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第3章 賑やかし要員

15、ゲーム

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私は、1人で街中を歩く。
デパート、映画館、喫茶店、遊園地。
豊臣君と行きたいと思っていたところを色々まわった。

「楽しくないなぁ……」

私の願望の中身が実はしょぼいのではないかと思い始める。
美味しそうだと思って食べたものが、口にあわなかった……そんな感じ。

「……ゲーム屋だ」

私は普段ゲームはしない。
でも、豊臣君はゲームをプレイするのが好きだったみたいだ。

そっか。
デートだとしたら私が行きたいところだけでなく、豊臣君の行きたいところも行くよね。

「…………」

少しで良いから中に入ってみよう。
普段はたまにアプリゲームをするくらいで、そんなにゲームをしないから新鮮な気持ちだ。

ドキドキしながらゲーム屋を探索する。
ゲームは持ってないけど、並べられた箱にワクワクする。

「あっ、これ可愛い。こっちはイケメン!……でも、豊臣君のがイケメン」

はじめて豊臣君の顔を見た時、イケメンとかではなくて、普通の少年って感じに思えたのに、今ではイケメンの天井が豊臣君な気がしてきた。

そして、私は見付けた。

「これは……、『悲しみの連鎖を断ち切り』……」

豊臣君がカラオケデートで名前を出していたゲームのタイトルだ。
PCゲームらしいので、プレイするのには問題なさそうだ。

可愛い女の子がたくさん並んでいるゲームなのでレジに持っていくのが恥ずかしかった。
豊臣君はこの恥ずかしさに耐えていた……?
やっぱり豊臣君は強い!

※DL版も存在するのを知るのはかなり後。

「買っちゃった!不良になった気分」

黒い中身の見えないレジ袋も3円で購入し、家路へ走る。
私がこれを持って事故に遭ったならあまりにも恥ずかしくて、生きていても死んでる振りをするくらいかもしれない。

そうやって急いで帰宅して、お母さんに目撃されない様に部屋へ走る。

なんでこんなデカイ箱なの!?と驚きながら箱を開けると初回特典ビジュアルファンブック(ネタバレ注意)と、ゲームディスクが2枚包装されていた。

「中身スカスカ……」

どっかの通販サイトの段ボールを思い出させるほどの過剰包装に悪い意味で驚いた。
箱のワクワク感と、箱を開けたガッカリ感はぜひ色んな人に経験して欲しいと思う。

「よし、じゃあ早速パソコンを起動しよう」

私用で使っているやや古いタイプの父のおさがりノートPCを起動して、早速ディスクを読み取りインストールをした。

『悲しみの連鎖を断ち切り』とタイトルコールが流れて、明るいBGMと可愛い女の子が並んだ画面に釘付けになる。

「おぉ、これが豊臣君が見ていた景色か!きゃー、可愛いー!!」

テンションを高くして、ゲームをスタートさせる。
多分この十文字タケルという人が主人公なのだろう。
1人だけ声がなくて、違和感があるけど、声優さんのギャラを渋ってる感じなのかな。

「あ、このキャラ共感するね。可愛い」

出番が少ないけど、佐々木絵美という幼い顔立ちのキャラクターが私にストライク過ぎた。
彼氏役の明智秀頼が大好きで依存しているキャラクターだ。

豊臣君に依存している自分と被るなというのが無理だった(依存体質は自覚あり)。

『絵美は可愛いのう、可愛いのう』

絵美と戯れる津軽円というキャラクターの心情がわかる。
めっちゃ可愛い!
各キャラクターから妹扱いされるのが、なんか保護欲を上げてくれる。

「彼氏役の明智秀頼はなんで可愛い彼女いて、すぐナンパするの?あり得なくない?」

彼氏がクズっぽいけど、絵美のピンチには助けに来たりとこのキャラクターの行動がイマイチ理解できない。
感情移入もできない。

そのまま選択肢をポチポチと選んでいくと、物語自体に暗雲が立ち込める。
しかも、登場人物のヒロイン達の存在感が消えはじめて、なぜか主人公の妹の十文字理沙ばかりが出番でずっとでずっぱりになる。
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