀頼だよ」
「なんだその中途半端な名前は!?明智なら光秀。豊臣なら秀頼と名前をきちんと付けろ」
「いや、俺が決めた名前じゃねーし……」
というか、俺の前世の名前が豊臣光秀なんだよ。
ちょっと複雑な気分になるからやめて欲しい。
「秀頼からはクズでゲスで性根が腐ってるオーラを感じるな」
「初対面でなんでそんなに罵倒されるの……?」
「罵倒ではない。ウチの個人的な感想だ」
「個人的な感想って言えばなんでも許されると思うなよ」
しかもある意味その評価が間違っていない。
「君は?」
「ウチの名前は谷川咲夜だ」
「た、谷川咲夜!?」
彼女の名前は……、知らん。
本気で誰だ?
俺の知り合う人全員がゲームキャラクターなわけではないから本気でわからない。
当然、谷川咲夜なんてキャラクターは『悲しみの連鎖を断ち切り』には登場しない。
「ふーっ。疲れた……。ん?」
そこへマスターが帰ってきて、俺と女の子を視界に入れた。
「来たかマスター。ケーキを所望する」
「咲夜……、君もか……」
「マスター、誰なのこの礼儀知らずの子供は?」
「君も、十分礼儀ないからね」
やれやれと息を付きながらマスターは、冷蔵庫へ行きケーキを取り出していた。
「咲夜は僕の娘だよ」
「え!?マスターの名字谷川なの!?」
「あ、そこから知らないんだ……」
苦笑いをしながらケーキを女の子の前に置いた。
「なんで娘からもマスターって呼ばれてるの?」
「テレビっ子だからさ。ハードボイルドなドラマ見てマスターって呼んだり、時代劇のドラマ見て貴様って呼んだり」
「そっか、俺の隣の家に住む女も恋愛ドラマの影響受けて頭の中身がピンクなんだがそれと一緒だな」
「咲夜には恋愛ドラマを見せないようにしよう……」
娘の前のマスターは、親バカ感溢れる雰囲気に見える。
「というわけだ。秀頼、ここは貴様のようなキッズが来る様な店ではない。ここは大人が楽しむ店だ」
「ほぅ、大人が楽しむ店か。詳しく頼む」
「ここには安らぎと快楽に飢えた大人たちが楽しむ場だ。お金を支払い気持ち良くなって帰っていただく。そういう大人のお店だ」
「お金を支払い気持ち良くなって帰っていただくかぁ!」
「やめて!言い方が悪すぎるでしょ!」
発言者本人である咲夜は父親がなぜ止めたのか理解できていないらしい。
「マスターの娘は素で『気持ち良くなって帰っていただく大人のお店』とか言うのか。将来有望だな」
「君はわかって言ってるね?姉貴は君にどんな教育してんだよ……」
殴られている子供を助けないで怯えていた人ですとは言わないでおこう……。
そう心で呟いていると、ようやく目の前にエスプレッソを置かれる。
「それでマスター!このキッズはなんだ!?」
「姉貴が預かってる子供だよ」
「預かってる子供?産んだ子供ではないのか?」
「姉貴と秀頼君は血の繋がりないからね。産んでないよ」
つまり、俺と咲夜は完全な赤の他人となる。
親子の会話を聞きながらコーヒーをすする。
「あー、やっぱりマスターのコーヒーは良いな」
「常に素直なら君も可愛い子供に見えるんだけどねー」
マスターもひねくれ者なので、これでも喜んでいるのがわかる。
そのやり取りを見た咲夜が口を尖らせた。
「キッズなんか何出されても喜ぶでしょ」
「なんだと?俺は味の違いがわかる男だ」
「なら勝負しよう」
「勝負?」
咲夜は厨房へ歩いていき、空のカップを2つ用意して、自分の目の前に並べる。
そして、宣言する。
「コーヒーにわかを殺すゲームだ」
「なるほど、つまりコーヒーにわかを殺すゲームということだな」
「そうだ。コーヒーにわかを殺すのだ」
「そんな悪魔のゲームが……。まるでコーヒーにわかを殺すゲームみたいなものが存在するのか」
「……仲良いね、君ら。打ち解けるのがはやっ」
咲夜からコーヒーにわかを殺すゲームの詳細を伺う。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる