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第3章 賑やかし要員
12、混ざるノイズ
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「おはよう、由美」
「おはよう……」
「顔色悪いね、まぁ仕方ないか……」
「うん……」
美奈子は私の事情なんて知らないだろうに、同情した目で私を見ている。
何も教えていないのに、全部わかっている顔だった。
「……」
「……」
無言のまま、学校へ向かう。
落ち込む私を見て、気まずそうに美奈子は口を開く。
「先、行ってる。由美も考える時間必要だよね。1ヶ月じゃ全然足りないよね」
「う、うん」
美奈子はなんの話をしているの?
考える時間が必要?
1ヶ月じゃ足りない?
意味がわからない2つの言葉。
教室に入ると、全ての思考が真っ白になり弾けとんだ。
思考にノイズが混ざる。
「……え?」
美奈子の隣の席ーー豊臣光秀の席に花が添えられていた。
「ねぇ!?どういうことなの!?誰、こんな不謹慎なイタズラをしたのっ!?」
「由美、落ち着いて」
叫んでしまい、教室中の視線を集める。
普段ならそんなの恥ずかしい。
けど、今はそんな羞恥心を持ち合わせていない。
近くに居た豊臣君の友達を捕まえる。
「ねぇ!?誰なの!?豊臣君の席に花なんか置いたの!?君、豊臣君の友達でしょ!?」
「誰置いたって、先生に決まってるだろ……」
「は?どうして……?」
「なんだ知らないのか……?光秀の奴、夏休み前日に事故で亡くなったんだよ」
「え……?」
「ちょっと、来なさい」
すぐに美奈子が駆け寄ってズルズルと引きずられる。
どういうこと?
亡くなった?
亡くなったって何?
廊下を歩く集団の中に豊臣君がいない。
どこに行ったの……?
「そもそも知らなかった……?」
「知らない……、毎日ラインしてくれるって……、いっぱい遊び行こうって約束して……」
「そっか、手術してる日に豊臣君亡くなったから。すぐにテレビでも放送しなくなったしね……。知るタイミングが無かったのね……」
私、夢でも見ているのかな……?
「豊臣君、青信号を渡っていたんだって。……でも信号無視してきたトラックに轢かれて……。外傷とかはあんまり無かったみたいなんだけど、頭から激突して脳がーー」
「もうやめて……」
「……ごめん」
あんなに元気だった豊臣君がこの世界にいない。
みんな、何を言っているのかわからない。
校長先生の挨拶でも豊臣君の死亡に触れる。
ねぇ、どうして誰も豊臣君の死を否定してくれないの……?
「豊臣の住所はここだ。お線香をあげてこい……」
担任の先生から住所を渡された。
私だけが、この世界から浮いている気分だった。
「おはよう……」
「顔色悪いね、まぁ仕方ないか……」
「うん……」
美奈子は私の事情なんて知らないだろうに、同情した目で私を見ている。
何も教えていないのに、全部わかっている顔だった。
「……」
「……」
無言のまま、学校へ向かう。
落ち込む私を見て、気まずそうに美奈子は口を開く。
「先、行ってる。由美も考える時間必要だよね。1ヶ月じゃ全然足りないよね」
「う、うん」
美奈子はなんの話をしているの?
考える時間が必要?
1ヶ月じゃ足りない?
意味がわからない2つの言葉。
教室に入ると、全ての思考が真っ白になり弾けとんだ。
思考にノイズが混ざる。
「……え?」
美奈子の隣の席ーー豊臣光秀の席に花が添えられていた。
「ねぇ!?どういうことなの!?誰、こんな不謹慎なイタズラをしたのっ!?」
「由美、落ち着いて」
叫んでしまい、教室中の視線を集める。
普段ならそんなの恥ずかしい。
けど、今はそんな羞恥心を持ち合わせていない。
近くに居た豊臣君の友達を捕まえる。
「ねぇ!?誰なの!?豊臣君の席に花なんか置いたの!?君、豊臣君の友達でしょ!?」
「誰置いたって、先生に決まってるだろ……」
「は?どうして……?」
「なんだ知らないのか……?光秀の奴、夏休み前日に事故で亡くなったんだよ」
「え……?」
「ちょっと、来なさい」
すぐに美奈子が駆け寄ってズルズルと引きずられる。
どういうこと?
亡くなった?
亡くなったって何?
廊下を歩く集団の中に豊臣君がいない。
どこに行ったの……?
「そもそも知らなかった……?」
「知らない……、毎日ラインしてくれるって……、いっぱい遊び行こうって約束して……」
「そっか、手術してる日に豊臣君亡くなったから。すぐにテレビでも放送しなくなったしね……。知るタイミングが無かったのね……」
私、夢でも見ているのかな……?
「豊臣君、青信号を渡っていたんだって。……でも信号無視してきたトラックに轢かれて……。外傷とかはあんまり無かったみたいなんだけど、頭から激突して脳がーー」
「もうやめて……」
「……ごめん」
あんなに元気だった豊臣君がこの世界にいない。
みんな、何を言っているのかわからない。
校長先生の挨拶でも豊臣君の死亡に触れる。
ねぇ、どうして誰も豊臣君の死を否定してくれないの……?
「豊臣の住所はここだ。お線香をあげてこい……」
担任の先生から住所を渡された。
私だけが、この世界から浮いている気分だった。
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