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第3章 賑やかし要員

1、津軽円

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あれから早いもので、2年の月日が流れた。
小学校の前半ぶんを終えて、4年生へとなっていた。

「兄さん、新しいクラス楽しみだね!」
「あぁ、今からワクワクが止まらないぜ」
「十文字君のその表現良いですね」

ゲーム主人公、十文字タケルは理沙と絵美に囲まれ既にハーレム化していた。
嫌われ者、クズゲス悪役親友役明智秀頼には、残念ながら春は来ない。

「秀頼も、同じクラスになれると良いな」
「あ、あぁ……」
「次も秀頼君と同じクラスが良い!てかずっとそうなって欲しい」
「そんな偶然続くわけないだろ……」

タケルと絵美がそんな風に同じクラスになって欲しいと言われて泣きそうである。
なんでこんな温かい子をゲームのバカは憎しみの目でしか見れなかったのか不思議でたまらんよ。

「見えてきましたね」

クラス替えを発表する掲示板には人が多く密になっている。
こういう時に原作秀頼はギフトで退けたりするんだろうが、俺はギフトを隠すために能力を使わなかった。

俺のクラスどんな人選なんだろうと首を伸ばす。
原作キャラと出会わないならそれで良い。

「見ろ見ろ!俺と秀頼が同じクラスだ!」
「そうですねー……」

原作キャラの主人公とはまた同じクラスになった。
神がタケルとの仲を自然消滅をさせないぞという意思を感じる。

「そ、そんなぁー!秀頼君と同じクラスじゃない……」
「はははー、秀頼とは俺と運命共同体だからな」
「わたし達は、運命の赤い糸で結ばれてる筈なのにーっ!」
「まぁまぁ絵美さん、私とは同じクラスじゃないですか」

絵美がさりげなく原作の公式サイトに書いてある絵美のキャラ紹介に使われているセリフの『赤い糸』とかいうワードを口にしてるんだが、もしかして原作に近付いてない?
鳥肌が立ったのでそれを紛らすため、俺のクラス表全員に目を通す。

うん。
他のヒロインやサブキャラの名前はないな。
タケルと秀頼だけという結果である。

よし、残り3年間は平和になりそうだな。

「じゃあな、理沙と絵美ちゃん!また後でー!」

新クラスへと足を踏み入れる。
新しい春の始まりである。
俺のクラスな落ち着いたものである。

……が、違うところで新しい風が吹き込んでいたことを俺は知らなかった。


―――――


「ほらほら、落ち込まない落ち込まない」
「だってー」
「私だって兄さんと同じクラスになれないんだよ」
「……うん」

理沙ちゃんとは今まで違うクラスだったけど、恋愛相談以降、絡みが多くなった。
理沙ちゃんは、良い子でわたしも好き。
ただ、十文字君の次に狙うとしたら秀頼君っぽいのはちょっと危険ポイントだと思う。
ライバルになったらわたしが負けそう……。
十文字君並みに、秀頼君も鈍感だと思う。

「首席番号順だからか席近いねー」
「てか絵美さんの後ろ」

そういえばそうだと、お互いに笑い合った。
心強い味方ができたと思う。
わたしの隣の席も女の子らしく、ちょっと気が楽になる。
本を読んでいた子だったので軽く挨拶をしてみる。

「こんにちは、お隣さんだよね。よろしく」
「はい。津軽円です。よろしくお願いいたします。えっと、名前よろしいですか?」
「そっかそっか、佐々木絵美だよ」
「え?」
「え?」

わたしの名前を聞いた途端態度が一辺するお隣さん。
理沙ちゃんも、露骨に変わった態度に驚いている。

「え?佐々木さんの後ろの人?」
「私は十文字理沙、よろしく!」
「っ!?」

私、理沙ちゃんとなぜか名前を聞いただけでドンドン顔色が変わる。

「ど、どうしました?保健室とか寄りますか?」

体調も悪く見えてきたので、お隣さんの津軽さんに駆け寄り手を伸ばす。

「触れないでっ!」
「え?」
「私の弱みまで握らせたくない。十文字タケルの弱点探しに私まで巻き込まないでっ!佐々木さんに恨みはないけど、後ろに明智秀頼がいるんでしょ!?怖い、怖いよ……」

怯えた声の津軽さんからハッキリと拒絶された。
意味がわからない、どうして十文字君と秀頼君の名前が出てくるんだろう……?

「ごめんなさい、私を原作に巻き込まないで……」

ぼそっとそれだけ口にした。
理沙ちゃんと顔を見合わせる。
気まずい学校生活がスタートしたのであった。
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